【町田市の税理士が解説】暗号資産の税務上の注意点:④暗号資産の分類編(法人税関係)

ミミレイドン

ボス、おはようございます!
今朝のテーマは何でしょうか?

新屋賢人

今朝は暗号資産の第4弾として、法人が所有する暗号資産の分類について整理して行きたいと思います。

ミミレイドン

昨日の記事では、期末時価評価について整理しましたけど関係あるんですか?

新屋賢人

はい、昨日解説した通り、暗号資産を法人で持っていると、「売ってないのに税金が増える」ことがありますが、原因は、期末に“時価評価”して含み益まで所得に入るケースがあるからです。では、どんな暗号資産が時価評価の対象になり、どんな場合に例外(原価評価)になるのかを知りたくなったかと思います。
そこで、今朝は、実務でつまずきやすい4分類(活発な市場/特定自己発行/共同発行/特定譲渡制限付)を要点から整理していきたいと思います。一定の分類に該当することにより、時価評価が不要となります。

④暗号資産の分類編(法人税関係)

目次

0.暗号資産とは?(おさらい)

暗号資産(仮想通貨)とは、一言で言えば「インターネット上でやり取りできる、形のないデジタル資産」のことです。

以前は「仮想通貨」と呼ばれることが一般的でしたが、現在は国際的な基準に合わせて「暗号資産」という呼び方が公的な名称となっています。

暗号資産が日本円やドルのような「法定通貨」と大きく違う点は、主に以下の3つです。

  • 特定の管理者がいない(分散型)
    銀行のような中央組織が存在せず、世界中のコンピューターがネットワーク(ブロックチェーン)を通じて取引を監視・記録しています。
  • データの改ざんが非常に困難
    「暗号技術」を用いることで、取引データの偽造や二重洗いを防いでいます。
  • 世界中で24時間365日送金可能
    インターネットさえあれば、国境を越えて直接相手に送金でき、銀行の営業時間や高い仲介手数料を気にする必要がありません。

(1).法定通貨との違い

特徴法定通貨(円・ドルなど)暗号資産(ビットコインなど)
発行元中央銀行(日本銀行など)なし(プログラムによる自動発行)
形態紙幣・硬貨・デジタルデータデジタルデータのみ
価値の裏付け国家の信用需給バランスや技術への期待
価格変動比較的安定している非常に激しい

(2).代表的な暗号資産の例

2026年現在も、数千種類以上の暗号資産が存在しますが、特に有名なものは以下の通りです。

  1. ビットコイン (BTC)
    「デジタルゴールド」とも呼ばれる、世界で最初に誕生した最も有名な暗号資産です。
  2. イーサリアム (ETH)
    単なる決済だけでなく、スマートコントラクト(契約の自動実行)という仕組みを備えたプラットフォームとしての機能を持っています。
  3. ステーブルコイン
    円やドルの価格に連動するように設計された、価格変動が少ないタイプです。
新屋賢人

暗号資産は価格の変動が激しく、投資としての側面が強い一方で、ハッキングやパスワードの紛失による資産の消失といったリスクも伴います。利用する際は、信頼できる交換業者を選び、セキュリティ対策を徹底することが重要です。

1.活発な市場が存在する暗号資産

法人税法上、期末時価評価の対象となる「活発な市場が存在する暗号資産」とは、法人が有する暗号資産のうち、以下の3つの要件のすべてを満たすものをいいます。

(1). 売買価格等の継続的な公表とその影響

継続的に売買価格等(売買の価格や他の暗号資産との交換の比率)が公表されており、かつ、その公表される売買価格等が実際の売買価格や交換比率の決定に重要な影響を与えているものであること。

(2). 十分な数量と頻度による取引

継続的に上記の売買価格等が公表されるために、十分な数量および頻度で取引が行われていること。

(3). 価格公表者または取引主体に関する要件(価格操縦の排除)

次のいずれかに該当すること。

  • 売買価格等の公表が「その法人以外の者」によってされていること。
  • 十分な数量等で行われている取引が、主として「その法人により自己の計算において行われた取引ではないこと
新屋賢人

この要件は、価格の公表者が法人のみであり、かつ自己取引による価格形成である場合に、時価を自ら創出・操縦して利益調整を行うことを防ぐために設けられています。

【該当するかどうかの実態判断】

活発な市場が存在するかどうかは、暗号資産の種類、過去の取引実績、取引所や販売所の状況等を勘案し、個々の実態に応じて判断されます。 例えば、以下のようなケースでは、上記(1)や(2)の観点から通常「市場は活発ではない」と判断されます。

