ミミレイドンボス、おはようございます!
2026年3月25日のテーマはなんでしょうか?



今朝は、同族会社における役員報酬について、整理していきたいと思います。



あえて同族会社に絞る意味ってあるんですか?



株主と経営者が一致している同族会社では、役員報酬の金額や支給方法を比較的自由に決めることができます。しかし、その「自由さ」ゆえに、税務上は不当な利益操作(お手盛り)を防ぐための極めて厳しい制限が設けられています。
形式的な手続きを少し怠っただけで、あるいは「身内だから」と軽い気持ちで報酬を設定しただけで、税務調査において何百万円、何千万円という経費(損金)が否認され、多額の追徴課税や重加算税を課されるケースが後を絶ちません。
今朝は、同族会社における役員報酬決定のルールから、家族への報酬(所得分散)の注意点、適正額の算定基準、そして実際に「過大報酬」として否認された過去の裁決事例まで、経営者が絶対に知っておくべき重要ポイントを整理していきたいと思います。



役員報酬シリーズの①役員報酬の意義編、②役員報酬の損金性編、③役員報酬の手続き編、④役員報酬の定期同額給与編、⑤役員報酬の定期同額給与編Part2、⑥定期同額給与の臨時改定事由編、⑦定期同額給与の業績悪化改定事由編、⑧事前確定届出給与編Part1、⑨事前確定届出給与編Part2、⑩業績連動給与編Part1、⑪業績連動給与編Part2、⑫株式報酬編、⑬経済的利益(現物給与)編Part1、⑭経済的利益(現物給与)編Part2、⑮経済的利益(現物給与)編Part3、⑯役員退職慰労金編Part1、⑰役員退職慰労金編Part2、⑱役員退職金の算定方法編、⑲役員の範囲編については、こちらの記事をご覧ください。
【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:①役員報酬の意義編
【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:②役員報酬の損金性編
【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:③役員報酬の手続き編
【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:④役員報酬の定期同額給与編
【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:⑤役員報酬の定期同額給与編Part2
【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:⑥定期同額給与の臨時改定事由編
【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:⑦定期同額給与の業績悪化改定事由編
【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:⑧事前確定届出給与編Part1
【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:⑨事前確定届出給与編Part2
【町田市の税理士が解説】役員報酬:⑩業績連動給与編Part1
【町田市の税理士が解説】役員報酬:⑪業績連動給与編Part2
【町田市の税理士が解説】役員報酬:⑫株式報酬編
【町田市の税理士が解説】役員報酬:⑬経済的利益(現物給与)編Part1
【町田市の税理士が解説】役員報酬:⑭経済的利益(現物給与)編Part2
【町田市の税理士が解説】役員報酬:⑮経済的利益(現物給与)編Part3
【町田市の税理士が解説】役員報酬:⑯役員退職慰労金編Part1
【町田市の税理士が解説】役員報酬:⑰役員退職慰労金編Part2
【町田市の税理士が解説】役員報酬:⑱役員退職金の算定方法編
【町田市の税理士が解説】役員報酬:⑲役員の範囲編
⑳同族会社における役員報酬編
1.同族会社の役員報酬における注意点
同族会社における役員報酬は、経営者(株主)の裁量で自由に金額や支給方法を決めやすい(お手盛りが生じやすい)という特性があるため、税務上、「不当な利益操作や租税回避を防ぐための極めて厳しい制限」が設けられています。
注意すべき重要なポイントを網羅的に解説します。
(1). 株主総会決議と議事録作成の徹底
同族会社であっても、会社法上、役員報酬(退職慰労金を含む)は原則として株主総会の決議によって定める必要があります。 実務上、全株主の同意がある同族会社では「実質的に株主総会を経たのと同視できる」として支払いが有効とされる例外的な裁判例もありますが、形式的な手続きを怠ると、税務調査で「仮装隠蔽」とみなされて重加算税の対象となったり、損金算入が否認されたりする大きなリスクがあります。必ず株主総会を開催(または書面決議)し、適正な議事録を作成・保管することが大前提となります。



