【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:⑨事前確定届出給与編Part2

ミミレイドン

ボス、おはようございます!
今朝のテーマはなんでしょうか?

新屋賢人

今朝は昨日に引き続き事前確定届出給与を整理していきたいと思います。

ミミレイドン

役員に所定の時期に、あらかじめ定めた金額を支給するというお話の続きですね。

新屋賢人

事前確定届出給与には、現物給与として認められる範囲の制約、同族会社か否かによる届出要否の違い、未払計上の取り扱い、役員の地位変更への対応、外注費や歩合給との境界線など、実務上つまずきやすいポイントが数多く存在します。
今朝は、事前確定届出給与にまつわる実務上の注意点を、裁判例も交えながら体系的に解説します。

⑨事前確定届出給与編Part2

目次

1.事前確定届出給与に係る現物給与の範囲

事前確定届出給与として認められる「現物給与」の範囲について解説します。

結論から申し上げますと、事前確定届出給与として認められる現物給与は、「株式」や「新株予約権」などに限定されており、社有車などの一般的な現物資産での支給は事前確定届出給与とすることはできません

詳しく解説すると以下のようになります。

(1).事前確定届出給与の対象となる給与の範囲

平成29年度の税制改正により、事前確定届出給与として認められるものは、以下の4類型に限定して規定されています。

  1. 確定した額の金銭
  2. 確定した数の株式、若しくは新株予約権
  3. 確定した額の金銭債権に係る特定譲渡制限付株式(RS)若しくは特定新株予約権を交付する旨の定めに限定されています。
  4. 確定した額に相当する「適格株式」または「適格新株予約権」(いわゆる事前交付型の株式報酬)

(2). 一般的な現物資産(社有車など)が認められない理由

法人税法上、事前確定届出給与は「事前に所定の時期に確定額を支給する旨の定め」に基づいて支給される必要があります。 かつての通達(旧法基通9-2-15)においても、現物資産による支給のうち、「支給額の上限のみを定めたもの」や「一定の条件を付すことにより支給額が変動するようなもの」は、事前確定届出給与の「確定額」には含まれないとされていました。 現在の法令においても上記の3類型に限定されているため、社有車のような金銭や株式等以外の現物資産は、事前確定届出給与には該当しません

(3).例外的な取り扱い(株式等と金銭の併給)

現物給与として適格株式や適格新株予約権を交付する際、算定の都合上「1に満たない端数」が生じることがあります。 この場合、その適格株式等と、端数に相当する金銭を併せて支給したとしても、その給与全体として「確定した額に相当する適格株式等を交付する旨の定めに基づいて支給する給与」に該当するものとして、例外的に認められる取り扱いとなっています。

2.定期給与を支給しない役員に対して支給する給与

毎月の定期給与を支給せず、年1回や半年ごとなどに定額で給与を支給する役員(いわゆる非常勤役員など)に対する給与の取り扱いは、法人が「同族会社」であるかどうかによって異なります。

(1).原則(事前確定届出給与としての事前の届出が必要)

定期同額給与とは「その支給時期が1か月以下の一定の期間ごと」である給与を指します。そのため、半年ごとや年1回だけ支給される給与は定期同額給与には該当しません。 このような給与を損金(経費)に算入するためには、原則として「事前確定届出給与」として事前に所轄税務署長へ届出を行う必要があります

(2).例外(「同族会社以外の法人」は届出不要)

平成19年度の税制改正により、「同族会社に該当しない法人」が、定期給与を支給しない役員に対して支給する給与については、事前の届出が不要とされました。 これは、同族会社以外の法人であれば不特定多数の株主による牽制機能が働き、利益調整など恣意的な操作が行われる恐れが相対的に低いと考えられるためです。

(3).実務上の注意点:いわゆる「お車代」の支給

定期給与を支給しない非常勤役員に対して、株主総会や取締役会に出席した際のみ、いわゆる「お車代」を支給するケースがあります。 このお車代のうち、実際の交通費として認められる非課税限度額を超える部分(ご足労に対するお礼などの実質的な報酬部分)については、役員給与として扱われます。 したがって、その法人が同族会社である場合、このお車代(のうち給与とみなされる部分)についても事前確定届出給与として事前に届出を行っていないと、法人側で損金算入できなくなってしまうため、注意が必要です。

新屋賢人

ちなみに、事前確定届出給与について、1人の役員に対して届出通りに給与を支払わなかったとしても、他の役員の事前確定届出給与まで全て否認されるわけではなく、役員ごとに個別に判断されます。

3.事前確定届出給与のうち、未払計上した役員賞与

事前確定届出給与として届け出た役員賞与について、資金繰りの悪化などの理由により支給日に全額を支給できず、未払計上した場合の税務上の取り扱いについては、以下のようになります。

結論から申し上げますと、資金繰りの悪化等を理由に安易に未払計上をした場合、『事前の定めに従った支給が行われていない』として原則として全額が損金不算入(否認)となる極めて高いリスクがあります。例外的に、債務が確定しており、やむを得ない客観的な理由があり、かつ、後日速やかに実際の支払いが行われている等の厳格な条件を満たす場合に限り、事実認定により損金算入が認められる余地があります。