  • 合理的な範囲内で入手できる売買価格等が、取引所や販売所ごとに著しく異なっている場合。
  • 売手と買手の希望する価格差(スプレッド)が著しく大きい場合。

【例外に関する注意点】

活発な市場が存在する暗号資産であっても、以下の要件に該当するものは期末時価評価の対象から除かれます

  • 特定自己発行暗号資産
  • 特定譲渡制限付暗号資産で、自己発行暗号資産に該当するもの
  • 特定譲渡制限付暗号資産(自己発行暗号資産を除きます)で、その評価方法として時価法を選定していないもの
新屋賢人

特定自己発行暗号資産及び特定譲渡制限付暗号資産については、次章以降で整理していきます。

2.特定自己発行暗号資産

税務上、「特定自己発行暗号資産」とは、法人が自ら発行し、かつ発行の時から継続して保有している暗号資産(自己発行暗号資産)のうちその発行の時から継続して譲渡についての制限その他の条件が付されている一定のものをいいます。

具体的には、発行の時から継続して、以下の「1. 技術的措置に関する要件」または「2. 信託に関する要件」のいずれかに該当するものを指します。

(1). 他の者に移転できない技術的措置がとられていること

対象の暗号資産につき、他の者へ移転できないようにする技術的措置であって、以下のすべてを満たすものがとられている必要があります。

  • 移転できない期間が定められていること
  • その技術的措置が、発行法人等の関係者(役員、使用人、その親族など)のみでは解除できない仕組みになっていること。
新屋賢人

例えば、複数ある秘密鍵のうち一部を外部の第三者である顧問税理士などに一定期間預け、自社や関係者だけでは移転に必要な鍵が揃わないようにする保管委託契約を結んでいるケースなどがこれに該当し得ます。

(2). 所定の要件を満たす信託の信託財産とされていること

対象の暗号資産が、以下のすべてを満たす信託(受益者等課税信託に限ります)の信託財産とされている必要があります。

  • 信託の受託者が「信託会社のみ」であり、かつ、受益者等が「暗号資産を発行した法人のみ」であること。
  • 信託契約において、受託者が信託財産を第三者(受託者および受益者等以外の者)に譲渡しない旨が定められていること。
  • 信託契約において、暗号資産を発行した法人が、信託の受益権の譲渡や受益者等の変更を行えない旨が定められていること。

【特定自己発行暗号資産の税務上のメリット(期末時価評価の対象外)】

法人が有する暗号資産のうち「活発な市場が存在する暗号資産」は、原則として期末時に時価評価を行い、評価損益を計上する必要があります。しかし、この「特定自己発行暗号資産」に該当する場合は、例外として期末時価評価の対象から除外され、時価評価による損益計上をする必要がありません

新屋賢人

なお、定められた移転不可期間(保管期間)が満了した時点などで上記の要件を満たさなくなった場合には、その時点から特定自己発行暗号資産には該当しなくなりますので、ご注意ください。

3.複数の事業者が共同発行する暗号資産

複数の事業者が共同で事業を行う目的で、その事業に係る暗号資産を共同で発行する場合、税務上は以下のように取り扱われます。

(1). 「自ら発行した(自己発行)」ものと同視される

一般的に、共同事業者間で締結する契約や協定において、発行時に各事業者が割り当てられる暗号資産の数量があらかじめ定められています。このように発行時に契約・協定で定められた数量の割当てを受けることは、割当てを受けた各事業者において「自ら行う共同事業に係る暗号資産を発行した」ことと同視されます。

(2). 「特定自己発行暗号資産」への該当性

法人が契約や協定に従って発行と同時に割当てを受けた暗号資産のうち、「割当ての時から継続して保有」し、かつ、「割当ての時から継続して一定の譲渡制限(移転制限等の措置)が付されている」ものについては、税務上「特定自己発行暗号資産」に該当することになります。特定自己発行暗号資産に該当すると、法人の期末時価評価の対象から除外されます。

(3). 「一定の譲渡制限」等の具体的な要件

特定自己発行暗号資産に該当するための条件(一定の譲渡制限等)とは、発行(割当て)の時から継続して、以下の①または②のいずれかの要件を満たすものをいいます。

  • ① 他の者に移転できないような技術的措置がとられていること(以下の全てを満たすこと)
    • 移転することができない期間が定められていること。
    • その技術的措置が、発行法人(完全支配関係にある他の者を含む)の役員や使用人など、特定の関係者のみによっては解除できない仕組みになっていること。
  • ② 所定の要件を満たす信託財産とされていること(以下の全てを満たすこと)
    • 受託者が信託会社のみであり、かつ、受益者等がその暗号資産を発行した法人のみであること。
    • 信託契約において、受託者が信託財産(資産・負債)を受託者・受益者以外の者に譲渡しない旨が定められていること。
    • 信託契約において、発行法人によって受益権の譲渡や受益者等の変更ができない旨が定められていること。
新屋賢人