次章で株主総会決議を経ないリスクを整理していきましょう。
(2). 家族への役員報酬(所得分散)と適正額の算定
経営者の配偶者や親族を役員に就任させて報酬を支払う(所得分散)ことは可能ですが、その職務内容や実態に見合わない「不相当に高額な部分」は法人の損金(経費)に算入できません。
- 非常勤役員のリスク
「代表者のよき相談相手」といった曖昧な理由で、月に数回しか出社しない家族に高額な報酬を支払っているケースは、税務調査で厳しく否認されます。 - 類似法人データとの比較
適正額は「同業種・同規模の類似法人」の役員報酬の平均額などを基準に判断されます。納税者が自分に都合の良い民間データ(TKCのデータなど)を持ち出しても、国が抽出したデータには対抗できず退けられる傾向があります。 - 特殊関係使用人への注意
役員ではなく「従業員(使用人)」として親族を雇用している場合でも、「特殊関係使用人」に対する不相当に高額な給与は、役員給与と同様に損金不算入となります。



家族への役員報酬については、第3章で整理していきましょう。
(3). 「みなし役員」の判定
登記簿上の役員でなくても、会社の「経営に実質的に従事している」者は、税務上「みなし役員」として扱われ、役員給与の厳しい制限(定期同額給与など)を受けます。 特に同族会社では、未登記の親族(配偶者や子息など)や、一定の株式保有要件(特定株主等)を満たす従業員が、資金繰り・人事・重要契約の決定などの「経営」に関与していると、みなし役員と認定されて給与が否認されるリスクがあります。



詳しくは昨日の記事をご覧ください。
【町田市の税理士が解説】役員報酬:⑲役員の範囲編
(4). 「使用人兼務役員」になれない役員への注意
部長や工場長などの使用人としての職務も行う「使用人兼務役員」であれば、使用人部分の賞与を損金に算入することができます。 しかし、同族会社において株式所有割合の要件を満たす「特定株主等」に該当する役員は、税法上「使用人兼務役員にはなれない」と定められています。役員本人が株式を持っていなくても、配偶者等の株式と合算して5%超となれば『特定株主等』に該当してしまいます。誤って使用人分として賞与を支給し、損金不算入となるミスに注意が必要です。



詳しくは昨日の記事をご覧ください。
【町田市の税理士が解説】役員報酬:⑲役員の範囲編
(5). 定期同額給与・事前確定届出給与の厳格なルール
役員報酬を損金にするには、「定期同額給与」や「事前確定届出給与」の要件を厳密に守る必要があります。
- 期中での改定(減額・増額)
原則として期首から3ヶ月以内の改定しか認められません。期中での減額は「業績の著しい悪化」などの厳格な事由(業績悪化改定事由など)がない限り、認められません。単に「目標未達だから」という理由では否認されます。 - 事前確定届出給与の不支給・未払
役員賞与などを「事前確定届出給与」として税務署に届け出た場合、「届出どおりの時期」に「届出どおりの金額」をピタリと支払わなければ、全額が損金不算入となります。資金繰りが苦しいからといって勝手に一部だけ支給したり、未払金として計上したりすると、要件を満たさないとして否認されます。
(6). 個人的費用の付け替え(経済的利益の供与)
会社の経費として、役員の個人的な費用(飲食代、旅行代、家族専用の車の費用、豪華社宅など)を負担した場合、それが税務調査で見つかると「役員に対する給与(経済的利益の供与)」と認定されます。 この場合、定期同額給与に該当しないため法人の損金にならないだけでなく、役員個人の源泉所得税が追徴されます。さらに、事実を隠蔽・仮装していたとみなされれば、重加算税が課されることになります。
(7). 役員退職給与の適正額と分掌変更
- 適正額の算定
役員退職金も、功績倍率法などを用いて算定した「適正額」を超える部分は損金不算入となります。一般的に「社長=3.0倍」などと言われますが、無条件に認められるわけではなく、同業類似法人の水準を超えれば過大とみなされます。 - 分掌変更退職金
代表取締役から平取締役へ降格する際などに支払われる退職金は、「実質的に退職したと同様の事情」にあるかどうかが極めて厳しく判定されます。支給を決議・計上した時点で、引継ぎと称して経営の重要事項(資金繰りや人事など)に関与し続けていると、単なる役員給与とみなされ損金算入が否認されます。



