【町田市の税理士が解説】確定申告に向けた業種別事業所得の計算の注意点:音楽家編

ミミレイドン

ボス、おはようございます!
今朝のテーマは何でしょうか?

新屋賢人

今朝は確定申告に向けた業種別事業所得の計算の注意点第八弾としまして、音楽家の事業所得について整理して行きたいと思います。

ミミレイドン

個人で活動されている音楽家の方多いですもんね!音楽教室の講師もされていたりしますし。

新屋賢人

音楽家の皆さんは、演奏料や講師料からあらかじめ10.21%の税金が引かれているのを見て、「これは引かれるものだから仕方ない」と諦めてはいませんか?実は、確定申告を正しく行うことは、払いすぎた税金を取り戻し、自分への「1年に1度のボーナス」のような還付金を受け取るための大切な手続きです。
それだけではありません。事業所得として正しく申告することは、社会的にプロの音楽家であることを証明する「プロの証」となり、有事の際の公的支援を受けるための必須条件にもなります。
「数字や事務作業は苦手だから……」と感じる方も多いかもしれません。しかし、楽器の練習や楽曲制作で培った「コツコツと積み上げる力」を持っている音楽家の皆さんは、実は確定申告という作業をやり遂げる桁外れの能力を秘めています。
本記事では、最新のインボイス制度や電子帳簿保存法への対応など、今どきの音楽家が押さえておくべきポイントを整理しました。確定申告を自分の活動を「見える化」し、これからのキャリアをより健やかに継続させていくための前向きなステップとして、一緒に整理していきましょう。

目次

1.事業所得とは?(おさらい)

事業所得とは、農業、製造業、小売業、サービス業、その他の事業から生じる所得を指します。個人のアーティストや音楽家などの自由業、フリーランスとして活動して得る収入もこれに含まれます。

事業所得の概要と計算方法について、各ソースに基づき説明します。

(1). 事業所得の定義と判定基準

事業所得は、自己の責任とリスクにおいて独立して営まれ、営利性・有償性があり、かつ反復継続して行われる業務から生じるものと定義されています。

事業所得と雑所得の区分: 副業程度の規模であれば「雑所得」に分類されますが、本業としてその収入で生活を維持し、社会的地位が客観的に認められる場合は「事業所得」となります。

帳簿の重要性: 2022年分以降、事業所得として認められるためには、原則として帳簿の記帳と保存が必要であることが明確化されました。

(2).事業所得の計算方法

事業所得の基本的な計算式は以下の通りです。

事業所得 = 総収入金額 - 必要経費

さらに、ここから各種の「所得控除」を差し引いたものが「課税所得」となり、これに税率をかけて所得税額を算出します。

総収入金額

売上金だけでなく、仕事に関連する助成金・補助金、特定の業務に対する謝礼、演奏料、講師料、印税なども含まれます。

必要経費

仕事を行う上で直接必要となった支出のことです。音楽家の例では、楽器代、衣装代、スタジオ代、交通費、打ち合わせの飲食費などが挙げられます。

新屋賢人

総収入金額と必要経費の詳細については次章以降で解説します。

(3).青色申告のメリット

事業所得を申告する際、事前に税務署へ届出を行い、一定のルールで記帳を行う「青色申告」を選択すると、税制上の優遇措置を受けられます。

  • 青色申告特別控除
    所得から最大65万円(または55万円、10万円)を控除できます。
  • 純損失の繰越控除
    事業で赤字(損失)が出た場合、その赤字を翌年以降3年間繰り越して、黒字の所得と相殺できます。
  • 少額減価償却資産の特例
    通常10万円以上の資産は減価償却が必要ですが、青色申告者は30万円未満であれば、購入した年に一括で経費に計上できます(この特例には「年間合計300万円まで」という上限があります。)。
  • 損益通算
    事業所得で赤字が出た場合、給与所得など他の所得から差し引くことができ、税負担を抑えられます(雑所得では不可能です)。

