ミミレイドンボス、おはようございます!
今朝のテーマは何でしょうか?



今朝は確定申告に向けた業種別事業所得の計算の注意点第九弾としまして、美容師・理容師の確定申告について整理して行きたいと思います。



ボスがお世話になっている美容師さんも個人事業主ですもんね!



「フリーランスになったけれど、確定申告って何から始めればいいの?」「ハサミや衣装代はどこまで経費にしていいの?」 そんな不安を抱える美容師・理容師さんは少なくありません。特に10万円以上のシザーの扱いや、シェアサロンの利用料、自宅兼店舗の家賃按分など、理美容業界ならではのルールは少し複雑に感じますよね。 しかし、コツさえ掴めば確定申告は決して怖いものではありません。多忙なサロンワークの合間でも効率よく準備を進め、「しないと損」な節税メリットを最大限に引き出すためのポイントを、分かりやすく解説します。
【美容師・理容師編】
1.事業所得とは?(おさらい)
事業所得とは、農業、製造業、卸売業、小売業、サービス業などの事業から生じる所得を指します。これには、医師、弁護士、作家、俳優といった自由職業や、美容師・理容師などが事業として行う業務から生じる所得も含まれます。
事業所得の計算方法や概要について、解説します。



事業所得については、こちらの記事で解説しておりますので、宜しければご覧ください。
【町田市の税理士が解説】個人の事業所得の基礎知識について
(1). 事業所得の計算方法
事業所得の金額は、基本的に以下の計算式で算出されます。
所得金額 = 総収入金額 - 必要経費
- 総収入金額
理美容業務などで得た全ての収入を指します。 - 必要経費
収入を得るために直接要した費用のことです。
(2).確定申告の種類と書類
事業所得を申告する方法には「青色申告」と「白色申告」の2種類があります。
青色申告
- 複式簿記による詳細な帳簿付けが必要です。
- 最大65万円の特別控除、赤字の3年間繰り越し、家族への給与(専従者給与)の全額経費算入(一定の要件あり)などの大きな節税メリットがあります。
- 提出書類として「青色申告決算書」が必要です。
白色申告
- 簡易的な帳簿(単式簿記)で済みますが、青色申告のような特別控除はありません。
- 提出書類として「収支内訳書」が必要です。
(3). 関連するその他の税金
事業所得が発生すると、所得税以外にも以下の税金が関わってくる場合があります。
- 個人事業税
事業所得が290万円を超える場合に課される都道府県税で、美容業などの場合は一般的に税率は5%です。 - 償却資産税
店舗で使用する椅子や洗面設備などの事業用資産に対して課される固定資産税の一種です。 - 消費税
前々年の課税売上高が1,000万円を超えた場合などに納税義務が生じます。



正確な申告のためには、日々の取引を「発生主義(取引が生じた時点で記録する原則)」に基づき、会計ソフトなどを活用して正しく記録しておくことが推奨されています。
2.美容師・理容師の収入
美容師や理容師(特に個人事業主やフリーランス)の収入は、主に理美容業務によって得られた全ての収入を指し、会計上は「総収入金額」として計上されます。
具体的にどのようなものが収入(売上)に該当するのか、詳しく解説します。
(1).メインとなる業務収入
店舗やシェアサロンなどで提供する施術サービスの対価が主たる収入となります。
- カット、カラー、パーマなどの施術料
理美容業務のサービス提供によって得た代金です。 - 店販(商品販売)の売上
シャンプー、トリートメント、スタイリング剤などのヘアケア商品を顧客に販売して得た代金です。
(2).外部活動や付随する収入
サロンワーク以外でも、その技術や知識を活かして得た以下のような報酬も収入に含まれます。
- 原稿料・印税
雑誌やWebメディアでの執筆活動による報酬。 - 講演料・講師謝金
セミナーでの講師活動や技術指導で得た報酬。 - 出演料
テレビや動画メディアなどへの出演、イベントへの登壇による報酬。 - インターネットによる収入
SNSや動画配信などを通じて得た収益。
(3).収入を計上するタイミング(発生主義)
事業所得の計算においては、「発生主義」という原則に基づき、現金の受け取りの有無にかかわらず「サービスを提供した時点」で収入を認識します。



