【町田市の税理士が解説】令和8年度税制大綱の概要について:法人課税編

新屋賢人

新年あけましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。なお、本日、2026年1月1日にコムレイド税理士事務所を開業いたしましたことをご報告いたします。お世話になった地元地域への恩返しとして、地域経済を活性化させるべく、日々精進してまいりますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。

ミミレイドン

ボス、記念すべき令和8年(2026年)元旦のテーマはなんでしょうか?

新屋賢人

今朝は、2025年12月19日(金)に公表された「令和8年度税制改正大綱」のうち、法人課税編として、法人に影響がある主な論点の概要を整理していきたいと思います。

ミミレイドン

この記事は、2025年12月19日に公表された「令和8年度税制改正大綱」速報に基づいています。今後の国会審議等により細部が変更される可能性があるため、実務にあたっては必ず最新の法令をご確認ください。

目次

1. はじめに

令和8年度税制改正大綱の最大のトピックは、物価上昇に対応する形で、基礎控除や給与所得控除など個人向けの控除額が段階的に引き上げられる点かもしれません

しかし、ビジネスの現場ではそれ以上に「大胆な設備投資」や「戦略的な研究開発」への優遇が新設される一方で、賃上げや投資に消極的な企業には厳しい制限が課されるなど、「動く企業には手厚く、動かない企業には厳しく」というメッセージが鮮明になっています。本日は2025年12月19日(金)に公表された「令和8年度税制改正大綱」のうち、法人課税編として、法人に影響がある主な論点の概要を整理していきたいと思います。

参照:令和8年度税制改正大綱

2. 設備投資促進税制の強化

この制度は、政府が掲げる「強い経済」の実現に向け、企業の大規模かつ高付加価値な設備投資を強力にバックアップするために新設された、まさに「攻めの経営」を支える減税カードです。

(1).制度の概要:「即時償却」か「税額控除」

この制度の最大の特徴は、一定の要件を満たす設備投資をした際、「即時償却」または「税額控除」のどちらか有利な方を選べるという点です。

  • 特別償却(即時償却): 取得価額の全額(100%)を、買ったその年度に一気に経費(損金)にできます。
  • 税額控除: 取得価額の7%(建物などは4%)を、法人税額から直接差し引けます

    ※控除額は当期の法人税額の20%が上限ですが、使い切れない分は3年間の繰越しが可能です。

(2).対象となる法人(制度充足要件)

この「アメ」を手にするには、産業競争力強化法の改正を前提とした、かなり高いハードルを越える必要があります。,

① 投資計画の「国による確認」

まず、設備投資を行う前に、経済産業大臣から「投資計画」の確認を受けなければなりません

② 投資規模と収益性の「数字」

計画には以下の基準を満たすことが求められます。,,

  • 投資総額
    原則35億円以上(中小企業者などは5億円以上であること。
  • 収益性(ROI)
    年平均の投資利益率(見込み)が15%以上という、高収益なビジネスモデルであること。
  • 意思決定
    取締役会などの適切な機関で決定された計画であること。

③ 賃上げ・国内投資要件(大企業など)

中小企業以外の場合、前期より所得が増えている年度には、「一定の賃上げ(前年比1%〜2%以上)」と「国内設備投資」の両方を満たさないと、この減税は受けられません

(3).対象となる資産と規模

単なる備品の買い替えではなく、生産性に直結する一定規模以上の資産が対象です。

  • 機械装置: 1台160万円以上
  • 建物: 1棟1,000万円以上
  • ソフトウェア、器具備品、構築物など: それぞれに金額基準(70万円〜120万円以上)があります。

※ただし、事務用の備品や本店・寄宿舎・福利厚生施設、貸付け用の資産などは対象外となります。

(4).制度の注意点:知らないと損をする「落とし穴」

  • 事前の計画確認が必須
    設備を購入した後に「これ使いたい!」と言っても手遅れです。必ず事前に大臣の確認を受ける必要があります
  • 他の制度との重複不可
    「地域未来投資促進税制」「カーボンニュートラル投資促進税制」「中小企業経営強化税制」などとは、同じ投資計画期間中に併用することはできません
  • 5年以内の供用
    大臣の確認を受けた日から5年以内に取得・事業供用しなければなりません。
新屋賢人

今回の新制度は、まさに「本気で大規模な投資をして、稼ぐ力を高める企業」にスポットライトを当てたものです。
特に、これまで減税対象になりにくかった「建物」も対象に含まれる点は、新しい工場や拠点を構えようとしている経営者の皆様にとって、非常に強力な武器になるはずです。
投資計画を練る際は、ROI 15%という高い基準を意識しながら、税理士とタッグを組んで、緻密なシミュレーションを行ってください!

