【町田市の税理士が解説】法人契約の保険に関する税務論点:Part1導入

ミミレイドン

ボス、おはようございます!
今朝のテーマは何でしょうか?

新屋賢人

今朝は法人が契約する保険について税務に関する論点の概要を見ていきたいと思います。

ミミレイドン

また保険に関する論点なのですね。昨日まではどちらかというと個人に対する税金の話でしたが今回は法人向けのですね。

新屋賢人

2019年(令和元年)の通達改正を境に、かつてのように「保険料=経費」と単純には言えなくなり、契約日や返戻率、受取人の組み合わせ次第で、損金・資産・給与認定まで結論が変わるようになりました。
しかも厄介なのは、同じ会社の中でも“旧ルールと新ルールが混在”し得ること。いま手元にある保険が、どの扱いに該当し、どんなリスクを抱えているのか、設計書を見ても判断がつきにくいのが実務の本音です。
この記事では、法人保険で特にトラブルになりやすい「入口(損金)」「出口(解約・保険金)」「給与認定」の勘所を、“何を見れば迷わないか”に絞って整理します。

目次

0. 法人保険の前提(注意点)

本記事で提供する情報は、法人契約の保険に関する一般的な税務上の取り扱いを解説したものです。法人保険の経理処理は非常に複雑であり、個別契約の約款や保険設計書(解約返戻率の推移、保険期間、保険料の払込期間、受取人の設定など)の具体的な内容によって、最終的な税務上の結論や損金算入割合は大きく変わります。

特に、実際の最高解約返戻率は契約ごとに異なるため、思い込みで処理をせず、必ずお手元の設計書や保険会社から提供される税務計算表を確認することが重要です。具体的な経理処理については、顧問税理士へご相談の上、最終的な判断を行ってください。

(1). 2019年(令和元年)通達改正による取扱いの整理

法人保険の損金算入ルールは、2019年(令和元年)6月28日付の国税庁通達改正によって大幅に見直され、現在の手法へと整理されました。

この改正以前は、高い解約返戻率を持ちながら保険料の全額を損金算入できるような「節税保険」が広く販売されていました。しかし、保険本来の目的を逸脱した過度な節税対策を是正するため、国税庁は「解約返戻率の高さ = 保険料の前払い」という考え方を導入しました。

現在では、契約期間中の「最高解約返戻率」の区分に応じて、支払保険料の一定額を資産に計上し、所定の期間経過後に取り崩して損金に算入するルールになっています。

(2). 契約日による「新旧ルール」の混在に注意

改正後の新ルールは、以下の基準日以後に新規加入した保険契約に対して適用されます。

  • 法人向け定期保険・養老保険等・一定の第三分野の保険
    2019年(令和元年)7月8日以後の契約
  • 解約返戻金相当額のない短期払の定期保険一定の第三分野の保険(終身保障の医療保険・がん保険等)
    2019年(令和元年)10月8日以後の契約

参照:国税庁 定期保険及び第三分野保険に係る保険料の取扱いに関するFAQ

【旧ルールが残る可能性について】

上記の基準日より前に契約済みの法人保険については、原則として改正前の旧ルール(旧法基通や当時の個別通達)が引き続き適用されます。そのため、多くの法人では、契約時期によって異なる複数の計算ルールが混在する状況となっており、契約ごとに管理していく必要があります。

ただし、旧契約であっても、改正適用日以後に「転換」「払済変更」「契約の更新」「給付のある特約の付加」などを行った場合には、新たな契約とみなされて改正後の新ルールが適用される可能性があるため注意が必要です。

(3). 個別契約の「設計」が結論を左右する

新ルール下では、以下の要素が損金算入の可否や割合を決定づける鍵となります。

  • 最高解約返戻率の区分
    50%以下、50%超70%以下、70%超85%以下、85%超という4つの区分により、資産計上の割合や期間が機械的に決まります。
  • 30万円特例の有無
    1被保険者あたりの年換算保険料が30万円以下で、一定の条件を満たす場合は、例外的に全額損金算入が認められることがあります。
  • 受取人の設定
    死亡保険金や満期保険金の受取人が法人か、あるいは役員・従業員の遺族かによって、経理処理が「資産計上」「福利厚生費」「給与」と分かれます。

このように、「いつ、どのような条件で契約したか」によって税務上の結論が千差万別であるからこそ、自社の契約内容を正しく棚卸しすることが不可欠です。

1. なぜ法人保険は「税務論点が多い」のか?実務で押さえるべき3つの核心

法人経営において生命保険の加入を検討する際、真っ先に「節税」という言葉を連想される経営者の方も多いでしょう。しかし、現在の法人保険の実務において、保険は単なる「節税ツール」ではなく、高度な判断を要する「税務リスクの塊」であると認識する必要があります。