詳しくは過去の記事をご覧ください。
【町田市の税理士が解説】役員報酬:⑯役員退職慰労金編Part1
【町田市の税理士が解説】役員報酬:⑰役員退職慰労金編Part2
(8). 業績連動給与は「原則不可」
法人の利益や株価に連動して支給額が変動する「業績連動給与」は、客観性や透明性が求められます。そのため、非同族会社との間に完全支配関係がある完全子会社などを除き、一般的な同族会社においては、業績連動給与を損金算入することは原則として認められていません。同族会社では恣意的な利益操作(お手盛り)が容易に行えてしまうためです。



詳しくは過去の記事をご覧ください。
【町田市の税理士が解説】役員報酬:⑩業績連動給与編Part1
【町田市の税理士が解説】役員報酬:⑪業績連動給与編Part2
2.同族会社の株主総会の決議を経ずに支払われた役員報酬
同族会社等において、株主総会の決議を経ずに支払われた役員報酬(役員給与や役員退職給与)の取り扱いについて、原則と例外(裁判例等)を詳しく解説します。
(1). 原則:会社法上無効であり、税務上も損金不算入
会社法では、取締役の報酬(退職慰労金を含む)の額は、定款に定めのないときは「株主総会の決議」によって定めなければならないとされています(会社法361条)。これは、取締役による報酬の「お手盛り(自分たちで勝手に高額な報酬を決めること)」を防止し、株主の自主的な判断に委ねるためです。
したがって、株主総会の決議を経ずに支払われた役員報酬は原則として無効(違法)となり、税務上においても、定款や株主総会等の決議により支給できない金額が支払われたとして、損金(経費)に算入することは認められません。退職慰労金の場合は、具体的な報酬等請求権が発生していないため、会社から退任取締役に対する「不当利得返還請求」の対象となり得ます。
(2). 例外:全株主の同意等により「有効」と認められるケース
原則としては無効ですが、中小企業や同族会社のように株主が少数であり、会社の事情をよく知る株主が多い場合には、過去の裁判例において「株主総会決議を経た場合と同視できる事実」が存在すれば、例外的に支払いが有効であると判断されたケースがあります。
具体的には、「株主総会決議に代わる全株主の同意があったのと同じ状況にある」と認められる場合です。このような状況であれば、お手盛り防止という会社法の趣旨は全うされていると解釈され、特段の事情がない限り支払いは適法かつ有効なものとされます(東京地判平25.8.5等の裁判例)。
(3). 退職慰労金における具体的な容認事例
役員退職慰労金に関しても、株主総会決議を経ていなかったものの、結果として支給が妥当(会社からの返還請求は権利の濫用等に当たる)とされた最高裁判決等が存在します。 その事例では、以下のようないくつかの事実関係が考慮されました。
- 発行済株式総数の99%以上を保有する代表者が、内規に基づく退職慰労金の支給を決裁することによって、実質的に株主総会の決議に代えてきた事実があること。
- 退任した役員が、従前に退職慰労金を支給された他の退任取締役と同等以上の業績を上げてきた事実があること。
また、別の裁決事例(平成5年4月19日裁決)では、実際に株主総会が一堂に会して開催されていなくても、発行済株式総数の90%超を有する役員全員が、報酬額の変更等を確認した上で議事録の原案に押印して回付しているような実態があれば、「実質的に株主総会が開催され、決議に基づいて議事録が作成されたとみるのが相当である」として、役員報酬の決定が有効と認められたケースもあります。
(4). 実務上の注意点(仮装隠蔽のリスク)
上記のように、実態として全株主の同意等があれば有効とみなされる余地はありますが、それはあくまで事後的な救済措置や裁判等での判断に過ぎません。
閉鎖的な同族会社において形式的な手続きを怠ると、税務調査において「仮装隠蔽」とみなされる大きなリスクがあります。 過去の裁決事例では、偽造した辞任届に基づいて虚偽の株主総会議事録を作成して退職金を計上したケースや、仮装の権限によって支払われた退職金が「単なる役員賞与」と認定されたケースなどがあり、これらは当然に損金算入が否認されています。



