ミミレイドンボスおはようございます!
今朝のテーマは何でしょうか?



昨日から個人の譲渡所得の税負担を軽減できる特例制度の各論点について確認しておりますので、今朝はその第二弾として10年超所有軽減税率の特例について整理して行きたいと思います。
正式名称は「居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例」といい、10年を超えて所有したマイホーム(自宅)を売却した際に、譲渡所得税の税率を通常よりも低く抑えることができる制度です。



昨日の記事では、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除について整理しておりますので、よろしければこちらの記事をご覧ください。
【町田市の税理士が解説】個人の譲渡所得の税負担を軽減できる特例制度について:居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除(措法35条1項)編
1.譲渡所得とは?基本の仕組みをわかりやすく解説(前回のおさらい)
資産の売却を検討される際に、まず押さえておくべき「原則的な譲渡所得の概念、計算式、および税率」について、プロの視点から分かりやすく解説します。



譲渡所得の基礎知識についてはこちらの記事をご確認ください。
【町田市の税理士が解説】個人の譲渡所得の基礎知識について
(1). 譲渡所得の基本概念
譲渡所得とは、土地、建物、株式、ゴルフ会員権などの資産を売却することによって生じる所得を指します。 単に資産を現金化した金額のすべてに課税されるわけではありません。「その資産をいくらで手に入れ、いくらで売ったか」の差額、つまり売却によって得られた「儲け(利益)」に対して税金がかかる仕組みです。
(2). 原則的な計算式
譲渡所得の金額は、以下の計算式で算出します。
譲渡所得 = 収入金額(売却代金) - ( 取得費 + 譲渡費用 ) - 特別控除額
それぞれの項目の内容は以下の通りです。
- 収入金額
売却によって受け取る代金です。これには、固定資産税・都市計画税の精算金として受け取った金額も含まれます。 - 取得費
その資産を買い入れた代金や、購入時に支払った仲介手数料、登記費用などの合計額です。建物の場合は、所有期間中の減価償却費(価値の減少分)を差し引く必要があります。なお、実際の取得費が不明な場合は、売却価格の5%を取得費(概算取得費)とすることも認められています。 - 譲渡費用
仲介手数料、印紙代、測量費、借家人への立退料、建物解体費など、売却するために直接かかった費用です。 - 特別控除額
今回の記事のテーマであるマイホーム売却時の「3,000万円特別控除」など、一定の要件を満たす場合にのみ利益から差し引ける、非常に強力な節税枠です。
(3). 原則的な税率
譲渡所得は、他の所得と合算せず個別に税額を計算する「申告分離課税」が適用されます。税率は資産の種類や所有期間によって以下のように分類されます。
不動産(土地・建物)の場合
不動産は、売却した年の「1月1日時点」での所有期間によって税率が倍近く変わります。
| 区分 | 所有期間(譲渡年の1月1日時点) | 税率 |
|---|---|---|
| 長期譲渡所得 | 5年を超える | 20.315%(所得税(復興含む)15.315%・住民税5%) |
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | 39.63%(所得税(復興含む)30.63%・住民税9%) |
2.10年超所有軽減税率の特例制度の概要
10年超所有軽減税率の特例(正式名称:居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例、措法31条の3)は、3,000万円特別控除(措法35条1項)と併用が可能である点が大きな特徴です。
制度の内容と適用される軽減税率、および具体例について、確認して行きましょう。
(1). 適用される軽減税率
通常の長期譲渡所得(所有期間5年超)の税率は20.315%ですが、この特例を適用すると、3,000万円特別控除を差し引いた後の「課税長期譲渡所得金額」に応じて、以下のような軽減税率が適用されます。
| 課税長期譲渡所得金額の範囲 | 所得税(※) | 住民税 | 合計税率 |
|---|---|---|---|
| 6,000万円以下の部分 | 10.21% | 4% | 14.21% |
