【町田市の税理士が解説】2025年から導入されるミニマムタックス(超富裕層を対象とした追加の課税措置)について

ミミレイドン

ボス、おはようございます!
今朝のテーマはなんでしょうか?

新屋賢人

本日は、2025年から施行される個人の所得税における歴史的な大改正、通称「ミニマムタックス」(最低限税)について、整理します。

ミミレイドン

2025年度から施行?ミニマムタックス?初めて聞きました。

新屋賢人

正直、対象者が限定的であり、必要性は低い論点です。ただ、今年適用可能性があるクライアントが、、、私もそこまで深く理解しておりませんでしたので、この機会に整理したいと思います。
この制度のキーワードは、「1億円の壁」の是正です。
「所得が高い人ほど税率が下がる」という、これまでの日本の税制が抱えていた長年の不公平を解消するために導入されるこの新ルールは、特に資産家や企業オーナーの皆様の資産戦略に大きな影響を与えます。今後の資産運用や事業承継を成功させるために、この「ミニマムタックス」を正しく理解し、準備を進めましょう。

目次

1. はじめに

(1).「ミニマムタックス」とは何か

ミニマムタックス(Minimum Tax)とは、2025年から導入される、超富裕層を対象とした追加の課税措置の通称です。

正式名称は「極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置」といい、所得が一定水準を超える個人に対し、最低限の税負担を確保することを目的としています。

(2).2025年施行の新制度

この制度は、2022年末の税制改正大綱を経て、2023年の税制改正法で成立され、2025年(令和7年)分の所得から適用が開始されます。M&Aによる株式譲渡など、2025年1月1日以降に発生する所得すべてが対象となりますので、特に高額な取引を予定されている方は注意が必要です。

参照:令和5年度税制改正の大綱

(3).「1億円の壁」是正

なぜ、このような制度が必要になったのでしょうか?その答えこそが、長年指摘されてきた「1億円の壁」問題です。

日本の所得税負担率は、所得が1億円までは増加しますが、1億円を超えると逆に減少に転じるという逆転現象が確認されていました。この不公平な構造を是正し、所得に応じた適正な税負担を求めることが、ミニマムタックス導入の最大のフックとなっています。

2. 制度導入の背景

(1).所得税負担率が高額所得者ほど下がる「逆転現象」

日本の所得税制度では、給与所得や事業所得には累進課税制度が適用されており、所得が増えるほど税率が上がり、最高で45%(別途住民税)に達します。

しかし、所得が1億円を超えると、富裕層は給与所得よりも金融所得(株式の配当金や譲渡益)の割合が増加する傾向にあります。これが、所得税負担率の「逆転現象」を引き起こす原因となっていました。

(2).金融所得(配当・譲渡益)が固定税率15%で課税される仕組み

この逆転現象の核心は、金融所得(上場株式の配当や譲渡益など)にかかる所得税率が一律15%(住民税5%と復興特別所得税0.315%を合わせて20.315%)で固定されている点にあります。

給与所得の最高税率45%と比較すると、同じ1億円の所得でも、金融所得であれば税負担が大幅に軽減されるため、金融所得の割合が高い超富裕層ほど、実効税率が低くなってしまっていたのです。

(3).国際的な流れ(米・英・独など)との整合性

実はこの「1億円の壁」に相当する現象は、日本特有のものではありません。米国、英国、ドイツなどの欧米先進国でも、所得上位層において税負担率が低下する現象が確認されており、これは国際的な課題となっています。ミニマムタックスの導入は、こうした国際的な超富裕層への課税強化の流れに日本が足並みを揃えるという意味合いも持っています。

3. ミニマムタックスの仕組み

ミニマムタックスの計算は、至ってシンプルです。

(1).正式名称:「極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置」

この制度の正式名称は「極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置」です。これは、所得の高さに見合う「最低限の税負担」を求めることを目的としています。