(4).手続き

事業所得を得る活動を始める際は、税務署に「開業届」を提出する必要があります。青色申告を希望する場合は、合わせて「青色申告承認申請書」を期限内(原則3月15日まで、または開業から2ヶ月以内)に提出します。

ミミレイドン

事業所得については、こちらの記事で解説しておりますので、宜しければご覧ください。
【町田市の税理士が解説】個人の事業所得の基礎知識について

2.音楽家の収入

音楽家の収入源は非常に多岐にわたり、演奏活動だけでなく教育、制作、権利収入など複数のチャネルを掛け持ちしていることが一般的です。

音楽家の主な収入の内訳を詳しく解説します。

(1).演奏・出演による収入

ステージに立って演奏することや、メディアに出演することで得られる報酬です。

  • 演奏料(ギャランティ)
    コンサート、ライブ、イベントへの出演料のほか、結婚式場やフェリー、祭典などでの演奏依頼による報酬が含まれます。
  • 伴奏・助演料
    他のアーティストのコンサートやコンクール、レッスンでのピアノ伴奏などの謝礼です。
  • メディア出演料
    ラジオやテレビなどへの出演に対する報酬です。
  • とっぱらい
    ライブハウスなどでの演奏後に、当日その場で現金で支払われる報酬を指します。

(2).教育・指導による収入

自身の技術や知識を教えることで得られる報酬です。

  • 講師料
    音楽教室に講師として雇用、または業務委託される場合の報酬です。
  • 個人レッスンの月謝
    自宅やスタジオで個人の生徒を教え、直接受け取るレッスン料です。
  • 講習会・セミナー料
    特定の技芸や知識を教える講演や指導に対する謝金です。

(3).制作・クリエイティブ活動による収入

楽曲の提供や、録音物の制作に関わる報酬です。

  • 作曲・編曲料
    クライアントの依頼に応じて曲を作ったり、アレンジしたりすることへの対価です。
  • 原盤収入
    自ら制作した音源(原盤)の利用から生じる収入です。
  • レコーディング吹込料
    レコードやテープなどの録音、映画のナレーションなどの吹き込みに対する報酬です。

(4).権利収入(印税)

著作権や著作隣接権に基づいて支払われる継続的な収入です。

  • 著作権印税
    作詞家・作曲家に支払われる著作権使用料です。カラオケ、CM、映画、ドラマ、パチンコ機などで楽曲が使用された際に発生し、JASRACなどの管理団体を通じて分配されます。
  • 原盤印税
    CDの売上枚数などに応じて支払われる印税です。
  • 出版印税・原稿料
    楽譜や音楽関連書籍の出版、雑誌への寄稿などから得られる収入です。

(5).物販・配信・その他の収入

  • CD・グッズ売上
    自身のCD、音源データ、オリジナルグッズの販売利益です。
  • 音楽配信収入
    SpotifyやApple Musicなどのサブスクリプションサービス、YouTubeなどでの再生数に応じた収益です。
  • 投げ銭(チップ)
    ライブ配信やコンサートでの「投げ銭」による直接的な支援です。
  • 助成金・補助金
    国や自治体、文化団体などから、芸術活動の継続やプロジェクトに対して支給されるお金です。
  • 賞金
    コンクールでの入賞や、懸賞の入賞金です。
  • ファンからのプレゼント
    貴金属などの高価な物品をプレゼントとして受け取った場合も、税務上は収入(所得)の対象として注意が必要です。
新屋賢人

音楽家がこれらの収入を得る際、相手先が企業や教室であれば、あらかじめ源泉所得税(原則10.21%)が差し引かれた金額を受け取ることが多くあります。なお、税率については、原則10.21%となりますが、1回100万円を超える部分は20.42%となります。

3.音楽家の売上原価と棚卸

音楽家における売上原価(仕入)と棚卸は、主にCDの自主制作オリジナルグッズの販売を行っている場合に発生する重要な会計処理です。

実務上のポイントや税務・会計の処理について、詳しく説明します。

(1).売上原価の基本的な考え方

売上原価とは、「その年に売れた商品に対応する仕入費用」のことです。音楽活動でCDやグッズを制作・販売する場合、制作にかかった費用のすべてがその年の経費になるわけではなく、売れた分だけが経費(売上原価)となり、残った分は「在庫(棚卸資産)」として翌年以降に繰り越されます