法人保険の取り扱いは、2019年(令和元年)の通達改正を経て、それまでの「全額損金」といった単純な手法が通用しなくなりました。現在、実務上で税務トラブルが起きやすいポイントは、大きく分けて「入口」「出口」「給与認定」の3点に集約されます。

(1). 【入口】損金算入の可否と割合(複雑な資産計上ルール)

保険料を支払う際の経理処理は、現在もっともミスが起きやすいポイントです。 かつての法人保険は商品ごとに損金割合が決まっていましたが、現在は、定期保険・第三分野保険について、原則は期間の経過に応じて損金算入しつつ、支払保険料に相当多額の前払部分が含まれる一定の契約については、最高解約返戻率の区分等に応じて一定額を資産計上し、所定の期間経過後に取り崩して損金算入する取扱いが定められています。

  • 最高解約返戻率による区分
    返戻率が50%超、70%超、85%超という区分に応じて、支払保険料の4割、6割、あるいはそれ以上の金額を「前払保険料(資産)」として計上しなければなりません。
  • 30万円特例の判定
    1被保険者あたりの年換算保険料が30万円以下であれば全額損金が認められる例外もありますが、複数の契約を合算して判定する必要があり、管理が極めて煩雑です。

この「入口」の判定を誤ると、決算での損金算入が否認される大きな要因となります。

参照:国税庁タックスアンサー No.5364 定期保険及び第三分野保険の保険料(保険料に相当多額の前払部分の保険料が含まれない場合)の取扱い(令和元年7月8日以後契約分)

(2). 【出口】保険金・解約返戻金の益金計上(課税の繰延べリスク)

法人保険の節税効果の正体は、あくまでも「課税の繰延べ(税金の先送り)」です。将来、保険を解約して返戻金を受け取ったり、保険金が支払われたりした際、その受取額は法人の「益金(雑収入など)」として全額、または資産計上額との差額が課税対象となります。

  • 出口戦略の欠如
    解約益が発生する年度に、役員退職金の支払いや設備投資などの大きな損金(費用)をぶつけて相殺しなければ、それまで繰り延べてきた税金を一度に支払うことになり、資金繰りを圧迫します。
  • ピーク時期の管理
    解約返戻率にはピークがあり、その時期を逃すと返戻金が目減りしてしまうため、税務と経営計画を月単位で合わせる高度な出口設計が求められます。

(3). 【役員給与認定リスク】名義変更と受取人設定の罠

最後に、もっとも税務当局から注視され、重加算税などのペナルティにも繋がりかねないのが「役員給与認定」のリスクです。

  • 受取人設定の誤り
    保険金の受取人を役員個人やその遺族に設定している一定の保険の場合、法人が負担した保険料は「福利厚生費」ではなく役員への「給与」とみなされ、法人側での損金算入が制限されるだけでなく、個人側でも所得税が課税される可能性があります。
  • 名義変更(70%ルール)
    2021年の改正以降、法人から役員へ保険契約を名義変更する際の評価基準が厳格化されました。解約返戻金が資産計上額の70%未満である低返戻期間に安値で個人へ移転させる手法は、現在では原則として「資産計上額」で評価し直され、多額の給与課税を受けるリスクがあります。
新屋賢人

法人保険は、正しく活用すれば事業保障や退職金準備の強力な武器になりますが、一歩間違えれば税務調査での否認リスクを招く両刃の剣です。 「入口」での厳格な区分判定、「出口」での損益相殺の段取り、そして個人への利益供与とみなされないための「給与認定リスク」の回避。これら3点の全体像を把握し、顧問税理士等の専門家と連携しながら運用していくことが不可欠です。

2. 結論:法人保険の税務判断は「3つの軸」で決まる

法人が契約する生命保険の税務判断において、多くの経営者や財務担当者を悩ませるのは「いつ、どれだけの金額が損金になるのか」という点です。結論から申し上げますと、現在の法人保険の税務は、以下の「3つの軸」で整理すると、必要な確認ポイントが明確になり、通達の区分に沿って税務上の処理(損金・資産・給与の可能性)を判断しやすくなります。

