ミミレイドンボス、おはようございます!
昨日でようやく個人の所得シリーズは終わりましたね!
今朝のテーマはなんでしょうか?



今朝は個人のみなし譲渡について、整理していきたいと思います。



譲渡所得の延長戦ですね!



あなたが家族の会社に不動産や株式を売却したり、親族の借金を肩代わりしたりしたとき、「みなし譲渡」という税制上のルールにより、意図せぬ高額な課税リスクに直面する可能性があります。
本記事は、誰にでも分かりやすく、この複雑な「みなし譲渡」の仕組みを解説します。
知らずに申告漏れを起こせば、追徴課税のリスクも!あなたの資産を守るために、ぜひ最後までお読みください。
1. はじめに
(1).みなし譲渡とは何か(税法上の「時価で譲渡したとみなす」制度)
みなし譲渡とは、無償あるいは著しく低い価額で資産を譲渡したにもかかわらず、税法上では「時価(市場で適正な価格)で譲渡したものとみなして」課税する特別な税制上の規定です。
表面上は売買や贈与ではない取引であっても、この規定により、あたかも適正な価格で売却して利益を得たかのように税金が計算されます。
(2).なぜ制度が存在するのか(不当に低額譲渡による課税逃れ防止)
この制度が設けられている最大の目的は、課税の公平性を保ち、不当な税負担の回避(課税逃れ)を防ぐことです。
もしこのルールがなければ、資産の値上がり益(キャピタル・ゲイン)に対して永遠に課税がなされない状態(課税の繰延べ)を生み出したり、当事者間で税金が少なくなるよう低すぎる価格を設定し、その差額を裏で補填するなど、脱税行為や租税回避行為の温床になりかねません。
みなし譲渡は、こうした税負担の不均衡を防ぐための「防波堤」として機能しているのです。
2. みなし譲渡の基本概念
(1).無償または著しく低額で資産を譲渡した場合に「時価」で譲渡したとみなされる
みなし譲渡の対象となるのは、資産を「無償」で譲渡した場合、または「著しく低い価額」で譲渡した場合です。
特に、個人から法人への譲渡において、所得税が課税されるケースでは、譲渡価額が資産の時価の2分の1に満たない金額が「著しく低い価額」の基準とされています。
この基準に該当すると、実際の取引価額に関係なく、その資産の「時価」を基に譲渡所得が計算されます。



