ミミレイドンボス、おはようございます!
共済シリーズ3段目はなんでしょうか?



意図せず共済シリーズになってましたね。3回目の今朝は中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)にしましょうか。
皆さんは、取引先の倒産という「もしも」の事態に、本当に備えられていますか?



えっ、自分の会社ではなく取引先の倒産ですか?取引先の経営状態までは考えていない人も多いかと思いますが。。。



例え、あなたの会社が順調に利益が出ている優良企業であっても、取引先が突然倒れたことで、資金繰りが一気に悪化し、連鎖倒産に追い込まれるケースは少なくありません。特に中小企業にとっては、これは最も怖い経営リスクの一つです。
そんな中小企業を連鎖倒産のリスクから守るために国が創設・運営しているのが、「中小企業倒産防止共済」です。一般には「経営セーフティ共済」という愛称で呼ばれています。



「節税対策」として聞いたことがありましたが、そういう制度趣旨なのですね。



確かに、節税効果があると聞いて加入を検討している人も多いかと思いますが、正確には課税を繰り延べているだけであり、節税効果は期待できません。この制度の本質はあくまでも倒産防止のための強力なセーフティネットとなります。さらに、2024年10月には、一部の契約者が節税テクニックとして不自然な利用をしていたことを受けて、制度の大きな改正が行われました。
この記事では、経営セーフティ共済の基礎から、最新の改正を踏まえた賢い活用法、そして最も重要な「出口戦略」まで、誰にでもわかりやすく解説します。
1. 中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)とは?
経営セーフティ共済は、取引先の倒産による資金繰りの悪化や連鎖倒産を回避することを目的に、中小企業や個人事業主を守るために1978年4月に開始された共済制度です。
この制度の運営は、国が100%出資する独立行政法人 中小企業基盤整備機構(中小機構)が行っており、高い信頼性があります。
この共済の大きな特徴は以下の3点です。
1. 取引先が倒産した際に、有利な条件で事業資金を借り入れられる(共済金の貸付)。
2. 納付した掛金が全額、経費(損金または必要経費)になる(節税効果)。
3. 解約した際には、掛金に応じて解約手当金(返戻金)が受け取れる。
2. 加入条件と対象業種【一覧表あり】
経営セーフティ共済に加入できるのは、引き続き1年以上事業を継続している中小企業者(法人または個人事業主)です。設立1期目の法人は原則として加入できませんが、個人事業主として1年以上事業を継続した後で法人成りした場合は、個人事業主期間を含めて1年以上であれば加入可能です。
業種ごとの加入資格・規模要件
中小企業であるかの判断は、「資本金の額または出資の総額」と「常時使用する従業員数」のいずれかが、以下の基準に該当することが条件となります。
| 業種 | 資本金の額または出資の総額 | 常時使用する従業員数 |
| 製造業、建設業、運輸業、その他の業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
| 小売業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
| ゴム製品製造業(一部除く) | 3億円以下 | 900人以下 |
| ソフトウェア業・情報処理サービス業 | 3億円以下 | 300人以下 |
| 旅館業 | 5,000万円以下 | 200人以下 |
参照:共済サポートnavi 倒産防止共済制度に加入できる会社とは?
参照:共済サポートnavi倒産防止共済制度に加入できる個人事業主とは?
加入できないケース(注意点)
上記規模要件を満たしていても、以下のケースでは加入が認められません。
- 所得税や法人税を滞納している場合。
- 医療法人、NPO法人、農協、外国法人など、会社法で規定された会社以外の形態。
- すでに共済契約者である場合(一人/一社につき一契約のみ)。
- 取引先に対して売掛債権等が発生しない業種(共済金貸付の対象とならない場合があるため、注意が必要です)。ただし、加入自体は可能であり、節税効果の恩恵は受けられます。
3. 加入のメリット
経営セーフティ共済の主なメリットは、「緊急時の資金調達」「節税対策」「将来の資金確保」の3つに集約されます。
メリット1:取引先倒産時に無担保・無保証・無利子で借入可能
最大の目的である「倒産防止」のため、連鎖倒産の危機に際して迅速かつ有利な条件で資金を借り入れられるのが強みです。
- 借入条件: 無担保、無保証人、無利子です。
- 貸付上限額: 回収困難となった売掛金債権等の額 または 納付した掛金総額の10倍相当額 のいずれか少ない方となります。
- 最高貸付額: 8,000万円まで借入れが可能です。
- 返済期間: 借入額に応じて5年〜7年(6ヶ月の据置期間を含む)で、毎月均等償還となります。
メリット2:掛金が全額「損金」または「必要経費」に算入できる(節税効果)
この制度の魅力として最も知られているのが、税制上の優遇措置です。
- 税務上の扱い: 掛金全額を、法人の場合は損金として、個人事業主の場合は事業所得の必要経費として、支払った年の所得から差し引くことが可能です。
- 節税効果: 課税対象となる所得を減らすことで、その分の法人税や所得税の負担を軽減できます。これは税金が「繰り延べられている」状態です。
メリット3:前納によるさらなる節税対策が可能
掛金は月払いですが、手続きを行うことで前納(最大1年分)が可能です。
- 前納のメリット: 支払ったタイミングで損金にできるため、例えば決算期末に翌年度の1年分(最大240万円)を前納すれば、その期の損金として計上し、大きな利益調整に利用できます。
- 前納すると、わずかながら前納に対する割引(前納減額金)も受け取れます。
メリット4:倒産時以外でも利用できる「一時貸付金」制度
取引先の倒産がない場合でも、臨時に事業資金が必要になった際に、一時貸付金として借入が可能です。
- 借入条件: 掛金納付月数が12ヶ月以上必要です。担保・保証人は不要です。
- 借入限度額: 機構解約時の解約手当金の95%が上限です。
- 利息: 利息がかかります。2024年(令和6年4月1日時点)の利率は年0.9%です。利率は変動制となります。
- 返済: 借入期間は1年間で、期限一括償還です。同額借換や増額借換の手続きも可能です。



