ミミレイドンボス、おはようございます!
今朝のテーマはなんでしょうか?



今朝は業績連動給与を整理していきたいと思います。



税務上の「業績連動給与」を損金(経費)として算入できるのは、実質的に上場企業やその子会社などの大規模法人に限られていますよね?



はい、結論から言うと、中小の同族会社が「業績連動給与」を税務上の損金として使うのは原則できません。
では、業績に連動するインセンティブを“損金で”設計したいときはどうするべきか。
本記事では、業績連動給与の要件と落とし穴、そして現実的な代替策を解説します。



役員報酬シリーズの①役員報酬の意義編、②役員報酬の損金性編、③役員報酬の手続き編、④役員報酬の定期同額給与編、⑤役員報酬の定期同額給与編Part2、⑥定期同額給与の臨時改定事由編、⑦定期同額給与の業績悪化改定事由編、⑧事前確定届出給与編Part1、⑨事前確定届出給与編Part2については、こちらの記事をご覧ください。
【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:①役員報酬の意義編
【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:②役員報酬の損金性編
【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:③役員報酬の手続き編
【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:④役員報酬の定期同額給与編
【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:⑤役員報酬の定期同額給与編Part2
【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:⑥定期同額給与の臨時改定事由編
【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:⑦定期同額給与の業績悪化改定事由編
【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:⑧事前確定届出給与編Part1
【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:⑨事前確定届出給与編Part2
⑩業績連動給与編Part1
1.業績連動給与とは?
業績連動給与とは、法人の利益の状況や株式の市場価格、売上高などの「業績を示す指標」を基礎として、役員給与の支給額(または交付される株式や新株予約権の数)が算定される給与のことです。
業績に連動して支払われる役員報酬は、本来は法人の「利益処分」としての性格を持ちますが、支給の透明性や適正性を確保するための一定の要件を満たせば、法人の損金(経費)に算入することが可能となります。
損金算入が認められるための主な要件は以下の通りです。
- 対象者
法人が「業務執行役員」に対して支給するものであること。 - 算定の基礎(指標)
職務執行期間開始日以後の「利益の状況」「株式の市場価格の状況」「売上高の状況」のいずれかを示す指標を基礎として算定されていること。 - 客観性
算定方法が「確定した額又は数」を限度としており、他の業務執行役員に対する算定方法と同様であること。 - 適正な手続き
所定の日までに報酬委員会の決定など適正な手続きを経ていること。 - 開示
算定方法の内容が、有価証券報告書に記載される等の方法で開示されていること。
■ 同族会社における制限(重要)
同族会社の場合、法人の利益に連動して役員給与の支給額を自由に決めることを許容すると、利益操作による課税逃れが行われるリスクが大きいと考えられています。そのため、同族会社では原則として業績連動給与の損金算入は認められていません。
例外として、同族会社であっても「非同族会社との間に完全支配関係がある法人(非同族会社の完全子会社など)」に限っては損金算入が認められています。



事前確定届出給与編で、事前確定届出給与のメリットとして「同族会社における業績連動給与(インセンティブ)の代替」となる点を挙げましたが、それはまさにこの「同族会社では原則として業績連動給与が使えない」という法的な制約があるためです。
2.業績連動給与を中小企業に適用が困難な理由
中小企業(特にオーナー経営の同族会社)において、「業績連動給与」を導入し、税務上の損金(経費)として算入することが困難な理由には、主に以下の3つの高いハードルが存在するためです。
1. 同族会社には「原則として適用されない」という制限
最も大きな理由は、法律上、同族会社が支給する業績連動給与は、原則として損金算入が認められていないためです。(※非同族会社と完全支配関係がある完全子会社などは例外的に認められます。)
法人の利益に連動して役員給与の支給額を事後的に決める仕組みは、利益調整による課税逃れ(所得操作)に利用されやすいという側面があります。同族会社の場合、「所有と経営が分離していないため、オーナー一族による会社の私物化や、財務的に不透明で内部牽制が甘くなりやすい」といった事情があることから、適正性や透明性が担保されないとして、原則的に損金算入が排除されています。
2. 「算定指標」と「開示要件」が非上場企業には馴染まない
業績連動給与を損金算入するためには、客観的な算定基準に基づく必要がありますが、その要件が非上場の中小企業には非常に厳しいものとなっています。
- 算定指標の厳格さ
業績連動給与は、「利益の状況」「株式の市場価格」「売上高」を示す指標を基礎として算定されなければなりません。この指標には、「有価証券報告書に記載されるべき指標」が含まれることが多く、有価証券報告書を作成していない非上場企業にとっては適用のハードルが高くなります。 - 開示の要件
開示要件は、報酬委員会等の決定後、遅滞なく有価証券報告書に記載する等の方法で開示されていることが求められます。そのため、有価証券報告書を提出しない一般的な非上場企業では、この要件を満たすこと自体が難しく、結果として制度の適用が困難です。なお、一定の非上場企業に限り、金融庁ウェブサイトへの掲載等により開示要件を満たす特例が設けられている分野もあります。
3. 「適正な手続(報酬委員会の設置など)」のコストと実務負担
業績連動給与の算定方法を決定するにあたっては、お手盛りを防ぎ客観性を担保するための「適正な手続」を経る必要があります。 具体的には、「委員の過半数が独立社外取締役で構成される報酬委員会」等での決定が求められます。中小企業において、多額のコストをかけて独立社外取締役を複数名招き入れ、報酬委員会を設置・運営することは、実務的に極めて困難といえます。