譲渡所得については、こちらの記事で解説しております。
【町田市の税理士が解説】個人の譲渡所得の基礎知識について
(2).所得税と消費税の両面で課税対象となるケースがある
みなし譲渡は、取引の当事者や資産の性質によって、所得税と消費税の両方が課税対象となるケースがあるため、注意が必要です。
• 所得税が課税されるケース
主に個人が法人に資産を譲渡した場合や、相続の限定承認の場合。これは、譲渡した個人(または被相続人)の値上がり益(含み益)に対して課税を清算する目的があります。
• 消費税が課税されるケース
主に法人が役員に資産を譲渡した場合や、個人事業主が事業用資産を私用(家事使用)した場合。これは、事業活動で仕入れた資産を無償で使わせることで消費税の課税を逃れるのを防ぐ目的があります。
参照:国税庁ホームページタックスアンサー No.3105 譲渡所得の対象となる資産と課税方法
3. 個人に関係する課税ケース
個人が関わるみなし譲渡として、特に所得税と消費税の課税ケースを詳しく見ていきましょう。
(1).所得税が課税されるケース
1. 個人が法人に資産を無償で譲渡(贈与)した場合
個人が所有する不動産や株式などを法人に無償で譲渡(贈与)した場合、時価で譲渡したものとみなされます。
2. 個人が法人に資産を著しく低額で譲渡した場合
譲渡価額が時価の2分の1未満であるなど、「著しく低い価額」で譲渡した場合も、みなし譲渡に該当し、時価で譲渡したものとして所得税が課税されます。
3. 遺産を限定承認で相続した場合
相続人が被相続人の遺産を限定承認(プラスの遺産の範囲内で負債を相続する制度)で受け継いだ場合、被相続人が相続開始日に相続人に時価で譲渡したとみなされ、含み益に譲渡所得税が課されます。
(2).消費税が課税されるケース
消費税は、事業者が事業として資産の譲渡を行った場合に課税されますが、みなし譲渡の規定により、対価を受け取っていないにもかかわらず課税されるケースがあります。
1. 法人が取得した資産を役員に無償で譲渡(贈与)した場合
法人が事業用に購入した資産を、役員に無償で譲渡した場合は、みなし譲渡として消費税の課税対象となります。
2. 法人が取得した資産を役員に著しく低額で譲渡した場合
法人が役員に著しく低い価額で資産を譲渡した場合も、みなし譲渡として消費税の課税対象となります。棚卸資産以外の資産の場合、譲渡時の時価の50%未満が著しく低い価額の目安です。
3. 個人事業主が事業用資産を家事使用(自家消費)した場合
個人事業主が事業のために購入した資産を、プライベート(家事用)に転用(自家消費)した場合も、みなし譲渡と判断され消費税が課税されます。
4. 具体例で理解する
実際の取引において、みなし譲渡がどのように課税されるかを具体的なイメージで理解しましょう。
(1).不動産を法人へ低額譲渡した場合の課税イメージ
個人が、自社(法人)に対して不動産を時価より低い価額で譲渡した場合、売り手(個人)と買い手(法人)の双方に課税が生じます。
| 項目 | 譲渡資産の状況 |
| 取得費 | 1,000万円 |
| 時価 | 5,000万円 |
| 実際の譲渡価額 | 2,000万円 (時価の2分の1未満) |
• 譲渡人(個人:売り手)の所得税
- 譲渡価額2,000万円は時価5,000万円の2分の1未満(2,500万円)であるため、みなし譲渡に該当します。
- 個人は、時価5,000万円で譲渡したものとみなされ、譲渡所得(含み益の清算)が課税されます。
- 譲渡益:5,000万円(みなし収入金額)-1,000万円(取得費)=4,000万円。
• 譲受人(法人:買い手)の法人税
- 法人は常に時価で取引することを前提とするため、時価5,000万円で資産を取得したものとされます。
- 実際の支払額2,000万円との差額3,000万円(5,000万円-2,000万円)は受贈益として計上され、法人税の課税対象となります。
このように、個人は実際に4,000万円の利益を得ていなくても所得税が、法人は3,000万円の利益を得ていなくても法人税が課税されるため、想定外の多額の税負担につながります。
(2).株式を無償で法人へ移転した場合の課税イメージ
個人が所有する非上場株式を法人に無償で移転(贈与)した場合も、みなし譲渡として扱われます。
• 譲渡人(個人:売り手)の所得税
- 株式の時価が収入金額とみなされ、譲渡時の時価から取得価額を差し引いた値上がり益(含み益)に対して所得税が課税されます。
• 同族会社の株主への贈与税リスク(三重課税のリスク)
- 譲渡先が同族会社(親族などが株式の過半数を保有する会社)の場合、法人が資産を無償または低額で受け取ったことで会社の価値(株価)が上昇し、既存の株主の経済的利益が増加したとみなされることがあります。
- この株価の増加部分については、譲渡した個人から株主へ贈与があったとみなされ、株主に贈与税が課税される可能性があります(相続税法第9条によるみなし贈与)。
(3).限定承認による相続時の課税イメージ
相続人が限定承認を選択した場合、被相続人(故人)の遺産に含み益(値上がり益)があれば、みなし譲渡所得税が発生します。
- 課税対象者:被相続人(故人)
- 課税内容:被相続人が相続開始日に資産を時価で譲渡したとみなされ、その時点での含み益に対して譲渡所得税が課税されます。
- 申告義務者:被相続人は死亡しているため、相続人が準確定申告として申告・納税を行います。
- 申告期限:相続開始を知った日から4ヶ月以内(相続税の申告期限より早いので要注意)。
このみなし譲渡により発生した所得税や住民税は、被相続人の債務に含まれるため、遺産総額が負債総額を下回る場合は、納税義務が免除される場合があります。