例えば、12月にカットのサービスを提供し、その代金をキャッシュレス決済などで翌月1月に受け取る場合でも、「12月の売上」として計上する必要があります。この際、未回収の代金は「売掛金」という資産として帳簿に記録します。
(4).確定申告における扱い
これらの収入から、ハサミ(シザー)代や材料費などの必要経費を差し引いたものが「所得金額」となります。
- 源泉徴収について
フリーランスとして報酬を受け取る際、あらかじめ所得税が天引き(源泉徴収)されている場合があります。美容師・理容師への報酬で、源泉徴収が行われるケースは限られておりますが、源泉徴収がされている場合、確定申告で正しく経費を申告することで、天引きされすぎていた税金が戻ってくる(還付される)可能性もあります。源泉徴収の対象となるケースとしては、映画、演劇、演芸、歌唱、舞踊、またはテレビジョン放送の「製作」や「演出」に関連してヘアメイク(美粧)を行う場合や、技術セミナーの講師を務めたり、講習会で指導を行ったりして報酬を受け取る場合、その報酬は源泉徴収の対象となる可能性があります。 - 書類への記載
白色申告の場合は「収支内訳書」に、青色申告の場合は「青色申告決算書」に、これら全ての収入を記入して報告します。
美容師・理容師として不特定多数の顧客を相手にする場合、帳簿に取引相手の氏名を記載することは省略可能とされていますが、取引年月日・内容・金額は正確に記録しておく必要があります。
3.美容師・理容師の売上原価と棚卸
美容師・理容師の事業所得を計算する際、売上原価(仕入)と棚卸の処理は、正しい所得金額を算出するために非常に重要なプロセスです。
会計・税務上の処理方法や実務上のポイントを詳しく説明します。
(1).売上原価と仕入の基本的な考え方
理美容業における「売上原価」とは、その年の売上をあげるために直接消費した材料費や商品の仕入代金を指します。
- 対象となる主な項目
シャンプー、カラー剤、パーマ液、スタイリング剤などの消耗品や、店販用(顧客への販売用)の商品などが該当します。 - 勘定科目の選択
美容材料(カラー剤等)については、実務上は「消耗品費」として処理されることも多いですが、顧客に販売する商品の仕入などは「仕入」や「売上原価」の項目で管理します。



美容材料(カラー剤等)を「消耗品費」処理する実務もありますが、在庫が多い業態は棚卸が必要になるため、「重要性があるなら棚卸資産として管理」など一言補うと税務調査耐性が上がります。
(2).棚卸(たなおろし)と売上原価の計算
税務上、その年に購入した材料や商品の代金すべてがそのまま経費(売上原価)になるわけではありません。「その年に実際に使用・販売した分」のみが経費となります。そのため、年末に在庫を確認する「棚卸」が必要になります。
売上原価の計算式は以下の通りとなります。
売上原価 = 期首商品棚卸高(年初の在庫) + 当期商品仕入高(今年の仕入額) - 期末商品棚卸高(年末の在庫)
- 期末棚卸の重要性
年末(12月31日)時点で残っているカラー剤やシャンプーの在庫金額を算出し、それを全体の仕入額から差し引くことで、正しく「今年使った分」の経費を算出します。 - 書類への記載
白色申告の「収支内訳書」や青色申告の「青色申告決算書」には、この売上原価を記入する専用の欄があります。
(3).会計・税務処理のポイント
① 発生主義による記録
仕入(購入)の記録は、現金を支払ったときではなく、材料が届いたり取引が発生したりした時点で帳簿に付けます(発生主義)。



例えば、12月にカラー剤を注文・受領し、支払いが翌年1月になる場合でも、「12月の仕入」として計上し、相手科目を「買掛金」や「未払金」として処理します。
② 10万円以上の器具備品の扱い
ハサミ(シザー)や美容機器などで1つあたりの取得価額が10万円以上のものは、仕入や消耗品費として一括で経費にできず、減価償却資産として数年間に分けて計上する必要があります。これらは棚卸資産(売上原価)とは区別して管理します。



