【町田市の税理士が解説】補償金、保証金、補助金、損害賠償金、保険金の収益の帰属時期《基礎ログ》

ミミレイドン

ボス、おはようございます!
2026年4月11日のテーマはなんでしょうか?

新屋賢人

今朝は、法人税における『補償金、保証金、補助金、損害賠償金』の収益の帰属時期について整理していきたいと思います。法人が事業を行う上で、通常の売上以外にも様々な形で金銭を受領することがありますが、これらをいつの事業年度の益金として計上すべきかという論点になります。

ミミレイドン

通常の売上であれば、商品の引き渡し時やサービスの提供完了時というのはイメージしやすいのですが、賠償金や補助金となると、いつ売上(収益)にしてよいのか迷ってしまいそうです。入金されたときでよいのでしょうか?

新屋賢人

おっしゃる通り、実務でも非常に迷いやすいポイントです。入金時で認められるものもあれば、入金を待たずに権利が確定した時点で計上しなければならないもの、さらには将来の損失補填であっても受領時に一括計上すべきものなど、その性質によって法人税法や基本通達で細かくルールが定められています。

ミミレイドン

なるほど、一律に入金時というわけではないのですね。それぞれの性質に合わせて正しく処理しないと、税務調査で指摘を受けてしまいそうです

新屋賢人

その通りです。収益の計上漏れや期ずれは、追徴課税のリスクに直結します。これらの特殊な収益について、法令や通達に基づく原則的な取扱いから、実務上認められている特例、そして例外的な取扱いまで確認していきましょう。

営業補償金等の収益の帰属時期

法人が事業を行っていると、道路の拡張工事などの公共事業による立ち退きや、他者の不法行為などによって、将来得られるはずだった営業上の利益(逸失利益)が失われたり、将来の経費が発生したりすることがあります。これらに対して支払われる「営業補償金」や「経費補償金」の収益計上時期はどのようになるのでしょうか。

目次

将来の補償金を一括受領した場合の原則的な取扱い

将来の逸失利益や将来の経費発生見込額について、数年分以上のものを現時点で一括して補償金として支払を受けるというケースがよくあります。 このような将来の数年分以上にわたる補償金である以上、その算定基礎に従って毎期合理的に分割して収益計上すべきであって、未経過分は前受金として処理するのが妥当ではないかという疑問が生じます。 しかしながら、税務上から見る限りは、当該補償金は算定基礎はともかくとして、その受領した時点においてすでに確定した収入であり、これを将来に繰り延べる理由はないとされています。将来の費用や損失の発生との対応関係については、別途、引当金制度等により解決すべきものであって、対応関係を口実に安易に収益を繰り延べるようなことは認められません。 したがって、営業補償金等については、将来期間の補償が含まれていたとしても、原則としてその収入時点(受領した時点)において一括して収益計上を行う必要があります

公共事業の施行に伴う営業補償金等の例外的な取扱い

もっとも、収用等に伴う補償金については、補償金が「収益補償金」「経費補償金」「移転補償金」などのいずれに当たるかにより税務上の取扱いが異なります。特に、経費補償金等のうち、その交付目的となった経費を支出することが明確な部分については、通達上、一定期間の仮受経理が認められる場合があります。したがって、公共事業に伴う補償金については、名目だけでなく、その算定根拠・使途・通達上の区分を個別に確認する必要があります。

新屋賢人

営業補償金は、それがたとえ『向こう3年分の休業補償』という名目であったとしても、お金をもらった事業年度で全額を益金に入れなければならないのが大原則です。前受金として処理してしまうと、税務調査で一括計上を求められてしまいますので十分にご注意ください。ただし、国や自治体が行う公共事業の立ち退きに伴う補償金については別のルールがありますので、補償金の出所と性質をしっかりと確認することが大切です。

保証金や敷金等の返還不要部分の帰属時期

建物の賃貸借契約などを締結する際、法人が敷金や保証金といった名目で金銭を受け取ることがあります。これらの金銭は、原則として将来相手方に返還すべき債務であるため、受け取った時点では「預り金」等の負債として処理し、収益には計上しません。