(2).基準所得金額から3.3億円を控除し、残額に22.5%を乗じた額が最低負担額

ミニマムタックスでは、まず「最低所得税額」を計算します。

この最低所得税額は、基準所得金額から3.3億円を控除した残りの金額に対し、所得税率22.5%を乗じて算出されます。

最低所得税額 = (基準所得金額 - 3.3億円)× 22.5%

ここでいう「基準所得金額」とは、給与所得、事業所得、株式や不動産の譲渡所得など、ほとんどの所得を合算した金額です(NISAなど非課税所得は除外)。

参照:国税庁 極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置について

(3).通常の所得税額が最低負担額を下回る場合、その差額を追加納税

計算された「最低所得税額」が、がミニマムタックスとして追加で所得税として申告納税されます。

(4).計算例(例:所得50億円の場合、追加課税額の試算)

所得のすべてが税率15%の金融所得だった場合を想定し、合計所得金額が50億円のケースで試算してみましょう(復興特別所得税や所得控除は考慮せず)。

項目計算式金額
通常の所得税額50億円 × 15%7億5,000万円
最低所得税額(50億円 - 3.3億円) × 22.5%10億5,075万円
追加納税額10億5,075万円 - 7億5,000万円3億75万円

この試算の通り、所得50億円の場合、3億円を超える追加課税が発生することになります。

参照:国税庁 特定の基準所得金額の課税の特例ー極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置ー

4. 対象者と除外所得

(1).年間合計所得が30億円以上の超富裕層が中心

ミニマムタックスは、超富裕層に対する追加徴税措置であり、課税対象者は全国で200人〜300人ほどと推測されています。

財務省の試算によれば、所得の内訳が平均的な場合、追加負担が生じる平均的な所得水準は年間合計所得30億円以上とされています。給与所得や事業所得など、累進課税の対象となる所得のみで収入を得ている納税者は、既に22.5%以上の所得税を負担しているため、所得がどれだけ高額であってもミニマムタックスの対象にはなりません

ミミレイドン

平均的な所得構成では30億円程度からが対象となる目安なのですね。対象者めちゃくちゃ少ないじゃないですか。安心しました。

(2).金融所得中心の場合は10億円超から対象になる可能性

所得の全てが株式譲渡所得や長期の不動産譲渡所得など、税率15%の分離課税対象である場合、年間所得がおおよそ10億円前後からミニマムタックスの対象となる可能性があります

特に、金融所得の割合が高い超富裕層ほど、この制度の影響を大きく受けます

(3).NISAなど非課税制度の所得は除外

基準所得金額の計算において、以下の所得は対象外として除外されます。

  • NISA(少額投資非課税制度)による譲渡所得や配当所得(上限1,800万円まで)。
  • スタートアップへの再投資に係る非課税措置(エンジェル税制)の適用により非課税とされる金額(上限20億円程度)。
  • 源泉分離課税の対象となる所得(預貯金の利子など)。

これらの非課税制度を積極的に活用することは、ミニマムタックスの影響を軽減するための重要な対策となります。

5. 実務・経済への影響

(1).金融所得中心の資産家に大きな影響

ミニマムタックスは、主に株式譲渡益、配当、不動産譲渡益など、金融所得の割合が高い超富裕層に新たな税負担を課します。これにより、これらの所得で実効税率を抑えていた資産家や投資家は、事実上、最低22.5%の所得税負担が求められるようになります

(2).M&Aや不動産譲渡のタイミング調整が必要になる可能性

この制度の導入は、M&A(企業売却)や事業承継を検討している企業オーナーに特に大きな影響を与えます。株式譲渡による売却益(譲渡所得)が一度に高額になると、ミニマムタックスの対象となる可能性があるためです。

実務的な対応策として、以下のタイミング調整が重要となります。

  1. 2024年中の駆け込み完了
    ミニマムタックス適用前の2024年12月31日までに株式譲渡を完了させることで、制度の適用を回避する。
  2. 譲渡益の複数年分散
    譲渡益を複数年(数年間)に分けて計上し、年間所得を3.3億円以下に抑えることを検討する。ただし、契約内容によっては一括譲渡とみなされるリスクがあるため、専門家との綿密な計画が必要です。