なお、1つあたり30万円未満の場合には、少額減価償却資産の特例が適用できる可能性があります。詳しくは、次章で解説します。
③ インボイス制度への対応
消費税の納税義務がある場合には、仕入先がインボイス発行事業者かどうかによって、消費税の計算(仕入税額控除)に影響が出ます。仕入の際に受け取る請求書や納品書がインボイスの要件を満たしているか確認し、適切に区分して記帳することが求められます。
(4).実務上のポイントと効率化
- 定期的な在庫管理
年末に慌てて棚卸をするのではなく、日頃から店販品や使用頻度の高い薬剤の在庫数を把握しておくことで、確定申告時の負担を軽減できます。 - 証拠書類の保管
仕入の際の領収書、納品書、年末の棚卸表(在庫一覧)は、税務調査の際の根拠書類となるため、適切に保管しておく必要があります。



正確な棚卸を行うことは、単に税務署への報告だけでなく、自分の店の利益(粗利)を正確に把握するという経営判断の面でも非常に重要です。
4.美容師・理容師の経費
美容師・理容師の経費とは、理美容業務のサービスを提供し、売上を得るために直接必要となった費用を指します。
具体的にどのようなものが経費になるのか、勘定科目の例と併せて詳しく解説します。
(1).主な経費の項目と勘定科目
理美容業務の実務で発生する主な経費は以下の通りです。
- 売上原価・消耗品費
シャンプー、カラー剤、パーマ液、スタイリング剤などの材料費。また、タオルや手袋、コットンなどの消耗品も含まれます。 - 器具備品(消耗品費等)
ハサミ(シザー)、バリカン、ドライヤー、アイロンなどの道具類。※高額なものは「減価償却」の対象となります。 - 地代家賃
店舗の家賃。シェアサロンの月額利用料も、契約書や振込履歴があれば経費として認められます。 - 水道光熱費
店舗で使用する電気・水道・ガス代。 - 広告宣伝費
美容予約サイトの利用料、自身のホームページ維持費、チラシの印刷代やSNS広告費。 - 給与手当
スタッフに支払う給料。青色申告の場合は、一定の要件を満たせば家族に支払う給与(専従者給与)も全額経費にできます。 - 会議費・接待交際費
取引先との打ち合わせ費用(会議費)や、取引先への贈答品、接待の飲食代(接待交際費)。 - 通信費
仕事用の携帯電話代や店舗のインターネット回線費用。 - 車両費
業務で車を使用する場合のガソリン代や駐車場代など。
(2).高額な資産の扱い(減価償却費)
10万円以上の美容機器(セット椅子、洗面設備、パーマ器など)を購入した場合は、一括で経費にせず、その資産の耐用年数(一般的に5年)にわたって分割して費用計上します。この仕組みを『減価償却』と呼びます。



耐用年数は資産の種類で異なりますので、必ず耐用年数表を確認しましょう!
参照:主な減価償却資産の耐用年数表
参照:減価償却資産の耐用年数表



通常、10万円以上の高額な備品は数年間に分けて経費にする「減価償却」が必要ですが、実は「少額減価償却資産の特例」を使えば、購入した年にまとめてドカンと経費にできる可能性があります。
1. 「少額減価償却資産の特例」とは?
通常、10万円以上の仕事道具(ハサミや椅子など)は「固定資産」となり、法定耐用年数(美容機器やハサミは原則5年)に応じて数年かけて経費化しなければなりません。しかし、この特例を活用すれば、1個(または1組)あたりの取得価額が30万円未満の資産について、購入・使用を開始した年度に一括で全額経費に計上することが可能です。



ちなみに、令和8年度税制改正大綱において、令和8年4月からは、1個あたり40万円未満であれば、一括で経費にできるようになるといわれております。
2. 特例を受けるための必須条件
この強力な節税メリットを受けるには、以下の条件をクリアする必要があります。
- 「青色申告者」であること
この特例は、青色申告を行っている個人事業主や中小企業者にのみ認められた特典です。 - 1個(1組)30万円未満
税込経理なら税込、税抜経理なら税抜の金額で判定します。 - 年間合計300万円まで
1年間の合計額が300万円を超える場合は、超えた分については通常の減価償却が必要です。
3. 美容室・理容室での具体的な活用例
美容業では、以下のような備品がこの特例の対象になりやすいです。
- 高価なハサミ(シザー)
- スタイリングチェア(セット椅子)やシャンプー台
- デジタルパーマ機器やスチーマー、タオルウォーマー
- 売上管理用のパソコン