計算式は以下の通りです。

売上原価 = 期首商品棚卸高(年初の在庫) + 当期商品仕入高(今年の制作費) - 期末商品棚卸高(年末の在庫)

(2). CD制作における会計処理の注意点

CDを自主制作する場合、会計処理は「原盤(マスター)制作費」と「複製・プレス代」で異なります。

原盤制作費(資産計上)

スタジオ代、エンジニア代、外部ミュージシャンへの演奏料などの原盤を作るための費用は、原則として2年間にわたって減価償却(分割して経費化)します。

複製代・製品原価(棚卸対象)

マスターから複製したCD本体の制作費は、製品の原価となります。

例えば、10万円で200枚制作した場合、1枚あたりの単価は500円となります。
その年に100枚売れ、100枚が手元に残っている場合、売れた100枚分の5万円のみが当期の売上原価(経費)となり、残りの5万円は在庫となります。

新屋賢人

同じマスターで何度も増刷(プレス)しないようなケースでは、原盤制作費もすべて製品原価に含めて計算することもあります。

(3).棚卸(たなおろし)の実務

年度末(12月31日時点)には、必ず棚卸を行う必要があります。

  • 実施内容
    売れ残っているCDやグッズなどの在庫について、「数量」を数え、「在庫金額」を計算します。
  • 証拠の保管
    税務調査の際、在庫の根拠を説明できるように、棚卸表(何を、何個、いくら分持っているかのリスト)を作成して保管しておくことが大切です。

(4).仕入(購入)のタイミングと計上

  • 計上時期
    商品を仕入れたり、制作費を支払ったりしたタイミングで「仕入」または「外注費」として記帳します。
  • クレジットカード決済
    カードで支払った場合は、引き落とし日ではなく、カードを利用した日の属する年の経費(または仕入)として扱います。
新屋賢人

年末に節税目的で大量のグッズを作っても、それが年内に売れなければ在庫(資産)となり、その年の利益を減らす(経費にする)効果はありません。

(5).実務上のポイント

  • 勘定科目の選択
    CD制作費やグッズ作成費は、「仕入」または「外注費」の科目を使用するのが一般的です。
  • 在庫管理
    確定申告の直前に慌てないよう、普段から販売枚数と在庫数を記録しておくことで、正確な所得金額の計算が可能になります。
  • 少額な備品との違い
    10万円未満の消耗品(弦、リード、スティック等)は、購入時に一括で経費にでき、通常は棚卸の必要はありません。

4.音楽家の経費

音楽家の経費は、「その支出が事業(音楽活動)を行う上で直接必要であったか」という点が判断基準となります。

以下に、音楽家の経費として認められる具体的な項目をカテゴリー別に詳述します。

(1).楽器・機材およびメンテナンス費用

音楽活動に不可欠な道具に関する費用です。

  • 楽器・機材の購入費
    ギター、ピアノ、管楽器、エフェクター、アンプ、譜面台、マイク、レコーディング機材などが含まれます。
  • 消耗品・部品
    弦、リード、ピック、スティック、カポタスト、掃除用クロス、電池、オイルなど。
  • メンテナンス・修理費
    ピアノの調律、楽器の修理、弓の張り替え、調整費用など。
  • ソフトウェア・デジタル機材
    DAW(作曲ソフト)、音源・プラグイン、楽譜作成ソフト、音楽制作のためのPC、楽譜閲覧用のタブレットなど。

(2).演奏・制作・出演に関する費用

ステージや制作現場で発生する実費です。

  • 衣装・メイク代
    ステージ衣装(ドレス、タキシード、靴など)や髪飾り、アクセサリー、舞台用の特殊メイク・化粧品。ただし、明らかに仕事専用である必要があります。
  • スタジオ・会場費
    練習スタジオ代、レコーディングスタジオ代、ライブハウスのレンタル料、合わせ(リハーサル)会場費。
  • 制作費
    自主制作CDの原盤制作費(エンジニア代等)、プレス代、オリジナルグッズの製作費。
  • 外注費・謝礼
    伴奏者や助演者への謝礼、ミックス・マスタリングの依頼費用、仮歌の依頼料。
  • 著作権使用料
    JASRAC等へ支払う著作権使用料。

