ミミレイドンボス、おはようございます!
今朝のテーマはなんでしょうか?



今朝は、久しぶりのシリーズとなる、中小企業の役員報酬シリーズの役員報酬の手続きについて、整理していきたいと思います。



約一週間暗号資産シリーズが続いていたので忘れちゃいました…



役員報酬は“毎月払っているだけ”でも、手続きの抜けがあると会社法上の無効リスクや、税務調査での損金否認リスクにつながります。しかも非上場・オーナー企業ほど『口頭で決めたつもり』が多く、相続・株主間トラブル・銀行融資の場面で一気に問題化しがちです。
今朝は、会社法上の役員報酬の決め方を整理したうえで、実務で迷いやすいポイントについて、整理していきたいと思います。



役員報酬シリーズの①役員報酬の意義編、②役員報酬の損金性編については、こちらの記事をご覧ください。
【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:①役員報酬の意義編
【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:②役員報酬の損金性編
③役員報酬の手続き編
1.非上場会社の役員報酬の会社法上の手続き
非上場会社の役員報酬に関する会社法上の手続きについて、原則から実務上の運用、注意点まで詳しく解説します。
(1). 原則:株主総会での決定(お手盛り防止)
会社法では、取締役が自分で自分の報酬を不当に高く決めてしまう、いわゆる「お手盛り」を防止するため、取締役の報酬等の額は「定款」又は「株主総会の決議」によって定めなければならないとされています(会社法361条)。
(2). 実務上の決定プロセス(3つのパターン)
実務上は、株主総会で役員ごとの具体的な金額まで決めるケースは少なく、株主総会では役員報酬の総額の「上限(枠)」のみを包括的に定め、具体的な個別の配分については取締役会等に委任するのが一般的です。
総額(枠)は一度決めてしまえば、その総額を変更(増額や減額)しない限り、毎年株主総会で報酬決議をやり直す必要はありません。
具体的な決定プロセスには、以下の3つのパターンがあります。
- 株主総会で決定
株主総会で、取締役の各個人別の報酬額まで具体的に決定する。 - 取締役会に委任
株主総会で報酬の総額(枠)を決定し、取締役の個人別の具体的な配分は取締役会に委任して決定する。 - 代表取締役に委任
株主総会で総額(枠)を決定し、取締役会でその配分をさらに代表取締役に一任して決定する。



株式会社(オーナー企業)の場合も、「役員全員の報酬合計は年間〇〇円以内とする」といった総額の限度度を決議します。オーナー企業では、株主=役員なので、実質的には社長の案がそのまま通ります。
一方、合同会社はさらに自由度が高く、株式会社のような厳格な株主総会手続きは不要で、出資者(社員)の話し合い(総社員の同意)だけで決定できます。実務上の流れとしては、「同意書」や「決定書」という書類を作成し、そこに報酬額を記載して保存しておくだけでOKです。
(3). 手続きにおける重要な注意点
役員報酬の手続きにおいては、以下の点に留意する必要があります。
- 取締役と監査役の報酬は「別枠」にする
取締役報酬と監査役報酬は混同せず、別枠でそれぞれの総額(枠)を定める必要があります。また、監査役の各人別の報酬額については、取締役会や代表取締役に委任することはできず、監査役の協議によって定めます。これは、取締役会からの監査役の独立性を担保するためです。



そもそも、取締役会を設置していないような会社(いわゆる「オーナー企業」など)については、監査役を置く必要はありません。
貴社が以下のどれかに当てはまるなら、監査役の選任が必要となります。
①資本金5億円以上、または負債200億円以上である。
②取締役会を置いている(非公開・中小で会計参与を置く場合を除く)。
③一般財団法人である。



以下の法人は、取締役会を置くかどうかを自由に決めることができます。
① 非公開会社(譲渡制限会社)
すべての株式に「譲渡制限」をかけている会社であれば、取締役1名のみでも設立可能です。日本の中小企業の多くはこの形態をとっています。
② 合同会社(LLC)
合同会社には、そもそも「取締役」や「取締役会」という概念自体がありません。出資者(社員)が自ら業務執行を行うため、非常に自由度の高い経営が可能です。
- 使用人兼務役員の扱いを明確にする
役員の中に「使用人兼務役員(従業員としての立場も持つ役員)」がいる場合、株主総会で決議する報酬の総額(枠)に、使用人(従業員)としての給与部分を含むか・含まないかを議事録等で明確にしておく必要があります。 - 「経済的な利益」も決議の対象となる
金銭で支払われる報酬だけでなく、会社から役員へ供与される「経済的な利益」(例えば、無利息での貸付、社宅の貸与、会社資産の低額譲渡など)も実質的に役員報酬の一部とみなされることがあります。これらを供与する場合、報酬枠の範囲内に収まっているかどうかの確認や、役員報酬の承認決議に含めておくことが重要です。また、会社と役員間の直接取引となる場合は、別途「利益相反取引承認の取締役会決議」が必要になります。