まとめると、複数の事業者が共同で発行した暗号資産であっても、発行と同時に割り当てられた分については自社で発行したものとして扱われ、厳格な移転制限等の条件を満たし続ければ「特定自己発行暗号資産」として期末の時価評価による損益計上が不要となります。

4.特定譲渡制限付暗号資産

税務上、「特定譲渡制限付暗号資産」とは、譲渡についての制限その他の条件が付されている暗号資産であって、その条件が付されていることにつき適切に公表されるための手続が行われている一定のものをいいます。

具体的には、以下の(1)と(2)の要件のいずれにも該当する暗号資産を指します。

(1). 特定条件が付されていること

その暗号資産につき、移転についての制限その他の条件(特定条件)が付されていることが求められます。 この特定条件とは、暗号資産交換業者に関する内閣府令に規定される「移転制限」のことであり、具体的な内容は一般社団法人日本暗号資産取引業協会の「移転制限が付された暗号資産の情報提供及び公表に関する規則」等に定められています。

(2). 公表のための一定の手続を行っていること

その法人が、対象の暗号資産につき、暗号資産交換業者が認定資金決済事業者協会(一般社団法人日本暗号資産取引業協会)を通じて特定条件(移転制限など)が付されていることを公表するための「一定の手続」を行っている必要があります。 この手続には、以下のいずれかが該当します。

  • 暗号資産交換業者に対して、移転制限を付すことを要請する。
  • 暗号資産交換業者に対して、移転制限が付された(又は付される予定である)旨を通知する。
  • 他の者に対して、その者が暗号資産交換業者へ通知を行うよう要請する。
新屋賢人

なお、事業年度末までに上記の手続を行っていれば、実際のウェブサイト等での公表が翌事業年度になったとしても、要件を満たしているとみなされます。

【税務上の取り扱い(期末時価評価)】

活発な市場が存在する暗号資産は原則として期末時価評価の対象となりますが、この「特定譲渡制限付暗号資産」に該当し、かつ「自己発行暗号資産」には該当しない(他社が発行した)暗号資産については、「時価法」と「原価法」のうち法人が選定した方法により評価します。

新屋賢人

評価方法を選定しなかった場合は自動的に「原価法」となるため、結果として期末時価評価の対象外(時価評価による損益計上が不要)となります。

5.まとめ

今回は、法人税法における暗号資産の期末時価評価が不要となる暗号資産の分類を整理しました。ポイントは以下のようになります。

  1. 原則(活発な市場あり)
    期末に時価評価を行い、含み益があれば課税対象となる。
  2. 例外①(特定自己発行暗号資産)
    自社で発行し、技術的措置や信託によってロックアップ(譲渡制限)がかかっているものは、取得原価で評価(課税なし)。
  3. 例外②(特定譲渡制限付暗号資産)
    他社発行のコインであっても、一定の手続きを経て譲渡制限が付されているものは、取得原価で評価可能(課税なし)。

かつては、法人が暗号資産を持つだけで多額の納税リスクにさらされていましたが、現在は「自ら発行したもの」や「譲渡制限が付されたもの」については、実態に即して課税が繰り延べられる仕組みが整っています。

ただし、これらの例外規定を適用するためには、技術的なロックアップ措置の証明や、暗号資産交換業者を通じた公表手続きなど、厳格な要件を満たす必要があります。「要件を満たしているつもりだったが、税務調査で否認された」という事態を避けるためにも、判断に迷う場合は必ず暗号資産税務に詳しい税理士へ相談し、事前の契約内容や公表状況を精査することをお勧めします。

参照:国税庁ホームページ 「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」

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この記事を書いた人

町田市にあるコムレイド税理士事務所の代表税理士の新屋賢人です。大学卒業後、中堅税理士法人で5年間、業界最大手である国際四大会計事務所(BIG4)のEY税理士法人で8年間、計13年間の実務経験があります。
30代ですが、すでに法人・個人問わず幅広い業務を経験しております。BIG4という業界最大手で得た経験・知識を生まれ育った街に還元したいという強い思いから独立を決めました。

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