【町田市の税理士が解説】<中小企業・個人事業主向け>銀行融資を成功させるためのポイントについて Day3(財務体制の強化と適切な情報開示)

ミミレイドン

ボス、おはようございます!早速ですが、今朝は、銀行融資を成功させるための3つ目のポイントを教えてくれるんですよね!銀行が重視する貸借対照表(B/S)ポイントなんてまさに税理士の腕の見せ所ですね!

新屋賢人

そうですね!本日は、財務体制の強化と適切な情報開示について見ていきましょう。
銀行の審査が厳しいのは、お金を「貸したくない」のではなく、「安心して貸せる相手」を見極めたいからです。その見極めの基準こそが、本記事で解説する「財務体制の強化と適切な情報開示」に他なりません。重要なポイントになりますのでしっかりと解説いたします!

ミミレイドン

昨日は、Day2として、創業事業計画書の作成に言及しておりますので、気になる方はこちらの記事をご覧ください。
【町田市の税理士が解説】<中小企業・個人事業主向け>銀行融資を成功させるためのポイントについて Day2(説得力のある事業計画書(創業事業計画書)の作成)

目次

財務体制の強化と適切な情報開示

なぜ決算書だけではダメなのか?試算表提出の絶対的な理由

金融機関が最新の経営状況を把握するために、決算書と合わせて試算表(途中経過を示す中間的な財務諸表)の提出が求められます。

年次決算書は年に一度しか作成されないため、決算日から数ヶ月経つと、その情報は「過去のもの」となり、会社の「今」の状況を正確に反映しているとは言えなくなります。銀行員が本当に知りたいのは、融資を申し込んでいる「現時点での最新の経営状況」です。

試算表の提出がないと、銀行は「経営管理が甘い」「資金繰りに不安がある」と見なし、融資を出しにくいと判断します。逆に、好調な時期はもちろん、厳しい状況の時でも包み隠さずに報告し、透明性の高い報告を継続している企業は、高い評価を受けます。

ミミレイドン

だから金融機関は決算書に加えて月次試算表の提出を求めてくるのですね。面倒くさいと思ってました~

新屋賢人

試算表は「途中経過を示す財務諸表」であり、銀行にとっては融資判断の生命線とも言えますので、しっかりと事前準備しておきましょう!

試算表作成体制の整備:銀行が信頼する「経営管理レベル」の証明

試算表を迅速かつ正確に提出できる体制は、企業が「経営管理がしっかりしている」ことを示す重要な指標です。試算表そのものを作っていない会社は、すぐに毎月作成する体制を整えるべきです。そうでなければ、1年に1回の決算まで、黒字か赤字かさえ分からず、対策を講じるきっかけを失います。

新屋賢人

試算表を提出できない会社は、銀行から①経営管理が甘い②資金繰りに不安がある③数字を隠しているのではないかと評価されるリスクがあります。

銀行からの信頼性を高めるために、以下の体制を目標としましょう。

スクロールできます
報告頻度提出資料理想的な提出タイミング効果
月次試算表・資金繰り表翌月15日までリアルタイムでの状況把握と管理体制の良さを示す
四半期業績レポート・今後の見通し四半期終了後速やかに戦略的な議論が可能になり、信頼関係が深まる
新屋賢人

余談ですが、融資を受けられた後も、定期的に試算表を提出することにより、銀行からの信頼感は高まりますのでお勧めです。融資担当者とも話す機会も増えますしね!長いお付き合いとなりますし、有事の際に味方になってくれるはずです!

【具体的な行動】迅速性と正確性を確保する3つのステップ

1. タイムリーな作成の徹底

理想は翌月15日までの提出です。多くの中小企業は月末から1ヶ月以上経ってから提出していますが、この迅速性は銀行から管理体制の良さとして高く評価されます。

2. 経営分析ができる形に整備

単に数字を並べるだけでなく、売上総利益率、営業利益率、そして営業キャッシュフローといった指標を算出し、状況を「説明できる数字」に変えることが重要です。

3. 粉飾・過度な節税の回避

試算表は決算確定前の資料ですが、融資のために売上を水増しするなどの粉飾は絶対に避けてください。粉飾や過度な節税は、銀行からの信頼を失う最大の要因です。多少利益が少なくても、正しい数字を提示する誠実な経営こそが評価されます。

ミミレイドン

過度な節税もダメなんですね。

新屋賢人

逆粉飾レベルということです。ただ、逆粉飾までいかなくても、過度な節税を徹底し過ぎて、利益を過小に見せると、返済能力が低いと判断され、融資が不利になる可能性もあります。融資を受ける前に、方針について、顧問税理士と相談しましょう。
なお、粉飾決算(売上水増し・費用隠しなど)は、銀行から「詐欺行為」と見なされ、融資停止や一括返済請求につながる重大リスクがありますので、絶対にやめましょう!