利益相反(りえきそうはん)取引を一言でいうと、「役員個人のトクが、会社の損につながる恐れがある取引」のことです。
会社と役員の間で売買や貸し借りを行う場合、役員が自分に有利な条件(会社に不利な条件)で契約を進めてしまうリスクがあるため、法律(会社法)で厳しく制限されています。例えば、会社と役員が直接、売買や契約を行うケース(例①: 社長個人が所有する土地を、会社に時価より高く買い取らせる。例②: 会社の備品を、役員個人が安く譲り受ける。例③: 会社が社長個人にお金を貸す(または借りる)。)や、会社と役員の直接のやり取りではないが、結果的に会社がリスクを負うケース(例①: 社長が個人で銀行からローンを組む際、会社を保証人にする。例②: 社長個人の借金の担保として、会社の不動産に抵当権を設定する。)などがあります。



「利益相反=禁止」ではありません。「事前にしかるべき承認を得ればOK」というルールです。つまり、取締役会がある会社は、取締役会での決議(事前の承認)が必要であり、取締役会がない会社は、株主総会での決議(事前の承認)が必要となります。承認のための会議において、『取締役会』で決議を行う場合、当事者である役員(例:お金を借りる社長本人)は「特別利害関係人」として決議に加わることができません。これは公平性を保つためのルールです。 一方、取締役会がない会社の『株主総会』で決議を行う場合は、当事者である役員が株主であっても、原則として決議(議決権の行使)に加わることができます。オーナー企業(社長=100%株主)の場合は、自らの議決権で承認決議を行うことになります。
(4). (例外)株主総会決議を経ない場合のリスク
非上場の中小企業などでは、株主と経営者(役員)が同一であることが多く、形式的な株主総会が開かれないケースもあります。
過去の裁判例では、株主が少数で、実質的に「株主総会決議を経た場合と同視できる事実(株主全員の同意があったのと同じ状況など)」が存在する場合には、株主総会決議を経なくても役員報酬の支払いが有効とされたケースもあります。
しかし、税務上は厳しく見られることが多く、実体のない決定は「仮装」と認定され、報酬が経費(損金)として認められなくなるリスクがあります。そのため、実際に株主総会が開催されず書面のみのやり取りであったとしても、必ず株主総会議事録や、取締役会の報酬決定書などの記録を作成し、保管しておくことが極めて重要です。
2.非上場会社の役員退職金の会社法上の手続き
非上場会社における役員退職金(役員退職慰労金)の会社法上の手続きについて、原則から実務上の運用、例外的なケースまで詳しく解説します。
(1). 原則:定款または株主総会の決議による決定
会社法では、役員に対する金銭などの支給は、定期給与や臨時賞与、退職金を含めてすべて「役員報酬等」として一律の手続きが定められています。したがって、役員退職金の支給については、定款に定めがある場合を除き、原則として株主総会の決議によって具体的な支給金額を決定しなければなりません。
(2). 実務上の決定プロセス(取締役会への一任)
原則は株主総会での金額決定ですが、実務上は具体的な支給金額の決定を取締役会に一任することが多くみられます。ただし、お手盛りを防止する観点から、無条件に一任することは認められておらず、以下の3つの要件を満たす必要があります。
- 一定の支給基準が確定していること
会社の慣行や内規(役員退職慰労金支給規程など)によって、合理的でお手盛り防止の趣旨に合致した支給基準が取締役会等で定められていること。 - 支給基準が株主に推知しうるものであること
その基準の存在を、株主が知り得る状態にあること。 - 総会決議による一任があること
株主総会の決議において、確定している支給基準の範囲内で相当な金額を支給することを、取締役会に一任する旨が承認されていること。



取締役会がない会社では、本来取締役会が決めるような事項もすべて「株主総会」で決めることになります。



例えば、一人社長みたいな会社は一人しかいないのに総会を開くんですか?