3. 研究開発税制の見直し

今回の改正は、AIや量子技術といった世界をリードする技術への「異次元の支援」と、一方で海外への資金流出を抑えるための「適正な制限」という、非常にメリハリの利いた内容になっています。

(1).制度の概要(改正内容を含む)

研究開発税制とは、企業が新しい技術や製品を生み出すために使った「試験研究費」の一定割合を、法人税から直接差し引ける(安くできる)制度です。今回の改正では、以下の4つの大きな柱が打ち立てられました

  • 「戦略技術領域型」の新設
    国の成長に不可欠な特定分野(AI、先端ロボット、量子、半導体、バイオ、宇宙など)の研究開発に対し、試験研究費の額の40%(大学などとの共同研究なら50%)の税額控除ができることとなります。また、登記の法人税額の10%を上限として、この控除限度額を超過する額は3年間の繰越しが可能となります。
  • 「一般型」の控除率カーブ見直し
    令和9年4月1日以後に開始する事業年度から、研究費の増減に応じた計算式が変更されます。最大14%の控除率を受けられる特例も3年延長されました。
  • 「中小企業向け」の繰越制度
    中小企業向けの税制においても、税額控除枠を使い切れなかった場合に、3年間の繰り越しができる制度が新たに導入されました。これにより、一時的に赤字でも将来の黒字化に備えて研究を続けるメリットが大きくなります。
  • 「海外委託研究費」の制限
    国内の研究人材や拠点を守るため、海外への委託研究費のうち、税額控除の対象に含められる割合が段階的に縮小(最終的に50%まで)されます。ただし、海外での臨床試験(治験)などは例外として現行通り認められます。

(2).対象となる法人(制度充足要件)

どの法人でも一律に優遇されるわけではなく、特に新しい「戦略技術領域型」を適用するには厳しいハードルがあります。

  • 戦略技術領域型
    産業技術力強化法の「重点研究開発計画」について、2029年3月31日までに認定を受ける必要があります。 AIや量子など、指定された「重点産業技術」に該当することが必須条件です。
  • 中小企業技術基盤強化税制
    従来通り中小企業者が対象ですが、繰越控除を適用する年度には、試験研究費が比較試験研究費(前期比)を超えていることが条件となります。
  • 大企業に対する「足切り」ルール
    一定の規模以上の企業がこれらの減税を受けるには、「1%〜2%以上の賃上げ」と「国内設備投資」の両方を満たす必要があります。どちらか一方でも欠けると、新設された戦略型も含め、研究開発減税が受けられなくなります。

(3).注意点

この制度は非常に強力ですが、以下の点に注意しないと「思っていた減税が受けられない」という事態に陥ります。

  • 重複適用の不可
    新設された「戦略技術領域型」は、一般型やオープンイノベーション型、中小企業向け税制と重複して適用することはできません。どの類型が自社にとって最も有利か、慎重なシミュレーションが必要です。
  • 「試験研究費」の定義が難しい
    何でもかんでも研究費になるわけではありません。デザインの変更や既存製品の単なる模倣、マーケティング調査などは対象外です。どこまでが「技術的な新規性」を伴う研究なのか、社内でルール化し、証拠(エビデンス)を残すことが実務上極めて重要です。
  • 手続きのタイミング
    戦略型を適用するには事前に計画の「認定」が必要です。遡って適用することはできないため、プロジェクト開始前からの準備が不可欠となります。

4. 賃上げ促進税制の廃止及び見直し

これまで多くの企業が活用してきたこの制度ですが、今回の改正で「大企業・中堅企業は廃止」、「中小企業は継続」という、非常に明快な「アメとムチ」の選別が行われました。

(1).制度の概要(改正内容を含む)

賃上げ促進税制とは、従業員の給料を前年より増やした企業に対して、その増やした分の一部を法人税から直接差し引いて(減税して)くれる制度です。

しかし、足元ではバブル期以来と言われる高い賃金上昇が続いています。「国が応援しなくても、もう自分たちで賃上げできるよね?」という判断から、大企業と中堅企業向けの措置は廃止されることが決まりました

まさに、「自走できる人には補助輪(減税)を外し、まだ苦しい中小企業にはしっかり残す」という設計図に書き換えられたのです。

(2).対象となる法人(制度充足要件)

企業規模によって、運命がハッキリ分かれました。

① 大企業(全企業向け措置)

結論:令和8年(2026年)3月31日をもって「廃止」

新屋賢人

3月決算の会社なら、2026年3月期の申告がラストチャンスになります。

② 中堅企業(従業員2,000人以下など)

結論:令和9年(2027年)3月31日をもって「廃止」

最終年度(令和8年度)の厳格化: 廃止までの最後の1年間は、ハードルが上がります。

  • 原則10%控除: 賃上げ率が4%以上(現行3%)必要になります。
  • 上乗せ: 5%以上の賃上げで+5%6%以上の賃上げで+15%の税額控除が加算されます。

③ 中小企業

結論:現行制度を「維持」

新屋賢人

深刻な人手不足の中で「防衛的賃上げ(無理をしてでも給料を上げないと人が辞めてしまう状況)」に苦しんでいる現状に配慮し、引き続きサポートが受けられます。今後も積極的に活用していきましょう!

