ミミレイドンボス、おはようございます!
今朝のテーマは何でしょうか?



個人の譲渡所得の税負担を軽減できる特例制度の第三弾として、特定の居住用財産の買換え特例(措法36条の2)について整理して行きたいと思います。特定の居住用財産の買換え特例(正式名称:特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例)とは、マイホームを売却して新たな住宅に買い換えた際に、一定の要件を満たすことで売却益(譲渡益)に対する課税を将来に繰り延べる(先送りする)ことができる制度です。
この特例は、譲渡益が非課税になるわけではなく、あくまで納税のタイミングを「次に買い換えた家を売却するとき」まで先送りにするもの、つまり、一時的な税負担の軽減であるという点が最大の特徴です。
1.譲渡所得とは?基本の仕組みをわかりやすく解説(前回のおさらい)
資産の売却を検討される際に、まず押さえておくべき「原則的な譲渡所得の概念、計算式、および税率」について、おさらいをしていきましょう。



譲渡所得の基礎知識についてはこちらの記事をご確認ください。
【町田市の税理士が解説】個人の譲渡所得の基礎知識について
1. 譲渡所得の基本概念
譲渡所得とは、土地、建物、株式、ゴルフ会員権などの資産を売却することによって生じる所得を指します。 単に資産を現金化した金額のすべてに課税されるわけではありません。「その資産をいくらで手に入れ、いくらで売ったか」の差額、つまり売却によって得られた「儲け(利益)」に対して税金がかかる仕組みです。
2. 原則的な計算式
譲渡所得の金額は、以下の計算式で算出します。
譲渡所得 = 収入金額(売却代金) - ( 取得費 + 譲渡費用 ) - 特別控除額
それぞれの項目の内容は以下の通りです。
- 収入金額
売却によって受け取る代金です。これには、固定資産税・都市計画税の精算金として受け取った金額も含まれます。 - 取得費
その資産を買い入れた代金や、購入時に支払った仲介手数料、登記費用などの合計額です。建物の場合は、所有期間中の減価償却費(価値の減少分)を差し引く必要があります。なお、実際の取得費が不明な場合は、売却価格の5%を取得費(概算取得費)とすることも認められています。 - 譲渡費用
仲介手数料、印紙代、測量費、借家人への立退料、建物解体費など、売却するために直接かかった費用です。 - 特別控除額
今回の記事のテーマであるマイホーム売却時の「3,000万円特別控除」など、一定の要件を満たす場合にのみ利益から差し引ける、非常に強力な節税枠です。
3. 原則的な税率
譲渡所得は、他の所得と合算せず個別に税額を計算する「申告分離課税」が適用されます。税率は資産の種類や所有期間によって以下のように分類されます。
不動産(土地・建物)の場合
不動産は、売却した年の「1月1日時点」での所有期間によって税率が倍近く変わります。
| 区分 | 所有期間(譲渡年の1月1日時点) | 税率 |
|---|---|---|
| 長期譲渡所得 | 5年を超える | 20.315%(所得税(復興含む)15.315%・住民税5%) |
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | 39.63%(所得税(復興含む)30.63%・住民税9%) |
2.特定の居住用財産の買換え特例の概要
特定の居住用財産の買換え特例(正式名称:特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例)は、マイホームを売却して新たなマイホームに買い換えた際に、一定の要件を満たすことで、本来かかるはずの譲渡所得税の課税を将来に繰り延べる(先送りにする)ことができる制度です。
この制度の重要なポイントは、税金が免除されるわけではなく、あくまで納税のタイミングを「買い換えた住宅を将来売却するとき」まで引き延ばすものであるという点です。
以下に、制度の仕組みを具体例と併せて詳しく説明します。
1. 制度の基本的な仕組み
この特例を適用すると、売却価格と購入価格の関係によってその年の課税対象額が決まります。
- 売却価格 ≤購入価格の場合
売却した年に譲渡所得税はかかりません(譲渡がなかったものとみなされます)。 - 売却価格 >購入価格の場合
その差額分(売った金額-買い換えた金額)を「収入金額」として、譲渡所得を計算し、その分に対してのみ課税されます。
参照:国税庁タックスアンサー No.3355 特定のマイホームを買い換えたときの特例
2. 具体例による仕組みの解説
説明を簡潔にするため、譲渡費用や減価償却を省いた例で解説します。
売却価格 ≤購入価格の場合
【ステップ1:1回目の売却と買い換え】
- 昔、1,000万円で購入したマイホーム(旧居)に10年以上住んだ。
- この旧居を5,000万円で売却した(譲渡益は4,000万円)。
- 新たに7,000万円のマイホーム(新居)を購入した。
• 結果: 売却額(5,000万円)より購入額(7,000万円)の方が高いため、この時点での税金は0円になります。4,000万円の利益に対する課税が将来へ繰り延べられます。
【ステップ2:将来の売却(課税の精算)】