この全体像を把握することで、個別契約の設計書をどのように読み解けばよいのか、迷いが消えるはずです。

(1). 税務判断の軸①:保険の種類

まず、契約する保険が税務上どのカテゴリーに属するかを特定します。

  • 養老保険
    死亡時だけでなく、満期時にも保険金が支払われる「生老併せ持つ」保険です。
  • 定期保険
    一定期間内に死亡した場合にのみ保険金が支払われ、原則として満期保険金はありません。
  • 第三分野の保険
    医療保険やがん保険、介護保険など、病気やケガに備えるための保険です。
  • 定期付養老保険(複合型)
    養老保険に定期保険や第三分野の特約を付加したもので、それぞれの保険料が区分されているかで処理が分かれます。

(2). 税務判断の軸②:契約者・被保険者・受取人

誰が保険料を払い、誰が保険金を受け取るかの設定によって、その支出が「資産」か「損金(費用)」か、あるいは「役員給与」かが決まります。

養老保険の場合

  • 死亡・満期ともに受取人が「法人」であれば、貯蓄性が重視され、全額を「資産」に計上します。
  • 死亡・満期ともに受取人が「被保険者またはその遺族」であれば、法人側では「給与」扱いとなります。
  • 死亡が「遺族」、満期が「法人」といういわゆるハーフタックスプラン(福利厚生型)では、保険料のうち1/2は資産計上し、残額は期間の経過に応じて損金算入します。ただし、特定の役員・使用人のみを対象としている場合は、残額が給与とされ得るため注意が必要です。

参照:国税庁タックスアンサー No.5363 養老保険の保険料の取扱い(令和元年7月8日以後契約分)

定期保険・第三分野の場合

定期保険・第三分野保険の保険料は、受取人が法人であっても原則として期間の経過に応じて損金算入されます。
ただし、支払保険料に相当多額の前払部分が含まれる一定の契約では、最高解約返戻率等に応じて一定額を資産計上する取扱いとなります。
また、対象が役員・特定の使用人に偏っている場合には、保険料が給与とされ得ます。

参照:国税庁タックスアンサー No.5364 定期保険及び第三分野保険の保険料(保険料に相当多額の前払部分の保険料が含まれない場合)の取扱い(令和元年7月8日以後契約分)

(3). 税務判断の軸③:返戻率・払込方法(2019改正の核心)

2019年(令和元年)の改正以降、もっとも重要となったのが「解約返戻金の高さ = 保険料の前払い」という考え方です。以下の閾値(しきいち)によって損金割合が厳格に決まります。

最高解約返戻率による4つの区分

  1. 50%以下
    原則として支払保険料は、期間の経過に応じて損金に算入できます。
  2. 50%超 70%以下
    保険期間の当初4割の期間、保険料の40%を資産計上(60%損金)します。
  3. 70%超 85%以下
    同じく当初4割の期間、保険料の60%を資産計上(40%損金)します。
  4. 85%超
    非常に厳格で、当初10年間は当期分支払保険料の額に最高解約返戻率の90%(11年目以降は70%)を資産計上しなければなりません。

参照:国税庁タックスアンサー No.5364-2 定期保険及び第三分野保険の保険料(保険料に相当多額の前払部分の保険料が含まれる場合)の取扱い(令和元年7月8日以後契約分)

保険期間3年以上かどうか

3年未満の短期契約は、原則として期間の経過に応じた損金算入が認められます。

参照:国税庁タックスアンサー No.5364 定期保険及び第三分野保険の保険料(保険料に相当多額の前払部分の保険料が含まれない場合)の取扱い(令和元年7月8日以後契約分)

年換算保険料30万円特例の判定

  • 最高解約返戻率が70%以下で、かつ被保険者1人あたりの年換算保険料が30万円以下であれば、例外的に全額損金算入が認められます。
  • 複数の契約がある場合は、その被保険者ごとに合算して判定するため注意が必要です。
ミミレイドン

30万円の判定には、年換算保険料相当額で判定する枠のほか、解約返戻金相当額のない短期払では当期支払額で判定する枠(一定の適用時期あり)もあります。

新屋賢人

この「3つの軸」を設計書と照らし合わせることで、自社の保険が現在どのような税務ステータスにあるのかを正確に把握できるようになります。この後外出がありますので、今日のところはここまでにします。
明日以降で、個別の論点を具体的に確認していきましょう!

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この記事を書いた人

町田市にあるコムレイド税理士事務所の代表税理士の新屋賢人です。大学卒業後、中堅税理士法人で5年間、業界最大手である国際四大会計事務所(BIG4)のEY税理士法人で8年間、計13年間の実務経験があります。
30代ですが、すでに法人・個人問わず幅広い業務を経験しております。BIG4という業界最大手で得た経験・知識を生まれ育った街に還元したいという強い思いから独立を決めました。

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