(3).給与・事業所得中心の高所得者は影響が限定的

前述の通り、給与所得や事業所得のみで高所得を得ている方は、既に累進課税により22.5%以上の所得税を負担しているため、この制度による追加課税は発生しません。影響は、あくまで金融所得の割合が高い超富裕層に限定されます。

6. 国際比較と日本の位置づけ

(1).米国・欧州での類似制度との比較

ミニマムタックスの仕組みは、米国のAMT(Alternative Minimum Tax:代替的最低税)の導入理念や計算方法に類似しています。AMTは、納税者が税優遇措置を駆使して合法的に税負担を免れることを防ぐ目的で設けられた制度です。

(2).日本の税制改革における「資産所得倍増プラン」との関連

ミニマムタックスは、高所得者層の公平性是正策である一方で、中間層の投資意欲を阻害しないという重要な役割も担っています。

もし、この公平性是正のために金融所得税率を一律に引き上げていた場合、中間層を含めたすべての投資家に増税となり、政府が掲げる「資産所得倍増プラン」の実現に向けた動きに水を差すことになりかねません。

ミニマムタックスは、極めて高所得な層にのみ課税対象を限定することで、このリスクを回避し、大多数の投資家にとっては朗報となる制度設計となっています。さらに、スタートアップへの再投資(エンジェル税制)の優遇措置と組み合わせることで、「アメとムチ」のインセンティブ付けとなり、スタートアップへの資金供給が活性化する可能性も期待されています。

7. まとめ

(1).ミニマムタックスは「超富裕層に対する最低限の税負担確保」が目的

ミニマムタックスは、所得が1億円を超えると税負担率が下がる「1億円の壁」を是正し、年間所得3.3億円超の超富裕層に対し、最低22.5%の所得税負担を確保することを目的とした制度です。

(2).一般投資家や中小企業経営者への直接的影響は限定的

給与所得や事業所得中心の高所得者や、一般の投資家にとっては、直接的な追加課税の影響は限定的です。この制度は、金融所得の割合が高い限られた超富裕層をピンポイントで対象としています。

(3).今後の資産運用・事業承継における留意点を提示

この制度が適用される可能性のある資産家や企業オーナーの皆様は、今後の資産運用や事業承継において、以下の点を留意し、事前の計画と専門的なアドバイスが不可欠となります。

留意すべき対策       詳細
M&A/譲渡時期の検討株式譲渡益や不動産譲渡益が単年で高額になる場合、2025年以降の課税率上昇を避けられるよう、譲渡時期や分割譲渡のスキームを慎重に検討する。
非課税制度の活用NISAや、スタートアップ再投資に係る非課税措置(エンジェル税制)といった除外所得の枠を最大限に活用する。
納税資金の確保M&Aや高配当戦略により追加納税が生じる年に備え、納税資金を事前に準備する。

ミニマムタックスは複雑な制度であり、特にM&Aや相続対策など、個別具体的な資産戦略に組み込むには、税理士による高度な判断が求められます。税制改正に正確に対応し、最善の資産戦略を構築するためにも、専門家との連携を早期に開始することをお勧めします。

新屋賢人

いかがでしたでしょうか。
この改正は金融所得課税のあり方に大きな影響を与えるものです。従来、金融所得のみを対象とした増税は限定的でしたが、今回は超富裕層を明確にターゲットとしています。今後、制度の適用範囲が拡大する可能性もあり、金融所得を有する方にとっては注視すべき改正といえるでしょう。制度の導入を知っておくだけでも備えになります。

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この記事を書いた人

町田市にあるコムレイド税理士事務所の代表税理士の新屋賢人です。大学卒業後、中堅税理士法人で5年間、業界最大手である国際四大会計事務所(BIG4)のEY税理士法人で8年間、計13年間の実務経験があります。
30代ですが、すでに法人・個人問わず幅広い業務を経験しております。BIG4という業界最大手で得た経験・知識を生まれ育った街に還元したいという強い思いから独立を決めました。

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