- 数十年後、この新居(7,000万円で購入したもの)を8,000万円で売却した。
- この時の譲渡益は「8,000万 - 7,000万 = 1,000万」ではなく、以前繰り延べた4,000万円を合算します。
- 結果: 合計5,000万円が課税対象となります。
- 理由: 買い換えた住宅の取得費は、実際の購入価格ではなく、「売却した旧居の取得費」を引き継ぐ形で計算されるためです。
売却価格 >購入価格の場合
特定の居住用財産の買換え特例を適用する際、売った金額(譲渡対価)よりも買い換えた金額(取得価額)の方が少ない場合は、その差額を「収入金額」とみなして譲渡所得の計算を行います。つまり、売却代金のうち、買い換えた住宅の購入代金に充てられなかった「手元に残った差額」に対して課税されます。
- 「収入金額」の計算
売った金額 - 買い換えた金額 - 「必要経費」の計算
(売ったマイホームの取得費 + 譲渡費用) × (上記で出した「収入金額」 ÷ 売った金額)
※必要経費は、売った住宅全体の取得費等のうち、今回課税対象となる「差額」に対応する分だけを按分して計算するということです。 - 「譲渡所得」の計算
収入金額 - 必要経費
仮に以下の条件で買い換えたものとした場合の計算をしてみましょう。
- 売ったマイホームの金額: 1億円
- 買い換えたマイホームの金額: 7,000万円
- 売ったマイホームの取得費(元々の購入代金等): 1,000万円
- 譲渡費用(売るためにかかった仲介手数料等): 500万円
① 収入金額の計算
売った金額(1億円)から買い換えた金額(7,000万円)を引きます。
1億円-7,000万円=3,000万円
② 必要経費の計算
売った住宅の元の取得費と経費の合計(1,500万円)のうち、収入金額(3,000万円)に対応する分を按分します。 (1,000万円+500万円)×(3,000万円÷1億円)=450万円
③ 譲渡所得の計算
収入金額から必要経費を引きます。
3,000万円-450万円=2,550万円
この結果、このケースでは2,550万円が譲渡所得として課税対象となります。
参照:国税庁タックスアンサー No.3358 売った金額より少ない金額でマイホームを買い換えたとき
その他注意点
- 税率
この特例を適用して課税される所得は「長期譲渡所得」として扱われ、所得税・復興特別所得税・住民税を合わせて20.315%の税率が適用されます。 - 軽減税率との関係
買換え特例を適用して生じた譲渡所得(上記の例では2,550万円)に対しては、「10年超所有軽減税率の特例」を重ねて受けることはできません。 - 将来の精算
今回課税されなかった残りの利益(上の例では買い換えた7,000万円に含まれる部分)は、将来買い換えたマイホームを売却する時まで課税が繰り延べ(先送り)されます。その際、買い換えた家の取得費は、今回の「売ったマイホームの取得費」を引き継ぐ形で計算されます。
3. 特例を受けるための主な要件
特定の居住用財産の買換え特例(特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例)を適用するためには、売却するマイホーム(譲渡資産)と、新しく購入するマイホーム(買換資産)のそれぞれについて、多くの厳しい要件を満たす必要があります。
主な要件は以下の通りです。
1. 売却するマイホーム(譲渡資産)に関する要件
- 日本国内にある住宅であること。
- 現在住んでいる家、または住まなくなった日から3年目の年の12月31日までに売却すること。
- 売却した年の1月1日時点での所有期間が10年を超えていること。
- 売主の居住期間が通算10年以上であること(継続していなくても通算で10年以上あれば認められます)。
- 譲渡対価(売却価格)が1億円以下であること。なお、共有名義の場合は、それぞれの持分に応じた売却価格で判定します。
- 親子や夫婦、内縁関係者、または特別な関係がある法人など、「特別な関係がある人」への売却ではないこと。
- この特例の対象となる譲渡は、「平成5年4月1日から令和7年12月31日まで」の間に行われること。
2. 購入するマイホーム(買換資産)に関する要件
- 日本国内にある住宅であること。
- 売却した年の前年から翌年までの3年間(売却年の前後1年ずつを含む期間)に取得すること。
- 取得したマイホームが中古住宅である場合、取得の日以前25年以内に建築されたものであること、または一定の耐震基準を満たすものであること。
- 面積要件:
◦ 建物の床面積(居住部分)が50㎡以上であること。
◦ 敷地(土地)の面積が500㎡以下であること。 - 取得したマイホームには、取得した時期に応じて一定の期限までに入居すること(取得した年の翌年末までなど)。
- 省エネ基準:2024年(令和6年)1月1日以降に入居・建築確認を受ける新築住宅などの場合、一定の省エネ基準(断熱等性能等級4以上かつ一次エネルギー消費量等級4以上)を満たす必要があります。
- 建築後使用されたことのない住宅である場合において、令和6年1月1日以後に入居(または入居見込み)であるときには、特定居住用家屋(※)に該当するもの以外のものであること。