返還不要が確定した時点での収益計上

しかし、契約書において「退去時に保証金のうち〇〇万円を償却する(返還しない)」と定められている場合や、契約期間の経過に応じて一定割合を返還しないこととされている場合があります。 このように、法人が資産の賃貸借契約等に際して受け取った保証金等のうち、返還を要しないことが確定した部分の金額については、その返還を要しないことが確定した日の属する事業年度の益金の額に算入します

例えば、契約時に敷金のうち一定額を返還しない(いわゆる敷引き)と定めている場合は、契約をした時点で返還しないことが確定しているため、受け取った事業年度の収益となります。一方、退去時の原状回復費用に充てるために精算し、残額を返還するという契約であれば、退去して原状回復費用が確定した時点で、返還しない部分の金額を収益に計上することになります。

新屋賢人

不動産賃貸業を営む法人様などで、敷金や保証金を預かっている場合は、賃貸借契約書の『敷引き』や『償却』の条項を必ず確認してください。契約時に償却額が決まっているのに預り金のままにしておくと、期ずれによる申告漏れとなります。

補助金の収益の帰属時期

国や地方公共団体から交付を受ける補助金(以下、国庫補助金等と呼びます)は、法人の事業活動において重要な資金源となります。

原則的な取扱い(交付決定日基準)

国庫補助金等の収益計上時期は、原則としてその「交付決定があった日(返還を要しないことが確定した日)の属する事業年度」の益金の額に算入します。 補助金等の申請を行い、行政機関から交付決定通知書を受け取った時点で、法人にはその補助金等を受け取る権利が法的に確定します。したがって、実際に銀行口座に補助金等が振り込まれた日ではなく、権利が確定した交付決定日を基準として未収入金とともに収益計上を行わなければなりません

特例的な取扱い(国庫補助金等の圧縮記帳)

原則通りに交付決定日に全額を益金計上すると、その補助金等に対しても法人税が課税されてしまい、せっかく国などが政策目的で交付した補助金等の効果が薄れてしまいます。 そこで法人税法では、固定資産の取得等に充てるために交付を受けた国庫補助金等については、課税を将来に繰り延べる「圧縮記帳」という特例が設けられています

内国法人が、各事業年度において国庫補助金等の交付を受け、その事業年度においてその国庫補助金等をもってその交付の目的に適合した固定資産の取得等をした場合には、その国庫補助金等の額に相当する金額の範囲内で、その固定資産の帳簿価額を損金経理により減額するなどの一定の経理処理を行うことで、その減額した金額を損金の額に算入することができます。 これにより、受け取った補助金等(益金)と、帳簿価額を減額した金額(損金)が相殺され、補助金等を受け取った事業年度における法人税の負担を回避することができます。なお、あくまでも課税の「免除」ではなく、減価償却費の減少を通じて将来の事業年度へ課税を「繰り延べる」制度である点にご留意ください。

新屋賢人

補助金は『入金された日』の売上にしがちですが、正しくは『交付決定通知書の日付』です。決算月をまたいで入金されるようなケースでは特に注意が必要です。また、設備投資のために受け取った補助金については、圧縮記帳を活用することで当期の税負担を大幅に軽減できる可能性がありますので、必ず事前に税理士へご相談ください。

損害賠償金の収益の帰属時期

法人が他者から損害賠償金を受け取る場合、あるいは遅延損害金を受け取る場合の収益計上のタイミングについても、明確なルールが存在します。

原則的な取扱い(権利確定時)

法人が他の者から支払を受ける損害賠償金については、原則として、その支払を受けることが確定した時の収益とします。すなわち、損害が発生した時点ですぐに潜在的な損害賠償請求権を収益計上することは要求されておらず、示談の成立や裁判の判決などによって、相手方が支払うべき金額が具体的に確定した日の属する事業年度の益金に算入することになります。

