ミミレイドンボス、おはようございます!
今朝のテーマは何でしょうか?



昨日は付加価値割の概要について整理しましたので、今朝は付加価値割の報酬給与額について整理して行きたいと思います。



報酬給与額の論点、まだあるんですね。



報酬給与額に入れるか入れない、恐らく、外形標準課税の付加価値割で、いちばん迷うのが“現金じゃない給与”の判定です。
社宅、食事、保険料、通勤手当、企業年金…。会計上は福利厚生費でも、税務上は給与課税になることがあり、さらに外形標準課税では“二重計上”を避けるための独自ルールも出てきます。
今朝は、報酬給与額の判定軸を「所得税(給与課税)×法人税(損金算入)」で整理しつつ、社宅や保険、手当、掛金など“間違えやすい例外”を一気に確認していきます。



外形標準課税の①概要や②所得割③付加価値割(概要)④報酬給与額(前編)については、こちらの記事で解説しておりますので、宜しければご覧ください。
【町田市の税理士が解説】法人事業税・外形標準課税とは?①概要編
【町田市の税理士が解説】法人事業税の外形標準課税とは?②所得割編
【町田市の税理士が解説】法人事業税の外形標準課税とは?③付加価値割の概要編
【町田市の税理士が解説】法人事業税の外形標準課税とは?④付加価値割の報酬給与額:前編
付加価値割の報酬給与額:中編
1.付加価値割とは?(一昨日のおさらい)
法人事業税の付加価値割(ふかかちわり)は、資本金1億円超の法人などを対象とした「外形標準課税」の一部で、法人が事業活動によって生み出した「付加価値の大きさ」に対して課される税金です。
企業の利益(所得)ではなく、給与の支払いや賃借料の支払いといった事業規模(活動量)を基準にするため、赤字であっても納税義務が生じるのが最大の特徴です。
(1). 課税の仕組みと計算方法
付加価値割の課税標準(税額計算の基礎となる金額)は、「付加価値額」と呼ばれます。これは、以下の2つの要素の合計額です。
付加価値額=収益配分額+単年度損益
① 収益配分額
事業活動から生じた利益を、労働や資本の提供者にどう分配したかを示す指標で、以下の3つの合計です。
- 報酬給与額: 役員や従業員への給与、賞与、退職金などの総額。
- 純支払利子: 支払利子から受取利子を差し引いた金額(マイナスの場合は0)。
- 純支払賃借料: 土地・家屋の支払賃借料から受取賃借料を差し引いた金額(マイナスの場合は0)。



今朝もこの報酬給与額について、次章以降で詳しく整理していく予定です。
② 単年度損益
その事業年度の所得(税務上の利益)です。ただし、繰越欠損金を控除する前の金額を使います。
もし赤字(欠損)の場合は、収益配分額からその赤字分を差し引いて付加価値額を計算します(全体がマイナスになれば課税標準は0円)。
(2). 税率
- 標準税率:1.2%
- ただし、各都道府県の条例により、これより高い税率(超過税率)が適用される場合があります(例:東京都などでは1.26%など)。
(3). 対象となる法人
原則として、資本金の額(または出資金の額)が1億円を超える普通法人が対象です。
※2025年度以降の税制改正により、過去に外形標準課税の対象だった法人が減資して資本金1億円以下になっても、「資本金+資本剰余金」が10億円を超える場合などは対象として残る仕組みが導入されています。



令和6年度税制改正による外形標準課税の対象法人の変更については、こちらの記事で解説しておりますので、宜しければご覧ください。
【町田市の税理士が解説】2024年度(令和6年度)税制改正でどう変わった?外形標準課税の対象法人について
(4). 重要な特徴と特例
- 赤字でも課税される
給与や家賃を支払っている限り「収益配分額」が発生するため、たとえ会社の利益が赤字であっても、付加価値割の納税が必要になるケースが一般的です。 - 雇用安定控除(負担軽減措置)
多くの雇用を維持している企業に配慮し、「報酬給与額」が「収益配分額」の70%を超える場合は、その超える部分を課税標準から控除できる特例があります。 - 会計上の扱い(損金算入)
法人事業税の「所得割」は「法人税、住民税及び事業税」として処理されますが、この「付加価値割」(および資本割)は、事業を行うためのコストとみなされ、「販売費及び一般管理費(租税公課)」として計上されます(損金算入可能です)。



