【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:⑤役員報酬の定期同額給与編Part2

ミミレイドン

ボス、おはようございます!
今朝のテーマはなんでしょうか?

新屋賢人

今朝も、昨日に引き続き定期同額給与について整理していきたいと思います。

ミミレイドン

定期同額給与の説明は1日では終わらないですよね。

新屋賢人

役員報酬は、決め方を一つ間違えるだけで「増額分が経費にならない」「税務調査で説明できない」といった大きな痛手につながります。
とくに定期同額給与は、“金額”だけでなく“いつ決めて、いつから反映させたか”が重要です。
今朝は、国税庁のQ&Aに沿って、定時株主総会で改定する場合の職務執行期間の考え方、支給日の設計、3か月ルールに外れたときの損金不算入の範囲まで、実務で迷いやすいポイントを整理します。

⑤役員報酬の定期同額給与編:Part2

目次

1.定時株主総会等の決議により役員給与を改定する場合の支給時期と職務執行期間の考え方

定時株主総会等の決議により役員給与を改定する場合、支給時期と職務執行期間は、「取締役・監査役の任期(通常、選任された定時株主総会終了時から任期終了時の定時株主総会の終結時まで)」に対応して考えるのが基本となります。

新屋賢人

ちなみに、株式会社の取締役の任期は原則2年ですが、公開会社でない株式会社(一人オーナーの株式会社など)では、定款により最長10年まで伸長できます。同じ人が継続する場合で登記を忘れて放置していると、裁判所から「過料」の通知が届きます(過料は経費になりません)。最後に登記をしてから12年間何もしないと、事業を継続していても法務局によって勝手に「解散したもの」とみなされ、会社が消滅してしまう恐れもありますので、ご注意ください。
なお、合同会社の場合、任期の概念がないため、定款で別段の定めをしない限り、本人が辞めるか亡くなるまでは、特に気にする必要はありません。

(1). 職務執行期間の開始日(2つのパターン)

職務執行期間をいつから開始するかについて、会社が独自に定めることは排除されておらず、少なくとも以下の2つのパターンが税務上も認められています。

  1. 定時株主総会の終結の時から(原則)
  2. 定時株主総会の実施月の翌月初から
新屋賢人

国税庁のQ&A等でも、開始日を定時株主総会の日以外(翌月初など)と定めた場合であっても、その日が定時株主総会に近接する日であれば、企業実務の観点から税務上も是認し得るものとされています。

(2). 改定後の給与に対応する実際の支給日

改定された給与を具体的にいつの支給日から反映させるかについては、従業員給与の規定(当月○日締め・当月○日払い、当月○日締め・翌月○日払いなど)に合わせて実際の支給日を定めているケースが多く見られます。それぞれの会社において定めたものが、社会通念上違和感がなければ、そのまま採用されることとなります。

例えば、従業員給与が「当月〆分の給与を翌月25日に支給する」会社において、5月20日の定時株主総会で給与改定を行った場合、以下のようなパターンが考えられます。

  • 職務執行開始日を「5月の総会終結時」とした場合
    • 5月中に支給日が到来する場合:同月(5月支給分)から改定額を反映する
    • 従業員に合わせて翌月支給とする場合:6月支給分(5月職務執行分)から改定額を反映する
    • 従業員に合わせて翌々月支給とする場合:7月支給分(6月職務執行分)から改定額を反映する
  • 職務執行開始日を「6月1日(翌月初)」とした場合
    • 従業員に合わせて同月支給とする場合:6月支給分から改定額を反映する
    • 従業員に合わせて翌月支給とする場合:7月支給分から改定額を反映する
新屋賢人

このように、定時株主総会の日を起点としつつも、「職務執行の開始日をいつにするか」「会社の給与の締め日・支払日のサイクルがどうなっているか」によって、実際に改定額が反映される支給月は柔軟に設定することが可能です。

2.3月経過日等改定と認められない場合の増額改定の損金不算入

役員給与の増額改定が「3月経過日等改定(期首から3か月以内の通常改定)」やその他の正当な改定事由(臨時改定事由など)に認められなかった場合、「増額した部分の金額」が損金不算入となります。

