ミミレイドンボス、おはようございます!
今朝のテーマはなんでしょうか?



今朝は業績悪化改定事由について整理していきたいと思います。



業績が悪化した場合、事業年度の途中で役員報酬を減額できるというやつですね。



「売上が落ちてきた。役員報酬も見直したい。でも、期中に下げたら経費にならないのでは…?」この不安は多くの中小企業で共通です。実は、経営状況が著しく悪化し、“やむを得ない”事情が客観的に説明できる場合には、期中の減額でも定期同額給与として扱われ得るルールがあります。今回は、国税庁のQ&Aが示す判断軸と、実務で整えるべき証拠を解説します。



役員報酬シリーズの①役員報酬の意義編、②役員報酬の損金性編、③役員報酬の手続き編、④役員報酬の定期同額給与編、⑤役員報酬の定期同額給与編Part2、⑥定期同額給与の臨時改定事由編については、こちらの記事をご覧ください。
【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:①役員報酬の意義編
【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:②役員報酬の損金性編
【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:③役員報酬の手続き編
【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:④役員報酬の定期同額給与編
【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:⑤役員報酬の定期同額給与編Part2
【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:⑥定期同額給与の臨時改定事由編
⑦業績悪化改定事由編
1.業績悪化改定事由とは?
役員給与における「業績悪化改定事由」とは、年度の途中で役員給与を「減額」しても、引き続き定期同額給与として認められ、損金(経費)に算入できる特例的なルールのひとつです。
原則として、役員給与の変更は期首から3か月以内でなければ認められませんが、法人の経営状況が著しく悪化するなどのやむを得ない事情がある場合には、期中の減額改定が認められています。
具体的には、以下のポイントを押さえておく必要があります。
(1). 「著しい悪化」とは何か(単なる未達はNG)
業績悪化改定事由として認められるのは、「法人の経営状況が著しく悪化したことなどやむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情」がある場合です。 そのため、「法人の一時的な資金繰りの都合」や「単に業績目標値に達しなかった」といった理由だけでは、これに含まれないとされています。
(2). キーワードは「第三者(利害関係者)との関係」
減額が認められるかどうかの判断基準として、「第三者である利害関係者(株主、債権者、取引先等)との関係上、役員給与の額を減額せざるを得ない事情が生じたか」という点が重要なキーワードとなります。
国税庁のQ&A等では、具体的に以下のようなケースが例示されています。
- 株主との関係
業績や財務状況の悪化について、役員としての経営上の責任から減額せざるを得ない場合。
※ただし、株主と役員が一致している中小同族会社の場合、単に「株主(自分)の判断で下げた」というだけでは認められにくく、客観的かつ特別の事情を具体的に説明できる必要があります。 - 銀行との関係
取引銀行との間で行われる「借入金返済のリスケジュール(条件変更)」の協議において、役員給与の額を減額せざるを得ない場合。 - 取引先等との関係
業績や資金繰りが悪化し、取引先等からの信用を維持・確保するために「経営改善計画」が策定され、その計画に役員給与の減額が盛り込まれた場合。
(3). 業績の悪化が「見込まれる(不可避な)」場合も対象
すでに過去の業績が赤字になっている場合だけでなく、「近い将来の業績悪化」を理由とする減額も認められる可能性があります。 例えば、「売上の大半を占める主要な得意先が倒産してしまった」「自社製品に重大な欠陥が見つかり、大規模なリコールが必要になった」など、客観的な状況から今後著しく業績が悪化することが不可避と認められる場合にも、業績悪化改定事由による減額に該当するとされています。



業績悪化改定事由による減額は、利益操作(税金逃れ)を目的としたものではないことを客観的に説明・立証できるよう証拠を整備しておくことが重要です。減額改定を行う際には、株主総会や取締役会の議事録に「なぜ減額せざるを得ないのか」という具体的な事情や数値を明確に記録しておくことが推奨されます。
2.業績の悪化が見込まれる場合(不可避と認められる場合)
業績の悪化が見込まれる場合の役員給与の減額改定(業績悪化改定事由)について、「業績の悪化が不可避と認められる場合」と「実際に経営指標が悪化している場合」の2つのケースに分けて解説します。
(1). 業績の著しい悪化が不可避と認められる場合
過去や現在の経営状況が悪化しているわけではなくとも、「近い将来に業績の著しい悪化が不可避である」という客観的な状況に基づき給与を減額する場合、業績悪化改定事由として認められる可能性があります。
国税庁の「役員給与に関するQ&A」では、リーマンショックや東日本大震災が起こった後に、Q1及びQ1-2が使いされており、Q1-2では以下のような事例が示されています。
- 具体例
当期の途中で、売上の大半を占める主要な得意先が手形の不渡りを出した。得意先の事情を調べたところ事業規模を縮小せざるを得ない状況にあり、数か月後には自社の売上が激減することが避けられない(不可避な)状況となった。そこで、役員給与の減額を含む経営改善計画を策定し、減額を決議した。