限定承認により相続人は被相続人の債務を相続財産の範囲で弁済する義務を負い、税金もその債務に含まれるため、財産が不足すれば納付不要となる、ということですね。
5. 注意すべきポイント
みなし譲渡の規定が適用されるかどうかは、「誰から誰へ」「どのような価格で」資産が移動したかによって大きく異なります。
(1).個人間の贈与はみなし譲渡に該当しない(贈与税の対象)
みなし譲渡は基本的に、「個人から法人へ」または「限定承認」の場合に適用される所得税上のルールです。
個人から個人に対して、無償または著しく低い価額で資産が譲渡された場合、譲渡した側(売り手)に譲渡所得税は課税されません。代わりに、譲渡を受けた側(買い手)に対し、「みなし贈与」贈与税が課税されます。
例えば、親から子に不動産を市場価格より安く売却した場合、子は時価と実際の売買価格の差額について贈与税の課税対象となるのです。
(2).二重課税の回避と繰延べの仕組み(贈与税と譲渡所得課税の関係)
個人間で贈与や低額譲渡が行われた場合、売り手(贈与者)に譲渡所得税が課税されないのは、二重課税を回避し、将来的な課税の公平性を保つためです。
もし贈与の時点で譲渡所得税を課税してしまうと、財産を受け取った側が贈与税を支払い、さらに将来その資産を売却した際に譲渡所得税を支払うことになり、二重課税となります。
そこで、個人間の贈与では、贈与した側の値上がり益に対する課税(譲渡所得課税)をその時点では行わず、その値上がり益を受贈者(受け取った人)に引き継ぎます。受贈者が将来その資産を売却した際に、まとめて課税を清算する(課税の繰延べ)仕組みになっているのです。
(3).申告漏れが起きやすい点と税務調査での指摘リスク
みなし譲渡は、実際には金銭的な利益(キャッシュ)を得ていない取引に対して課税されるため、納税者自身が「税金が発生する」という認識を持ちにくく、申告漏れが起こりやすいという大きなリスクがあります。
特に、限定承認による準確定申告は、相続開始からわずか4ヶ月という短い期限があるため、見落とされがちです。
申告漏れが税務調査で指摘された場合、本来納めるべき税額に加え、過少申告加算税や延滞税などのペナルティが課され、想定外に大きな税負担となるため、細心の注意が必要です。