具体的には、以下のような考え方で計算されます。

(1). 損金不算入額の考え方

期首から3か月経過日より後になって給与を増額した場合、税務上は、その事業年度の各支給時期における給与のうち「同額である部分(=増額前の給与額)」を定期同額給与として扱います。 したがって、増額改定後の支給額のうち、増額前の給与額を上回る部分(増額分)が定期同額給与に該当しないものとみなされ、損金に算入することができなくなります。

【具体例】

  • 4月〜8月まで:月額50万円
  • 9月に増額改定し、9月〜翌年3月まで:月額70万円 この場合、ベースとなる定期同額給与は「月額50万円」とみなされます。そのため、9月以降に増額された「月額20万円×7か月分=140万円」が損金不算入となります。

(2). (参考)減額改定の場合との違い

もしこれが「減額改定」であって、同じく3月経過日等改定と認められなかった場合は、取り扱いが異なります。 減額改定の場合は、「低い方の金額(=減額後の給与額)」がベースの定期同額給与とみなされます。そのため、減額する「前」の期間に支払われていた給与のうち、減額後の金額を上回る部分が損金不算入となります

(3). 実務上の注意点(一人会社などの場合)

株主と経営者が同一である一人会社などでは、形式的な定時株主総会が開かれないことがよくあります。 しかし、税務上は、法人税別表1に記載した「決算確定日」や「決算報告書に記載した報告日」が、実質的な定時株主総会開催日であると考えられます。このタイミングで役員給与の決定(改定)をせず、3か月経過日を過ぎてから思いつきで増額をしてしまうと、上記のように増額分が経費として認められなくなるため、注意が必要です

新屋賢人

一人会社では形式的に総会を省略しがちですが、税務上は「いつ通常改定をしたのか」を説明できる資料(議事録等)が重要です。申告書別表一の「決算確定の日」等は、調査時に総会日・決議日の整合性を見られやすい項目なので、議事録の日付と矛盾しないよう管理しましょう。

3.同額改定が行われたとした理由

定時株主総会で役員給与に関する議案を挙げず、前年と「同額」の給与を引き続き支給した場合、国税庁の「役員給与に関するQ&A」では、実質的に何も改定が行われていないと厳格に判断するのではなく、「定時株主総会において同額改定が行われた」とみなして取り扱うことが示されています

なぜ実際の決議がないにもかかわらず「同額改定が行われた」とされるのか、その理由としてQ&Aの解説では以下の3つの根拠が挙げられています。

(1). 法人税法の前提

一般的に、定時株主総会において、その開催日から開始する「新たな職務執行期間に係る給与の額」を定めることになっており、法人税法の規定もこれを前提として置かれていると考えられるため。

(2). 企業慣行の存在

任期中である役員に対して、前年の定時株主総会で決議された支給額を引き続き支給する場合、新たな職務執行期間の開始に当たって「改めて給与額についての決議を経ない」という企業慣行が見受けられるため。設問のケースでも、給与額を据え置くこととしたため、あえて議案に盛り込まなかったとみることができます。

(3). 法人の通常改定のサイクル

その会社において、通常、役員給与の額の改定を定時株主総会(例:5月開催)で決議することとしており、開催前(例:4月や5月)に支給した金額は、前年の定時株主総会で確定していたという事情が確認できるため。

■ 結論と実務上の留意点

これらの理由から、過去の改定実態や法人の慣行などから「その法人の通常改定の時期」が確認できる場合には、支給額についての決議を実際に経ていなかったとしても、「当年の通常改定において、同額改定の決議があったときと同様に取り扱うことが相当である」とされています。

ただし、これはあくまで「通常は定時株主総会で改定している」という慣行があるからこそ認められる推定です。もし、定時株主総会ではなく、頻繁に「臨時株主総会」を開いて給与改定をしているような会社の場合、このQ&Aのような「同額改定があった」という推定がされるとは限らないため、注意が必要です。

新屋賢人

余談にはなりますが、一人オーナーの株式会社の場合、株主総会はいわば「自分(株主)」が「自分(経営者)」の仕事をチェックして承認するという、少し奇妙な自問自答の儀式になります。
しかし、この儀式を「議事録」として残しておかないと、税務署や銀行から「会社としての実態がない」と指摘を受ける原因になります。
したがって、最低でも、「決算報告の承認」、「剰余金の処分」、「役員の改選」、「その他特別な事項(定款変更、退職金、資本金の増減)」は定時株主総会で決議する必要があります。一人会社であっても、「税務申告を正当化するための書類作成作業」の一種と考えて株主総会の議事録は必ず作成しましょう。

