【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:②役員報酬の損金性編

ミミレイドン

ボス、おはようございます!
今朝のテーマはなんでしょうか?

新屋賢人

今朝は、昨日から始まった中小企業の役員報酬の損金性について、整理していきたいと思います。

ミミレイドン

せっかく支払っても損金の額に算入されなかったらもったいないですもんね。

新屋賢人

会計上は費用でも、税務上は「定期同額」「事前届出」などの要件を外すと一気に損金不算入となります。しかも、株主総会の決議や議事録など会社法手続も絡むため、ミスが“税務否認+手続不備”の二重事故になりがちです。
今朝は、役員報酬・賞与・退職慰労金について、会計(費用計上)と税務(損金算入)のズレ、そして退職金の「3年ルール」まで、実務でつまずきやすいポイントを体系的に整理します。

ミミレイドン

役員報酬シリーズの①役員報酬の意義編については、こちらの記事をご覧ください。
【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:①役員報酬の意義編

②役員報酬の損金性編

役員報酬および役員賞与の費用性・損金性の根拠は、いずれも「職務執行の対価」であるとされています。

かつて役員賞与は、配当などと同じく利益の分配(利益処分)の一つとされていましたが、会社法などの改正に伴い、役員報酬と同じように職務執行の対価として考えられるようになり、会計基準や税法における扱いも変わりました。

目次

1.役員報酬及び役員賞与の会計上の費用性の根拠

会計上は、役員報酬が確定報酬として支給される場合でも、業績連動型報酬として支給される場合でも、「職務執行の対価」として支給されることに変わりはなく、いずれも「費用」として処理されるものとされています(企業会計基準第4号「役員賞与に関する会計基準」等)。

  • かつての扱い
    旧商法では、役員賞与は利益処分として株主総会の承認を受けることとされ、未処分利益の減少項目として処理されていました。役員賞与は利益を上げたときにのみ、株主に帰属する利益の一部を功労に報いるために支給するという考え方に基づいていたためです。
  • 考え方の変化
    平成14年の改正商法で委員会等設置会社が導入され、役員への金銭の分配を利益処分でできなくなり、費用処理されるようになったことで、機関設計等の違いによって費用処理と利益処分処理が混在するという不合理が生じました。
  • 現在の扱い
    その後、平成17年の会社法公布により、役員賞与を含めて職務執行の対価とされ、利益処分での処理ができなくなりました。これに合わせて会計基準も一本化され、役員賞与は役員報酬と同様に発生時に費用処理することが原則となりました。会社の利益は役員の職務執行の成果であり、役員賞与はその功労に報いるために支給されるため、職務執行の対価としての性格に従い、費用処理することが妥当であるとされています

2.役員報酬及び役員賞与の税務上の損金性の根拠

税法上も、役員給与(基本報酬・賞与)については「職務執行の対価」として、原則的に損金の額に算入できます。ただし、お手盛りなどの恣意性を排除するために一定の制限が設けられています

  • かつての扱い(役員賞与)
    平成18年度税制改正以前は、役員賞与は原則として「損金不算入」とされていました。これは、当時の商法の考え方に拠ったもので、「役員賞与は法人の利益獲得に対する功労として支出されるものであり、本来、株主に帰属する利益を株主の承認により役員賞与として与えるものであるから、損金とは認められない」という考え方に基づいていたためです。
  • 現在の扱い(平成18年度税制改正以降)
    会社法の施行に合わせて、役員給与に係る税制が大きく変更されました。役員給与に「賞与」を含めたうえで、以下の3つの類型のいずれかに該当し、かつ「恣意性を排除する」という要件を満たすものに限り、損金算入が認められることになりました
    1. 定期同額給与(いわゆる基本報酬)
    2. 事前確定届出給与(いわゆる役員賞与に相当)
    3. 業績連動給与(旧:利益連動給与)
新屋賢人

定期同額給与(いわゆる基本報酬)、事前確定届出給与(いわゆる役員賞与に相当)、業績連動給与(旧:利益連動給与)については、後日解説します。なお、「業績連動給与」は、非上場の中小企業が適用するには要件(客観的な指標や算定方法の開示など)が非常に厳しく、実務上はほとんどが「定期同額」か「事前確定届出」となります。

【損金不算入となるケースに注意】
「職務執行の対価」であっても、以下の場合は損金算入が認められません。

  • 不相当に高額な部分
    支給額のうち過大と判定された金額は損金不算入となります。過大かどうかは、「役員の職務内容」「法人の収益」「使用人に対する給与の支給状況」「類似する法人の役員給与の支給状況」などを総合勘案して算定する実質基準と、定款や株主総会決議で定められた限度額以内であるかを問う形式基準によって判定されます。
  • 事実の隠ぺい・仮装経理
    法人が事実を隠ぺいし、または仮装経理をして役員に支給した給与も損金算入できません。

3.役員退職慰労金の会計上の費用性の根拠

新屋賢人

役員退職慰労金の費用性および損金性の根拠は、基本報酬や賞与と同様に、「役員に対する報酬の後払い的性格を有し、在任期間中の職務執行の対価である」ためとされています。

ミミレイドン

そもそも役員退職慰労金って役員に対する退職金ってことですよね?