詳細なポイントや注意点は以下の3つに分けられます。

(1). 未払計上による損金算入の可否

事前確定届出給与の要件には「所定の時期に確定額を支給する旨の定め」がありますが、実際に現金が支払われていなくても、会社側の支払義務(債務)が確定している未払計上の状態であれば、他の費用項目と異なった取り扱いはされず、損金算入が認められると解されています。

(2).否認される(損金算入が認められない)リスク

一方で、「給与としての実態」が伴っているかどうかが実質的に判断されるため、以下のようなケースでは事実認定により否認されるリスクがあります。

  • 未払計上などの適切な経理処理をしていない場合
    過去の裁判例では、届出額と実際の支給額の差額について、帳簿上で未払計上すらしていなかったことにより、役員給与の一部が未払いであるとはにわかに認めがたいとして、納税者の主張が棄却されたケースがあります。
  • 初めから利益調整を目的としている場合
    常に届出額の一部を返上すること(あるいは全額支給しないこと)を前提として届出書を提出し、実際の支給額は業績の動向を見て決めているような場合には、そもそも「事前確定届出給与としての支給額が確定していない」と判断され、損金算入が認められなくなるおそれがあります。

(3). 未払賞与に係る源泉所得税の取り扱い

未払となっている役員賞与の源泉所得税については、以下のルールが適用されます。

  • 原則
    源泉徴収は「実際に給与を支払う際」に行うものであるため、支払われるまでは源泉徴収および納付の義務は発生しません。
  • 一部のみ支払った場合
    一部を支払い、残額が未払いの場合は、「本来支払うべき総額に対する源泉徴収税額」に、「総額のうち実際に支払った金額の割合」を掛けた金額を源泉徴収して納付します。
  • 「1年ルール」の特例(重要)
    役員に対する賞与には特例があり、「支払の確定した日から1年を経過した日」までに実際の支払いがなかったとしても、その1年を経過した日に「支払いがあったものとみなされて」源泉徴収と納付の義務が発生します。この点は事前確定届出給与の未払いにおいても同様に適用されるため、長期間未払いのままにする場合は注意が必要です。

4.事前確定届出給与に関する役員の委任終了(常勤→非常勤)等の取り扱い

役員が任期途中で非常勤役員となり、事前に届け出ていた事前確定届出給与の受領を辞退することになった場合の取り扱いについて解説します。

結論から申し上げますと、このケースは「臨時改定事由」に該当するため、期限内に「変更届出書」を提出する必要があります。

(1).臨時改定事由への該当と手続き

専務取締役などの常勤役員が任期途中で非常勤役員となることは、臨時改定事由における「当該内国法人の役員の職制上の地位の変更」に該当します。

そのため、受領を辞退(支給内容を変更)する場合には、その臨時改定事由が生じた日(=非常勤役員となった日)から1か月以内に、所轄税務署長へ事前確定届出給与の「変更届出書」を提出する必要がありますこの手続きを期限内に行うことで、変更前(辞退前)に支給された事前確定届出給与等も含め、適切に損金算入することが可能になります。

(2).(参考)完全に「退任」した場合との違い

実務上、役員を「完全に退任」した場合と「非常勤役員になった」場合とでは、手続きが異なる点に注意が必要です。

  • 完全に退任した場合
    役員を退任した場合は、その時点で会社の業務執行の権限等が消滅するため、税務上の臨時改定事由には当たりません。したがって、退任後の期間に係る給与を支給しない(辞退する)こととした場合でも、退任するまでの期間の給与が届出額どおりに支給されていれば、変更届出書を提出することなく、先に支給した事前確定届出給与は損金に算入されます
  • 非常勤役員となる場合(今回のケース)
    役員としての地位は継続しており、あくまで「職制上の地位の変更」にとどまるため、前述の通り変更届出書の提出が必須となります。

5.その他

(1).役員に対する外注費

役員に対して通常の役員としての業務を超えて法人の業務を委託し、「外注費(業務委託報酬)」として支払うケースがありますが、税務上はその取り扱いに注意が必要です。

結論から申し上げますと、会社の事業目的と個人事業の内容が同じである場合、実態として「会社役員としての業務に従事した」と事実認定され、外注費ではなく「給与(役員報酬)」として取り扱われる可能性が高くなります

外注費として認められるかどうかの判断基準や留意点は、以下の通りです。

1. 所得区分の判断基準(給与か事業所得か)

役員に支払われた金銭が外注費(事業所得など)として認められるためには、対価の支払者との関係において、それが「個人として独立して行った業務に対する対価」であると評価される必要があります。 逆に出勤表などで管理され、会社の指揮命令に服して労務や役務を提供しているような実態があれば、「法人の役員として、委任された業務をしたことについて支払われた対価(給与所得)」と判定されます。 また、特別な資格(企業建築士や企業税理士など)を活かした業務を行っているからといって、それだけで当然に外注費として認められるわけではありません。