特定居住用家屋とは、住宅の用に供する家屋で一定の省エネ基準(断熱等性能等級4以上および一次エネルギー消費量等級4以上)を満たすもの以外のもので、次のイおよびロのいずれにも該当しない家屋をいいます。
イ 令和5年12月31日以前に建築確認を受けているもの
ロ 令和6年6月30日以前に建築されたもの
3. 他の特例との併用制限
- 売却した年、およびその前年・前々年に、「3,000万円の特別控除」や「軽減税率の特例」、「譲渡損失の損益通算・繰越控除」などの適用を受けていないことが必要です。
- この特例を適用した新居については、「住宅ローン控除」を併用することはできません。



居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除や10年超所有軽減税率の特例については、こちらの記事で解説しておりますので、よろしければご覧ください。
居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除(措法35条1項)編
10年超所有軽減税率の特例(低率分離課税)(措法31条の3)編
4. 特例が適用されないケース(適用除外)
特定の居住用財産の買換え特例(特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例)は、非常に強力な節税手段ですが、上記3でも示した通り、適用を受けるための要件が厳しい制度です。上記3と裏返しの記載となりますが、主な適用除外ケースは以下の通りです。
1. 売却するマイホーム(譲渡資産)に関する除外ケース
- 所有期間・居住期間が不足している場合
売却した年の1月1日時点での所有期間が10年を超えていない、または売主の居住期間が通算で10年以上ない場合は適用できません。 - 売却価格が1億円を超える場合
譲渡対価の額が1億円を超える場合は適用外です。なお、夫婦などで共有している場合は、各所有者ごとの売却価格で判定します。 - 住まなくなってから時間が経過しすぎている場合
以前住んでいた家を売る場合、住まなくなった日から3年目の年の12月31日を過ぎて売却したときは対象外となります。 - 特別な関係にある人への売却
親子や夫婦、生計を一にする親族、内縁関係者、同族会社などへの売却(譲渡)は認められません。 - 敷地の一部のみの譲渡
庭先の土地だけを分割して売るなど、家屋を残したまま敷地の一部だけを譲渡する場合は居住用とはみなされず、適用できません。
2. 新しく購入するマイホーム(買換資産)に関する除外ケース
- 面積が要件を満たさない場合
建物の居住部分の床面積が50㎡未満、または土地の面積が500㎡を超える場合は適用されません。 - 取得・入居の期限を守れない場合
売却した年の前年から翌年末までの3年間に取得しなかった場合や、一定の期限(取得した年の翌年末など)までに入居しなかった場合は適用外です。 - 中古住宅で耐震基準を満たさない場合
築後25年を超えている中古住宅で、かつ一定の耐震基準を満たしていないものは対象外です。 - 新築住宅で省エネ基準を満たさない場合
2024年(令和6年)以降に入居・建築確認を受ける新築住宅などで、一定の省エネ基準を満たさない「特定居住用家屋」に該当する場合は適用できません。 - 海外の不動産を購入した場合
売却した資産・購入した資産の双方が日本国内にあることが必須要件です。
3. 他の特例制度との併用・選択による制限
- 「3,000万円特別控除」等との併用
この特例は、以下の制度と重複して適用することはできません。
◦ 居住用財産の3,000万円特別控除
◦ 10年超所有軽減税率の特例
◦ 居住用財産の譲渡損失の損益通算・繰越控除 - 「住宅ローン控除」との関係
この買換え特例を受けた場合、新居について住宅ローン控除を受けることはできません。 - 過去2年間の特例利用
売却した年、その前年、および前々年に「3,000万円特別控除」や「軽減税率の特例」などの適用を受けている場合は、この特例は使えません。
4. その他の注意すべきケース
- 投資用や別荘の買い換え
本人が主として生活の拠点としていた住宅に限られるため、貸付用のアパートや別荘、セカンドハウスの買い換えには適用されません。