雇用安定控除額=報酬給与額−収益配分額×70%(マイナスは0)として算定し、付加価値額の算定上控除します。



付加価値割の概要については一昨日のブログ記事で解説しておりますので宜しければご覧ください。
【町田市の税理士が解説】法人事業税の外形標準課税とは?③付加価値割の概要編
2.付加価値割の報酬給与額とは?[定義](昨日のおさらい)
外形標準課税(付加価値割)の課税標準となる「報酬給与額」の定義と範囲について解説します。
(1). 報酬給与額の基本的な定義
報酬給与額とは、雇用関係またはこれに準ずる関係に基づいて提供される労務の対価として支払われるものをいいます。 原則として、所得税法において「給与所得」または「退職所得」とされるものが該当します。
- 対象者
役員(非常勤を含む)、正規従業員だけでなく、契約社員、パートタイマー、アルバイト、臨時雇いなど、名称を問わず雇用関係にあるすべての者が対象です。 - 支払形態
定期・定額(月給など)であるか、不定期・業績比例(賞与、歩合給など)であるかを問いません。
(2). 報酬給与額に含まれるもの
具体的には、以下の項目が報酬給与額に含まれます。
- 給与・賞与・退職金
報酬、給料、賃金、賞与、退職手当など。 - 現物給与(経済的利益)
金銭以外の物や権利で支給されるもので、所得税で給与所得・退職所得として課税され、かつ法人税で損金算入されるもの(例:食事の提供、自社製品の支給など)。 - 年金掛金等
確定給付企業年金、企業型確定拠出年金、中小企業退職金共済などの掛金で、法人が拠出するもの。
※ただし、制度移行に伴う移管金や事務費掛金は除かれます。
(3). 報酬給与額に含まれないもの(除外項目)
以下の項目は、報酬給与額には含まれません。
- 法定福利費(事業主負担分)
健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料などの会社負担分は、強制的な公的負担であるため含まれません。 - 通勤手当・在勤手当(非課税分)
所得税法上で非課税とされる金額(実費弁償的な部分)は除かれます。 - 請負代金
労務の対価ではなく「仕事の完成」に対する対価であるため、原則として含まれません(ただし、実態が雇用関係と同じである「名目上の請負」は給与とみなされます)。 - 社宅の賃借料
法人が借り上げて従業員に貸している社宅の家賃は、「支払賃借料」として扱われるため、給与課税される経済的利益があっても報酬給与額には含めません。 - 福利厚生費
慶弔費やレクリエーション費用などで、給与所得とされないものは含まれません。



一方で、以下のような場合には、通勤手当(またはその相当額)が報酬給与額に含まれる、あるいは結果的に含まれて計算されることがあります。
①所得税法で定められた非課税限度額(たとえば公共交通機関の利用者で月額15万円など)を超えて支給された通勤手当は、その超過部分が「給与」として課税対象になります。したがって、この超過部分については「報酬給与額」に含まれます。
②出向元からの請求額(給与負担金)において、『給与本体』と『通勤手当(非課税分)』が明確に区分されていない場合は、出向先において全額が報酬給与額となります。 (ただし、契約や請求書等で非課税とされる通勤手当相当額が明確に区分されている場合には、その金額を報酬給与額から除外することができます。)
③派遣労働者を受け入れている法人は「派遣会社に支払う金額(派遣料)に75%を乗じた金額」を報酬給与額として計算します。この派遣料の中に、派遣労働者の通勤交通費相当額が上乗せされていたとしても、その交通費部分だけを抜き出して除外することはできず、一律で「総額の75%」として計算されます。そのため、結果的に通勤費相当額の一部が報酬給与額に算入されることになります。
(4). 特殊な取扱い
① 労働者派遣(人材派遣)
労働者派遣法等に基づく派遣契約の場合、特例計算が行われます。
- 派遣受入法人(派遣先)
「派遣契約料 × 75%」を報酬給与額に加算します。 - 派遣元法人
「派遣契約料 × 75%」を報酬給与額から控除します。
② 出向
出向者に対する給与は、形式的な支払者にかかわらず、実質的な負担者の報酬給与額となります。
- 出向元が給与を支払い、出向先が「給与負担金」を出向元に支払っている場合、その負担金部分は出向先の報酬給与額となり、出向元では控除します。
③ 計上時期(資産計上分)
原則として「法人税の損金に算入される事業年度」に計上しますが、
3.役員または使用人のために給付する金銭以外の物又は権利その他経済的利益の取り扱い
外形標準課税の報酬給与額における「役員または使用人のために給付する金銭以外の物、権利、その他経済的利益(いわゆる現物給与)」の取り扱いについて解説します。