実務上は「社長が頭の中で決めたことを、議事録という紙に残す」作業がこれに当たります。
取締役会がない会社での、実務的な決定プロセスは以下の通りです。
① 役員報酬を決める(毎年1回)
時期:決算後3ヶ月以内。
アクション:社長が「今期の自分の給料は月額〇〇円にする」と決める。
書類:「株主総会議事録」を作成し、報酬額を記載して実印(または会社認印)を押す。
注意:役員報酬は税務上のルールとして、一度決めたら1年間は変えられません(定期同額給与)。
② 役員退職金を決める
アクション:引退時(または分掌変更時)に金額を決定。
根拠:以下の計算式(税務上の目安として実務で広く用いられる計算式)をベースに「妥当性」を持たせます。
退職金=最終月額報酬×在任年数×功績倍率
書類:「株主総会議事録」を作成。
あとは、あらかじめ「役員退職慰労金規程」を自社で作っておくと、税務署への強力な証拠になります。



小さな会社は取締役会がないからこそ、税務調査や銀行融資で突っ込まれないために、株主総会議事録、役員退職慰労金規程、金銭消費貸借契約書は準備が必要なのですね!



一方、合同会社はさらに自由度が高く、株式会社のような厳格な株主総会手続きは不要です。定款に別段の定めがなければ、原則として出資者(社員)の過半数、または総社員の同意で決定できます(実務上は後々のトラブルを防ぐため、総社員の同意をとるのが確実です)。「総社員の同意書」を作成し、そこに支給額と支給日を明記して保存しておくようにしましょう。
(3). (例外)株主総会決議を経ない場合
中小企業においては、経営者と株主が一致していることが多く、形式的な株主総会が開かれないケースもあります。 原則として、株主総会の決議がないまま退職金が支払われた場合、退任役員には報酬請求権が発生していないため、会社から「不当利得」として返還を求められる可能性があります。
しかし、過去の裁判例では以下のように、例外的に支払いが有効とされたケースもあります。
- 株主が少数で、株主総会決議に代わる「全株主の同意があったのと同じ状況(株主総会決議を経た場合と同視できる事実)」が存在する場合、支払いが有効とされた裁判例があります。
- 最高裁の判例(最判平21.12.18)では、発行済株式の99%以上を保有する代表者が決裁して支給してきた事実や、過去の退職役員と同等以上の業績を上げているといった実態を踏まえ、会社側からの不当利得返還請求は「信義則に反し、権利の濫用に当たる」として、株主総会決議を欠く場合でも退職慰労金の支給を妥当と判断したものがあります。



とはいえ、これらはあくまで事後的な救済措置の側面が強く、税務調査において損金算入が否認されるリスクを回避するためにも、実務においては必ず役員退職慰労金規程を整備し、株主総会および取締役会の議事録を適切に作成・保管しておくことが極めて重要です。
3.株主総会決議を経ない役員報酬の有効性
原則として、株主総会決議を経ないで支払われた役員報酬は無効(有効なものとはならない)とされています。しかし、中小企業など一定の状況下においては、例外的に有効と判断された裁判例があります。
具体的には、以下の大きく2つのケース(判例)と、税務上のリスクについて理解しておくことが重要です。
(1). 「全株主の同意」と同視できる場合の有効性(東京地裁 平成25年8月5日判決)
中小企業では、株主が少数であり、会社の事情をよく知る株主が多く存在することがあります。 このような会社において、「株主総会の決議を経た場合と同視できる事実(=株主総会決議に代わる全株主の同意があったのと同じ状況)」が認められる場合には、役員報酬規制の本来の目的である「取締役のお手盛り防止」という趣旨を十分に満たしていると解釈されます。 そのため、この要件を満たす場合には、形式的な株主総会決議を経なくとも役員報酬の支払いは有効であると判断されています。
(2). 役員退職慰労金における「信義則違反・権利の濫用」(最高裁 平成21年12月18日判決)
株主総会決議がないまま支払われた役員退職慰労金について、会社側が「不当利得である」として返還を求めた事案です。 最高裁は、株主総会決議がない以上、退任取締役に請求権は発生しておらず、「不当利得になることは否定しがたい」と原則論を述べました。 しかし、以下の「特段の理由」が存在したことから、会社側の返還請求は信義則に反し、権利の濫用にあたると判断し、結果的に退職慰労金の支給を妥当(有効)としました。
- 発行済株式総数の99%以上を保有する代表者が決裁することによって、事実上、それが株主総会決議に代わっていたというこれまでの経緯
- 過去に退職慰労金を支給された退職取締役と、同等以上の業績を上げてきたという事実
(3). 税務上の厳しい取り扱いとリスク
上記のように、民事・会社法上は「実態」を考慮して例外的に有効と認められるケースがありますが、税務上は非常に厳しく見られるため注意が必要です。
法人税法では、株主総会の決議により具体的な報酬等請求権が確定し、その「具体的に金額の確定した日の属する事業年度」において損金算入することになっています。役員退職金についても、実際に支払って損金経理をしたとしても、会社法上有効な手続きではないと認定された場合、損金として認められない(経費にできない)リスクがあります。



したがって、無用なトラブルや税務否認を避けるためにも、例外規定に頼るのではなく、必ず株主総会を開催・決議したうえで、決議内容を記録した議事録を作成し、適切に保管しておくことが極めて重要です。