税務上、役員報酬や退職給与は「株主総会の決議で具体的に金額の確定した日の属する事業年度」で損金算入するのが大原則です。 全株主の同意等によって実質的に有効と判断される例外はあるものの、税務トラブルや役員間・株主間の紛争を防ぐためには、必ず株主総会を開催・決議したうえで、その決議内容を記録した「議事録」をしっかりと作成・保管しておくことが極めて重要です。
3.同族会社における家族報酬による所得分散
同族会社において、経営者の家族(配偶者、両親、子息など)を役員や従業員として会社に参画させ、報酬を支払うことによって所得を分散させること自体は可能です。
しかし、同族会社は上場企業と異なり、株主総会が身内だけで構成されているため「報酬のお手盛り(恣意的な決定)」が容易に行えてしまいます。そのため、税務上は所得分散の行き過ぎを防ぐための厳しい制限が設けられています。
家族報酬による所得分散の仕組みと、税務上の注意点(否認される基準)は以下の通りです。
(1). 家族を「役員」とする場合
親族を役員に就任させて役員報酬を支払うことで所得分散を図ることができますが、その役員給与が「不相当に高額」であると判断された場合、その過大とされる部分は法人の損金(経費)に算入することができません。
特に問題となりやすいのは、週に数回や月に数回しか出社しないような、家族の「非常勤役員」に対する高額な報酬です。
過去の裁決例では、以下のような理由から家族役員への報酬が「過大」として否認されています。
- 職務内容が不明確
「代表者のよき相談相手」といった客観性や具体性に欠ける理由しかなく、実際の業務内容が会社の経営に深く関わっているとは認められないケース。 - 業績との不釣り合い
会社の売上や利益の伸び率に比べて、家族役員の報酬だけが不自然に高く引き上げられているケース。 - 同業類似法人との比較
同業種・同規模の他社における非常勤役員の平均報酬額と比較して、極めて高額な報酬が支払われているケース。
(2). 家族を「使用人(従業員)」とする場合
親族を役員ではなく使用人として雇用し、給与を支払うことでも所得分散は可能です。しかし、この場合も以下の2つの規定に注意する必要があります。
- ① 「みなし役員」に該当する場合
肩書きは従業員であっても、実質的に会社の経営に従事している場合などは「みなし役員」と判定され、役員給与の厳しい制限(定期同額給与などの要件)に従うことになります。 - ② 「特殊関係使用人」に該当する場合
みなし役員には該当しなくても、以下の「特殊関係使用人」に該当する者に対して支払う給与のうち、職務内容等に照らして「不相当に高額な部分」については、過大役員給与と同様に損金不算入とされます。
【特殊関係使用人の範囲】- 役員の親族(6親等内の血族、配偶者および3親等内の姻族)
- 役員と事実上婚姻関係と同様の関係(内縁関係)にある者
- 役員から生計の支援を受けているもの
- 上記2または3の者と生計を一にする親族
(3). 税務上の「否認のロジック」
税務調査等において家族報酬が否認される際、「所得分散が目的だからけしからん」という意図そのものを直接の理由として否認されるわけではありません。 たとえ実態として生活費の代わりに支給されているような給与であっても、税務署はあくまで「同業類似法人の水準(データ)と比較して、金額が高すぎる(過大である)」という客観的な基準を用いて否認を行います。
これは、個人事業主が家族に支払う「青色事業専従者給与」が、他の従業員や同業他社の水準と比較して著しく高額な場合に適正額に引き下げられるのと同じ論理です。