| 6,000万円を超える部分 | 15.315% | 5% | 20.315% |
※所得税には、復興特別所得税として、基準所得税額の2.1%相当が上乗せされています。この特例を適用することで、6,000万円以下の部分については税率が通常の長期譲渡所得より6.105%低減されます。
(2). 具体的な計算例(シミュレーション)
以下に、3,000万円特別控除と軽減税率を併用した場合の具体例を挙げます。
ケースA:譲渡所得が4,000万円・所有期間12年の場合
• 譲渡所得の計算: まず3,000万円の特別控除を適用します。
4,000万円(譲渡益) - 3,000万円(特別控除) = 1,000万円(課税譲渡所得)
• 譲渡所得税の計算: 所有期間が10年超であり、課税所得が6,000万円以下のため、税率は14.21%を適用します。
1,000万円 × 14.21% = 142.1万円
• 効果: 2つの特例を利用しない場合(4,000万円×20.315%=で約812万円)に比べ、約670万円の節税となります。
ケースB:譲渡所得が1億2,000万円(経費控除後)・所有期間25年の場合
• 特別控除の適用:まず3,000万円の特別控除を適用します。
1億2,000万円 - 3,000万円 = 9,000万円(課税譲渡所得)
• 軽減税率の適用: 6,000万円以下の部分と超える部分に分けて計算します。
- 6,000万円以下の部分: 6,000万円 × 14.21% = 852.6万円
- 6,000万円超の部分(3,000万円分): 3,000万円 × 20.315% = 609.45万円
- 税額(上記1+2): 852.6万円 + 609.45万円 = 1,462.05万円
• 効果: 2つの特例を利用しない場合(1億2,000万円×20.315%=約2,437万円)と比較して、1,000万円近い節税効果が得られます。
3. 特例を受けるための主な要件
「10年超所有軽減税率の特例(措法31条の3)」を適用するための主な要件は、大きく分けて「対象となる資産の条件」「所有期間」「売却のタイミング」「買主との関係」「他の特例との適用関係」の5つのポイントがあります。
(1). 対象となる資産の要件
- 日本国内にある自分が住んでいるマイホーム(家屋)、または家屋とともにその敷地(土地)を売ること。
- 別荘、セカンドハウス、趣味・娯楽・保養を目的とした家屋、および一時的な目的での入居(新築期間中の仮住まい等)は対象外です。
(2). 所有期間の要件
売却した年の1月1日時点において、家屋と敷地の両方の所有期間がともに10年を超えている必要があります。
- 「10年超」の数え方
実際の売却日ではなく「売却した年の1月1日」で判定するため、不動産を取得してから11回のお正月(年越し)を迎えていることが目安となります。 - 相続の場合
親などから相続した物件であれば、前所有者の所有期間を引き継ぐことができます。
(3). 売却のタイミングと状況(3年以内など)
• 現在住んでいない場合
住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却する必要があります。
• 家屋を取り壊して更地を売る場合
以下のすべての条件を満たす必要があります。
- 家屋が取り壊された日の属する年の1月1日時点で、所有期間が10年を超えていること。
- 取り壊しから1年以内に土地の譲渡契約を締結し、かつ住まなくなった日から3年目の年の12月31日までに売却すること。
- 取り壊しから譲渡契約までの間、その土地を貸駐車場やその他の事業用として使用していないこと。
(4). 買主(売却先)の制限
売却先が、親子や夫婦、生計を一にする親族、内縁関係にある人、特殊な関係にある法人などの「特別な関係にある人」ではないことが条件です。
(5). 他の特例・制度との関係(併用制限)
• 併用できるもの
居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除(措法35条1項)とは重ねて受けることができます。
• 併用できないもの(選択制)
- 新居での住宅ローン控除
入居した年と「前年・前々年」、「翌年・翌々年・3年後」までの計6年間にこの軽減税率の特例を受ける場合、新居で住宅ローン控除を適用することは原則できません。 - 特定の居住用財産の買換え特例
• 適用の頻度
売却した年の前年、前々年にこの特例を受けていないことが必要です(3年に1度しか利用できません)。