役員退職金については、法人税法基本通達9-2-28により、「株主総会の決議等によりその額が具体的に確定した日の属する事業年度」に損金算入するのが原則ですが、「実際に支払った日の属する事業年度」に損金経理した場合もこれが認められます(支払基準)。
4.役員に対する経済的利益の会社法上の手続き
役員に対して金銭以外の「経済的な利益」を供与した場合、会社法上は「利益相反取引の承認」と「役員報酬としての承認」という2つの側面から手続きが求められます。
税法上、役員への給与には金銭だけでなく、それと同等の効果をもたらす経済的な利益も含まれます。具体的には以下のようなものが該当します。
- 会社資産の贈与、低額譲渡、高額買入れ
- 会社への債務の免除や債権放棄
- 無償または低額での社宅の貸与
- 無利息または低率での金銭の貸付け
- 個人的な費用の会社負担(渡切交際費、住宅の光熱費など)
- 役員を被保険者とする生命保険料の会社負担
これらの経済的利益を供与する場合の会社法上の手続きは以下の通りです。
(1). 利益相反取引としての手続き
上記の経済的利益のうち、資産の贈与や譲渡、金銭の貸付けなどは、会社法で定める「利益相反取引(直接取引)」に該当します。
会社法では、取締役がその地位を利用して会社の利益を犠牲にし、自己や第三者の利益を図ることを防ぐため、会社と役員が直接取引を行う場合には厳格な手続きを定めています。
- 事前の承認
取締役会(取締役会を設置していない会社は株主総会)において、その取引に関する重要な事実を開示し、承認を受けなければなりません。 - 事後の報告
取締役会設置会社においては、取引を行った取締役は、取引後遅滞なくその事実を取締役会に報告する義務があります。
(2). 役員報酬としての手続き
経済的な利益が実質的に「取締役の職務執行の対価(役員報酬)」の一部と認められる場合、会社法の役員報酬規制の手続きも必要となります。
- 報酬限度額(枠)の確認
株主総会で役員報酬の総額(枠)を定めている場合、実際の金銭給与の支給額と供与した経済的利益の合計額が、その報酬限度額の範囲内に収まっている必要があります。 - 取締役会での包括的な決議
取締役会では、金銭報酬だけでなく、経済的な利益も含めて役員報酬の承認決議をしておくことが望ましいとされています。特に、社宅の貸与や金銭の貸付けにおける利息の免除など、「継続的に供与され、毎月おおむね一定額の利益」となるものについては、税務上は定期同額給与と認められるため、取締役会等の報酬決議の際に「金銭報酬以外の報酬」としてまとめて決議しておくことが実務上重要です。



余談ですが、役員が会社に金銭を貸している場合、会社側が利息を払わなくても、税務署から指摘を受けるリスクは低いです(会社が得しているので)。一方で、会社が役員に金銭を貸している場合には、原則として、適正な利息を取らなければなりません。例え免除したと整理しても、免除された利息分が、その月の「役員報酬(給与)」に上乗せされたものとして計算され、結果として、役員個人の所得税と住民税が跳ね上がります。さらに、会社側は「源泉徴収漏れ」として附帯税(ペナルティ)を課される可能性もあります。また、実際には受取利息として、徴収していなくても、税務上は「適正な利息(収入)があった」ものとして法人税が計算されます。なお、免除した分は「役員への賞与(ボーナス)」とみなされます。役員へのボーナスは、事前に税務署へ届け出ていない限り経費(損金)として一切認められません(事前確定届出給与の届出)。また、銀行からの印象も悪いです。
5.まとめ
非上場会社の役員報酬・退職金手続きにおける最大のポイントは、「お手盛り防止」という会社法の原則を理解し、ルールに則った正しい記録を残すことです。 「自分(社長)しかいない会社だから」「株主全員が暗黙の了解で納得しているから」と手続きを省略してしまうと、税務調査での否認、金融機関からの信用低下、あるいは将来の事業承継時における思わぬトラブルの火種となります。
会社法上、例外的に手続きの不備が許容された判例もありますが、それはあくまで事後的な救済措置に過ぎず、税務上は極めて厳しく判断されます。
- 金額を決めたら、必ず株主総会(および取締役会)の議事録を作成・保管する
- 役員退職慰労金規程などを事前に整備しておく
- 会社と役員間の貸し借り(利益相反取引)には、必ず事前の承認決議を得る
この基本を徹底することが、会社の信頼性と大切な資産を守る経営基盤となります。決算期や役員の異動時期には、ぜひ本記事の内容を振り返り、自社の手続きが適法に行われているかを確認してください。










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