【町田市の税理士が解説】暗号資産の税務上の注意点:②暗号資産期末評価編(法人税関係)

ミミレイドン

ボス、おはようございます!
今朝のテーマは何でしょうか?

新屋賢人

今朝は暗号資産の第3弾として、法人が暗号資産を所有する場合における期末評価について整理して行きたいと思います。

ミミレイドン

昨日の記事でも期末評価の概要について、整理しましたよね。

新屋賢人

そうですね。法人の暗号資産税務において、最も注意しなければならないのが「期末時価評価」による「含み益への課税」です。実際には売却して利益を得ていないにもかかわらず、決算時の時価が取得価額を上回っているだけで、多額の法人税が発生するケースがあります。
「長期保有しているだけだから関係ない」 「ステーキングでロックされているから売れないし、課税されないはずだ」
このような思い込みは非常に危険です。近年の法改正によりルールは整備されましたが、特にDeFi(DEX)やレンディング、ステーキング等の運用を行っている場合、その判定は複雑化しています。
今朝は、法人が保有する暗号資産の期末評価の基本ルールから、DEX、ステーキング、貸借取引といった特殊なケースにおける税務処理までを網羅的に解説します。知らなかったでは済まされない「評価損益」のルールを正しく理解し、適切な決算処理を行いましょう。

ミミレイドン

②暗号資産期末評価編(法人税関係)

目次

0.暗号資産とは?(おさらい)

暗号資産(仮想通貨)とは、一言で言えば「インターネット上でやり取りできる、形のないデジタル資産」のことです。

以前は「仮想通貨」と呼ばれることが一般的でしたが、現在は国際的な基準に合わせて「暗号資産」という呼び方が公的な名称となっています。

暗号資産が日本円やドルのような「法定通貨」と大きく違う点は、主に以下の3つです。

  • 特定の管理者がいない(分散型)
    銀行のような中央組織が存在せず、世界中のコンピューターがネットワーク(ブロックチェーン)を通じて取引を監視・記録しています。
  • データの改ざんが非常に困難
    「暗号技術」を用いることで、取引データの偽造や二重洗いを防いでいます。
  • 世界中で24時間365日送金可能
    インターネットさえあれば、国境を越えて直接相手に送金でき、銀行の営業時間や高い仲介手数料を気にする必要がありません。

(1).法定通貨との違い

特徴法定通貨(円・ドルなど)暗号資産(ビットコインなど)
発行元中央銀行(日本銀行など)なし(プログラムによる自動発行)
形態紙幣・硬貨・デジタルデータデジタルデータのみ
価値の裏付け国家の信用需給バランスや技術への期待
価格変動比較的安定している非常に激しい

(2).代表的な暗号資産の例

2026年現在も、数千種類以上の暗号資産が存在しますが、特に有名なものは以下の通りです。

  1. ビットコイン (BTC)
    「デジタルゴールド」とも呼ばれる、世界で最初に誕生した最も有名な暗号資産です。
  2. イーサリアム (ETH)
    単なる決済だけでなく、スマートコントラクト(契約の自動実行)という仕組みを備えたプラットフォームとしての機能を持っています。
  3. ステーブルコイン
    円やドルの価格に連動するように設計された、価格変動が少ないタイプです。
新屋賢人

暗号資産は価格の変動が激しく、投資としての側面が強い一方で、ハッキングやパスワードの紛失による資産の消失といったリスクも伴います。利用する際は、信頼できる交換業者を選び、セキュリティ対策を徹底することが重要です。

1.暗号資産の期末時価評価(法人基本)(おさらき)

法人が事業年度終了の時において有する暗号資産のうち、一定のものについては時価法により評価し、その評価額と帳簿価額との差額(評価損益)をその事業年度の益金の額又は損金の額に算入する必要があります

