ミミレイドンボスおはようございます!
今朝のテーマは何でしょうか?



今週は個人の譲渡所得の税負担を軽減できる特例制度の各論点について確認しておりますので、今朝はその第四弾として居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除について整理して行きたいと思います。一定の要件を満たせば、譲渡損失を給与所得や事業所得などと損益通算でき、控除しきれない部分は翌年以後3年間繰り越して控除できるというお得な特例となりますので、ご自身のケースが該当していないか確認しましょう。
1.譲渡所得とは?基本の仕組みをわかりやすく解説(前回までのおさらい)
資産の売却を検討される際に、まず押さえておくべき「原則的な譲渡所得の概念、計算式、および税率」について、復習していきましょう。



譲渡所得の基礎知識についてはこちらの記事をご確認ください。
【町田市の税理士が解説】個人の譲渡所得の基礎知識について
(1). 譲渡所得の基本概念
譲渡所得とは、土地、建物、株式、ゴルフ会員権などの資産を売却することによって生じる所得を指します。 単に資産を現金化した金額のすべてに課税されるわけではありません。「その資産をいくらで手に入れ、いくらで売ったか」の差額、つまり売却によって得られた「儲け(利益)」に対して税金がかかる仕組みです。
(2). 原則的な計算式
譲渡所得の金額は、以下の計算式で算出します。
譲渡所得 = 収入金額(売却代金) - ( 取得費 + 譲渡費用 ) - 特別控除額
それぞれの項目の内容は以下の通りです。
- 収入金額
売却によって受け取る代金です。これには、固定資産税・都市計画税の精算金として受け取った金額も含まれます。 - 取得費
その資産を買い入れた代金や、購入時に支払った仲介手数料、登記費用などの合計額です。建物の場合は、所有期間中の減価償却費(価値の減少分)を差し引く必要があります。なお、実際の取得費が不明な場合は、売却価格の5%を取得費(概算取得費)とすることも認められています。 - 譲渡費用
仲介手数料、印紙代、測量費、借家人への立退料、建物解体費など、売却するために直接かかった費用です。 - 特別控除額
今回の記事のテーマであるマイホーム売却時の「3,000万円特別控除」など、一定の要件を満たす場合にのみ利益から差し引ける、非常に強力な節税枠です。
(3). 原則的な税率
譲渡所得は、他の所得と合算せず個別に税額を計算する「申告分離課税」が適用されます。税率は資産の種類や所有期間によって以下のように分類されます。
不動産(土地・建物)の場合
不動産は、売却した年の「1月1日時点」での所有期間によって税率が倍近く変わります。
| 区分 | 所有期間(譲渡年の1月1日時点) | 税率 |
|---|---|---|
| 長期譲渡所得 | 5年を超える | 20.315%(所得税(復興含む)15.315%・住民税5%) |
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | 39.63%(所得税(復興含む)30.63%・住民税9%) |
2.居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除とは
居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除(措法41条の5)とは、マイホームを買い換えた際に、古い家の売却で生じた損失(譲渡損失)を、その年の給与所得や事業所得など他の所得から差し引く(損益通算)ことができ、さらに引ききれなかった損失を翌年以後3年間にわたって繰り越して控除(繰越控除)できる制度です。
本制度は令和6年度税制改正により適用期限が2年間延長され、令和7年(2025年)12月31日までの譲渡が対象となっています。
以下に制度の詳細と具体例を解説します。
(1). 制度の仕組み
- 損益通算
不動産の譲渡損失は、原則として他の所得(給与所得など)と合算できませんが、この特例の要件を満たす場合に限り、マイナスの譲渡所得を他のプラスの所得と相殺して税金を安くできます。 - 繰越控除
損益通算を行ってもまだ損失が残る場合、翌年以後最大3年間(売却した年と合わせて最大4年間)、各年の総所得金額等から控除できます。 - 住民税への適用
この制度は所得税だけでなく、住民税にも適用されます。
(2). 具体例によるシミュレーション
以下のようなケースで、どのように税金が軽減されるか見てみましょう。
【具体例】
- 譲渡損失: 4,000万円(6,500万円で購入した家を2,500万円で売却)
- 各年の給与所得: 1,000万円(毎年一定と仮定)
※ここでいう給与所得は、給与収入から給与所得控除等を差し引いた後の金額です。 - 買換資産: 住宅ローン(10年以上)を利用して新居を購入