上記のように、中小・同族会社で本来の「業績連動給与」を適用することは実質的に困難です。
しかし、以前の会話でも触れたように、中小企業で役員に対するインセンティブ(業績連動的なボーナス)を支給しつつ損金算入したい場合は、「事前確定届出給与」を1年遅れの業績連動給与として活用する方法が一般的です。
当期の決算が確定した後に、その利益への貢献度に応じて翌期の賞与額を取り決め、それを定時株主総会で決定した上で税務署へ「事前確定届出給与」として届け出ます。これにより、実質的に業績に連動したインセンティブを付与しつつ、税務上の要件もクリアすることが可能になります。
3.業績連動給与の種類
業績連動給与は、税法上、利益や株価などの業績を示す指標を基礎として算定される金銭や株式、新株予約権による給与などを指します。実務上は、支払われる形(金銭か株式等か)によって、大きく「業績連動型金銭報酬」と「株式報酬(業績連動型)」に分けられます。
具体的な種類は以下の通りです。
1. 業績連動型金銭報酬
業績目標の達成度や株価に連動して「金銭(キャッシュ)」で支払われる報酬です。
- パフォーマンス・キャッシュ
中長期的な業績目標を設定し、その達成度合い(パフォーマンス)に応じて金銭を交付する制度です。 - ファントム・ストック
仮想の株式を付与したとみなして、配当や売却益に相当する「金銭」を支給する株価連動型の制度です。日本の証券口座を開設しにくい非居住者の役員に対して、株式の代わりに株式相当額の金銭を交付する際などによく利用されます。 - ストック・アプリシエーション・ライト(SAR)
仮想的に新株予約権を付与したとみなし、株価があらかじめ定めた価格を上回った場合に、その値上がりした差額部分を「金銭」で支給する制度です。
2. 株式報酬(業績連動型)
業績目標の達成度などに応じて「自社株や新株予約権」を交付する報酬です。
- パフォーマンス・シェア(PS)
中長期的な業績目標を設定し、その達成度合いに応じて自社の株式(シェア)を交付する制度です。 - 事後交付型リストリクテッド・ストック・ユニット(RSU)
あらかじめ交付予定株式数を定めておき、中長期の経営計画の達成などの権利確定条件を満たした場合に、その株式を事後的に交付する制度です。 - ストック・オプション(SO)
あらかじめ定められた価格で自社株を購入できる権利(新株予約権)を付与する制度です。これに業績条件を付すことで業績連動給与として機能させることができます。
3. 退職給与として支給されるもの
在任中の業績に連動した形で、退職時に金銭や株式、ストック・オプション、あるいは退任時交付型の株式交付信託を通じて退職給与として支給するケースもあります。



