【町田市の税理士が解説】法人事業税の外形標準課税とは?⑪資本割編

ミミレイドン

ボス、おはようございます!
今朝のテーマは何でしょうか?

新屋賢人

昨日で長かった付加価値割の論点も終わりましたので、今朝は資本割について、整理して行きたいと思います。

ミミレイドン

今日で収益配分額の論点は終わりですね!

新屋賢人

資本割は、会社の利益ではなく「資本金等の額(事業規模)」に対して課税されるため、たとえ大赤字であっても数百万円、数千万円の納税が必要になることがあります。まさに、規模の大きな企業にとっては避けて通れない固定費のような税金です。
しかし、この資本割には「正しい計算手順」と、条件を満たせば税額を大幅に減らすことができる「特例措置」が存在することをご存知でしょうか?
「子会社株控除」や「1,000億円超の圧縮」など、知っているかどうかで納税額が大きく変わるポイントがいくつもあります。また、計算の基礎となる「資本金等の額」自体も、単に貸借対照表を見るだけでは間違えてしまう落とし穴があります。
今朝は、外形標準課税の「資本割」について、基礎的な計算方法から、実務で絶対に漏らしてはいけない減額特例、そして計算の優先順位などを整理していきたいと思います。

ミミレイドン

外形標準課税の①概要や②所得割③付加価値割(概要)④報酬給与額(前編)⑤報酬給与額(中編)⑥報酬給与額(後編)⑦純支払利子(前編)⑧純支払利子(後編)⑨純支払賃借料(前編)⑩純支払賃借料(後編)については、こちらの記事で解説しておりますので、宜しければご覧ください。
【町田市の税理士が解説】法人事業税・外形標準課税とは?①概要編
【町田市の税理士が解説】法人事業税の外形標準課税とは?②所得割編
【町田市の税理士が解説】法人事業税の外形標準課税とは?③付加価値割の概要編
【町田市の税理士が解説】法人事業税の外形標準課税とは?④付加価値割の報酬給与額:前編
【町田市の税理士が解説】法人事業税の外形標準課税とは?⑤付加価値割の報酬給与額:中編
【町田市の税理士が解説】法人事業税の外形標準課税とは?⑥付加価値割の報酬給与額:後編
【町田市の税理士が解説】法人事業税の外形標準課税とは?⑦付加価値割の純支払利子:前編
【町田市の税理士が解説】法人事業税の外形標準課税とは?⑧付加価値割の純支払利子:後編
【町田市の税理士が解説】法人事業税の外形標準課税とは?⑨付加価値割の純支払賃借料(前編)
【町田市の税理士が解説】法人事業税の外形標準課税とは?⑩付加価値割の純支払賃借料(後編)

資本割編

目次

1.資本割とは?(資本割の基本)

外形標準課税における「資本割」の基本について、仕組みや計算方法、注意すべき「資本金等の額」の算出ルールを解説します。

(1). 資本割とは?

資本割は、法人事業税(外形標準課税)を構成する3つの要素(所得割・付加価値割・資本割)のうちの一つで、企業の事業規模(資本の額)に応じて課税される税金です。

最大のポイントは、所得(利益)を基準とする「所得割」とは異なり、企業が赤字(課税所得がゼロ)の年度であっても税金が課されるという点です。これは、法人が事業活動を行ううえで受ける警察や消防、道路などの行政サービスの経費を、事業規模に応じて公平に負担するという考え方に基づいています。

(2). 資本割の計算式と税率

資本割の額は、以下の計算式で求められます。

資本割額 = 資本金等の額 × 資本割の税率

  • 税率について
    地方税法で定められている標準税率は「0.5%」です。ただし、法人事業税の税率は各都道府県によって異なり、標準税率よりも高い「超過税率」を定めている自治体もあります。例えば、東京都や大阪府の超過税率は「0.525%」となっています。

2.資本割の「資本金等の額」の算出方法

外形標準課税の「資本割」の課税標準となる「資本金等の額」は、単純な貸借対照表上の「資本金」ではなく、以下の手順で算出されます。

大きく分けると、「①法人税法上の資本金等の額に地方税独自の調整(無償増減資の加減算)を行った金額」と、「②貸借対照表上の『資本金 + 資本準備金』の合計額」を比較し、金額が大きい方が課税標準のベースとなります。