新屋賢人

はい、「役員退職慰労金」とは、会社の役員(取締役や監査役など)が退職する際に、会社から支払われる退職金(一時金)のことです。
3つのポイントに分けてご説明します。
1. 報酬の「後払い」という性質
役員退職慰労金は、単なるお小遣いやご褒美ではなく、「在任中の働き(職務執行)に対する報酬の後払い」としての意味合いを持っています。
2. 支給には「株主総会の決議」が必要
一般の従業員の退職金とは異なり、社長の独断で勝手に支払うことはできません。役員自身で高額な退職金を決めてしまう「お手盛り」を防ぐため、定款(会社のルールブック)に規定がない限り、原則として株主総会で株主の承認(決議)を得てから支給する必要があります。
3. 税務上の厳しいルールがある
会社から支払われた退職金は原則として会社の経費(損金)になりますが、「不当に高額すぎる金額」は経費として認められません。在籍年数や会社への貢献度、同業他社の水準などから見て、妥当な金額に収める必要があります。

役員退職慰労金の支給は、会社法の役員報酬規制の中で手続きが行われ、定款に定めがなければ株主総会の決議によらなければなりません。

株主総会での承認前の段階では、法律上はまだ債務として確定していません。しかし、将来支給される可能性が高く、その金額を合理的に見積もることができる場合には、いわゆる「負債性引当金」の性格を有することになります。 そのため会計上は、職務執行の対価として「当事業年度に発生したと認められる額」を営業費用として計上し、同時に役員退職慰労引当金を計上しなければならないとされています

【引当金を計上するための要件】
具体的には、以下の要件を満たす場合に費用・引当金計上を行います。

  • 役員退職慰労金の支給に関する内規に基づき(在任期間・担当職務等を勘案して)支給見込額が合理的に算出されること。
  • 当該内規に基づく支給実績があること、あるいは支給実績がない場合でも将来にわたって内規に基づいた支給額を支払うことが合理的に予測されること
新屋賢人

これらの要件を満たさない場合は引当金を計上せず、株主総会の決議等によって額が具体的に確定した日、または退職金を実際に支払った日に費用計上します。

4.役員退職慰労金の税務上の損金性の根拠

税法上も、役員に対する退職給与は「職務執行の対価」であるため、原則として損金の額に算入することができます。

しかし、税務上は会計上の扱いとは異なり、内規があって各事業年度に費用計上(引当金繰入)したとしても、その未確定の段階では損金に算入することはできません

【損金算入時期】

  • 原則
    株主総会の決議等によって退職給与の額が具体的に確定した日の属する事業年度に損金算入されます。
  • 例外(支払日基準)
    株主総会等で決議された事業年度ではなく、法人が退職給与の額を実際に支払った日の属する事業年度において損金経理をした場合は、その支払った事業年度の損金に算入することも認められます
新屋賢人

取締役会などで内定した金額を、損金経理により未払金に計上しただけでは損金算入できません。

【損金不算入となるケースに注意】

原則として損金算入できる退職給与であっても、以下の場合は損金不算入となるため注意が必要です。

  • 不相当に高額な部分
    支給額のうち過大と判定された金額は「過大な役員給与」として損金算入できません。過大かどうかの判定(実質基準)は、その法人の業務に従事した期間、退職の事情、類似する同業他社の役員退職給与の支給状況などを総合勘案して行われます
  • 事実の隠ぺい・仮装経理
    法人が事実を隠ぺいし、または仮装経理によって支給した退職給与も損金算入は認められません。

5.役員退職慰労金の所得税及び相続税の取扱い

役員退職慰労金にかかる所得税および相続税の取扱いは、支給(支給の確定)のタイミングが「役員の生前」か「死亡後」か、さらに「死亡後何年経過しているか」によって大きく3つのパターンに分かれます。

(1). 生前に退職金が支給された場合

  • 所得税
    退職した役員本人に対して、「退職所得」として所得税が課税されます。退職所得は、他の所得と分離して計算されるなど、税務上一定の優遇措置がとられています。
  • 相続税
    支給された金銭等の財産がそのまま消費されずに残った状態で役員が亡くなった場合、その残額は役員の「本来の相続財産」として相続税の対象となります。結果として、生前に所得税の課税を受けた手残り額に対して、相続税も課税されることになります。

(2). 死亡後「3年以内」に支給が確定した場合(死亡退職金)

  • 所得税
    相続税の課税対象となるため、受け取った相続人に所得税は課税されません。支払った法人は源泉徴収を行う必要はなく、その代わりに「退職手当金等受給者別支払調書」を税務署に提出する必要があります。
  • 相続税
    役員の死亡後3年以内に支給が確定した退職手当金や功労金は、民法上の相続財産ではありませんが、税法上「みなし相続財産」として相続税の課税対象となります。ただし、これには「500万円 × 法定相続人の数」の非課税枠が設けられています。