業績連動給与には、金銭で支払われるもの(パフォーマンス・キャッシュやファントム・ストックなど)と、株式で支払われるもの(パフォーマンス・シェアなど)の様々なバリエーションがあります。これらは、役員に中長期的な視点での企業業績の向上や株価上昇へのモチベーションを高めてもらう(インセンティブ付け)目的で導入されます。
4.損金算入される業績連動給与の要件
業績連動給与を法人の損金(経費)に算入するためには、法人税法で定められた一定の要件をすべて満たす必要があります。
具体的には、以下の5つの要件を満たすことが求められます。
1. 対象となる役員の要件(業務執行役員)
業績連動給与の対象となるのは、法人の業務を執行する役員(業務執行役員)に対して支給されるものに限られます。 代表取締役や専務、常務などが該当し、監査役や社外取締役などは含まれません。また、実務上は非常に困難ですが、実質的に業務を執行している「みなし役員」も対象となる可能性があるとも解されます。
なお、使用人兼務役員に対する『使用人部分の給与(従業員賞与)』は、そもそも役員給与の制限を受けないため、この業績連動給与の厳格なルールの対象外となります。なお、役員部分の給与については業績連動給与の対象となり得ますが、他の業務執行役員と同様の算定基準を設ける必要があるなど、実務上のハードルが存在します。
2. 指標に関する要件
交付される金額や株式等の数の算定方法が、以下のいずれかの「業績を示す指標」を基礎としている必要があります。
- ① 利益の状況を示す指標(営業利益、営業利益の〇%など)
- ② 株式の市場価格の状況を示す指標
- ③ 売上高の状況を示す指標(売上高に関する指標は、利益または株価の指標と併用する場合に限り用いることができます。)
3. 客観性に関する要件(算定方法・手続・開示)
利益調整などの恣意性を排除するため、客観的に算定される仕組みが必要です。
- ① 算定方法の内容
支給額の上限(確定した額又は確定した数)が設けられていること。かつ、他の業務執行役員に対する算定方法と「同様のものであること」が求められます。 - ② 適正な手続
所定の日までに、報酬委員会の決定など適正な手続きを経ている必要があります。 - ③ 情報の開示
算定方法の内容が、手続き終了後遅滞なく、有価証券報告書に記載するなどの方法によって開示されていなければなりません。
4. 交付時期に関する要件
業績の数値が確定した後、速やかに支給(交付)される必要があります。
- 金銭の場合
業績連動指標の数値が確定した日の翌日から「1か月」を経過する日までに交付されること(または交付される見込みであること)。 - 株式や新株予約権の場合
業績連動指標の数値が確定した日の翌日から「2か月」を経過する日までに交付されること(または交付される見込みであること)。



有価証券報告書に記載する指標を用いる場合は、有価証券報告書の提出日等が起算点となる場合があります。
5. 経理処理の要件
法人がその業績連動給与について「損金経理」をしていること(費用として会計処理していること)が必要です。



これらすべての要件を満たしたとしても、原則として「同族会社」が支給する業績連動給与は損金算入が認められません。例外的に認められるのは、非同族会社の完全子会社など、一部の法人に限られます。
5.業績連動給与の対象となる役員
業績連動給与を損金(経費)に算入するためには、対象となる役員が「業務執行役員」であることが要件とされています。
具体的には、以下の役員が含まれます。
1. 業績連動給与の対象となる「業務執行役員」の範囲
- 取締役(会社法363条1項等)
- 代表取締役
- 取締役会の決議により業務を執行する取締役として選定された者
- 取締役会設置会社「以外」の取締役
- 指名委員会等設置会社の執行役(会社法418条等)
- 取締役会の決議により委任を受けた業務の執行を決定、または業務の執行を行う執行役
- 上記に準ずる役員
- 実質的に法人の業務を執行している役員(持分会社における業務を執行する社員など)
2. 対象に「含まれない」役員
法人の役員であっても、自ら業務を執行しない立場にある以下の役員は、「業務執行役員」には該当せず、業績連動給与の対象とはなりません。
- 取締役会設置会社において、業務を執行する取締役として選定されていない取締役
- 社外取締役
- 監査役
- 会計参与
3. 注意点:「みなし役員」に対する業績連動給与の難しさ
税務上、登記上の役員でなくとも実質的に法人の経営に従事していると「みなし役員」と判定されるケースがあります。この「みなし役員」に対して業績連動給与を適用できるかについては、実務上極めて困難であると考えられています。
その理由は以下の通りです。
- 適正な手続や開示要件を満たせない
業績連動給与の要件には「報酬委員会の決定等の適正な手続」や「有価証券報告書等での算定方法の開示」がありますが、会社法上の役員ではない「みなし役員」について、これらの厳格な手続や開示を行うことは想定されていません。 - 他の役員の給与まで否認されるリスク
業績連動給与は、「他の業務執行役員の全員」に対して同様の要件を満たす算定方法で支給されている必要があります。もし、みなし役員に支給した給与が要件を満たさないと判断された場合、それが波及して正規の役員に対する業績連動給与の損金算入まで認められなくなってしまうリスクがあります。
したがって、みなし役員が存在する会社において業績連動給与を導入する際は、税務上の否認リスクに十分留意する必要があります。
6.同族会社における業績連動給与の適用
同族会社における業績連動給与の適用について、税務上の取り扱いや要件を詳しく解説します。
先ほどから申し上げている通り、同族会社が支給する業績連動給与は、原則として損金(経費)算入が認められていません。ただし、一定の条件を満たす「非同族会社の完全子会社」に該当する場合は例外として認められます。
1. 同族会社で原則として認められない理由
業績連動給与は法人の利益等の業績に連動して支給額を決めるため、法人税法上、同族会社においては「安易な課税所得の操作(利益調整)の余地を与えることになり、課税上の弊害が大きい」と考えられています。
同族会社は「所有と経営が分離していない」ことが多く、オーナー一族による会社の私物化や、内部牽制が働きにくく財務的に不透明になりやすいという側面があります。そのため、業績連動給与を損金算入するための「適正性や透明性の担保」が難しいとされ、適用から除外されています。