結論から申し上げますと、現物給与は原則として「所得税で給与・退職所得として課税され」かつ「法人税で損金(費用)になる」ものであれば、報酬給与額に含まれます。ただし、社宅などの重要な例外があります。
(1). 原則的な取り扱い
役員や従業員に対して支給される金銭以外の経済的利益は、以下の2つの要件を両方満たす場合に限り、報酬給与額に含まれます。
- 所得税法上の扱い: 給与所得 または 退職所得 として課税されるものであること。
- 法人税法上の扱い: その事業年度の所得計算上、損金の額(費用)に算入されるものであること。



これに該当する場合、勘定科目が「給与」でなく「福利厚生費」や「旅費交通費」などで処理されていても、報酬給与額に含める必要があります。
(2). 報酬給与額に含まれる具体例
以下のような経済的利益で、上記の要件を満たすものは対象となります。
- 食事の支給
従業員への食事の提供による経済的利益。 - 自社製品の支給・低額譲渡
自社製品を無償または低い価格で販売した場合の利益。 - 生命保険料の会社負担分
会社が契約者となり、役員・従業員を被保険者とする生命保険(養老保険・定期保険など)の掛金のうち、給与所得として課税される部分。 - その他
記念品の贈呈、無利息貸付による利益、個人的費用の会社負担、持株会奨励金など。
(3). 報酬給与額に含まれない例外(重要)
所得税で給与課税されるものであっても、外形標準課税独自の理由により除外されるものがあります。
① 借上社宅に係る経済的利益
会社が他から借り上げた住宅を、役員や従業員に「社宅」として安く貸している場合、その差額(経済的利益)は所得税では給与所得となります。 しかし、報酬給与額には含めません。



理由としては、会社が支払う家賃はすでに「純支払賃借料」として課税標準に含まれているため、ここで報酬給与額にも含めると二重課税になってしまうからです。
② ストック・オプション
1. 報酬給与額に「含まれない」ケース(税制適格ストック・オプションなど)
いわゆる「税制適格ストック・オプション」に該当する場合、役員や従業員が権利を行使して株式を取得しても、発行した法人側では給与としての損金(経費)は発生しません。 法人税法上、損金に算入される金額がないため、外形標準課税の報酬給与額にも含まれません。
2. 報酬給与額に「含まれる」ケース(税制非適格ストック・オプションなど)
税制適格の要件を満たさない「税制非適格ストック・オプション」や、事前交付型の株式報酬(特定譲渡制限付株式など)の場合、役員や従業員が権利を行使したタイミングや譲渡制限が解除されたタイミング等で、法人側でその経済的利益に相当する額を「給与等」として損金算入できる場合があります。 このように、法人税法上で給与・報酬等として損金に算入された金額については、外形標準課税の「報酬給与額」に含まれることになります。
(4). 自社所有の社宅の場合(注意点)
上記①の例外は「借上社宅(会社が家賃を払っている場合)」の話です。 会社が自ら所有している社宅を従業員に安く貸している場合の経済的利益は、「純支払賃借料」の問題が生じないため、原則通り報酬給与額に含まれます。



基本的に、給与課税+損金算入なら「報酬給与額」に入れることになりますが、借上社宅の場合は、給与課税されても「報酬給与額」からは外す(支払賃借料で課税済みのため)。一方で、自社寮の場合は、給与課税されるなら「報酬給与額」に入れることになります。



借上社宅の提供により経済的利益が生じる場合、所得税では“給与として課税されるケース”と“所定の家賃を徴収していれば課税されないケース”がありますが、いずれにせよ外形標準課税の計算では、借上社宅に関しては『純支払賃借料』との関係(重複計上)に配慮した取扱いが論点になるということですね。
4.養老保険定期保険定期付養老保険等の保険料の取り扱い
外形標準課税(付加価値割)の報酬給与額における「養老保険、定期保険、定期付養老保険等の保険料」の取り扱いについて解説します。