(3). 死亡後「3年以降」に支給が確定した場合

  • 所得税
    役員の死亡から3年経過後に支給が確定した場合は、相続税の対象から外れ、受け取った相続人の「一時所得」として所得税の対象となります。一時所得は総合課税として他の所得と合算され、累進税率が適用されるため、退職所得として課税されるよりも高い税率が適用される傾向があります。
  • 相続税
    相続税の課税対象にはなりません
新屋賢人

このように、退職金がいつ支給確定するかで適用される税金が変わります死亡後3年以内に支給が確定すれば、受け取った相続人に所得税はかからず、相続税においても一定の非課税枠を活用できるため、生前に受け取るケース(所得税+残存額に相続税)や、3年経過後に受け取るケース(一時所得として累進課税)と比べて、全体としての税負担が軽くなる場合があります

なお、前回ご説明した「弔慰金」については、原則として非課税(所得税も相続税もかからない)ですが、一定の非課税限度額(業務上の死亡で普通給与の3年分など)を超えた部分の金額については、上記の「死亡退職金(みなし相続財産)」として扱われ、相続税の対象となりますので、ご注意ください。

6.役員の招へいにあたっての一時金

役員を外部から招へいする際に支払う一時金(いわゆる支度金)については、その支払いが「役員就任前」か「役員就任後」かによって、課税上の取り扱いが大きく異なります。

それぞれの場合における法人側・個人側の取り扱いは以下の通りです。

(1). 役員「就任前」に支払う場合

将来の委任契約を前提にした支払いであり、「役務提供の対価(職務執行の対価)」ではないとみなされます。

  • 法人側の取り扱い(費用処理)
    役員報酬には該当せず、その他の費用項目である「雑費」や「支払手数料」などの勘定科目で処理されます。
  • 個人側の取り扱い(所得区分)
    職務執行の対価ではないため、受け取った個人にとっては「雑所得」となります。雑所得が20万円を超える場合は、他の給与所得などと合算して確定申告をする必要があります。
  • 源泉徴収について
    支払う法人は、契約金に係る源泉徴収税額として、1回に支払われる金額が100万円までの部分は「10.21%」、100万円を超える部分の金額については「20.42%」を源泉徴収する必要があります。

(2). 役員「就任後」に支払う場合

会社の委任契約に基づいた「職務執行の対価」としての支払いとなり、「役員報酬」に該当するものと考えられます。

  • 法人側の取り扱い(損金算入の要件)
    定期の給与とは別に支払われるものであるため、税務上は「事前確定届出給与」の要件を満たした場合に限り、損金算入が可能になります。また、役員報酬である以上、会社法に基づく手続(株主総会または取締役会の決議など)でその額を決定する必要があります。
  • 個人側の取り扱い(所得区分)
    受け取った役員にとっては、賞与に該当し「給与所得」となります。
  • 源泉徴収について
    支払う法人は、賞与に対する源泉徴収を行う必要があります。
新屋賢人

税務や会社法の観点から、役員就任「前」に支度金を過大に支払い、その分就任「後」の給与を低く設定するという方法をとると、実質的には役員報酬であるにもかかわらず、会社法上の役員報酬規制(株主総会決議など)の手続きを免れることができてしまいます。 また税務上も、役員給与の「過大報酬の損金算入制限」を免れることができてしまうため、このような意図的な支払いがなされた場合、就任前の支度金であってもすんなりと損金算入が認められるか(実質的に役員報酬とみなされないか)については疑念が残る点に注意が必要です。

7.まとめ

今朝は、役員報酬、役員賞与、退職慰労金、そして支度金について、会計と税務の両面から整理しました。

ポイントを振り返ると、すべての根底にあるのは「役員への支払いは、職務執行の対価である」という考え方です。

  • 会計上: 職務執行の対価として、原則として「費用」計上される。
  • 税務上: お手盛り防止の観点から厳しい制約があり、要件を満たさない限り「損金」とは認められない。

特に税務上の損金算入においては、「定期同額給与」「事前確定届出給与」といった区分の遵守に加え、「株主総会決議」や「取締役会決議」といった適正なプロセス(機関決定)を経ているかが厳しく問われます。 いかに実態があったとしても、議事録の不備や届出の遅れ一つで損金が否認されるケースは後を絶ちません。また、退職金の支給時期や支度金の性質によっては、受け取る個人の税負担も大きく変わってきます。

新屋賢人

役員報酬政策は、単なる「給料の支払い」ではなく、高度な法務・税務知識を要する経営戦略です。「うちは大丈夫だろう」と過去の慣例だけで判断せず、顧問税理士と連携し、法令に則った適正な設計と運用を行うよう心がけてください。
税理士をお探しの場合には、お気軽にこちらまでお問い合わせください。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

町田市にあるコムレイド税理士事務所の代表税理士の新屋賢人です。大学卒業後、中堅税理士法人で5年間、業界最大手である国際四大会計事務所(BIG4)のEY税理士法人で8年間、計13年間の実務経験があります。
30代ですが、すでに法人・個人問わず幅広い業務を経験しております。BIG4という業界最大手で得た経験・知識を生まれ育った街に還元したいという強い思いから独立を決めました。

コメント

コメントする

目次