銀行が重視する貸借対照表(B/S)の5つのポイント:安全性と返済能力

銀行融資を申し込む際、経営者が注目しがちなのは損益計算書(P/L)の利益額です。
しかし実際には、銀行が最も重視するのは貸借対照表(B/S)から読み取れる「会社の安全性」「返済能力」です。

B/S(Balance Sheet)は、企業の財政状態を示す資料であり、資産、負債、純資産から構成されています。このB/Sを銀行員がどのように見ているかを理解することが、融資成功の鍵となります。

ポイント1: 現金及び預金の残高(月商の何ヶ月分あるか)

流動資産にある「現金及び預金」の残高は、短期的な支払い能力を示す最も重要な指標の一つです。

  • 目標値: 月商の1ヶ月分あれば素晴らしいとされ、2ヶ月、3ヶ月分あれば非常に安心材料となります。
  • 銀行の評価: 借入金が多くても、現預金残高が潤沢であれば「資金繰りに余裕がある」と評価されやすい傾向にあります。

ポイント2: 債務超過の回避と自己資本比率の強化

債務超過とは、負債の総額が資産の総額を上回っている状態(純資産の部がマイナス)です。この状態は「倒産リスクが極めて高い」と見なされ、新規融資はほぼ不可能になります。また、表面上の債務超過を避けていても、回収不能な売掛金などがあれば、銀行はそれを除外し「実質的な債務超過」と判断します。

財務の安定性を示す重要指標が自己資本比率です。

計算式: 自己資本(純資産)÷総資本×100(%)
目標値: 財務的に非常に優良と見なされるのは40%以上です。最低でも15%以上、理想は20%以上の確保を目指すべきです。
改善策: 日々の利益を積み重ね、内部留保(利益剰余金)を厚くしていくことが王道です。

ポイント3: 雑資産勘定の整理と圧縮

B/Sの資産側にある「雑資産」(貸付金、仮払金など)が多額になっていると、「堅実な経営がされていないのではないか?」と判断され、企業の信頼が下がりやすくなります。

特に、役員貸付金は会社が役員にお金を貸している状態であり、「会社の資金が私的に流用されている」と見なされ、最も評価が下がる項目の一つです。銀行員は、役員貸付や仮払金に対し、「経営者自身が個人的に使っているのではないか?」と疑う傾向が強いのです。

改善策としては、役員貸付金や使途不明な仮払金は速やかに返済・解消すべきです。売掛金や仮払金も、過去3年にわたり同一金額が残っている場合は、回収できない不良債権として判断されるため、早めに回収または適切な処理を施しましょう。

ポイント4: 資産の流動性向上と負債の長期化

貸借対照表の勘定科目は、その並び順も銀行にチェックされています。

1. 資産の部を「上」へ(流動性を高める)

資産は上から順に「現金化しやすい(流動性が高い)」項目が並びます。現預金や売掛金といった流動資産の割合を重視し、すぐに現金化できる資産が多いほど、短期的な支払い能力が高いと評価されます。不要な固定資産を売却して現預金を増やすなど、資産はできるだけ「上」の勘定科目に集めましょう。

2. 負債の部を「下」へ(短期的な返済負担を減らす)

負債は上から順に「返済期限が早く来る(流動性が高い)」項目が並びます。短期的な返済負担が少ない方が資金繰りが安定していると評価されるため、長期負債(固定負債)の割合を重視します。短期借入金を長期借入金に借り換えるなど、負債はできるだけ「下」の勘定科目に移すことが評価向上に繋がります。

ポイント5: 返済能力を示す指標(債務償還年数)の改善

銀行は融資の実行後、確実に返済してもらえるかを判断するために、収益力と借入金を比較します。その主要な指標が債務償還年数です。

計算式: 借入金 ÷ (当期利益 + 減価償却費)

目標値: 10年以内が望ましいとされています。10~15年を超えている場合は、追加融資が困難になるでしょう。

この数値を改善するには、借入金を減らすか、利益(キャッシュフロー)を増やすしかありません。営業キャッシュフローがプラスであることは、融資の絶対条件です。売掛金の回収期間短縮や在庫の適正化により、現金創出力を高めましょう。

新屋賢人

銀行が見ているのは「利益額」よりも「返済できる体制があるかどうか」。
その判断材料が貸借対照表です。
上記5つのポイントを意識することで、銀行から「安全性」と「返済能力」を高く評価され、融資の成功率が格段に上がります。

融資審査における信用維持の絶対条件

銀行との信頼関係は、融資を成功させるための「土台」であり、さらに有利な条件を引き出すための最大の武器です。
ここでは、融資審査において信用を維持・向上させるための3つの鉄則を解説します。

鉄則1: 悪い情報こそ「早期」かつ「正直」に開示する

「融資が必要になってから銀行に相談すればいい」 というのは大きな間違いです。融資が不要な時期でも定期的なコミュニケーションが重要ですが、特に業績が悪化した際は、情報を隠したり報告を遅らせたりすると信頼を損ない、支援を得る機会を逃します。