結論から申し上げますと、法人が支払ったこれらの保険料のうち、所得税において「給与所得」または「退職所得」として課税されるものは、報酬給与額に含まれます。



法人契約の保険に関する税務論点については、こちらのブログ記事で解説しておりますので宜しければご覧ください。
【町田市の税理士が解説】法人契約の保険に関する税務論点:Part1導入
【町田市の税理士が解説】法人契約の保険に関する税務論点:Part2【入口】損金算入の可否と割合
【町田市の税理士が解説】法人契約の保険に関する税務論点:Part3 給与認定と【出口】保険金・解約返戻金の入金時の取り扱い
(1). 基本的な考え方
法人が自己を契約者とし、役員または使用人(これらの親族を含む)を被保険者とする生命保険(養老保険、定期保険、定期付養老保険など)に加入して保険料を支払う場合、その支払額が所得税法上、給与所得または退職所得として課税されるものであれば、労働の対価としての性質を持つため、報酬給与額として取り扱います。
これは、以下の保険についても同様の基準で判断します。
- 個人年金保険
- 介護費用保険
- 長期の損害保険 など
(2). 保険種類ごとの具体的な取り扱い
法人税法基本通達等の取扱いに照らし、報酬給与額(給与課税)となる主なケースは以下の通りです。
(1) 養老保険(生死混合保険)
死亡時にも満期時にも保険金が支払われる保険です。
- 報酬給与額になる場合
- 死亡保険金・生存保険金(満期金)の受取人が、被保険者(役員・使用人)またはその遺族である場合
この場合、支払った保険料の全額が給与とみなされるため、報酬給与額に含まれます。 - 特定の者のみを対象とする場合(いわゆるハーフタックスプランの例外)
通常、死亡保険金受取人が遺族、生存保険金受取人が法人の場合、保険料の1/2は損金(福利厚生費等)、1/2は資産計上となります。しかし、役員や特定の従業員のみを対象としている場合は、損金算入分が「給与」とみなされるため、その部分は報酬給与額に含まれます。
- 死亡保険金・生存保険金(満期金)の受取人が、被保険者(役員・使用人)またはその遺族である場合
(2) 定期保険(死亡保険)
一定期間内の死亡に対してのみ保険金が支払われる、いわゆる掛け捨ての保険です。
- 報酬給与額になる場合:
- 特定の役員・使用人のみを被保険者とし、死亡保険金の受取人をその遺族としている場合
この場合、支払った保険料は給与とみなされるため、報酬給与額に含まれます。
- 特定の役員・使用人のみを被保険者とし、死亡保険金の受取人をその遺族としている場合
(3) 定期付養老保険
養老保険に定期保険(特約)を付加したものです。
- 取り扱い
保険料が「養老保険分」と「定期保険分」に区分されている場合は、それぞれの区分に応じて上記(1)(2)の基準で判断します。なお、区分されていない場合は、全体を養老保険として取り扱います。



これらの保険料が報酬給与額になるかどうかは、「その保険料が、対象となる役員や従業員に対する給与(現物給与)として所得税が課税されているか」を確認することで判断できます。つまり、
給与所得・退職所得として課税 → 報酬給与額に含む
福利厚生費(非課税)や資産計上 → 報酬給与額に含まない
という整理です。
5.通勤手当及び在勤手当の取扱い
外形標準課税(付加価値割)の「報酬給与額」における通勤手当および在勤手当の取扱いについて解説します。



結論から申し上げますと、これらの手当のうち所得税法上で「非課税」とされる金額は報酬給与額に含めません。一方で、非課税限度額を超える部分(課税される部分)は報酬給与額に含まれます。
(1). 基本的な考え方
報酬給与額は、原則として所得税において給与所得または退職所得とされるものをベースとしますが、実費弁償的な性格を有する手当については、労働の対価としての性格が薄い(または利益を受けていない)と考えられるため、報酬給与額の対象から除外されます。
(2). 通勤手当の取扱い
- 非課税分(除外)
通勤に必要な交通機関の利用や交通用具の使用のために支給される手当のうち、一般の通勤者につき通常必要であると認められる部分(所得税法施行令第20条の2に規定する非課税限度額)に相当する金額は、報酬給与額に含めません。 - 課税分(対象)
非課税限度額を超える金額(所得税で給与課税される部分)については、報酬給与額に含まれます。