具体的な算出方法は以下の通りです。

(1). 地方税法上の「資本金等の額」の算出

まず、ベースとなる「法人税法上の資本金等の額(各事業年度終了の日における金額)」に対し、地方税独自の無償増資・無償減資等の加減算を行います。

  • 加算する項目(無償増資)
    • 平成22年4月1日以後に、利益準備金やその他利益剰余金を減少して資本金とした額。
  • 減算する項目(無償減資等による欠損填補)
    • 平成13年4月1日から平成18年4月30日までの間に行われた、資本・出資の減少や、資本準備金による欠損填補に充てた金額。
    • 平成18年5月1日以後に、剰余金による損失填補に充てた金額(※資本金・資本準備金を減少し、その他資本剰余金として計上してから1年以内に填補に充てたものに限ります)。
新屋賢人

「法人税法上の資本金等の額」は、法人税法第2条第16号に規定される「資本金等の額」であり、基本的に「資本の金額又は出資金額(資本金)」に「資本積立金額」を加えた金額を指します。これは、株主等から出資された金額など、法人の事業活動の規模を表す基礎的な指標として用いられます。

(2). 「資本金+資本準備金」との比較(平成27年度改正のルール)

上記1で計算した金額と、貸借対照表上の金額を比較します。

  • A: 上記1で計算した地方税法上の「資本金等の額」
  • B: 貸借対照表上の「資本金の額 + 資本準備金の額」(または出資金の額)
新屋賢人

AとBを比較して、大きい方の金額が資本割の課税標準を計算するための「資本金等の額」となります。これにより、過去に自己株式の取得等を行って法人税法上の資本金等の額が減少している場合でも、「資本金+資本準備金」が下限として設定されることになります。

(3). 各種特例による調整(該当する場合のみ)

算出された「資本金等の額」に対し、法人の状況に応じて以下の特例措置による調整(圧縮や控除)を行います。

  • 事業年度が1年に満たない場合
    資本金等の額を月数按分します。
  • 持株会社の特例
    発行済株式の50%超を保有する子会社(特定子会社)の株式等の帳簿価額が総資産の50%を超える持株会社の場合、総資産に占める特定子会社株式の割合に応じて、資本金等の額から一定額を控除できます。
  • 大規模法人の圧縮特例
    資本金等の額が1,000億円を超える大企業については、その超える部分について段階的な算入率(1,000億超〜5,000億円以下は50%、5,000億超〜1兆円以下は25%、1兆円超は0%)を乗じて、課税標準を圧縮計算します。
  • 国外で事業を行う場合
    外国に恒久的施設(事業所等)がある場合、国外の事業規模等を勘案して一定額を控除できます。
新屋賢人

これらの手順を経て確定した「資本金等の額」に、資本割の税率(各自治体の定める標準税率または超過税率)を乗じることで、最終的な資本割の税額が算出されます。
次章以降で各種特例について、整理していきたいと思います。

3.資本割の負担を減らす「持株会社の特例(特定子会社株式等の控除)」

外形標準課税の資本割における「持株会社の特例(特定子会社株式等の控除措置)」について解説します。

この特例は、事業の性質上、総資産に対して子会社株式の占める割合が大きくなる持株会社等において、資本金等の額が多額になり資本割の税負担が過大になるのを防ぐために設けられた軽減措置です。

(1). 特例の適用要件(対象となる法人)

この特例の適用を受けられるのは、以下の要件を満たす法人です。

  • 特定子会社の株式(または出資)の帳簿価額が、総資産の帳簿価額の50%を超える法人

【特定子会社とは】
その法人が、発行済株式総数(または出資総額)の50%超を直接または間接に保有している他の法人を指します。

新屋賢人

特定子会社には、国内の子会社(内国法人)だけでなく、海外の子会社(外国法人)も含まれます。実務において、海外子会社を特定子会社に含めずに判定・計算してしまい、特例の適用を漏らして税金を過大に納付してしまうケースがあるため注意が必要です。