| 年分 | 給与所得 | 控除される譲渡損失 | 課税対象所得 | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 売却年 | 1,000万円 | ▲1,000万円 | 0円 | 余った損失3,000万円を翌年へ繰り越し |
| 2年目 | 1,000万円 | ▲1,000万円 | 0円 | 余った損失2,000万円を翌年へ繰り越し |
| 3年目 | 1,000万円 | ▲1,000万円 | 0円 | 余った損失1,000万円を翌年へ繰り越し |
| 4年目 | 1,000万円 | ▲1,000万円 | 0円 | 全ての損失を使い切り |
このように、売却した年とその翌年以降3年間の計4年間にわたり、所得税と住民税がゼロになる可能性があります。



ちなみに、住民税は前年所得を基に課税されるため、実際の軽減は翌年度以後の住民税(所得割)に反映されます。また、住民税には均等割があるため、所得状況等によっては“住民税が完全にゼロ”とならない場合があります。
3. 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の要件
この特例は、マイホームを売却して譲渡損失が生じ、かつ、新たに住宅ローンを利用してマイホームを購入する場合に適用されます。適用を受けるには、以下の譲渡資産(売却する家)と買換資産(新しく買う家)の両方の要件を満たす必要があります。
(1). 譲渡資産(旧居宅)に関する要件
売却するマイホームが以下のいずれかに該当し、かつ、譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えている(国内にある資産に限る)ことが必要です。
- 現に自分が住んでいる家屋であること。
- 以前に住んでいた家屋(住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却するもの)であること。
- 上記いずれかの家屋とともに売却するその敷地や借地権であること。
- 家屋を取り壊した後の敷地(取り壊した日の属する年の1月1日で所有期間5年超、取り壊しから1年以内に譲渡契約、かつ住まなくなった日から3年後の12月31日までに売却などの条件あり)であること。
- 災害により滅失した家屋の敷地(一定の期限までに売却するもの)であること。
(2). 買換資産(新居宅)に関する要件
新しく購入するマイホームは、以下の要件をすべて満たす必要があります。
- 取得時期
譲渡した年の前年1月1日から翌年12月31日までの間に取得すること。 - 床面積
家屋の床面積(登記簿面積)が50平方メートル以上であること。 - 住宅ローン
買換資産を取得した年の12月31日において、その住宅の取得に係る償還期間10年以上の住宅ローンを有していること。 - 居住開始
取得した年の翌年12月31日までに居住の用に供すること、または供する見込みであること。
(3). その他の重要な要件
- 適用期限
譲渡の時期が2025年(令和7年)12月31日までであること。 - 合計所得金額
繰越控除を受ける年の合計所得金額が3,000万円以下であること(3,000万円を超える年は、その年のみ適用不可となります)。 - 譲渡先
親子や夫婦など、「特別な関係」にある者への売却でないこと。 - 他特例の適用制限
売却した年の前年および前々年に、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除や軽減税率の特例などの適用を受けていないこと。
(4). 手続き上の要件
- 確定申告の提出
損益通算を受けるためには、損失が生じた年分の確定申告書を提出する必要があります。 - 連続申告
翌年以降に損失を繰り越す(繰越控除を受ける)ためには、損失が生じた年分から連続して確定申告書(損失申告用)を提出しなければなりません。 - 添付書類
「居住用財産の譲渡損失の金額の明細書」や「住宅借入金等の残高証明書」など、所定の書類を添付する必要があります。
なお、この特例は住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)との併用が可能です。ただし、損益通算や繰越控除によってその年の所得税がゼロになる場合は、その年の住宅ローン控除は適用されず、残りの控除期間について適用を受けることになります。
参照:国税庁タックスアンサー No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)
参照:国税庁タックスアンサー No.3375 「マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」の対象となる「譲渡資産」及び「買換資産」とは
参照:国税庁タックスアンサー No.3376 「マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」の対象となる「特定譲渡」とは