4.新規設立会社における役員給与の支給開始日や創業事業年度の定期同額給与

新規設立会社(創業事業年度)における役員給与の支給開始日や定期同額給与の取り扱いについては、設立1期目であっても原則的なルールが適用されますが、実態に応じた例外的な判断がされるケースもあります。

詳しく解説すると以下のようになります。

(1). 創業事業年度の定期同額給与の原則(3か月以内のルール)

設立1期目の法人であっても、原則として「事業年度開始の日の属する会計期間開始の日(設立日)から3か月以内」に給与の支給を開始する必要があります

税務上は、創業からしばらく経ってから給与の支給を開始した場合、「支給開始前(支給額0円)」から「支給開始後(決定した給与額)」への給与の改定が行われたと考えます。したがって、支給開始日が設立日から3か月を超えていると、原則として定期同額給与には該当せず、損金算入できなくなります

(2). 開業準備期間等の理由で3か月を過ぎた場合(例外の可能性)

設立登記はしたものの、実際の事業開始が3か月経過後になってしまった場合、その理由によっては「臨時改定事由(やむを得ない事情)」として認められる可能性があります。 例えば、以下のようなケースです。

  • 許認可が不測の事態で遅れ、実際の営業開始が遅れた場合
  • 現在の勤務先を当初予定通りに辞めることができず、営業開始が遅れた場合
新屋賢人

これらのように、当初予想しがたい偶発的な要因によるものであれば、「その他これらに類するやむを得ない事情」に該当すると判断される余地があります。

(3). 「事業が軌道に乗ったから」支給を開始した場合(認められないケース)

創業期において、「ようやく事業が軌道に乗り、売上が順調に立つようになったから」という理由で、設立から3か月経過後に役員報酬の支給を開始したとします。

このケースは、上記のやむを得ない事情(臨時改定事由)には該当しません。売上の状況によって給与の支給を開始することは「利益操作」と言われても仕方がない側面があり、形式的にも実質的にも定期同額給与の要件を満たさないと判断されます。

新屋賢人

創業時であっても定期同額給与の縛りを受けるため、「売上が立ってから役員報酬を出そう」と安易に考えていると経費(損金)として認められなくなってしまいます。 このような事態を防ぐためにも、設立日や事業年度を決める段階で、給与支給のタイミングをあらかじめ慎重に検討しておくことが重要です。

5.まとめ

役員給与(定期同額給与)は、法人税法上、非常に厳格なルールが設けられており、「知らなかった」では済まされないペナルティ(損金不算入)が待ち受けています。本記事の重要なポイントは以下の4点です。

  • 給与改定は原則として「期首から3か月以内(定時株主総会)」に行うこと
  • 期中での安易な増額改定は、増額分がすべて経費(損金)として認められなくなること
  • 一人会社であっても、実態に伴う「株主総会議事録」の作成が必須であること
  • 新規設立法人の場合も「設立から3か月以内」に支給を開始しないと経費にできないこと

「業績が良くなったから」「まだ売上が立たないから」といった理由で、期中に自己判断で役員報酬を変動させるのは極めて危険です。結果的に、本来払わなくてよかったはずの法人税を納めることになり、会社に大きな資金的ダメージを与えてしまいます。

特に、設立初年度の役員報酬の設定や、期中での業績変動による給与改定(臨時改定事由に該当するかどうかの判断)を検討する際は、自己判断で進めず、事前に税理士に相談することを強くおすすめします。正しいルールを理解し、手遅れになる前に適切な手続きを行いましょう。

参照:国税庁 役員給与に関するQ&A

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

町田市にあるコムレイド税理士事務所の代表税理士の新屋賢人です。大学卒業後、中堅税理士法人で5年間、業界最大手である国際四大会計事務所(BIG4)のEY税理士法人で8年間、計13年間の実務経験があります。
30代ですが、すでに法人・個人問わず幅広い業務を経験しております。BIG4という業界最大手で得た経験・知識を生まれ育った街に還元したいという強い思いから独立を決めました。

コメント

コメントする

目次