ミミレイドンボス、会計や税務でよく交際費が論点になる理由って、なぜなのでしょうか?



会計(利益計算)で費用に計上できたとしても、税務(所得計算)で損金として認められないものもあります。交際費もそのうちの一つで、会計で費用計上した交際費のうち、一部又は全部が損金の額に算入されなかったりするのです。



費用計上できて損金として認められないとどうなるのでしょうか?



交際費として支払っている(キャッシュアウトしてる)のに、損金として認められない=その分所得が増えてしまうため、支払わなければならない税金が増えてしまうのです。



だから、交際費について、経理担当者は気にされていたのですね。ちなみに個人事業主も気を付けるべきですか?



個人事業主には法人のような「交際費等の損金不算入制度」は存在せず、事業に直接関連する交際費は必要経費として全額計上できますのでご安心ください。



ビジネスの成功に欠かせないのが、得意先や取引先との良好な関係構築です。そのために必要な「交際費」ですが、税務上のルールは複雑で、「どこまで経費にできるのか」と悩む経営者や経理担当者は少なくありません。
特に、令和6年度の税制改正では、交際費の取り扱いが大きく変わりました。「1人当たり10,000円基準」の導入により、これまで経費にできなかった飲食費が損金算入可能となり、企業の経理実務に大きな影響を与えています。
この記事では、この最新の改正点を踏まえ、交際費等の損金不算入制度の基本から、企業規模別の特例、そして税務調査で否認されないための実務上の鉄則まで、誰でも理解できるように解説します。
1.交際費等の損金不算入制度の概要について
法人税法において「交際費等」とは、取引先や得意先との接待・贈答・慰安など、事業に関連して支出する費用を指します。
この交際費等は、過度な支出や私的流用を防ぐ政策的な目的から、原則として全額を損金(経費)に算入できない仕組みになっています。
しかし、特に中小企業にとっては取引先との関係構築や営業活動に欠かせない費用であるため、法人税法では一定の範囲で損金算入を認める「特例」が設けられています。
令和6年度(2024年度)の税制改正では、この特例がさらに拡充・延長されました。
| 改正項目 | 改正内容 | 適用時期 |
|---|---|---|
| 飲食費の基準額引き上げ | 1人当たり5,000円以下 → 10,000円以下に引き上げ | 令和6年4月1日以後に支出する 飲食費から適用 |
| 損金算入特例の延長※ | 中小法人(800万円枠)及び接待飲食費(50%枠)の特例を3年間延長 | 令和9年3月31日までに開始する 事業年度まで適用延長 |
※中小法人(800万円枠)とは、「中小法人が支出した交際費は年800万円まで全額損金算入するという特例」
※接待飲食費(50%枠)とは、「法人が支出した交際費のうち、接待飲食費の50%までは、損金算入するという特例」
この改正により、1人当たり10,000円以下の飲食費は「交際費」の対象から除外され、全額が損金算入可能な会議費等として処理できるようになりました。
2.交際費の範囲と除外されるもの
(1) 交際費等の定義
法人税法における「交際費等」とは、
「法人が、その得意先、仕入先、その他事業に関係のある者に対して行う接待、供応、慰安、贈答、その他これらに類する行為のために支出する費用」
を指します。
ここでいう「その他事業に関係のある者」には、取引先だけでなく、社内の役員・従業員・株主なども含まれる点がポイントです。つまり、交際費等は社外向けだけでなく、社内向けの支出も対象となる場合があります。
交際費等には、次のような支出が典型例として挙げられます。
接待費:取引先との会食、ゴルフコンペ、観劇などのレジャー費用
贈答費:お中元・お歳暮、開業祝いや慶弔金(お祝い金・お香典など)
慰安費:取引先の従業員を対象とした宴会や慰安旅行費用
移動費:接待や慰安に関連する交通費・宿泊費
参考:国税庁ホームページhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5265.htm
(2) 交際費に含まれないもの(損金算入できるもの)
法人税法上、交際費等は原則として損金不算入ですが、一定の支出は「交際費から除外」され、全額損金算入が可能です。ここでは代表的な除外項目を整理します。
① 1人当たり10,000円以下の飲食費(接待飲食費特例)
いわゆる 「10,000円基準」 と呼ばれる特例です。
- 対象となる費用
得意先や仕入先など、社外の人を接待するための飲食費(例:飲食店での会食、打ち合わせ後の食事など)。 - 適用要件
- 1人当たりの支出額が10,000円以下であること
- 飲食その他これに類する費用であること
- 社外の者が同席していること(社内役員・従業員のみの飲食は対象外)
- 参加者・金額・日時・場所などを記録した帳簿書類を保存していること
② 会議費
会議に関連して提供される茶菓・弁当・軽食などは、会議費として処理でき、全額損金算入が可能です。
- 金額基準
会議費は「会議に通常要する費用」であれば、1人当たり10,000円を超えても全額損金算入が可能。 - 社内/社外の区分
会議の目的が明確であれば、社内・社外を問いません。
ただし、過度に高額な飲食費は「会議費」と認められず、交際費と判断されるリスクがあるため注意が必要です。
③ 福利厚生費
従業員の福利厚生を目的とした飲食費は、福利厚生費として全額損金算入が可能です。
- 具体例
社員旅行や社内イベントでの飲食費、社員食堂の食費補助など。 - 注意点
社内飲食費(役員・従業員のみの飲食)は「10,000円基準」の対象外です。
原則として交際費または給与課税の対象となりますが、全従業員を対象とする慰安目的など一定の要件を満たす場合は福利厚生費として認められます。
④ その他の除外項目
以下の支出は交際費には含まれず、通常どおり損金算入が可能です。
- 寄附金(ただし寄附金は別途損金算入限度額あり)
- 値引き・割戻し(販売促進の一環としての値引き等)
- 広告宣伝費(カレンダー・手帳・ノベルティなどの配布物)
- 給与(役員・従業員への給与や賞与)
3.損金不算入の基本ルール
交際費の金額を算出する際には、法人税法上いくつかの厳格なルールが定められています。特に重要なのが、「10,000円基準」の判定方法です。
10,000円基準の判定方法(税込/税抜)
1人当たりの飲食費が10,000円以下かどうかの判定は、法人が採用している消費税の経理方式に従います。
- 税込経理方式:消費税を含めた金額(税込金額)で判定
- 税抜経理方式:消費税を除いた金額(税抜金額)で判定