(3). 教育・研究・スキルアップ費用

自身の技術向上や情報収集に要する費用です。

  • レッスン・セミナー費
    自身の専攻楽器のレッスン代、ボイストレーニング代、指導法セミナーの受講料。
  • 新聞図書費
    楽譜、教材、音楽専門誌、参考となる書籍。
  • 研究資料費
    インプットのためのCD・音源データ購入費、音楽配信サービス(Spotify/Apple Music等)のサブスク代、他人のコンサートのチケット代。
  • 会費
    PTNA(ピティナ)や二期会などの団体・コミュニティの年会費。

(4).営業・広告宣伝・事務費用

活動を広めるための経費です。

  • 宣伝費
    チラシ・名刺の印刷代、SNS広告(Instagram/Facebook等)の費用、プロフィール写真の撮影費。
  • 通信費
    インターネット料金、仕事用の電話代、Webサイトのドメイン・サーバー代。
  • 旅費交通費
    レッスンやリハーサル、本番会場への移動費、ツアー中の宿泊費、機材運搬用のガソリン代や高速代。

(5).地代家賃・光熱費(家事按分)

自宅を練習場や教室にしている場合、「家事按分」を行うことで一部を経費にできます。

  • 家賃
    教室・作業スペースとして使用している面積割合、または使用時間の割合で算出します。
  • 電気代
    電気代は仕事で使用している時間やコンセント数で按分するのが一般的です。
  • 防音工事費
    自室を音響改修した費用も対象となりますが、通常は固定資産として数年かけて経費化(減価償却)します。

(6).高額な買い物の注意点(減価償却)

10万円以上の楽器やPCなどを購入した場合、その年に一括で経費にできず、定められた耐用年数(楽器は原則5年)に応じて数年かけて計上する必要があります(減価償却)。青色申告者の場合、30万円未満であれば購入した年に一括で経費にできる特例があります(この特例には「年間合計300万円まで」という上限があります。)。

参照:主な減価償却資産の耐用年数表
参照:減価償却資産の耐用年数表
参照:国税庁タックスアンサー No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例

ミミレイドン

ちなみに、ストラディバリウスのような、時の経過によって価値が減少しない(むしろ上がる)名器は減価償却できません。

新屋賢人

経費を計上するためには、領収書やレシートを必ず保管しておかなければなりません。領収書が出ない交通費などは、日時、区間、目的、金額を詳細に記録(出金伝票等)しておく必要があります。

5.確定申告の際の音楽家ならではの注意点

音楽家が確定申告を行う際には、収入の多様性や特殊な経費、そして大幅な所得変動に対応するための特例など、音楽家ならではの注意点がいくつかあります。

注意すべきポイントと特殊な添付書類について詳しく解説します。

(1).確定申告における音楽家特有の注意点

多岐にわたる収入と「とっぱらい」の管理

音楽家の収入は演奏料、講師料、印税、物販など多岐にわたります。特にライブハウス等で当日現金で支払われる「とっぱらい」は、支払側から支払調書が届かないケースも多いため、自分で領収書の控えを作成し、誰から・いつ・いくら受け取ったかを正確に記録しておくことが不可欠です。

楽器の減価償却と「名器」の例外

10万円以上(青色申告で特例を受ける場合は30万円以上)の楽器や機材は、一括で経費にできず、原則として5年かけて減価償却します。

ミミレイドン

何度も言いますが、ストラディバリウスなどの希少価値が高い名器は、「時の経過により価値が減少しない」とみなされ、減価償却(経費化)が認められません

衣装・メイク代の判断基準

ステージ衣装や舞台用メイク用品は経費になりますが、「明らかに仕事専用であること」や、プライベートと併用するメイク用品であれば、按分割合の根拠を説明できるようにしておくのが望ましいです。