3. 適用除外
(1). 損益通算および繰越控除の「両方」が適用できない場合
以下のいずれかに該当するときは、売却した年の他の所得との相殺(損益通算)も、翌年以降の繰越控除も受けることができません。上記2の適用要件の裏返しとなります。
- 特別の関係がある者への譲渡
旧居宅の売主と買主が、親子や夫婦、生計を一にする親族、売却後にその家屋で同居する親族、内縁関係にある人、特殊な関係にある法人などの「特別の関係」にある場合。また、贈与や出資による譲渡も除外されます。 - 他の特例の利用(前年・前々年)
旧居宅を売却した年の前年および前々年に、以下の特例を適用している場合。
◦ 居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の軽減税率の特例(措法31の3)。
◦ 居住用財産の譲渡所得の3,000万円の特別控除(措法35。ただし、被相続人の居住用財産に係る特例を除きます)。
◦ 特定の居住用財産の買換え・交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例(措法36の2、36の5)。 - 特定居住用財産の譲渡損失特例との重複
旧居宅を売却した年、またはその前年以前3年内の譲渡について、「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算の特例(措法41の5の2)」の適用を受ける(または受けている)場合。 - 他のマイホームでの本特例の適用
売却した年の前年以前3年内に生じた他のマイホームの譲渡損失について、既にこの特例(買換え等の譲渡損失の損益通算)の適用を受けている場合。
(2). 「繰越控除」が適用できない場合
売却した年の損益通算は可能であっても、翌年以降の繰り越しが制限されるケースです。
- 合計所得金額の制限
繰越控除を適用する年の合計所得金額が3,000万円を超える場合。この所得制限は「その年のみ」適用されるため、3,000万円以下の年があればその年は控除を受けられます。 - 住宅ローンの要件
繰越控除を適用する年の12月31日において、新居宅について償還期間10年以上の住宅ローンがない場合。 - 敷地面積の制限
旧居宅の敷地面積が500平方メートルを超える場合、その500平方メートルを超える部分に対応する譲渡損失の金額については、繰越控除を適用できません。
(3). その他の注意点
- 居住実態のない資産
特例を受ける目的で入居したと認められる家屋や、別荘、仮住まいなど、一時的な目的で居住していた家屋の売却には適用されません。 - 確定申告の不備
損益通算の適用を受けるには確定申告書への書類添付が必要であり、繰越控除を継続するには、損失が生じた年以降、連続して確定申告書(損失申告用)を提出しなければなりません。これを失念すると適用を受けられなくなります。
参照:国税庁タックスアンサー No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)
4.適用手続と必要書類
居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例を適用するための申告手続と、必要となる添付書類は以下の通りです。
(1). 申告手続の概要
この特例の適用を受けるためには、譲渡損失が生じた年分から、損失を使い切る年まで継続して手続きを行う必要があります。
- 譲渡損失が生じた年(初年度)
損失が生じた年分の所得税について、この特例の適用を受けようとする旨を記載した確定申告書を、所轄の税務署長へ提出する必要があります。原則として、期限内申告であることが要件となります。 - 翌年以降(繰越期間中)
損益通算を行っても控除しきれなかった損失を翌年以降に繰り越す場合は、その後損失の控除を受ける年分まで連続して確定申告書(損失申告用)を提出しなければなりません。 - 申告時期
譲渡した翌年の2月16日から3月15日までの間に行います。
(2). 初年度(損益通算・繰越控除の適用時)の添付書類
初年度の確定申告には、以下の書類の添付が必須です。
• 特例計算用の書類
- 「居住用財産の譲渡損失の金額の明細書(確定申告書付表)」
- 「居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の対象となる金額の計算書(租税特別措置法第41条の5用)」
• 譲渡資産(売ったマイホーム)に関する書類
- 登記事項証明書や売買契約書の写しなど(所有期間が5年を超えていること、および面積を明らかにするもの)。
- 戸籍の附票の写し等(売った時の住民票上の住所と資産の所在地が異なる場合などに、居住の事実を証明するために必要)。
• 買換資産(新しく買ったマイホーム)に関する書類