つまり、同じ会食でも経理方式によって「基準を超えるかどうか」の判定結果が変わる可能性があるということですね!
判定額の計算方法
10,000円基準の判定は、「お店に支払った金額の合計」を参加人数で割って計算します。
このとき、料理代だけでなく以下の費用もすべて含める必要があります。
- 個室料
- テーブルチャージ
- サービス料



領収書に参加人数を書いておくと、経理処理の際に助かりますよ!
「全額アウト」の原則
最も注意すべきは、1人当たりの金額が1円でも10,000円を超えた場合、その飲食費全額が交際費扱いになるという点です。
例えば:
- 1人あたり 9,900円 → 全額が交際費から除外され、損金算入可能
- 1人あたり 10,001円 → 1円超えただけでも、全額が交際費として損金不算入
超えた部分だけが交際費になるわけではないため、実務上は「ギリギリの金額設定」に注意が必要です。
4.法人区分ごとの取扱い
交際費等の損金算入限度額は、法人の規模(資本金の額等)によって明確に区分されています。ここでは、中小法人・大法人・超大法人の3区分ごとの取扱いを整理します。
(1) 中小法人(資本金1億円以下)
期末の資本金の額等が1億円以下の法人(大規模法人の完全子法人等を除く)は、次の2つのうち、いずれか有利な方を選択して損金算入することができます。
1. 年間800万円までの交際費の損金算入。
2. 接待飲食費(社内接待費を除く)の50%相当額の損金算入。