例えば、27万円のセット椅子を6台導入した場合、合計162万円を初年度にまとめて経費にできるため、利益が出ている年の節税対策として非常に効果的です。
4. 確定申告時のポイント
この特例を適用する場合は、確定申告の際に「青色申告決算書」の「減価償却費の計算」欄に資産の詳細を記入します。 その際、摘要欄に「措法28の2」(租税特別措置法第28条の2の略)と記載し、特例を適用する旨を明らかにすることが実務上のルールとなっています。



「少額減価償却資産の特例」は、本気で手元に残るお金を増やしたい美容師にとって最強の武器の一つです。 白色申告ではこの「30万円」の壁は使えず、原則10万円以上のものは分割して経費にするしかありません。
これから大きな買い物を予定している方は、まず「青色申告」の承認を受けているかを確認し、賢く一括経費を活用して、サロン経営のキャッシュフローを安定させましょう!
参照:国税庁タックスアンサー No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例
(3).自宅兼店舗の場合の「家事按分」
自宅の一部を店舗や事務所として使用している場合、家賃や電気代、インターネット代などの生活費と事業費が混在します。この場合、面積や使用時間などの明確な根拠に基づき、事業で使用している割合分のみを経費にする「家事按分」が可能です。



家事按分については、こちらの記事で解説しておりますので、宜しければご覧ください。
【町田市の税理士が解説】個人事業主(フリーランス)の経費の家事按分について
(4).経費にできないNG例と注意点
業務に関係があると思われがちですが、一般的に経費として認められにくいものもあります。
- 洋服代
プライベートでも着用できる服は経費になりません。ただし、店舗ロゴ入りの制服や、業務専用の作業着であれば認められる可能性があります。 - プライベートの飲食費・美容代
家族との外食や、自身の(業務外の)美容室代、家族へのプレゼントなどは経費になりません。 - 過剰な計上
実態のない家族への給与や、業務に関係のない高額な備品などは、税務調査で指摘されるリスクがあります。
(5).正しい経費計上のためのポイント
- 領収書・レシートの保管
支出の事実を証明するために不可欠です。紛失しないようスマホ撮影で電子保存するなどの工夫が有効です。 - 発生主義による記録
現金の支払い時ではなく、「取引が発生した時点」で帳簿に記録するのが原則です。



迷ったときは「これは売上に関係している支出か?」を基準に判断し、客観的な説明ができるようにしておくことが大切です。
5.確定申告の際の美容師・理容師ならではの注意点
美容師・理容師が確定申告を行う際、一般的な事業所得者と共通する部分が多いものの、理美容業界特有の資産(ハサミやセット椅子など)の扱いや、店舗形態(シェアサロン等)に応じた注意点があります。
既に解説した論点もありますが、美容師・理容師ならではの注意点と、提出・準備すべき書類についてまとめて解説します。
(1).美容師・理容師ならではの提出・準備書類
確定申告書以外に、理美容業務に関連して必要となる主な書類は以下の通りです。
- 青色申告決算書または収支内訳書
青色申告の場合は「青色申告決算書」、白色申告の場合は「収支内訳書」を提出します。これらには、理美容業務で得た全ての収入と、材料費や光熱費などの経費を記載します。 - 課税取引金額計算表(事業所得用)
消費税の申告が必要な場合、インボイス制度の下では、仕入れや経費を「インボイス発行事業者からのもの」と「それ以外」に区分して記載するこの計算表が活用されます。 - カルテ・売上台帳・領収書
これらは提出義務はありませんが、税務調査の際に見落とされがちな重要な証拠書類です。特に美容師の場合、過去7年分程度のカルテ(顧客記録)や売上台帳は、申告内容が正しいことを証明するために保管しておく必要があります。 - 償却資産申告書(市区町村へ提出)
確定申告とは別に、店舗にあるセット椅子、洗面設備、パーマ器、サインポールなどの事業用資産については、毎年1月31日までに市区町村へ申告する必要があります。 - 契約書・振込履歴(シェアサロン利用時)
シェアサロンを利用しているフリーランスの場合、その利用料を経費として証明するために、契約書や振込の記録をしっかり残しておくことが求められます。