特例的な取扱い(実際の支払受領日基準)

しかし、仮に当事者間で損害賠償金の支払の合意があったとしても、相手方の支払能力などからみて、果たして実際にその支払を受けることができるかどうか疑問がある場合が少なくありません。形式的に支払を受けるべき額が確定したとしても、確定的な収益といえるかどうか疑問が残ります。 そこで、法人がこれについて実際に支払を受けた時点で収益計上することとしているときは、税務上もこれを認めることとし、実務上の弾力化が図られています。

また、この考え方は損害賠償金のみにとどまらず、相手方が債務の履行遅滞に陥ったことにより契約によって受ける遅延損害金についても同様に取り扱われます。貸付金の利子のように発生主義や利払期基準で収益計上することを強制せず、遅延損害金については現実にその支払を受けた時点で収益計上すれば足りることとされています。

例外的な取扱い(役員や使用人による横領等の場合)

上記のように、損害賠償金は原則として権利確定時特例として支払受領時に収益計上しますが、相手方が「その法人の役員又は使用人」であり、横領等によって損害を与えていた場合は全く異なる例外的な取扱いとなります。

法人の役員や使用人による横領等によって法人が損害を受けた場合には、通常、損害の発生時において相手方が特定されており、損害額も算定されるなど、権利の内容や範囲が確定していると言えます。したがって、原則的な民事上の法的基準の考え方に立ち、被害が発生した事業年度において、その損失の額を損金の額に算入するとともに、同額の損害賠償請求権を益金の額に算入しなければなりません

ただし、相手方が役員や使用人であっても、特許権などの権利の帰属を巡る損害賠償請求や交通事故による損害賠償請求のように、権利侵害の事実の確定や損害額・過失割合の算定などを待たねば権利が確定しないような事案については、そのような事実が確定した時点で損害賠償請求権を益金に算入することになります。

損害と賠償金の対応関係について

損害賠償の基因となった損害に係る損失については、その損害の発生した時点で損金算入することができます。これは、損害賠償金の確定ないし実際の給付には極めて不安定な面があるため、損害賠償金収入との対応関係を切断して、損失を先行して計上してよい旨が明らかにされているためです。 ただし、損害保険契約に基づく保険金等で補填されることが確実である部分については、保険金収入との対応関係を要求されるため、損失だけを先行して計上することはできません(次章でも解説)。

収益の種類    原則的な帰属時期特例・例外的な取扱い
営業補償金等収入時点(受領時)において一括計上公共事業に伴うものは一定期間の仮経理が認められる
保証金・敷金等返還を要しないことが確定した日の属する事業年度契約時に償却額が確定している場合はその時点
補助金等交付決定があった日の属する事業年度固定資産の取得に充てる国庫補助金等は圧縮記帳による繰延可
損害賠償金支払を受けることが確定した日の属する事業年度実際に支払を受けた時点で計上することも認められる。ただし横領等は被害発生時に計上
新屋賢人

損害賠償金は、基本的には相手と示談が成立した日、あるいは実際にお金を受け取った日で計上して問題ありません。しかし、自社の従業員による横領が起きてしまった場合は、横領された期に損金と益金を両建て計上しなければならないという厳しいルールがあります。相手が従業員の場合は『誰がいくら損害を与えたか』が初めから確定しているとみなされるためです。このような不祥事が起きないよう、日頃からの内部統制を強化しておくことが何より重要です。

保険金の収益の帰属時期

法人が受け取る損害保険金などの収益計上のタイミングは、原則的なルールに加え、損害(損失)との対応関係、そして設備投資等に関する特例を合わせて理解しておく必要があります。

保険金の原則的な帰属時期(権利確定主義)