(2). 控除額の計算方法

特例が適用される場合、資本割の課税標準となる「資本金等の額」から、総資産に占める特定子会社株式の割合に相当する金額を控除することができます。

基本的な計算式は以下のようになります。

課税標準額 = 資本金等の額 - { 資本金等の額 × (特定子会社の株式等の帳簿価額 / 総資産の帳簿価額) }

新屋賢人

実際の計算では、異常値の影響を平準化するため、原則として「当該事業年度」および「前事業年度」の2事業年度分の合計額を用いて割合を計算します。

(3). 最も複雑な「帳簿価額」の算定ルール

この特例の計算で最も間違えやすいのが、分母(総資産)と分子(子会社株式)で用いる「帳簿価額」の基準が異なる点です。

① 分子:特定子会社の株式等の帳簿価額

分子となる子会社株式の価額は、会計上の価額ではなく「税務上」の帳簿価額を用います。

② 分母:総資産の帳簿価額

分母となる総資産の価額は、会計上(貸借対照表上)」の帳簿価額をベースに、地方税法独自の調整(加算・減算)を行って算出します。

【主な調整項目】

  • 減算する(差し引く)項目
    • 特定子会社に対する貸付金や、特定子会社が発行する社債(※対象の子会社株式を直接保有しているか否かにかかわらず、特定子会社への貸付金等は総資産から控除します)
    • 圧縮積立金、特別償却準備金、貸倒損失など
  • 加算する項目
    • 貸倒引当金や投資損失引当金など(注記の方法により貸借対照表に計上されている場合など)

※なお、平成28年度の税制改正により、「その他有価証券評価差額(評価益・評価損)」の加算・減算調整は不要となっています。

新屋賢人

この特例は、自社が純粋持株会社(ホールディングス)でなくても、事業会社でありながら関係会社の株式を多数保有している企業などでも要件を満たす可能性があります。適用漏れは大きな税的損失につながるため、要件を満たしているか定期的にチェックすることが重要です。

4.資本割の負担を減らす「大規模法人の圧縮特例

外形標準課税の「資本割」における「大規模法人の圧縮特例(資本金等の額が1,000億円を超える場合の特例)」について解説します。

(1). 制度の概要と目的

資本割は「資本金等の額×税率(標準0.5%)」で計算されますが、資本金等の額が1,000億円を超えるような超大企業の場合、そのまま計算すると税負担が過大になってしまいます。

そのような資本が大きい企業への配慮として、資本金等の額が1,000億円を超える部分について、課税標準(税金をかけるベースとなる金額)を段階的に圧縮(減額)する特例が設けられています。

(2). 圧縮の具体的な計算方法(算入率)

資本金等の額を以下の区分に分け、それぞれに定められた「算入率」を掛けて合計した金額が、実際の課税標準となります。また、資本金等の額が1兆円を超える場合は、上限を1兆円として計算し、1兆円を超える部分は実質的に課税されません(算入率0%)。

  • 1,000億円以下の部分: 100%
  • 1,000億円超 ~ 5,000億円以下の部分: 50%
  • 5,000億円超 ~ 1兆円以下の部分: 25%
  • 1兆円を超える部分: 0%(切り捨て)

(3). 具体的な計算例

例えば、資本金等の額が9,000億円の法人の場合、以下のように段階的に計算します。

  1. 1,000億円以下の部分
    1,000億円 × 100%1,000億円
  2. 1,000億円超~5,000億円以下の部分
    (5,000億円 - 1,000億円)× 50% = 4,000億円 × 50% = 2,000億円
  3. 5,000億円超~9,000億円以下の部分
    (9,000億円 - 5,000億円)× 25% = 4,000億円 × 25% = 1,000億円

【圧縮後の資本金等の額(課税標準)】 1,000億円 + 2,000億円 + 1,000億円 = 4,000億円

このように、元の資本金等の額が9,000億円であっても、この特例を適用することで課税標準が4,000億円まで圧縮され、大幅に資本割の税負担を減らすことができます。

新屋賢人

なお、この計算を行う際のベースとなる「資本金等の額」は、持株会社の特例(特定子会社株式等の控除)など、他の控除がある場合は、それらを控除した後の金額を用います。

5.資本割の負担を減らす「国外で事業を行う法人の特例

外形標準課税の資本割において、国外で事業を行っている法人が利用できる特例措置について解説します。

国外で事業を行っている法人の場合、資本割の課税標準となる「資本金等の額」から、外国(国外)の事業規模等を勘案して計算した金額を控除して計算することができます。

(1). 適用条件

この特例を受けるための前提として、法人が外国(国外)に事務所などの「恒久的施設(PE)」を有しているかどうかによって判定されます。

(2). 控除額の計算方法

控除する金額の算定方法は、原則的な方法と、特定の条件に該当する場合の例外的な方法(従業者数による按分)の2つがあります。

【原則】付加価値額の比率による按分

原則として、法人の資本金等の額を、付加価値額の総額(雇用安定控除前のもの)に占める「外国(国外)の事業に帰属する付加価値額(外国付加価値額)」の比率で按分して得た金額を控除します。

【例外】従業者数の比率による按分

ただし、法人の付加価値額の状況が以下の3つのいずれかに該当する場合には、付加価値額の比率ではなく、各事業年度終了の日における全従業者数に占める外国(国外)の事業に帰属する従業者数の比率で按分して得た額が課税標準となります。