- 登記事項証明書や売買契約書の写しなど(取得年月日、家屋の床面積が50平方メートル以上であることを明らかにするもの)。
- 年末における住宅借入金等の残高証明書。
- 居住開始の予定年月日を記載した書類(申告時においてまだ新居に住んでいない場合のみ提出)。
(3). 翌年分以後(繰越控除の適用期間中)の添付書類
翌年以降に繰越控除の適用を受けようとする各年分では、以下の書類を添付します。
- 年末における住宅借入金等の残高証明書。
- 通算後譲渡損失の金額およびその計算の基礎を記載した明細書。
(4). 書類の添付省略に関する特例
一定の条件を満たす場合、一部の書類の添付を省略することが可能です。
- 住宅借入金等の残高証明書
令和6年度税制改正以降、金融機関に対して「住宅取得資金に係る借入金等の年末残高等調書制度」の適用申請書を提出している場合は、確定申告書への残高証明書の添付が不要となりました。 - 登記事項証明書
「譲渡所得の特例の適用を受ける場合の不動産に係る不動産番号等の明細書」に不動産番号を記載して提出することで、登記事項証明書の原本の添付を省略できます。
なお、買換資産の取得が譲渡した年の翌年になる場合は、買換資産に関する書類(残高証明書や登記事項証明書など)をその翌年分の確定申告期限までに提出する必要があります。
参照:国税庁タックスアンサー No.3370 マイホームを買い換えた場合に譲渡損失が生じたとき(マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例)
参照:国税庁タックスアンサー No.3379 「マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」を受けるための申告手続と添付書類等
5.譲渡損失の損益通算及び繰越控除の順序
この特例を適用する場合、所得税の計算において損失を差し引く順番が以下のように定められています。
(1). 譲渡損失が生じた年(損益通算の順序)
マイホームを売却して損失が出た年は、まずその年の他の所得から損失額を控除します。
STEP1. 経常所得内での損益通算
まず、その年分の経常所得(利子、配当、不動産、事業、給与、雑所得)の間で、通常の損益通算の規定による控除を行います。
STEP2. 特例の譲渡損失の控除
次に、この特例による譲渡損失の金額を、以下の所得から順番に差し引きます。
イ 総合短期譲渡所得の金額
ロ 総合長期譲渡所得の金額
ハ 一時所得の金額
ニ 土地等に係る事業所得等の金額
ホ 経常所得の金額
ヘ 山林所得の金額
ト 退職所得の金額
STEP3. 純損失の繰越控除
その上で、前年以前3年内に生じた純損失がある場合は、古い年分から順に控除します。
STEP4. 雑損失の繰越控除
最後に、前年以前3年内に生じた雑損失がある場合は、古い年分から順に控除します。
(2). 繰越控除を適用する年(繰越期間中の順序)
損益通算を行っても控除しきれなかった損失を、翌年以降に繰り越して控除する場合の順序は以下の通りです。
STEP1. 当年の損益通算
まず、その年分に発生している所得や損失の間で、通常の損益通算を行います。
STEP2. 純損失の繰越控除
次に、前年以前3年内に生じた純損失(この特例以外のもの)がある場合は、古い年分から順に控除します。
STEP3. 本特例による繰越控除
その上で、この特例による繰越損失を、以下の所得から順番に差し引きます。
イ 分離長期譲渡所得の金額
ロ 分離短期譲渡所得の金額
ハ 総所得金額
ニ 土地等に係る事業所得等の金額
ホ 山林所得金額
ヘ 退職所得金額
STEP4. 雑損失の繰越控除
最後に、前年以前3年内に生じた雑損失がある場合は、古い年分から順に控除します。
このように、この特例による損失は通常の純損失の繰越控除(青色申告の欠損金など)が行われた後に適用されるという仕組みになっています。
参照:国税庁タックスアンサー No.3382 マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の順序
6.まとめ
居住用財産を買い換えた際に売却損(譲渡損失)が生じた場合でも、一定の要件を満たせば、その損失を給与所得や事業所得などと損益通算でき、控除しきれない部分は翌年以後3年間繰り越して控除できます(譲渡年を含め最大4年間)。
ただし、親族等への譲渡や他の譲渡特例の適用状況、買換資産の床面積・取得時期・住宅ローン要件、繰越期間中の合計所得金額(3,000万円超の年はその年のみ不可)など、細かな要件判定が必要です。
また、繰越控除を受けるには初年度からの申告と翌年以降の連続申告が欠かせません。適用可否と必要書類を早めに確認し、期限内に確定申告を行いましょう。税理士をお探しの方は、お気軽にこちらまでお問い合わせください。

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