買い換えの際は、事前に確定申告のシミュレーションを行い、3,000万円特別控除など他の制度とどちらが有利かを慎重に判断することが重要です。早い段階で税理士に相談しましょう。
5.適用手続と必要書類
特定の居住用財産の買換え特例(特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例)の適用を受けるためには、譲渡した翌年の確定申告期間内(原則2月16日から3月15日まで)に、所轄の税務署へ必要な書類を添えて申告する必要があります。
以下に、適用手続の概要と提出が必要な書類について詳しく説明します。
1. 適用手続のポイント
- 申告時期と場所
マイホームを売却した年の翌年2月16日から3月15日の間に、納税地の所轄税務署へ確定申告を行います。 - 選択の確定
この特例は「3,000万円の特別控除」等との選択制ですが、一度確定申告書を提出した後は、後から特例の選択替えをすることはできないため、事前の検討が重要です。 - 取得予定での申告
申告時にまだ新しい住宅を取得していない場合でも、取得予定として申告が可能です。その場合は「見積額」で計算し、後に取得価額が確定した際や期限内に取得・居住しなかった場合には修正申告等が必要になります。
2. 必要書類
確定申告書には、主に以下の書類を添付する必要があります。
① 共通書類
- 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)[土地・建物用]。
② 売却したマイホーム(譲渡資産)に関する書類
- 売却した資産の登記事項証明書
所有期間が10年を超えていることを証明するために必要です。 - 売買契約書の写し
譲渡対価(売却価格)が1億円以下であることを証明するために必要です。 - 戸籍の附票の写し等
居住期間が10年以上であることを証明するために必要です。特に、住民票の住所と売却資産の所在地が異なる場合や、直近10年以内に住所を異動したことがある場合に提出を求められます。
③ 新しく購入したマイホーム(買換資産)に関する書類
- 買換資産の登記事項証明書、売買契約書、建築請負契約書の写し
資産の取得事実、取得年月日、および居住部分の床面積(50㎡以上)を証明するために必要です。 - 中古住宅の場合
取得日以前25年以内に建築されたものであることを証する書類、または耐震基準適合証明書、建設住宅性能評価書の写しなどが必要になる場合があります。 - 新築住宅(2024年以降入居)の場合
一定の省エネ基準(断熱等性能等級4以上かつ一次エネルギー消費量等級4以上)を満たすことを証する「住宅省エネルギー性能証明書」や「建設住宅性能評価書の写し」などが必要となります。
3. 特殊なケースでの提出書類
- 買換資産をこれから取得する場合(取得予定)
確定申告時に「買換(代替)資産の明細書」を添付します。その後、実際に資産を取得した日から4ヶ月以内に、登記事項証明書や売買契約書の写しなどの証明書類を提出する必要があります。 - 確定申告時にまだ入居していない場合
住まいとして使用を開始する予定年月日などを記載した書類を提出します。
4. 登記事項証明書の添付省略について
土地・建物の登記事項証明書については、「譲渡所得の特例の適用を受ける場合の不動産に係る不動産番号等の明細書」に不動産番号を記載して提出することで、原本の添付を省略することが可能です。
申告漏れや書類の不備があると特例が受けられないリスクがあるため、必要書類が揃っているか事前に十分に確認することが推奨されます。
6.まとめ
特定の居住用財産の買換え特例は、マイホームを買い換える際の譲渡益に対する課税を、将来その買換え住宅を売却するときまで繰り延べできる制度です(非課税になる制度ではありません)。
一方で、所有・居住期間10年以上、売却代金1億円以下、買換資産の取得時期・床面積等の要件に加え、3,000万円特別控除や軽減税率、住宅ローン控除など他の特例との併用制限もあるため、事前のシミュレーションが欠かせません。
適用判断は「どの特例が最も有利か」だけでなく、将来の売却予定やライフプランも踏まえて、要件確認と申告手続を慎重に進めることが重要です。



特定の居住用財産の買換え特例(租税特別措置法第36条の2)の適用期限は、現行の法令において令和7年12月31日までに譲渡を行った個人が対象であると記されています。従って、令和7年中に上記で解説したような買換えがあれば、この特例を受けることができるラストチャンスになりますので、適用可能性がある取引があれば、ご検討されてみてはいかがでしょうか。税理士をお探しの方は、お気軽にこちらまでお問い合わせください。

編.jpg)








コメント