  1. 外国(国外)付加価値額がゼロ又はマイナスとなる場合
  2. 付加価値額の総額から外国(国外)付加価値額を控除した額がゼロ又はマイナスとなる場合
  3. 付加価値額の総額のうちに、付加価値額の総額から外国(国外)付加価値額を控除して得た額の占める割合が50%未満である場合
新屋賢人

海外に支店や工場などの事業所を持ち、一定の事業活動を行っている法人であれば、この特例を適用することで資本割の負担を適正な規模に抑えることが可能になります。ただし、計算がかなり大変です。

6.資本割の負担を減らす「特例措置」の適用順序

外形標準課税の資本割において、ベースとなる「資本金等の額」(無償増減資等の調整後金額と「資本金+資本準備金」を比較して大きい方の金額)を算出した後、複数の特例措置や事業区分がある場合は、決められた順序で計算(控除や圧縮)を行う必要があります

具体的な適用順序は以下の通りです。

  1. 収入金額課税事業以外の事業に係る算定(※電気供給業や保険業など、収入金額課税事業と併せて事業を行っている場合)
  2. 事業年度が1年に満たない場合の月数按分
  3. 持株会社の特例(特定子会社株式等の控除措置)
  4. 国外で事業を行う法人の特例(外国の事業以外の事業に係る算定)
  5. 非課税事業以外の事業に係る算定
  6. 大規模法人の特例(上記1〜5までの計算の結果が1,000億円を超える場合の圧縮措置)
  7. 所得等課税事業と収入金額等課税事業等を併せて行う法人の、それぞれの事業に係る算定

実務上の重要なポイント

これまでに解説した主な特例(持株会社、国外事業、大規模法人)の適用順序を見ると、「持株会社の特例」や「国外で事業を行う法人の特例」による控除計算を先に行い、その結果残った金額に対して最後に「大規模法人の圧縮特例(1,000億円超の部分の圧縮)」を適用するという流れになります。

新屋賢人

この順番を間違えると最終的な課税標準額(税金計算のベースとなる金額)が変わってしまうため、複数の特例に該当する法人は注意が必要です。

7.まとめ

今回は、外形標準課税における「資本割」の仕組みと計算方法、重要な特例措置について解説しました。

資本割は「赤字でも発生する税金」であるため、企業にとっては資金繰りに直結する重い負担となります。だからこそ、法令で認められた適正なルールを用いて、正しい課税標準を算出することが非常に重要です。

最後に、今回のポイントを3つに整理します。

  1. 「資本金等の額」は2段階で判定する 
    単に税務上の資本金等を見るだけでなく、会計上の「資本金+資本準備金」と比較し、大きい方の金額がベースとなります(平成27年度改正ルール)。ここを間違えると、根本の税額がすべて変わってしまいます。
  2. 特例措置(控除)の適用漏れがないか確認する 
    特に「持株会社の特例(特定子会社株式等)」や「国外事業の特例」は、要件を満たしていれば大きな節税効果があります。海外子会社がある場合や、グループ会社株式を多く保有している場合は、必ず適用可否をチェックしましょう。
  3. 計算の適用順序を守る 
    複数の特例に該当する場合、「控除」を先に行い、その後に「大規模法人の圧縮(1,000億円超)」を適用するという順序が決まっています。

外形標準課税の計算、特に資本割の調整計算は非常に複雑で、税制改正も頻繁に行われる分野です。「自社の計算が合っているか不安」「特例が使えるかわからない」という場合は、顧問税理士等の専門家に相談し、適用漏れや計算ミスがないよう再確認することをおすすめします。

新屋賢人

私は、合格者が年間40名程度となる税理士試験「事業税」科目に合格しており、事業税・外形標準課税をに関する数多くのご相談や計算をお受けしてきました。
「この処理で本当に合っているのか不安」「外形標準課税の対象になるのか判断できない」「報酬給与額等の集計方法がわからない」
このようなお悩みがございましたら、お気軽にこちらまでお問い合わせください。

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この記事を書いた人

町田市にあるコムレイド税理士事務所の代表税理士の新屋賢人です。大学卒業後、中堅税理士法人で5年間、業界最大手である国際四大会計事務所(BIG4)のEY税理士法人で8年間、計13年間の実務経験があります。
30代ですが、すでに法人・個人問わず幅広い業務を経験しております。BIG4という業界最大手で得た経験・知識を生まれ育った街に還元したいという強い思いから独立を決めました。

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