加算税や延滞税などの罰則税については、こちらの記事で解説しております。
【町田市の税理士が解説】修正申告でかかる罰則税とは?加算税・延滞税・利子税を徹底解説!
6. 最新税制改正の影響
みなし譲渡の規定自体に直接的な変更は少ないものの、近年の税制改正により、資産譲渡を取り巻く環境は大きく変化しています。
(1).令和7年度税制改正における譲渡関連の見直し(株式・土地建物の特例改正)
【高額所得者への税負担増:ミニマムタックスの導入】
2025年1月から導入された、ミニマムタックス(最低限税)は、3.3億円を超える高額所得者を対象に、株式譲渡や不動産売却などによる譲渡所得の税率を、現行の20.315%から最大27.5%に引き上げる制度です。
M&Aや事業承継で高額な株式譲渡益(キャピタル・ゲイン)を得る個人株主は、この制度によって税負担が増加する可能性があります。みなし譲渡により時価ベースで多額の譲渡益が発生した場合、その税率はさらに重くなるリスクがあります。
【事業再生支援:債務処理計画に基づき資産を贈与した場合の特例の延長】
中小企業の企業再生や事業承継の円滑化を目的として、債務処理計画に基づき資産を贈与した場合の課税の特例の適用期限が、令和10年3月31日まで3年間延長されました。
この特例は、中小企業の取締役などで債務保証人となっている個人が、合理的な再生計画に基づいて資産(有価証券を除く)を法人に贈与した場合、通常かかるはずのみなし譲渡課税が免除されるという重要なものです。
(2).個人の資産譲渡に関する特例や控除制度の動向
【公益法人等への寄附の特例(措置法40条)】
個人が国や地方公共団体、または公益を目的とする法人(公益法人等)に財産を寄附した場合、通常はみなし譲渡として課税されますが、一定の要件を満たして国税庁長官の承認を得ることで、譲渡所得が非課税になります(租税特別措置法第40条)。
この承認特例を適用するには、寄附された財産が寄附日から2年以内に公益目的事業に直接使われることなど、厳格な要件を満たす必要があります。
【相続登記の登録免許税の特例】
所有者不明土地の発生を防ぐため、相続に係る所有権移転登記の登録免許税の特例措置が令和9年3月31日まで2年間延長されています。不動産の相続登記申請が義務化された今、みなし譲渡(限定承認)を含めた相続手続きの早期完了が重要です。
7. 実務対応のポイント
みなし譲渡のリスクを回避し、安心して資産を移転するためには、事前の準備と専門家の活用が不可欠です。
(1).みなし譲渡が発生する可能性がある取引の事前チェック
最も重要な事前チェックは、「著しく低い価額」に該当しないかを確認することです。
- 譲渡価額が時価の2分の1未満になっていないか確認する。
2分の1を超えていれば、みなし譲渡(所得税)には該当しません。 - 「時価」の適正な算定。
特に非上場株式や不動産の時価を正確に算定するには専門的な知識が必要です。客観的な取引価額(通常の取引で成立すると認められる価額)を基準にする必要があります。路線価や相続税評価額(公示価格の80%水準)だけで判断すると、税務署との見解の相違が生じることがあるため注意が必要です。
(2).税理士に相談すべきタイミング
みなし譲渡が発生する可能性のある取引、特に税務が複雑なケースでは、自己判断せずに税理士に相談することが推奨されます。
- 個人から法人へ資産を譲渡、または贈与する前:同族会社の株主への贈与税リスク(三重課税)を避けるため。
- 遺産を限定承認で相続する場合:準確定申告の期限が短く(4ヶ月)、申告漏れを起こしやすいため。
- 不動産や非上場株式の時価算定に不安がある場合:特に親族間や法人が絡む取引において、適正な価格設定の助言を受けるため。
(3).記録・証憑の整備と申告の留意点
みなし譲渡が絡む取引では、税務署に取引の合理性と適正性を証明するための証拠(証憑)の整備が求められます。
- 価格の根拠の整備
譲渡価格が時価に基づいて算定されたことを示す不動産鑑定評価書や株式評価資料などを準備し、取引に合理的な根拠があることを示します。 - 準確定申告の迅速な対応
限定承認の場合は、被相続人の死亡から4ヶ月以内に準確定申告を完了させる必要があります。この期限は非常にタイトであるため、相続発生後すぐに専門家に相談しましょう。
8. まとめ
(1).みなし譲渡は「意図せず課税される」ケースが多い
みなし譲渡は、利益が現金として手元に残らないにもかかわらず、税法上の公平性の観点から「時価で取引があった」とみなして課税を精算する制度です。
この「利益を得ていないのに課税される」という性質から、納税者自身が課税の事実を認識しにくく、結果として申告漏れにつながりやすいのです。
(2).個人事業主や資産を法人へ移す場面で特に注意
みなし譲渡(所得税)が適用される典型的なケースは、個人と法人の間の取引です。特に、個人事業主が法人化する際に事業用資産を会社に低額で引き継ぐ場合や、オーナー経営者が自身の資産を同族会社に譲渡・寄附する場合にリスクが高まります。また、個人事業主の事業用資産の自家消費も消費税のみなし譲渡として課税されます。



2025年からはミニマムタックスが導入され、高額な譲渡所得に対する税率が引き上げられています。譲渡の規模が大きければ大きいほど、みなし譲渡による時価の算定ミスや申告漏れが、桁違いの追徴課税につながる可能性があります。
みなし譲渡を正しく理解し、適正な時価に基づいた取引と、期限内の正確な申告を行うことが、あなたの資産を守る鍵となります。
相談できる税理士がいない場合には、お気軽にこちらまでお問い合わせください。










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