自宅の「家事按分」

自宅を練習場や教室にしている場合、家賃や電気代を「教室として使用している面積の割合」や「仕事で使っている時間の割合」で按分して経費計上します。

新屋賢人

実家が持ち家の場合は親に払う「家賃」は経費にできません。

ミミレイドン

家事按分については、こちらの記事で解説しておりますので、宜しければご覧ください。
【町田市の税理士が解説】個人事業主(フリーランス)の経費の家事按分について

源泉徴収税の還付

音楽事務所や教室からの報酬は、あらかじめ約10%の税金が引かれている(源泉徴収)ことが多いです。所得が低い場合、確定申告をすることでこの払いすぎた税金が戻ってくる(還付)可能性があるため、申告は音楽家にとって大きなメリットとなります。

(2).音楽家ならではの特殊な書類(添付・保管)

通常の申告書(第一表・第二表)や決算書に加え、音楽家が検討すべき特殊な書類があります。

  • 変動所得・臨時所得の平均課税の計算書
    楽曲のヒットなどで多額の印税収入が急激に発生した場合、この書類を提出することで、所得を5年間に分散したと仮定して税率を下げる「平均課税(変動所得の特例)」を受けられる可能性があります。
  • 業務での使用状況を示す資料(写真など)
    高額な楽器や、自宅の防音室、特定の衣装などを経費・資産として計上する際、税務署からの確認に備えて、実際に業務で使用している様子を写真で記録しておくと、事業関連性の証明として有効です。
  • 出金伝票(しゅっきんでんぴょう)
    領収書が出ない冠婚葬祭の包み金(仕事関係)や、領収書のない交通費などを記録した自作の伝票です。「支払先、日付、金額、内容」を明記して保管します。
ミミレイドン

その他、取引先の企業や事務所から送られてくる支払調書(しはらいちょうしょ)については、 確定申告書への添付は現在不要ですが、申告書作成時の収入金額や源泉徴収税額の確認のために重要です。必ず保管し、届かない場合は自分で請求書や通帳、支払明細等から集計しましょう。

新屋賢人

音楽家の確定申告は判断が難しい項目が多いため、不安な場合は音楽業界に詳しい税理士にスポット(単発)で相談するのも一つの手です。

6.音楽家が税務調査で指摘されるポイント

音楽家が税務調査で指摘を受けやすいポイントは、主に「経費の妥当性と証拠」「家事按分の根拠」「所得区分の判定」の3点に集約されます。具体的な指摘ポイントを詳しく解説します。

(1).経費計上に関する指摘ポイント

税務署は、支出が「事業を行う上で直接必要であったか」を厳格に判断します。

  • 私的な支出の混入
    日常でも着用できる普段着や私服おしゃれ目的の美容院代・ネイル代などは、生活費とみなされ否認されるリスクが高いです。
  • 領収書・証拠書類の不足
    レシートや領収書がない支出は経費として認められにくいため、保存が不可欠です。
  • 会食費の不適切な計上
    割り勘にしたにもかかわらず、全員分の領収書をもらって経費に入れる行為は脱税とみなされます。
  • 高額楽器の減価償却
    10万円以上の楽器は一括経費にできず、数年かけて減価償却する必要があります。ただし、ストラディバリウスのような希少価値が高く、時の経過で価値が減少しない名器は、減価償却(経費化)自体が認められません。
  • 事業関連性の説明不能
    ストレス解消目的で購入した楽器など、仕事での使用実態がないものは否認されます。使用状況を写真などで記録しておくことが対策として有効です。