このように、客観的な状況から今後著しく業績が悪化することが不可避であると明確に認められる場合には、その対応としての減額改定は「業績悪化改定事由」に該当すると考えられています。
(2). 実際に経営指標が悪化している場合(目標未達などのケース)
外部的な要因(取引先の倒産など)ではなく、自社の経営指標の動向から「このままでは経営悪化が見込まれる」と判断して減額した場合は、判断が厳しくなります。過去の裁決例(平成23年1月25日裁決)では、以下のようなケースが否認(業績悪化改定事由に該当しないと判断)されています。
- 事例の概要
決算月の2か月前の時点で、月次損益計算書の経常利益が対前年比で6%減少(前年割合94.2%)している状況であった。これを受け、代表取締役が経営責任を示すとして給与の減額改定を行った。 - 否認された理由
- 当期の最終的な売上高は各事業年度の中で最も多額であり、経常利益も2番目に多額で、過去の業績と比べて何ら遜色がない状態であった。
- 請求人(会社側)は経常利益が前年実績を上回ることを「業務目標」としており、結果的に「設定した業務目標を達成できなかったこと」が減額の理由であると認定された。
この事例では、会社の利益操作や役員の給与所得の調整といった恣意的な目的がなかったとしても、客観的に見て「法人の経営状況の著しい悪化その他これに類する理由により、やむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情」があったとは認められず、業績悪化改定事由には該当しないと判断されました。



「業績の悪化が見込まれる」という理由で減額を行う場合、単なる「前年割れ」や「社内の目標未達」レベルでは認められません。客観的な事実に基づき、企業存続のためにやむを得ず給与を減額せざるを得ないような「著しい悪化(またはその不可避性)」を第三者に対して明確に説明できるかどうかが重要なポイントになります。
3.役員報酬を遡って返上した場合の取扱い
業績悪化などを理由に、役員がすでに支給された(または権利が確定した)役員報酬を遡って会社に返上した場合の税務上の取り扱いについて解説します。
結論から言うと、会社側では返上分を「雑収入(または債務免除益)」として処理しますが、役員個人の「給与収入(所得税)」は原則として減額されません。また、法人税法上の「定期同額給与」の要件から外れることもありません。
(1). 所得税の取り扱い(権利確定主義)
所得税法では、「権利確定主義」という考え方を採用しています。これは、給与が実際に支払われたかどうかではなく、「給与支払日に支給されるべき金額が確定した時点」で、その年の収入として計算するというルールです。
そのため、返上・辞退のタイミングによって所得税の取り扱いが変わります。
- 支給期が到来する「前」に辞退した場合
資金繰り等の事情で未払いとなっており、かつ「支給期の到来前に辞退の意思を明示して辞退した」ものに限り、その金額は初めからなかったものとして課税されません(所得税基本通達28-10)。 - 支給期が過ぎた「後」に返上・辞退した場合(遡っての返上)
すでに給与債権が確定してしまっているため、現金で受け取ったものを後から会社に返還しても、あるいは支給日を過ぎて未払いになっているものの受領を辞退しても、役員個人の給与収入は減りません。つまり、手元にお金が入ってこなく(残らなく)ても、当初の給与額に対して所得税が課税されてしまいます。
(2). 定期同額給与の取り扱い
役員給与を返上(または未払い分の受領を辞退)したとしても、それはすでに会社側の「債務として確定済みの役員給与の額」に影響を与えるものではありません。
したがって、仮にその減額が「臨時改定事由」や「業績悪化改定事由」などの正当な減額事由に該当しない場合であっても、「会社からは減額前の同額の給与を支払い(未払計上を含む)、その減額分を役員が会社に返上する」という形をとれば、法人税法上は引き続き「定期同額給与」として認められ、損金(経費)から外れることはありません。
(3). 会計・税務処理のポイント
会社側の会計処理としては、役員からの返上分を「役員報酬のマイナス(戻り)」として処理するのではなく、「雑収入」や「債務免除益」として法人の収益(益金)に計上することになります。



実務上の注意点としては、このように、遡っての返上は「個人で所得税・住民税等を負担した上で、その手取りの中から会社にお金を寄付している」のと同じ状態になり、役員個人にとって非常に不利な税務となります。業績悪化が見込まれる場合は、返上に頼るのではなく、要件を満たした上で適法に「業績悪化改定事由による減額改定」の手続きをとることが重要です。
4.まとめ
今回は、役員報酬の「業績悪化改定事由」による減額ルールと、報酬を遡って返上した場合の取り扱いについて解説しました。ポイントは以下の通りです。
- 「単なる売上減少」や「社内目標の未達」では業績悪化改定事由として認められない。
- 株主、銀行、取引先など「第三者に対する客観的な理由(著しい悪化や不可避性)」が必要。
- すでに確定・支給された報酬を遡って返上すると、手元にお金がないのに個人の所得税・住民税が課税される「最悪の事態」を招く。
役員報酬の期中減額は、会社を存続させるための苦渋の決断であるはずです。しかし、税務上の要件を満たしていなければ、かえって会社や役員個人に多大な税負担を強いる結果になりかねません。
「うちの状況は業績悪化改定事由に当てはまるのか?」「議事録にはどう記載すればいいのか?」と少しでも迷った場合は、決して自己判断で手続きを進めず、必ず事前に税理士へご相談ください。正しい手順を踏み、適切な記録を残すことが、会社と経営者自身を守る最大の防御策となります。










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