償却資産については、こちらの記事で解説しておりますので、宜しければご覧ください。
【町田市の税理士が解説】償却資産の申告とは?対象資産・手続き・注意点を徹底解説
(2).美容師・理容師が特に注意すべきポイント
① 収益認識は「発生主義」で
現金の受け取りに関わらず、サービスを提供した時点で売上を計上します。
② 道具や設備の「10万円」の壁(減価償却)
ハサミ(シザー)、バリカン、ドライヤー、あるいは店舗の什器などで1個あたりの取得価額が10万円以上のものは、一括で経費にできず、原則として5年(耐用年数)にかけて分割して計上(減価償却)する必要があります。
③ 衣装代(洋服代)の判断
美容師の衣装代は、税務上の判断が分かれやすく、一般的には経費算入が難しいとされています。ただし、店舗のロゴが入った制服や、明らかに業務専用の作業着であれば経費として認められます。
④ 源泉徴収税額の確認と還付
フリーランスとして報酬を受け取っている場合、あらかじめ所得税が天引き(源泉徴収)されていることがあります。確定申告の際、この源泉徴収された金額を正しく申告書に反映させることで、払いすぎた税金が戻ってくる(還付される)ケースが多くあります。
⑤ インボイス制度への対応
自身の売上が1,000万円以下であっても、取引先の美容室からインボイスの発行を求められる場合があります。インボイス発行事業者(課税事業者)になるかどうかは、事務負担の増加や消費税の納税義務を考慮して判断する必要があります。



インボイス制度については、こちらの記事で解説しておりますので、宜しければご覧ください。
【町田市の税理士が解説】インボイス制度(適格請求書等保存方式)の基礎(Day1)
(3).税務調査への備え
美容師・理容師は不特定多数の顧客を相手にするため、帳簿への取引相手の氏名記載は省略可能ですが、取引年月日・内容・金額は正確に記録しなければなりません。税務調査官は、カルテなどの現場資料と帳簿の整合性をチェックすることがあるため、日々の正確な記録が最大の対策となります。



不明な点やグレーゾーン(私用の飲食費や家族の美容代を経費にするなど)の判断については、税理士に相談することが推奨されています。
6.美容師・理容師が税務調査で指摘されるポイント
美容師・理容師が税務調査において特に指摘されやすいポイントは、売上の計上漏れ、プライベート費用の経費算入、そして家族への給与や家事按分の妥当性など多岐にわたります。
前章と内容は重複いたしますが、想定される税務調査での指摘ポイントを改めて整理していきましょう。
(1).売上(収入)に関する指摘ポイント
- 「発生主義」による計上の徹底
現金の受け取りに関わらず、サービスを提供した時点で売上を計上する必要があります。例えば、12月末の施術代金が年明けに振り込まれる場合、それを翌年の売上にしてしまうと「売上の過少申告(期ズレ)」として指摘されます。 - 付随収入の申告漏れ
店販(シャンプー等の販売)だけでなく、雑誌の原稿料、セミナー講師の謝礼、SNSや動画配信による広告収入などもすべて事業所得の収入に含める必要があります。 - カルテ等との整合性
税務調査では、過去3年分程度の売上台帳や顧客カルテの提示を求められます。カルテの件数や内容に対して、帳簿上の売上が不自然に少ない場合は、売上除外を疑われる要因となります。