ミミレイドン

賃上げ促進税制については、こちらの記事で解説しておりますので、よろしければご覧ください。
【町田市の税理士が解説】中小企業向け賃上げ促進税制とは?適用要件や税額控除率について

(3).全企業共通の注意点:教育訓練費の「上乗せ」が消える!

ここが実務上の最大の落とし穴です。 これまで「社員教育にお金を使えば、さらに減税額アップ!」というルールがありましたが、企業規模を問わず、教育訓練費の上乗せ措置は廃止されます。

廃止理由ですが、会計検査院の調査により、「教育訓練費を少し増やしただけで、増分以上の減税が受けられてしまう」という不合理なケースが指摘されたためです。今後は「教育」ではなく「純粋な給料の増額」だけで判定することになります。

(4).実務のポイント

  • 「特定税額控除」の足切りルールに注意(大企業)
    大企業が研究開発税制などの他の減税を受けたい場合、この「賃上げ促進税制」が廃止された後も、「継続雇用者の給与を1%〜2%以上増やしていること」という条件が残ります
  • 繰越税額控除(中小企業)
    中小企業に限り、赤字で減税枠を使い切れなかった場合、5年間の繰越しが可能です。これは維持されるので、赤字でも賃上げを検討する価値はあります。

5. オープンイノベーション促進税制

スタートアップへの出資を促す制度が、M&Aによる成長をより重視する形へ拡充されます。

(1).制度の概要(改正内容を含む)

この制度は、会社(青色申告法人)がスタートアップ企業の株式を取得した場合、その取得価額の25%以下(新設類型は20%以下)を「特別勘定」として経理処理することで、実質的にその金額を損金(経費)として処理できるという、非常に強力な節税メリットがある制度です。

令和8年度の改正では、以下の重要なアップデートが行われました。

  • 適用期限の2年延長
    制度の期限が令和10年(2028年)3月31日まで延長されました。
  • M&A型の拡充(分割取得の追加)
    これまでは「一度に50%超の議決権を獲得」することが基本でしたが、新たに「取得から3年以内に議決権の過半数を有する見込み」であれば、発行済株式を他者から買い取るケースも対象に追加されました。この新類型の損金算入率は20%となります。
  • 合併時の税負担の緩和
    スタートアップを吸収合併した場合、これまでは積み立てた特別勘定を一度に全額益金(利益)に戻して課税されていましたが、改正後は5年間で均等に分割して利益に計上できるようになり、急激な税負担を抑えられるようになりました。
  • 取得価額要件の引き上げ
    インフレや投資規模の拡大を踏まえ、新規出資型の下限が従来の1億円から2億円以上に、M&A型(一括取得)が5億円から7億円以上にそれぞれ引き上げられました。

(2).対象となる法人(制度充足要件)

この制度を利用できる法人は、青色申告書を提出する内国法人です。 ただし、大企業がこのメリットを受けるためには、いわゆる「ムチ」の規定(特定税額控除規定の不適用措置)をクリアしなければなりません。

  • 賃上げ・投資要件
    前期より所得が増えている場合、「前年比1%〜2%以上の賃上げ」と「国内設備投資」の条件を満たさないと、この損金算入の特例は受けられなくなります。
  • 出資先スタートアップの条件
    設立10年未満(一定の赤字企業などは15年未満)の未上場企業など、一定要件を満たす「特別新事業開拓事業者」である必要があります。

(3).注意点

非常に魅力的な制度ですが、実務上は以下の点に注意が必要です。

  • 「特別勘定」の取り崩し(課税の復活)
    この制度は永久に税金が免除されるわけではなく、一定期間内(新規出資型は3年以上、M&A型は5年以上)に対象株式を売却したり、議決権が過半数を下回ったりした場合は、その時点で特別勘定を取り崩して利益として計上(課税)しなければなりません
  • 重複適用の不可
    同一の銘柄の株式を再度取得する場合、すでにこの制度を適用しているものは対象外となります。 また、他の投資減税制度との重複適用にも制限があるため、事前のシミュレーションが不可欠です。
  • 事務手続きの負担
    制度の適用を受けるためには、経済産業大臣の証明を受ける必要があり、その後の状況報告などの事務作業も発生します。