具体的な税務上の取り扱いは以下の通りです。

(1).期末時価評価の対象となる暗号資産

原則として、「活発な市場が存在する暗号資産(市場暗号資産)」が対象となります。ただし、以下の暗号資産は時価評価の対象から除かれます。

  • 特定自己発行暗号資産(法人が自ら発行し、継続して保有している暗号資産のうち、一定の移転制限等の措置がとられているもの)。
  • 特定譲渡制限付暗号資産(譲渡制限等の条件が付されている暗号資産)。ただし、自己発行ではない特定譲渡制限付暗号資産について、法人が評価方法として「時価法」を選定している場合は、期末時価評価の対象となります(法定の評価方法は原価法です)。

参照:国税庁 暗号資産の評価方法の見直し等

新屋賢人

(自己発行でない)特定譲渡制限付暗号資産は、時価法/原価法のいずれかを種類ごとに選定し、期限までに届出を行います。選定しない(届出がない)場合は原価法となり、期末時価評価の対象外となります。

(2).評価損益の税務処理

自己の計算において有する対象暗号資産の評価額と帳簿価額の差額(評価損益)は、当期の益金の額又は損金の額に算入します。また、計上した評価損益は、翌事業年度において洗替処理を行います。

(3).時価評価金額の計算方法

暗号資産の種類ごとに、以下のいずれかの価格に期末の保有数量を乗じて計算します。

  • 価格等公表者によって公表された、事業年度終了の日における最終の売買の価格
  • 事業年度終了の日における最終の交換比率 × その比率により交換される他の市場暗号資産の最終の売買価格。 (※事業年度終了の日に公表された価格や交換比率がない場合は、同日前の最も近い日の価格等を用います)。
新屋賢人

暗号資産における「交換比率(又は交換の比率)」とは、ある暗号資産を「他の暗号資産」と交換する際の比率のことを指します。
税務上、この「交換比率」は主に以下のような場面で用いられたり、考慮されたりします。
「売買価格等」の定義として
「売買価格等」という言葉は、日本円などの法定通貨との「売買の価格」だけでなく、この「他の暗号資産との交換の比率」も含むものとして定義されています。
法人の期末時価評価の計算に
法人が期末に暗号資産の時価評価を行う際、対象となる暗号資産の最終売買価格が直接用いられない場合などに、価格等公表者によって公表された期末の「最終の交換比率」に、その比率によって交換される他の暗号資産の最終売買価格を乗じて時価評価金額を計算することが定められています。
DEX(分散型取引所)における取引の基準として
中央管理者のいないDEXにおいては、自動マーケットメイカー(AMM)によって現時点における暗号資産同士の「交換比率」が明らかにされ、その明らかにされた交換比率に基づいて随時暗号資産の交換取引が行われます。

(4).「活発な市場が存在する」の判断基準

以下の要件を全て満たすものが「活発な市場が存在する暗号資産」に該当します。

  • 継続的に売買価格等(交換比率含む)が公表され、それが価格決定に重要な影響を与えていること。
  • 売買価格等が継続的に公表されるために十分な数量及び頻度で取引が行われていること。
  • 価格公表が法人以外の者によってされている、または、取引が主として法人の自己の計算によるものでないこと。 ※DEX(分散型取引所)で取引される暗号資産であっても、自動マーケットメイカー等により継続的に交換比率が公表され取引が成立していれば、活発な市場が存在するとみなされる場合があります。

2.DEXにおいて取引される暗号資産

DEX(分散型取引所)において取引される暗号資産に関する税務上(特に法人の期末時価評価)の取扱いは以下の通りです。

(1). DEXの「市場」としての位置づけ

DEXとは、一般に中央に管理者のいない分散型取引所のことをいいます。DEXでは、自動マーケットメイカーによって現時点における暗号資産の交換比率が明らかにされ、それに基づき随時暗号資産の交換取引が行われているため、税務上も「市場の範囲に含まれる」と考えられています。

(2). 期末時価評価の対象となるか(活発な市場が存在するか)