(2).家事按分(プライベートとの併用)に関する指摘

自宅で練習やレッスンを行う音楽家にとって、最も指摘されやすい項目です。

  • 按分率の根拠不足
    家賃や光熱費を「なんとなく」の割合で計算していると指摘されます。使用面積や使用時間といった具体的な数値に基づく合理的な説明が求められます。
  • 必要以上に高い按分率
    実態を無視して意図的に按分率を高く設定し、経費を水増ししていると判断されると修正を求められます。
  • 生計を一にする親族への家賃
    同じ財布で生活している家族(持ち家の親など)に支払う家賃は、原則として経費にできません。
  • 特定の品目の按分
    栄養ドリンクなど「事業に必要」という主張が多義的に捉えられるものは、税務署との間で議論になりやすいポイントです。

(3).収入の申告漏れと所得区分の指摘

  • 「とっぱらい」やネット収益
    当日現金で受け取る出演料(とっぱらい)や、YouTubeなどのネット収益は、少額であっても税務署は把握可能であり、申告漏れを厳しくチェックされます。
  • 事業所得と雑所得の区分
    2022年分以降、帳簿の保存がない場合は原則として「雑所得」として扱われます。また、記帳していても「収入が僅少(300万円以下かつ主たる収入の10%未満)」であったり、営業努力をせず赤字が続いていたりする場合、趣味の延長(雑所得)とみなされ、他所得との損益通算が否認されることがあります。
  • 歌手活動の実態判断
    ライブ回数が多くても、関係者との交流やスポンサー探しなどのビジネス的な活動が不足していたり、主たる収入が別の給与所得であったりすると、「事業」として認められないケースがあります。

(4).その他事務的な不備

  • 振替納税やサブスクの処理
    5年分のサーバー代を一括で支払っても、その年分しか経費にできないといった「期間」の概念の誤りも指摘の対象になります。
  • インボイス登録後の義務
    インボイス番号を取得したにもかかわらず、消費税の確定申告を失念していると指摘を受けます。
新屋賢人

税務調査で指摘を受けないためには、日頃から「いつ、誰と、何の目的で」支出したかを帳簿やカレンダーに詳細に記録し、客観的な証拠を残しておくことが重要です。

7.まとめ

確定申告は、音楽家にとって単なる「義務」ではなく、自らの活動を「プロの事業」として確立させるための大切なステップです。 最後に、今回お伝えした内容の重要なポイントを振り返りましょう。

  • 「プロの証」としての確定申告
    事業所得として正しく申告することは、社会的にプロの音楽家であることを証明するだけでなく、公的な支援や給付金を受けるための必須条件となります。
  • 「還付金」というメリット
    演奏料や講師料からあらかじめ引かれている源泉所得税は、確定申告を行うことで、払いすぎた分が手元に戻ってくる可能性があります。
  • 「青色申告」を最大限に活用
    最大65万円の特別控除や、30万円未満の楽器の一括経費算入、赤字の3年間繰り越しなど、青色申告には音楽活動を支える強力な節税メリットが数多く用意されています。
  • 自身の活動を「見える化」する
    年に一度、収支を振り返ることは、現在の自分の立ち位置を客観的に把握し、来年以降のキャリアプランや「自分らしい働き方」を考える貴重な機会になります。
新屋賢人

音楽家のみなさんは、日々の練習や創作で培った「コツコツと積み上げる力」を持っています。 その力を少しだけ事務作業に向けることで、大切なお金を守り、より安心して創作活動に打ち込める環境を作ることができるはずです。
もし「自分一人では不安」と感じる場合は、音楽業界に明るい税理士にスポット相談したりするのも賢い選択です。 正しい知識を持って、プロフェッショナルとしての第一歩を自信を持って踏み出しましょう。
みなさんの素晴らしい音楽活動が、お金の面でも健やかに継続していくことを心から応援しています。
もし税理士をお探しの場合には、お気軽にこちらまでお問い合わせください。

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この記事を書いた人

町田市にあるコムレイド税理士事務所の代表税理士の新屋賢人です。大学卒業後、中堅税理士法人で5年間、業界最大手である国際四大会計事務所(BIG4)のEY税理士法人で8年間、計13年間の実務経験があります。
30代ですが、すでに法人・個人問わず幅広い業務を経験しております。BIG4という業界最大手で得た経験・知識を生まれ育った街に還元したいという強い思いから独立を決めました。

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