6.中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例の見直し

令和8年度(2026年度)税制改正大綱の中でも、中小企業の経営者様や個人事業主の皆様にとって最も身近で影響の大きい「少額減価償却資産の特例の見直し」について、確認していきましょう。

中小企業の皆様、PC等の備品を一括で経費にするチャンスが広がりました。今回の税制改正大綱では、長年据え置かれてきた金額基準の見直しが大きなテーマとなっています。特に、パソコンや備品などを買った際に一括で経費にできる「少額減価償却資産の特例」は、デジタル化や設備投資を加速させたい中小企業にとっての「最強の節税ツール」です。

インフレの影響で、以前は30万円未満で買えていたものが値上がりして一括経費にできなくなっていた現状に対し、政府が「アメ」を用意してくれた形になります。

(1).制度の概要(改正内容を含む)

この制度は、一定の要件を満たす中小企業者等が、少額の資産を取得した際に、通常の減価償却(数年かけて経費化)を待たずに、買ったその年度に全額を経費(損金)に算入できるという特例です。

今回の改正による主な変更点は以下の3点です。

  • 取得価額基準の引き上げ
    即時償却が可能な資産の金額が、従来の「30万円未満」から「40万円未満」へと大幅に引き上げられました。これにより、40万円近くする高性能なサーバーや特殊な業務機器も一括で経費に落とせるようになります
  • 適用期限の延長
    3年間延長され、令和11年3月31日までの間に取得・事業供用したものについて、適用されます。
  • 年間の合計限度額
    適用を受ける事業年度における少額減価償却資産の取得価額の合計額が300万円までという上限については、現行のまま維持されます

(2).対象となる法人(制度充足要件)

制度の恩恵を受けられるのは「中小企業者等」ですが、今回の改正で対象法人の範囲に「絞り込み」が行われました。

  • 対象
    青色申告書を提出する中小企業者、または農業協同組合等です。
  • 従業員数要件の厳格化
    常時使用する従業員の数が、これまでの「500人以下」から「400人以下」(特定法人は300人以下)の法人へと変更されました。従業員数が400人を超える法人については、本特例の対象から除外されるため注意が必要です

(3).注意点

この制度を賢く利用するために、必ず押さえておきたい注意点が3つあります。

  • 償却資産税の申告対象
    国税(法人税・所得税)では一括で全額経費にできますが、地方税である「償却資産税(固定資産税)」の申告対象からは自動的には外れません。この特例を使って即時償却した資産については、適切に償却資産税の申告を行う必要があります。
  • 連動する他制度の基準変更
    本改正に伴い、「中小企業投資促進税制」や「中小企業経営強化税制」における工具、器具及び備品の取得価額要件も、従来の30万円以上から40万円以上へと引き上げられます。他の減税制度との組み合わせを考える際は、この新基準を念頭に置く必要があります。
  • 事業年度が1年未満の場合
    年間300万円の限度額は、事業年度が1年に満たない場合は月数で按分計算されます。
新屋賢人

令和8年度の改正を一言で言えば、「インフレに合わせて、中小企業の設備投資のハードルを下げた」ということです。
高性能なPCや機材を導入する際、「35万円だから一括経費にできない」と悩んでいた経営者の皆様にとって、この「40万円への引き上げ」は非常に強力な追い風になります。

7.まとめ

今回の税制改正は、「挑戦する企業を本気で後押しする」ための仕組みが一気に拡充された内容でした。
設備投資・研究開発・スタートアップ投資など、未来への投資を決断する企業にとっては、これまでにない追い風が吹いています。

一方で、要件を満たさなければ減税が受けられない制度も増えており、“知らなかった”では済まない時代に入っていますので、必ず税理士に相談することをお勧めいたします。
ぜひこの機会に、自社の投資計画や賃上げ方針を見直し、税制を味方につけた戦略的な経営を進めていきましょう。

新屋賢人

上記は、令和8年度税制改正大綱および公表済みの解説資料をもとに、執筆時点の情報を整理したものです。今後の法案審議や政省令・通達の策定により、制度内容や適用要件が変更される可能性があります。実際の適用をご検討の際には、必ず最新の法令・公表資料をご確認のうえ、顧問税理士等の専門家にご相談ください。
相談できる税理士がいない場合には、お気軽にこちらまでお問い合わせください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

町田市にあるコムレイド税理士事務所の代表税理士の新屋賢人です。大学卒業後、中堅税理士法人で5年間、業界最大手である国際四大会計事務所(BIG4)のEY税理士法人で8年間、計13年間の実務経験があります。
30代ですが、すでに法人・個人問わず幅広い業務を経験しております。BIG4という業界最大手で得た経験・知識を生まれ育った街に還元したいという強い思いから独立を決めました。

コメント

コメントする

目次