DEXで公表される交換比率が他の暗号資産取引所と著しく異なるといった特殊な事情がなく、継続的に暗号資産の交換取引が成立していれば、そこで取引される暗号資産は以下の要件を満たす限り、「活発な市場が存在する暗号資産」に該当します。

  • 継続的に売買価格等(交換比率など)が公表され、価格決定に重要な影響を与えていること。
  • 十分な数量及び頻度で取引が行われていること。
  • 価格等の公表がその法人以外の者によりされている、または取引が主としてその法人により自己の計算において行われた取引でないこと。
新屋賢人

この「活発な市場が存在する暗号資産」に該当し、かつ、自社が発行したものではなく(特定自己発行暗号資産に該当しない)、移転制限も付されていない(特定譲渡制限付暗号資産に該当しない)暗号資産であれば、期末時価評価の対象となります。

(3). 時価評価金額の計算方法

DEXで取引される暗号資産の期末の時価評価金額は、通常、以下の計算式で求められます。

【計算式】
DEXによって公表された事業年度終了の日における最終の交換比率 × その交換比率により交換される「他の活発な市場が存在する暗号資産」の最終の売買価格

新屋賢人

事業年度終了の日に公表された最終の交換比率がない場合は、同日前の最も近い日の最終の交換比率を用います。

3.ステーキングのためロックアップした暗号資産の期末時価評価

法人がステーキングによる報酬を得るために、暗号資産を他に移転できないような仕組み(ロックアップ)にしている場合であっても、原則として法人税法上の期末時価評価の対象となり、評価額と帳簿価額との差額(評価損益)をその事業年度の益金の額又は損金の額に算入する必要があります。

具体的な理由と税務上の取り扱いは以下の通りです。

(1). 「自己の計算において有する」ものとみなされる

ロックアップを行うと、所定の条件を満たしてロックアップが解除されるまでは、法人はその暗号資産を自由に譲渡できない状態になります。 しかし、ロックアップ期間中であってもステーキング報酬を得ることができる点や、将来的な価格変動リスク等をその法人が引き続き負っている点から、税務上は「自己の計算において暗号資産を有する」ものと考えられます。

(2). 期末時価評価の要件を満たすかどうかの判定

自己の計算において有するものとみなされた上で、その暗号資産が期末時価評価の対象となる要件(以下の全て)を満たす場合は、時価評価による損益計上が必要となります。

  • 暗号資産取引所に上場しているなど、十分な数量及び頻度で取引が行われ、継続的に売買価格等が公表されている「活発な市場が存在する暗号資産」であること。
  • 法人が自ら発行し、継続して保有している「特定自己発行暗号資産」に該当しないこと
  • 一定の公表手続きが行われた「特定譲渡制限付暗号資産」に該当しないこと
    (※これに該当する場合でも、法人が評価方法として「時価法」を選定している場合は時価評価の対象となります)。
新屋賢人

したがって、自社で発行したものではなく、法的な移転制限手続きも取られていない一般的な市場暗号資産をステーキングのためにロックアップしている場合、事業年度終了の時において時価法により評価し、評価損益を計上する必要があります。

4.貸付けをした暗号資産の期末時価評価

法人が使用料を得るために暗号資産を他者へ貸し付けている場合であっても、原則として法人税法上の期末時価評価の対象となり、その評価額と帳簿価額との差額(評価損益)をその事業年度の益金の額又は損金の額に算入する必要があります。

具体的な理由と税務上の取り扱いは以下の通りです。

(1). 「自己の計算において有する」ものとみなされる

貸付けを行っている期間中、法人はその暗号資産を自由に譲渡(売却)できない状態になります。しかし、貸付期間中に使用料を得ることができる点や、対象となる暗号資産の将来的な価格変動リスク等を法人が引き続き負っている点から、税務上は「自己の計算において暗号資産を有する」ものと考えられます。