この特例は、令和9年3月31日までに開始する事業年度まで適用期限が延長されています。
(2) 大法人(資本金1億円超~100億円以下)
資本金の額等が1億円超100億円以下の法人は、以下の特例が適用されます。
• 接待飲食費(社内接待費を除く)の50%相当額を損金算入。
ただし、飲食費の50%を超える部分や、贈答費・慰安費などの飲食費以外の交際費は、原則として全額損金不算入となります。
(3) 超大法人(資本金100億円超)
資本金が100億円を超える法人は、交際費等の全額が損金不算入となります。
- 接待飲食費の50%損金算入特例も適用されません。
- ただし、1人当たり1万円以下の飲食費(10,000円基準)は交際費から除外されるため、損金算入が可能です。
5. 実務上の留意点
交際費等の損金算入を正しく行うためには、改正点への対応と証憑管理の徹底が欠かせません。税務調査で否認されないために、次のポイントを押さえておきましょう。
(1) 適用開始時期に注意する
- 10,000円基準の適用開始
新しい「1人当たり10,000円基準」が適用されるのは、令和6年4月1日以後に支出する飲食費からです。会社の決算期は関係ありません。 - 混在に注意(3月決算法人以外)
3月決算法人以外では、同一事業年度内に「5,000円基準」と「10,000円基準」が混在するケースが発生します。



経理処理の際は、支出日ベースで基準を判定することが重要です!
(2) 帳簿書類の明確な保管を徹底する
10,000円基準を適用して飲食費を損金算入するためには、以下の内容を記載した書類の保存が必須です。
- 飲食等のあった年月日
- 飲食等に参加した得意先・仕入先その他事業関係者の氏名または名称、およびその関係性
- 飲食等に参加した人数
- 飲食費の金額、飲食店等の名称および所在地



先ほども少し触れましたが、実務上の工夫として、レシートや領収書には「参加者名」や「人数」が記載されないことが多いため、領収書の裏に追記して保管するのが効率的で、税務調査でも有効な対応となります。
(3) 対象外の費用を混同しない
10,000円基準の対象となるのは「飲食その他これに類する費用」です。以下の費用は対象外であるため、金額が10,000円以下であっても交際費として扱われるか、別の科目で処理されます。
| 費用 | 取扱い |
|---|---|
| お中元・お歳暮などの物品の贈答品 | 対象外:金額に関わらず交際費 |
| ゴルフや観劇、旅行などイベント中の飲食費 | 対象外:主たる催事と一体とみなされる |
| 社内の役員・従業員のみの飲食費 | 対象外:原則交際費または給与。一定条件で福利厚生費 |
| 飲食店等への送迎タクシー代 | 対象外:飲食店以外に払う関連費用は含まれない |
| 持ち帰るお土産(折詰など) | 例外的に対象内:会食したお店で提供しているもので、飲食の延長と判断される場合。会食費と合算して10,000円以下で判定 |
6. まとめ【交際費等の最新ルールを正しく理解する】
令和6年度の税制改正により、「1人当たり5,000円基準」から「10,000円基準」へ引き上げられたことは、企業にとって大きなメリットです。これにより、経費として計上できる飲食費の範囲が大幅に拡大し、実務上の柔軟性が高まりました。
しかし、交際費のルールは依然として複雑であり、次の点を正しく理解しておくことが不可欠です。
- 「10,000円を1円でも超えたら全額交際費」となる厳格な原則
- 法人規模による損金算入特例(中小法人の「年間800万円枠」または「接待飲食費50%枠」)の存在
特に中小法人の場合、
- 接待飲食費の割合が高いなら「50%枠」
- 飲食費以外の交際費も多いなら「800万円枠」
といったように、どちらが有利かを事前にシミュレーションすることが、適切な税務戦略を立てる上で非常に重要です。
さらに、税務調査で否認されないためには、
- 正確な経理処理
- 参加者や金額を明記した証憑の保管
を徹底することが欠かせません。これらを実行することで、税務リスクを回避しつつ、安心して取引先との関係強化に集中できます。



交際費だけでも気にしなければならないことは沢山ありますね。



実務上は、交際費、会議費、福利厚生費、給与のどれに該当するのか、判断が難しいケースもあります。本来は交際費や給与に該当する取引を、会議費や福利厚生費で計上してしまうのは税務リスクがあります。相談できる顧問税理士がいない場合には、お気軽にこちらまでお問い合わせください。










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