消費税の取扱いについて、注意が必要です。具体的には、報酬給与額の計算は消費税等を除いた金額を基礎とするため、課税通勤手当に消費税が含まれている場合は、その消費税相当額を控除した金額を計上します。
(3). 在勤手当(海外勤務者)の取扱い
- 非課税分(除外)
国外で勤務する役員または使用人に対し、国内勤務時に受けるべき通常の給与に加算して支給する手当(在勤手当)のうち、勤務地の物価や生活環境の違いによる生活費の増加等を補填するもの(所得税法施行令第22条に規定する金額)は、報酬給与額に含めません。- これは、海外生活に伴う実費弁償的な性格を有し、国内勤務と比較して利益を受けるものではないためです。
- 非居住者に対する給与であっても、国内所得税法上の非課税手当に相当する額、または勤務地の国の法令により非課税となる額などを基礎として判断し、実費弁償分を除外します。
- 課税分(対象)
上記の実費弁償的な範囲を超える手当については、報酬給与額に含まれます。



通勤手当と在勤手当の取り扱いをまとめると、以下の表の通りになります。
| 項目 | 所得税の扱い | 報酬給与額の扱い |
|---|---|---|
| 通勤手当(通常必要と認められる範囲内) | 非課税 | 含まれない |
| 通勤手当(限度額超過分) | 給与所得 | 含まれる(※消費税抜き) |
| 在勤手当(生活費補填等の実費弁償分) | 非課税 | 含まれない |
| 在勤手当(超過分) | 給与所得 | 含まれる |
6.報酬給与額となる掛金等の範囲
外形標準課税(付加価値割)の「報酬給与額」に含まれる掛金等(退職金・年金制度等の積立金)の範囲について解説します。
原則として、法人が役員または使用人のために支出する以下の退職金共済や企業年金制度への掛金(事業主負担分)は、将来の労働対価の後払いとしての性質を持つため、報酬給与額に含まれます。
(1). 報酬給与額に含まれる主な掛金等
法令(地方税法および施行令)により、以下の制度に基づいて法人が支出する掛金が対象と定められています。
- 退職金共済制度の掛金
- 中小企業退職金共済(中退共)への掛金
- 特定退職金共済(特退共)への掛金
※ただし、特退共の要件に反して支出するものは、この「掛金」の項目ではなく、給与所得課税される「給与」として報酬給与額に含まれます。
- 確定給付企業年金(DB)の掛金
- 規約に基づいて支出する掛金(標準掛金、特別掛金など)。
- 積立不足の解消等のために支出する掛金も含まれます。
- 確定拠出年金(DC)の掛金
- 企業型年金の事業主掛金。
- 個人型年金(iDeCo)への事業主掛金(いわゆるiDeCo+/中小事業主掛金納付制度による拠出分)。
- 勤労者財産形成(財形)制度の掛金
- 財形給付金契約に基づく信託金等。
- 財形基金契約に基づく信託金等。
- 厚生年金基金の掛金(※代行部分を除く)
- 事業主として負担する掛金のうち、国の厚生年金を代行する部分(免除保険料相当額)を除いた部分(いわゆる加算部分など)。



掛金の中に加入者(従業員)が負担する部分が含まれている場合は、その相当額を除きます(法人の負担ではないため)。
(2). 特殊なケースの取り扱い
- 退職給付信託
法人が退職給付信託を設定し、その信託財産から企業年金の掛金が支払われた場合、法人が支払ったものとみなして報酬給与額に含まれます。 - 要件違反の掛金(特退共・適格年金)
特定退職金共済や適格退職年金の要件を満たさない契約に基づいて支出された掛金は、「掛金」としては扱われませんが、拠出時に個人の給与所得として課税されるため、結局は「給与」として報酬給与額に含まれます。



基本的に、「法人が負担する企業年金・退職金共済への掛金(事務費や公的年金代行部分を除く)」は報酬給与額になると理解しておくと整理しやすいです。
7.報酬給与額とならない掛金等
外形標準課税(付加価値割)の報酬給与額に含まれない(対象とならない)掛金等について解説します。
企業が従業員のために支出する掛金等のうち、将来の給付(年金や退職金)の原資となるものは原則として報酬給与額に含まれますが、「公的な社会保険料」や「事務費」、「制度間の移行に伴う移管金」などは報酬給与額から除外されます。
主な除外項目は以下の通りです。
(1). 法定福利費(事業主負担分)
法律で事業主に負担が義務付けられている社会保険料等は、強制的な公的負担であり、任意に拠出される企業年金等とは性格が異なるため、報酬給与額には含まれません。
報酬給与額に含まれないもの
- 健康保険料
- 介護保険料
- 厚生年金保険料(政府に支払うもの)
- 雇用保険料
- 労働者災害補償保険料(労災保険料)
- 児童手当拠出金
- 障害者雇用納付金 など