なお、同族会社の中には、株主と経営者が異なる「非同族の同族会社」と呼ばれるケースもありますが、この場合であっても同族会社に該当する以上、原則として業績連動給与を損金に算入することはできません。
2. 例外的に適用が認められる同族会社
同族会社であっても、「同族会社以外の法人(非同族会社)との間に、当該法人による完全支配関係がある法人」であれば、例外的に業績連動給与の損金算入が認められます。
具体的には、以下のような法人が該当します。
- 非同族の上場会社を親会社とする100%子会社
- 非同族会社の100%孫会社
- 100%子会社とその親会社で、その株式の100%を保有されている会社
3. 非同族会社の完全子会社が適用する際の注意点
上記のような完全子会社が業績連動給与を導入し、損金算入するためには、以下の要件を満たす必要があります。
① 算定指標についての注意点
業績連動給与の算定指標には、「利益の状況を示す指標」や「株式の市場価格の状況を示す指標」などがありますが、完全子会社の場合、「自社との間に支配関係がある法人(親会社など)の業績を示す指標」を使用することも可能です。 特に「株式の市場価格」を指標として用いる場合は、上場している親会社の株式の市場価格等を用いることになります。また、連結財務諸表に記載される連結ベースでの業績連動給与の算定指標を用いることも可能です。
② 算定指標等の開示要件
業績連動給与の損金算入要件の一つに「算定指標等を有価証券報告書等で開示すること」があります。非上場の完全子会社単独では有価証券報告書を作成していないケースが多いですが、親会社の有価証券報告書等やTDnet(適時開示情報伝達システム)に算定指標等が記載・開示されることで、この開示要件を満たすことができます。
③ 報酬委員会等での決定手続要件
完全子会社が業績連動給与の算定方法を決定する際、自社だけで決定することはできません。まず、「親会社の報酬委員会等」での決議により算定方法等を決定した上で、その決議等に従って、自社(完全子会社)の株主総会又は取締役会で決議を行う必要があります。



一般的な中小の同族会社では、業績連動給与を税務上の損金として活用することは制度上できません。もし実質的なオーナー企業でインセンティブ制度を導入したい場合は、先ほど申し上げた通り、利益に連動した支給額を事後的に決めるのではなく、「事前確定届出給与」の仕組みを利用して1年遅れの業績連動インセンティブとして設計するなどの代替案を検討する必要があります。
7.まとめ
業績連動給与は、役員に対して中長期的な企業価値向上へのインセンティブを付与する制度として、上場会社を中心に広く活用されています。しかし、税務上の損金算入が認められるためには、対象役員・算定指標・客観的手続・開示・交付時期・損金経理という複数の要件をすべて満たす必要があり、制度設計のハードルは決して低くありません。
特に重要なのは、同族会社には原則として業績連動給与の損金算入が認められないという点です。中小企業の多くはオーナー経営の同族会社であるため、業績連動給与をそのまま適用することは制度上できません。例外的に認められるのは、非同族会社を親会社とする完全子会社など、一部の法人に限られます。
中小・同族会社において役員へのインセンティブ制度を設計したい場合は、事前確定届出給与を「1年遅れの業績連動給与」として活用する方法が現実的な選択肢となります。当期の業績が確定した後に翌期の賞与額を決定し、株主総会での決議と税務署への届出を適切に行うことで、実質的に業績連動型のインセンティブを付与しながら、損金算入の要件を満たすことが可能です。
役員報酬の設計は、会社のガバナンスや税務戦略に直結する重要事項です。制度の導入を検討される際は、税理士や弁護士などの専門家にご相談の上、貴社の状況に合った最適な仕組みを構築されることをお勧めします。










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