税務調査で遡及される期間は通常3年ですが、青色申告者の帳簿書類の保存義務期間は原則「7年間」となりますので、売上台帳や顧客カルテも可能な限り7年間保管しましょう。
(2). 経費に関する指摘ポイント(公私混同のチェック)
- 衣装代(洋服代)
美容師の衣装代は「業務に直接必要」とは認められにくい傾向にあり、プライベートでも着用できる服を経費にしていると指摘されます。店舗ロゴ入り制服など、業務専用であることが明確でない限り、否認されるリスクが高いです。 - 私用の飲食費・美容代
家族との外食やプライベートなプレゼント、自身の(他店での)美容代などを経費に含めることは認められません。これらが「会議費」や「接待交際費」として過剰に計上されていると、厳しくチェックされます。 - 家事按分の根拠
自宅兼店舗の場合、家賃や光熱費を按分(分割)して経費にできますが、その「計算根拠」が問われます。面積や使用時間などの合理的な基準がなく、過度な金額を計上していると、客観的な証拠(図面や写真など)がない限り否認される可能性があります。
(3).家族への給与と資産の扱い
- 専従者給与の妥当性
青色申告で家族へ支払う給与は全額経費にできますが、仕事の内容に対して給与額が高すぎる場合は指摘の対象です。近隣の求人情報や同業種の給与水準と比較して不自然でないことが求められます。 - 減価償却のルール無視
10万円以上のシザー(ハサミ)や美容機器を一括で経費にせず、正しく減価償却(原則5年で分割)しているかが見られます。年度末に節税目的で高額備品をまとめ買いし、一括で計上してしまうのは誤りです。



青色事業専従者給与については、こちらの記事で解説しておりますので、宜しければご覧ください。
【町田市の税理士が解説】家族に給与を出すなら必見!青色事業専従者給与の基礎知識について
(4).事務管理・証拠書類
- 領収書や帳簿の不備
領収書やレシートが曖昧、または紛失している場合、経費として認められません。また、青色申告で最大65万円の控除を受けるには、正確な複式簿記による帳簿付けと、補助簿(売掛帳・固定資産台帳など)の整備が必須であり、これができていないと控除を取り消される恐れがあります。 - インボイス制度への対応
仕入れや経費の支払先がインボイス発行事業者かどうかで消費税の控除額が変わるため、区分経理が正しく行われているかもチェックのポイントになります。



税務調査では、調査官が不自然な受け答えや態度をチェックすることもあります。日頃から会計ソフトなどを活用して「発生主義」に基づいた正確な記帳を行い、領収書やカルテなどの根拠資料を整理保管しておくことが、最大の対策となります。
7.まとめ
今回の記事では、美容師・理容師が確定申告で押さえるべきポイントを詳しく解説してきました。
確定申告は単なる納税の義務ではなく、自身の事業を客観的に把握し、本気で収入を増やしたい美容師にとって不可欠なステップです。最後に、特に重要な3つのポイントを振り返りましょう。
- 「青色申告」を賢く活用して大幅な節税を
フリーランスとしてステップアップを目指すなら、最大65万円の特別控除や、赤字を3年間繰り越せるメリットがある「青色申告」が圧倒的におすすめです。家族への給与を全額経費にできるなど、白色申告にはない強力な節税効果が得られます。 - 「発生主義」と「会計ソフト」で日々の業務を効率化
正確な申告のためには、現金の動きに関わらず取引が発生した時点で記録する「発生主義」の原則を守ることが重要です。帳簿付けに不安がある方は、銀行口座やカードと連携できるクラウド会計ソフトを導入しましょう。手作業のミスが減り、年末の準備が格段に楽になるだけでなく、経営状況の可視化にもつながります。 - 「正確な記録」があなたの信用を守る
領収書の保管や、ハサミ・設備などの10万円以上の資産に対する減価償却を正しく行うことは、将来の税務調査への備えとなります。また、正しく申告を継続することは、将来的に店舗を構える際の融資や社会的信用にも大きく関わってきます。



確定申告の期限は原則として2月16日から3月15日までです。期限ギリギリになって慌てないよう、日々の記帳精度を高め、余裕を持って準備を進めましょう。
もし「この支出は経費になるかな?」と迷ったときは、「これは売上に関係している支出か?」を自分に問いかけてみてください。一つひとつの記録が、あなたの事業を守る強い味方になるはずです。
税理士をお探しの方は、お気軽にこちらまでお問い合わせください。










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