お客様からの質問が多い論点として、社会保険料の取り扱いがあります。
結論から申し上げますと、社会保険料が「従業員負担分(給与天引き)」か「会社負担分(法定福利費)」かによって取り扱いが異なります。
1. 従業員負担分(給与から天引きされる社会保険料)
従業員に対して支給する給与から天引きされている社会保険料相当額(従業員負担分)は、報酬給与額に含まれます。理由としては、報酬給与額は、原則として所得税において「給与所得」とされるものをベースに計算します。給与所得は、社会保険料や源泉所得税などが控除(天引き)される前の「総支給額(額面金額)」を指すため、給与の一部として従業員が負担している社会保険料分を報酬給与額から差し引くことはできません。
2. 会社負担分(法定福利費の事業主負担分)
一方で、法人が会社として負担する社会保険料相当額(法定福利費の事業主負担分)は、報酬給与額には含まれません。理由としては、健康保険、介護保険、厚生年金、雇用保険、労働者災害補償保険などの会社負担分は、法令で事業主に拠出が義務付けられた強制的な「公的負担」です。そのため、労務の提供に対する「労働の対価」として任意に拠出される給与等とは性質が異なるものとして扱われ、報酬給与額の対象外となります。
(2). 厚生年金基金の「代行部分」
厚生年金基金の掛金のうち、国の厚生年金を代行している部分(免除保険料に相当する額)については、実質的に法定福利費(公的年金)と同じ性質であるため、報酬給与額には含まれません。
したがって、計算上は、厚生年金基金への掛金総額から、この代行部分を控除した額を報酬給与額とします。
(3). 年金制度の「事務費掛金」
確定給付企業年金や厚生年金基金などで、年金給付や一時金の原資(将来従業員が受け取るお金)ではなく、基金等の運営・管理のための費用(事務費、会議費、人件費など)として支出する「事務費掛金」は、報酬給与額には含まれません。
※これらは労働の対価としての性質を持たないためです。
(4). 制度移行に伴う「移管金(資産の移換)」
退職金・年金制度の変更に伴い、積み立てていた資産を別の制度へ移す際に生じる移管金は、単なる資産の移動であり、新たな労働の対価ではないため、報酬給与額には含まれません。
- 具体的な例:
- 厚生年金基金制度への移行に伴う積立金の移管額
- 確定給付企業年金制度への移行に伴う積立金の移管額
- 適格退職年金制度から他の制度への移行に伴う移管額
- 特定退職金共済制度への移行に伴う移管額
- 企業型確定拠出年金への移行に伴う移管額
- 運用機関間(信託会社等)の変更に伴う積立金の移管額
(5). まとめ表
| 項目 | 報酬給与額への算入 | 理由 |
|---|---|---|
| 法定福利費(社保・労保の会社負担分) | × 含まない | 強制的な公的負担であるため |
| 厚生年金基金の代行部分 | × 含まない | 国の年金の代行(公的性格)であるため |
| 事務費掛金 | × 含まない | 給付原資ではなく運営経費であるため |
| 制度間の移管金 | × 含まない | 資産の移動に過ぎないため |
| 確定給付企業年金等の掛金(通常分・過去勤務債務分) | ○ 含む | 将来の退職給付(労働対価)の原資であるため |
| 確定拠出年金の事業主掛金 | ○ 含む | 同上 |
8.まとめ
外形標準課税の報酬給与額は、原則として 「所得税で給与(または退職所得)として課税され、法人税で損金算入されるか」 で判断します。
ただし、社宅のように 純支払賃借料との重複を避ける観点 などから、例外的な整理が問題になる項目もあります。
また、ストック・オプションは税制区分や課税タイミングにより、給与課税・損金算入の有無が変わるため、「一律に含めない」と決め打ちせず、個別の制度設計に即して確認することが必須です。
迷ったときは、(1)所得税での課税関係、(2)法人税での損金算入、(3)外形標準課税での例外(重複計上の有無)の順で点検すれば、判断ミスを大きく減らせます。



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