同族会社における家族への報酬は、有効な所得分散の手段となりますが、「身内だから」と適当な金額を設定することは税務上非常に危険です。 その家族が実際に会社でどのような業務を行っているのか(職務の実態)を明確にし、同業他社の水準や社内の他の従業員とのバランスを考慮した上で、「その職務の対価として客観的に妥当な金額」に設定することが不可欠です。
4.同族会社における代表の家族への過大報酬とされた事例
前章でも申し上げた通り、同族会社において過大役員給与が問題となるケースは、内部統制が機能しにくいため、代表者の親族を対象としたものが多く見られます。特に、週に数回や月に数回しか出社しない、あるいは全く出社しないような非常勤の役員への報酬が問題となりやすい傾向があります。
過去の裁決事例から、代表者の家族への報酬が過大と判断された具体的なケースを3つ紹介します。
(1). 非常勤の取締役3名(代表者の妻ら)の事例(平成9年9月29日裁決)
代表者の妻ら3名の非常勤取締役に対して支払われた報酬が、不相当に高額とされた事例です。 否認の主な理由として、業務執行権を持たず具体的な職務内容が不明確であったこと、会社の売上や利益の伸び率に比べて役員報酬だけが相当高い伸び率を示していたこと、そして類似法人の平均額と比較して極めて高額であったことが挙げられました。その結果、職務の対価として相当ではないとされ、類似法人の平均的な報酬額を超える部分が損金不算入とされました。
(2). 非常勤取締役(代表者の母)の事例(平成17年12月19日裁決)
非常勤取締役である代表者の母に対する報酬が過大とされた事例です。 会社側は「代表取締役のよき相談相手として経営に参画している」として従業員の給与水準を参酌すべきと主張しましたが、客観性や具体性に欠け、決められた仕事もないとして退けられました。結果として、税務署が同業種・同規模で同地域にある類似法人の非常勤取締役に支給された平均額を用いて算出した適正報酬額が妥当であると判断されました。
(3). 役員(代表者の妻)の事例(平成20年11月14日裁決)
代表者の妻である役員に対して支払われた報酬が否認された事例です。 会社側は「重要な職務に常に従事しており、常勤役員に該当する」と主張しましたが、実際には月に2〜3日しか出社しておらず、重要な職務にも従事していませんでした。会社の売上や従業員給与に比べて報酬の伸びが相当高く、類似法人の平均額に比べても極めて高額であったため、類似法人の平均額を超える金額が「不相当に高額な部分」に該当すると判断されました。