(2). 期末時価評価の要件を満たすかどうかの判定

自己の計算において有するものとみなされた上で、その暗号資産が以下の要件のいずれかを満たす場合は、時価評価による損益計上が必要となります。

  • 暗号資産取引所に上場しているなど、十分な数量及び頻度で取引が行われ、継続的に売買価格等が公表されている「活発な市場が存在する暗号資産」であり、かつ、「特定自己発行暗号資産」や「特定譲渡制限付暗号資産」に該当しないもの
  • 活発な市場が存在する「特定譲渡制限付暗号資産(自己発行暗号資産を除く)」のうち、評価方法として時価法を選定しているもの。
新屋賢人

したがって、自社で発行したものではなく、法的な移転制限(特定譲渡制限付暗号資産)にも該当しない一般的な市場暗号資産を貸し付けている場合、事業年度終了の時において時価法により評価し、評価損益を計上する必要があります。

5.借入れをした暗号資産の期末時価評価

法人が借り入れた暗号資産の期末時価評価に関する税務上の取扱いは、原則として評価額と帳簿価額との差額(評価損益)を益金の額又は損金の額に算入する必要はありません

(1). 原則:評価損益の計上は不要

  • 「自己の計算において有する」とはいえない
    借り入れた暗号資産は将来返還を要するものであり、自社が将来的な価格変動リスクを負うものではありません。そのため、一般的には「自己の計算において暗号資産を有する」とはいえないと判断され、結果として期末の評価損益を益金の額や損金の額に算入する必要はないとされています。

(2). 例外:借り入れた暗号資産を売却した場合(暗号資産信用取引)

他の者から借り入れた暗号資産をそのまま保有したり、さらに他者へ貸し付けたりするのではなく、第三者に譲渡(売却)した場合は、「暗号資産信用取引(いわゆる空売り)」に該当します。

  • みなし決済損益の計上
    この売却を行った日の属する事業年度終了の時までに、買い戻し(決済)が完了していない場合、期末時点において買い戻して決済したものとみなして利益又は損失を計算する「みなし決済損益額」を算出し、その金額を当期の益金の額又は損金の額に算入する必要があります

6.まとめ

今回は、法人が保有する暗号資産の期末時価評価について解説しました。ポイントを整理すると以下のようになります。

  1. 原則は時価評価(時価法) 
    活発な市場が存在する暗号資産は、保有し続けているだけでも期末に時価評価を行い、評価損益を計上する必要があります。
  2. 「ロックされている=評価対象外」ではない 
    ステーキングやレンディングで一時的に動かせない状態であっても、価格変動リスクを自社が負っている限り、原則として時価評価の対象となります。「特定譲渡制限付暗号資産」として原価法が認められる要件は厳格である点に注意が必要です。
  3. DEXも市場とみなされる 
    DEX(分散型取引所)であっても、継続的に取引が行われていれば「活発な市場」とみなされ、時価評価が必要になります。
  4. 借入資産は対象外だが、空売りは注意 
    借り入れた暗号資産自体には評価損益は発生しませんが、それを売却(空売り)した場合は、期末にみなし決済損益の計上が必要です。
新屋賢人

暗号資産の税務は、毎年のように改正や解釈の明確化が行われており、非常に専門性が高い分野です。特に、DeFi取引や複雑な運用を行っている場合、自己判断で処理を行うと税務調査で否認されるリスクが高まります。
実際の申告にあたっては、必ず暗号資産税務に詳しい税理士等の専門家に相談し、最新の法令に基づいた処理を行うようにしてください。

参照:国税庁ホームページ 「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」

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この記事を書いた人

町田市にあるコムレイド税理士事務所の代表税理士の新屋賢人です。大学卒業後、中堅税理士法人で5年間、業界最大手である国際四大会計事務所(BIG4)のEY税理士法人で8年間、計13年間の実務経験があります。
30代ですが、すでに法人・個人問わず幅広い業務を経験しております。BIG4という業界最大手で得た経験・知識を生まれ育った街に還元したいという強い思いから独立を決めました。

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