法人が損害保険契約等に基づいて受け取る保険金の収益は、原則として「その支払を受けるべき権利が確定した日(保険会社との間で支払われる保険金の額が具体的に確定した日)」の属する事業年度の益金に算入します。 相手方の支払能力などによって回収が不安定な損害賠償金については、実際に金銭を受け取った日に収益計上するという特例が認められていますが、保険金はこれとは異なります。保険金や共済金は契約に基づいて給付を受けるものであり、一般にあらかじめ予測が可能で、支払を受けられないことはむしろ稀であると考えられているためです。

損害(損失)の計上と保険金との対応関係

災害や事故などによって法人の有する資産に損害が生じた場合、その損害に係る損失の額は、原則としてその損害が発生した日の属する事業年度の損金に算入することができます。 しかし、その損害の全部又は一部が「損害保険契約又は損害共済契約に基づく保険金又は共済金によって補填されることとなっている部分」については、損失だけを先行して損金に算入することは認められず、保険金収入等との対応関係を要求されます。 つまり、保険金によって補填されることが確実な損害については、保険金額が確定して収益計上できる事業年度に合わせて損失を認識するか、あるいは損失と未確定の保険金収入(見積額)を対応させて処理する必要があります。損害賠償金のように、損失だけを先に計上し、賠償金が入金された時に後から収益計上するという処理は認められません。

固定資産の滅失・損壊に係る保険金の特例(圧縮記帳)

法人が所有する固定資産の滅失や損壊により保険金を受け取った場合、原則通りに全額をその事業年度の益金としてしまうと多額の法人税が課され、元の状態に復旧するための資金が不足してしまうおそれがあります。 そのため、受け取った保険金をもって、同一事業年度内に元の資産に代わる代替資産を取得した場合には「圧縮記帳」という特例が設けられています。これにより、保険金による差益の範囲内で代替資産の帳簿価額を減額するなどの経理処理を行うことで、その減額した金額を損金に算入し、課税を将来の事業年度へ繰り延べることができます。 また、保険金を受け取った事業年度の末日までに代替資産を取得できない場合であっても、事業年度終了の日の翌日から2年以内に代替資産を取得する予定であれば、保険差益に相当する金額を「特別勘定」として設ける経理処理により、同様に課税の繰り延べが認められます。

新屋賢人

保険金は「金額が確定した日」に収益計上するのが大原則ですが、被害を受けた資産の損失計上タイミングや圧縮記帳の適用など、税務上の判断が複雑に絡む要素が多くなります。実務においては保険契約の内容や損害の状況を慎重に確認して処理を行うことが重要です。

まとめ

本日は、実務上判断に迷いやすい「補償金、保証金、補助金、損害賠償金、保険金」の収益の帰属時期について解説いたしました。

一言で「法人が受け取るお金」といっても、将来の補償である営業補償金は受領時に一括計上し、補助金は入金日ではなく交付決定日に計上し、損害賠償金は実際に入金された日で計上、保険金は権利確定日で計上するなど、その性質によって適用される税務上のルールは全く異なります。また、従業員の横領に対する賠償請求権のように、事実発生と同時に収益を認識しなければならない特殊なケースも存在します。

新屋賢人

これらをすべて「銀行口座に入金された日」の売上として処理してしまうと、税務調査において期ずれによる申告漏れを指摘され、思わぬペナルティを受ける可能性があります。自社が特殊な金銭を受け取る予定がある場合や、不幸にも損害被害に遭ってしまった場合には、自己判断を避け、ぜひ専門家である税理士にご相談いただくことをお勧めいたします。

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この記事を書いた人

コムレイド税理士事務所_代表新屋賢人のアバター コムレイド税理士事務所_代表新屋賢人 税理士(コムレイド税理士事務所 代表)

町田市にあるコムレイド税理士事務所の代表税理士の新屋賢人です。税理士(日本税理士会連合会登録)。大学卒業後、中堅税理士法人で5年間、業界最大手である国際四大会計事務所(BIG4)のEY税理士法人で8年間、計13年間の実務経験があります。
30代ですが、すでに法人・個人問わず幅広い業務を経験しております。BIG4という業界最大手で得た経験・知識を生まれ育った街に還元したいという強い思いから独立を決めました。

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