これらの事例からわかるように、家族への役員報酬が否認されるのは、「よき相談相手」といった曖昧な理由で実態が伴っていない場合や、実際の勤務日数や職務内容に見合っていない高額な報酬が支払われている場合です。税務調査において過大であるかどうかは、会社の業績や他の従業員の給与バランス、そして何より「類似法人の平均的な役員報酬額」という客観的なデータと比較されて厳しく判断されることになります。
5.役員報酬の適正額の算定(類似法人データ)
役員報酬(給与)が税務上「過大」とみなされないための適正額の算定において、「類似法人データ」は非常に重要な判断基準となります。
税務調査や裁判において、役員報酬の適正額はどのように類似法人データを用いて判断されるのか、その詳細な基準と実務上の注意点を解説します。
(1). 基本的な考え方
役員給与の適正額を算定する上で、ベースとなるのは「同業種、類似規模で同地域」にある法人(同業類似法人)の平均的な役員報酬データです。税務署が「過大である」として否認する場合も、納税者側が「適正である」と反証する場合も、この類似法人のデータとの比較が中心となります。
(2). 国(税務署)が用いる抽出基準
税務署は、国の保有する膨大な申告データの中から類似法人を抽出します。その際、過去の裁判例等から、主に以下の基準を用いて適正額を算定することが合理的とされています。
- 倍率基準
類似法人を抽出するにあたり、法人の事業規模を示す指標として「売上金額」を用い、納税者の総売上金額の「0.5倍以上2倍以下」の範囲内にある法人を対象とする基準です。裁判でも、この倍率基準は近似性を有する法人を抽出する基準として合理的であると認められています。 - 比率4要素に基づく算定
抽出した類似法人データに加えて、①対象役員の職務内容、②法人の収益、③法人の使用人に対する給与の支給状況、④類似法人の役員給与の支給状況、という4つの要素を考慮し、加重平均などを行って適正額を導き出す手法も採用されています。
(3). 民間データ(納税者側のデータ)の限界
納税者側が、自社の役員報酬の適正性を証明するために、民間のデータベース(会計事務所系ネットワークのデータなど)から抽出した同業類似法人のデータを用いるケースがあります。 しかし、過去の裁判例では、民間データを用いた主張は退けられる傾向にあります。その理由として、国が用いる「日本標準産業分類」に基づく細かな業種分類や規模の区切りと比較して、民間データ独自の業種分類では抽出基準としての厳密性や合理性に欠けると判断されるためです。
(4). 類似法人の選定が不適切とされるケース(例外)
国が抽出した類似法人データであっても、常に正しいと認められるわけではなく、実態に合わないとして不適切とされた事例も存在します。
- 事業規模に極端な差がある場合
税務署が同地区の同業種から抽出したデータであっても、その法人の収入金額が納税者の「5倍〜60倍」も大きく、収益状況に著しい差があるような場合は、適正給与額の算定基準として不適切であると判断された事例があります。 - 新しい事業形態(ファブレス企業など)の場合
自社で工場を持たずに製造を外部委託する「ファブレス企業」などの新しい事業形態の場合、従来の日本標準産業分類では単なる「卸売業」等に分類されてしまい、実態と異なる類似法人が抽出されてしまう問題があります。このような場合は、単なる形式的な分類ではなく、自社のビジネスモデルや機能を詳細に分析し、より実態に近い業種分類のデータと比較して判断するアプローチが必要となります。



役員報酬の適正額は、最終的に「国が保有する非公開の類似法人データ」と比較されて判断されるため、納税者側で完璧な適正額を事前に算出することは困難です。しかし、売上高が同程度の同業他社の水準を大きく逸脱しないように留意し、自社のビジネスモデルの特殊性や対象役員の貢献度について客観的に説明できるようにしておくことが、税務リスクを軽減する上で重要となります。
6.まとめ
同族会社における役員報酬は、経営の裁量で柔軟に決定できる一方で、税務署からは「恣意的な利益操作が行われていないか」という非常に厳しい目が向けられています。
本記事で解説した通り、税務リスクを回避するためには以下のポイントを徹底することが不可欠です。
- 形式的な手続きの徹底
身内だけの会社であっても、必ず株主総会を開催(または書面決議)し、適正な議事録を作成・保管すること。これを怠ると「仮装隠蔽」とみなされる致命的なリスクがあります。 - 「定期同額」と「事前確定」の厳格な運用
期中の安易な報酬改定や、資金繰りを理由とした事前確定届出給与の未払いは全額否認の対象となります。ルールに従った厳密な支給スケジュールを守ることが大前提です。 - 職務実態と客観的データに基づく報酬設定
家族を役員や従業員にして所得を分散する場合、「よき相談相手」といった曖昧な理由での高額報酬は通用しません。実際の勤務実態を明確にし、必ず「同業種・同規模の類似法人データ」と比較して客観的に妥当な金額(適正額)に設定する必要があります。
役員報酬に関する税務調査の否認額は高額になりやすく、ひとたび否認されれば法人税・所得税のダブルパンチに加えて重加算税等のペナルティが課され、会社の存続すら脅かしかねません。
「知らなかった」では済まされないのが税務の世界です。少しでも自社の役員報酬の設定や手続きに不安がある場合は、決定のプロセスや議事録の作成段階から、同族会社の税務に強い税理士などの専門家に相談し、確固たる防えを構築しておくことを強くお勧めします。










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