この特例は自動的には適用されず、売却した翌年の2月16日から3月15日までの間に確定申告を行う必要があります。その際、「譲渡所得の内訳書」や不動産の「登記事項証明書」などの添付が必要です。
参照:国税庁タックスアンサー No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例
4. 特例が適用されないケース(適用除外)
個人の譲渡所得における「10年超所有軽減税率の特例(措法31条の3)」は、マイホーム売却時の税負担を軽減する強力な制度ですが、適用を受けるためには上記3で解説したような厳格な要件を満たす必要があります。
上記3の裏返しの内容となりますが、特例が適用されない主なケース(適用除外)を見ていきましょう。
(1). 資産の用途・実態による除外
この特例は「生活の拠点」となっているマイホームが対象であるため、以下のような場合は除外されます。
- 別荘やセカンドハウス
趣味、娯楽、保養を目的として所有する家屋は対象外です。 - 一時的な目的での入居
マイホームを新築する期間中だけの仮住まいとして利用した家屋や、この特例の適用を受けることだけを目的に入居したと認められる家屋は適用できません。 - 所有と居住の不一致
居住用財産の特例は、その不動産を持っている本人がそこに住んでいる場合に受けられるため、例えば「母名義の住宅に別生計の子が住んでいる」といったケースでは、所有者である母は特例を受けられません。
(2). 所有期間の不足
売却時点での所有期間ではなく、税務上の判定基準を満たさない場合は適用されません。
- 判定日(1月1日)時点での期間不足
所有期間は「売却した年の1月1日時点」で判定されます。例えば、2024年中に売却する場合、2024年1月1日時点で所有期間が10年を超えている(2013年12月31日以前に取得している)必要があります。 - 家屋と土地の一方の期間不足
土地の所有期間が10年を超えていても、家屋の所有期間が10年以下である場合は、この特例を適用することはできません。 - 所有期間のリセット
一度売却した自宅を買い戻した場合、所有期間は通算されず、買い戻した日から新たにカウントされます。
(3). 売却先(買主)が特別な関係にある場合
第三者への売却が原則であり、「特殊関係者」への売却は適用除外となります。
- 親族等への売却
配偶者、直系血族(親・子・孫)、生計を一にする親族、および売却後にその家屋で同居する親族への譲渡は認められません。 - 内縁関係・同族会社
婚姻届を出していないが事実上婚姻関係にある者や、本人が支配する同族会社などへの売却も対象外です。
(4). 売却のタイミングと土地利用の制限
住まなくなった後や、建物を取り壊した後の状況によっても適用できなくなります。
- 3年を経過した後の売却
住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却しなかった場合は適用できません。 - 更地売却時の事業転用
家屋を取り壊して土地のみを売る場合、取り壊した後にその土地を貸駐車場や事業用として利用してしまうと、特例は受けられません。 - 更地売却の期限切れ
家屋を取り壊してから1年以内に土地の譲渡契約を締結しなかった場合も適用除外となります。
(5). 他の特例との併用・適用履歴による制限
- 住宅ローン控除との併用不可
新居で住宅ローン控除を受ける場合、売却した旧居でこの特例を適用することはできません。新居に入居した年の「前年・前々年」から「翌年・翌々年・3年後」までの計6年間にこの軽減税率の特例(または3,000万円控除)を受けている場合は、住宅ローン控除の適用除外となります。 - 特定の買換え特例等との重複
特定の居住用財産の買換え特例(措法36条の2)や交換の特例(措法36条の5)など、他の譲渡特例とは選択制であり、重複して受けることはできません。 - 3年以内の再適用
売却した年の前年、前々年にこの特例を受けている場合は適用できません(3年に1度しか利用できません)。