2. 外注費が否認され「給与」と認定された事例

過去の裁判例等では、以下のように外注費としての処理が否認され、給与等として課税されたケースがあります。

  • クラブのママ兼代表取締役の事例
    クラブを経営する会社において、「ママ」という立場のホステスが代表取締役を兼ねており、ママとしての稼働分に対する対価を外注費として処理していました。しかし、相当程度の対価が支給される予定であったことなどから、計算と危険において独立して営む個人事業とは評価し難く、「会社と一体的に、経営的立場から稼働していた」と判断され、給与として認定されました
  • 不動産会社の取締役の事例
    不動産会社の取締役が、自社所有の不動産を顧客に販売した際に、その契約高に比例して支払われた金員について、自ら独立の事業として提供した役務の対価(事業所得)ではなく、会社の従業員と同じく法人の役員としての労務の対価(給与所得)であるとされました。

3. 会社法上の留意点(競業避止義務)

税務面だけでなく、会社法上の観点からの注意も必要です。取締役が会社と同じような事業を個人として行うことになりますので、会社の利益を害する「競業行為」に当たる可能性があります。そのため、会社が自社の取締役に業務委託をするような場合には、会社の承認(株主総会や取締役会での承認)が必要となる点に留意しなければなりません

(2).役員に対する歩合給

役員に対する歩合給(能率給など)の税務上の取扱いについて解説します。

結論から申し上げますと、役員に対する歩合給は、毎月の支給額が変動するため原則として「定期同額給与」には該当せず、損金(経費)には算入されません。ただし、その役員が「使用人兼務役員」に該当する場合には、一定の条件のもとで損金算入が認められる例外があります。

具体的には以下の通りです。

1. 原則(定期同額給与には該当しない)

定期同額給与とは、「その支給時期が1か月以下の一定の期間ごとであり、かつ、当該事業年度の各支給時期における支給額が同額である給与」を指します。 たとえ一定の算定基準に基づき規則的に継続して支給されるものであっても、売上や実績に応じて各月の支給額が異なることとなる歩合給は、これに該当しないため、損金の額に算入されません

2. 使用人兼務役員に対する支給の場合(例外)

その役員が「使用人兼務役員」に該当し、歩合給が「使用人としての職務に対する給与」として支給されている場合は、不相当に高額なものに該当しない限り、原則として損金の額に算入されます

また、月額の固定給部分と歩合給部分とがあらかじめ明確に分かれている場合、固定給部分については定期同額給与の要件を満たす限り、損金算入が可能です。

3. 実務上の注意点・留意事項

歩合給を支給する際には、以下の点に注意が必要です。

  • 役員分給与を「ゼロ」として全額歩合給にする場合
    使用人兼務役員に支給する給与の全額を歩合給とし、「役員としての給与部分はゼロ」と取り決めるケースも実務上あり得ます。しかし、経営に従事していない他の役員には給与を支払っているような会社において、特定の兼務役員の役員分給与のみがゼロである場合、「そこに利益調整などの恣意的なものがないか」と税務上疑問を持たれる可能性があります。歩合給の算定基準が他の一般従業員と全く同じであるか等、精査が必要となります。
  • 使用人兼務役員に該当しないと否認されるリスク
    過去の裁判例(平成29年1月18日東京地裁)において、特許業務法人の社員(代表社員以外の社員)に対して歩合給(実績給)を支給したケースで、税務署から「使用人兼務役員には該当しない」と指摘され、結果として歩合給の損金算入が認められなかった事例が存在します。 したがって、歩合給を損金算入するためには、その役員が法令上・実態上ともに明確に「使用人兼務役員」の要件を満たしていること(使用人としての職制上の地位を有し、常時使用人としての職務に従事していること等)が極めて重要になります

6.まとめ

今朝は、事前確定届出給与における現物給与の範囲、非常勤役員への支給ルールの違い、未払計上による否認リスク、役員の地位変更時における手続き、そして外注費や歩合給の取り扱いについて解説しました。

事前確定届出給与は、わずかな手続きの遅れや要件の逸脱が「全額損金不算入」という会社にとって致命的なペナルティに直結する非常に厳格な制度です。特に、未払計上や歩合給の導入、外注費としての処理など、実務上でイレギュラーな対応が生じた場合には、税務調査においてその実態が厳しく問われることになります。

役員報酬の取り扱いは金額が大きくなることが多く、少しでも判断を誤ると大問題に発展しかねません。迷うケースが生じた際は決して自己判断で処理せず、必ず実行前に顧問税理士などの専門家に相談し、法令に則った適切な手続きを進めるようにしてください。

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この記事を書いた人

町田市にあるコムレイド税理士事務所の代表税理士の新屋賢人です。大学卒業後、中堅税理士法人で5年間、業界最大手である国際四大会計事務所(BIG4)のEY税理士法人で8年間、計13年間の実務経験があります。
30代ですが、すでに法人・個人問わず幅広い業務を経験しております。BIG4という業界最大手で得た経験・知識を生まれ育った街に還元したいという強い思いから独立を決めました。

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