誠実な対応

売上が減少した場合でも、「競合参入で一時的に落ち込んでいるが、新商品投入により来期回復見込み」といった具体的な改善策とともに報告することが重要です。

セットで報告

問題点を伝える際は、「原因分析」と「対策案」をセットにして報告してください。これにより、「問題を認識し、解決に向けて動いている経営者」という印象を与えられます。

危機時の対応

危機時こそコミュニケーションの頻度を高め、深刻度に応じて月次から週次の報告を行いましょう。早期に相談した企業ほど、審査期間の短縮や迅速な対応を受けられる傾向があります。

鉄則2: なぜその数字になったのか?「背景」まで説明し、準備を徹底する

銀行員も人間ですから、納得できる説明があれば前向きに検討してくれます。単に数字を並べるだけでなく、「なぜその数字になるのか」という背景まで説明していることが、高評価を得る企業の共通点です。

数字で語る

融資担当者との面談では、数字で語ることを徹底します。売上向上の具体的施策、コスト削減の進捗状況、返済計画の確実性を明確に説明してください。

根拠資料の準備

質問に対して即座に答えられるよう、想定問答集を事前に準備し、根拠資料を手元に用意しておくことが成功の鍵です。契約書・見積書・受注残高一覧などの裏付け資料があると説得力が増します。

迅速な対応

融資審査中に追加資料を求められたら、24時間以内の提出を目指してください。スピード感は「誠実な経営姿勢」として高く評価されます。

鉄則3: 決算書以上に銀行が重視する「勘定科目内訳書」を磨き込む

多くの経営者が気にしない「勘定科目内訳書」(勘定科目内訳明細書)ですが、実は銀行員は決算書以上にこれを驚くほどよく見ています。その理由は、B/SやP/Lだけでは分からない「取引の詳細・実態」が詰まっているからです。

勘定科目内訳書を通して、銀行が注目するポイントは次の3つです。

1. 取引先の信用

どの企業と取引しているか、その取引先は優良企業かを確認することで、融資を申し込んでいる企業自体の信用力を判断します。大手で品質管理の厳しい企業と取引していれば、それだけでも企業の製品力・技術力・営業力が備わっていると判断され、信用につながります。

2. 不良債権の有無

売掛金や仮払金の内訳から、「本当に回収できる取引(金額)か」を厳しくチェックします。過去3年にわたって同一取引先に同一金額が残っている売掛金や仮払金は、回収できない不良債権として判断されます。

3. メインバンクとの関係

現預金等の内訳から、メインバンクの融資残高推移を確認されます。融資残高が年々減っている場合、「この会社に何か問題があるのではないか?」と疑われるため、可能な限りメインバンクの残高は減らさないよう注意が必要です。

【具体的な行動】勘定科目内訳書の整備

税理士に丸投げせず、最低限以下の点を連携して整備しましょう。

  • 回収できない売掛金は速やかに処理し、貸付金などのマイナス評価される勘定科目は使わない
  • 全ての内訳書は、金額の多い順に並べることで、取引の規模感を分かりやすく表現する。
  • 取引先の住所を記載し、実在性を明確にする。
新屋賢人

融資は「数字の勝負」であると同時に、「信頼の勝負」でもあります。
誠実な情報開示と適切な財務体制の整備こそが、銀行からの信用を勝ち取り、資金調達を有利に進める最大の武器になるのです。

まとめ:財務体制の強化と適切な情報開示により、「選ばれる存在」へ

銀行融資の成功は、単なる資金調達ではなく、経営の透明性を示すチャンスです。

試算表を翌月15日までに作成し、継続的な情報開示を行う。

• 貸借対照表(B/S)の自己資本比率(理想40%以上)や債務償還年数(10年以内)を改善する。

• 情報を隠さず、数字の背景や具体的な改善策を提示する。

これらの取り組みを継続することで、会社は単なる「借り手」ではなく、銀行から選ばれる存在へと変化します。
その結果、困った時にも銀行が味方となり、安心して経営に専念できる環境を手に入れることができます。

新屋賢人

銀行融資は「数字の勝負」であると同時に、「信頼の勝負」でもあります。正確でタイムリーな情報開示と健全な財務体制を整えることで、あなたの会社は「借りる立場」から「選ばれる立場」へと進化し、未来の成長資金を確実に手に入れることができます。
財務体質の改善や銀行対応には、専門的なノウハウが欠かせません。
融資が必要になる6か月前には、税理士と連携することを強くおすすめします。相談できる税理士がいない場合には、お気軽にこちらまでお問い合わせください。

ミミレイドン

3連休まであと2日!今日も1日頑張りましょう!

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この記事を書いた人

町田市にあるコムレイド税理士事務所の代表税理士の新屋賢人です。大学卒業後、中堅税理士法人で5年間、業界最大手である国際四大会計事務所(BIG4)のEY税理士法人で8年間、計13年間の実務経験があります。
30代ですが、すでに法人・個人問わず幅広い業務を経験しております。BIG4という業界最大手で得た経験・知識を生まれ育った街に還元したいという強い思いから独立を決めました。

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