この特例は自動的には適用されません。たとえ要件を満たしていても、売却した翌年の2月16日から3月15日までの間に確定申告を行わなかった場合は、原則として、特例の適用を受けることができません。
5.適用手続と必要書類
「10年超所有軽減税率の特例(措法31条の3)」の適用を受けるための手続と必要書類について、提供された資料に基づき詳しく解説します。
この特例は、要件を満たしていても自動的に適用されることはありません。適用を受けるためには、必ず期限内に適切な手続を行う必要があります。
(1). 適用手続(確定申告)
この特例を受けるには、マイホームを売却した年の翌年2月16日から3月15日までの間に、所轄の税務署へ確定申告を行う必要があります。
- 申告先
納税地の所轄税務署。 - 申告方法
確定申告書を作成し、必要書類を添付して提出します。インターネットを利用した電子申告(e-Tax)も利用可能です。 - 注意点
特例の適用によって納税額が0円になる場合であっても、特例の適用を受ける旨を記載した確定申告書の提出が必要です。
(2). 確定申告に必要な主な書類
申告時には、主に以下の書類を用意・添付する必要があります。
• 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)[土地・建物用]
売却代金や取得費、譲渡費用などを記入する計算明細書です。国税庁のホームページからダウンロードしたり、確定申告書作成コーナーで入力して作成したりできます。
• 売ったマイホーム(家屋や敷地)の登記事項証明書
全部事項証明書など、所有期間が10年を超えていることや所在地を確認するための書類です。
「譲渡所得の特例の適用を受ける場合の不動産に係る不動産番号等の明細書」に不動産番号を記載することなどにより、原本の添付を省略することもできます。
(3). 状況に応じて追加で必要となる書類
個別の状況により、以下の書類の提出も求められます。
• 戸籍の附票の写し(等)
売買契約日の前日において、住民票の住所と売却した資産の所在地が異なる場合などに、その住宅を居住の用に供していたことを証明するために必要です。
• 売却時の売買契約書の写し、譲渡費用の領収書等
譲渡価額や仲介手数料、印紙税などの経費を証明するために必要です。
• 取得時(購入時)の売買契約書の写し、領収書等
不動産の取得費を証明するために必要です。
• 住民票の写し
売却した不動産に居住していたことを証明するために必要です。
• 本人確認書類(マイナンバーカード等)
申告書へのマイナンバーの記載と、本人確認書類の提示または写しの添付が必要です。



手続において最も重要なのは、「売却した年の1月1日時点で所有期間が10年を超えていること」を登記事項証明書等で確認し、「実際に居住していたこと」を住民票や戸籍の附票等で明らかにすることです。
また、この特例は「3,000万円特別控除」と併用できるため、両方の特例を適用する旨を申告書に記載して手続きを進めることになります。
6.まとめ
10年超所有軽減税率の特例(措法31条の3)は、マイホームの譲渡益に対する税率を「6,000万円以下の部分は14.21%」まで引き下げられる、非常にインパクトの大きい制度です。さらに3,000万円特別控除(措法35条1項)と併用できるため、控除で課税譲渡所得を圧縮したうえで、残った部分に軽減税率を適用できる点が最大の魅力といえます。
一方で、適用には「売却年1月1日時点で所有期間10年超」「自宅(居住用)の実態」「転居後3年以内の売却(一定の例外あり)」「親族等への譲渡でないこと」「前年・前々年に同特例を使っていないこと」など、要件が細かく定められています。特に、取り壊して更地で売却するケースや、住宅ローン控除との関係は判断を誤りやすいポイントです。
この特例は自動的に適用されないため、要件を満たす場合でも確定申告が前提になります。売買契約書や取得費・譲渡費用の資料、登記事項証明書などを早めに揃え、控除と軽減税率のどちらも適用する前提で税額シミュレーションを行っておくと安心です。迷う論点があるときは、事前に税理士へ相談し、適用可否の整理と申告書類の整合を確認したうえで手続きを進めましょう。税理士をお探しの方は、お気軽にこちらまでお問い合わせください。

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