なお、解約したときには、今まで支払った掛金が、掛金納付月数と掛金総額に応じて解約手当金として戻ってきます。ちなみに、解約は理由を問われず、いつでも解約可能です。ただ、注意点もありますので、次の項目で見ていきましょう。
4. 注意点とデメリット
メリットの大きい制度ですが、その仕組みを深く理解せず利用すると、思わぬ落とし穴にはまる可能性があります。特に以下の点に注意が必要です。
デメリット1:解約手当金は全額「課税対象」となる
掛金を納付した際は損金(経費)になりましたが、共済を解約して手当金を受け取る際、その全額が受け取った年の益金(法人の場合)または事業所得の収入金額(個人の場合)として扱われ、課税対象となります。
これは、税金が「免除」されたのではなく、「課税が将来に繰り延べられただけ」であることを意味します。解約するタイミングを間違えると、その年の税負担が一気に重くなり、節税効果が相殺されてしまうリスクがあります。
デメリット2:40ヶ月未満の解約は「元本割れ」する
解約手当金の支給率は、掛金の納付月数や解約の理由によって異なります。
特に、任意解約の場合、掛金納付月数が40ヶ月(3年4ヶ月)未満だと元本割れとなります。
| 掛金納付月数 | 任意解約(自己都合)の支給率 |
| 1ヶ月〜11ヶ月 | 0%(掛け捨て) |
| 12ヶ月〜39ヶ月 | 80%〜95%(元本割れ) |
| 40ヶ月以上 | 100% |
12ヶ月未満で解約すると全額が掛け捨てとなるため、短期間での利用は厳禁です。



解約手当金が最高でも掛金相当額であるため、退職金の原資づくりなど、お金を増やしたい場合には向いていません。中小企業も導入できる退職金制度として、昨日解説した、「中小企業退職金共済」や「はぐくみ企業年金」「企業型確定拠出年金」などがあります。



中小企業退職金共済については、こちらの記事をご覧ください。
【町田市の税理士が解説】中小企業退職金共済(中退共)の基礎知識とメリット・デメリットについて
デメリット3:共済金貸付は実質的に利息コストが発生する
取引先の倒産による共済金の貸付は無利子ですが、借入額の10分の1に相当する額が、納付した掛金総額から強制的に控除(マイナス)されます。この控除された金額は返済しても戻ってきません。
例えば、1,000万円を借り入れた場合、100万円が掛金から控除されるため、実質的には利息と同じようなコストが発生していると理解しておく必要があります。
デメリット4:2024年10月の税制改正による「再加入制限」
最も重要な改正点です。従来、節税目的で「満額まで積み立てて解約し、すぐに再加入する」という利用が増加しました。
この不適切な利用を抑制するため、2024年10月1日以降の任意解約から、以下の制限が適用されます。
• 任意解約後2年間は、再加入しても支払った掛金が損金または必要経費に算入できなくなります。
• 再加入自体は可能ですが、この2年間は節税メリットが得られなくなります。
この改正により、節税のみを目的とした短期的な解約・再加入のサイクルは事実上困難となり、本来の目的であるリスクヘッジと、長期的な視点での出口戦略の設計がより重要になりました。
5. 掛金と給付の仕組み
経営セーフティ共済の積立と給付の具体的なメカニズムを解説します。
掛金の仕組み
| 項目 | 詳細 |
| 掛金月額 | 5,000円から20万円まで(5,000円単位で自由に設定可能)。 |
| 積立限度額 | 総額800万円まで。 |
| 納付方法 | 原則、預金口座振替(毎月27日引き落とし)。 |
| 前納 | 最大1年分(12ヶ月)を前払いで納付可能(前納減額金あり)。 |
| 掛止め | 掛金総額が800万円に達した場合、または掛金総額が掛金月額の40倍以上に達した場合、掛金の払い込みを停止できます。 |
掛金月額の増額・減額はいつでも申請可能ですが、減額には「事業規模の縮小」や「経営の著しい悪化」など一定の理由が必要です。
給付の仕組み(共済金貸付と一時貸付)
倒産時:共済金の貸付
取引先が以下の事態(倒産)に陥り、売掛金債権等の回収が困難になった場合に利用できます。
- 法的整理(破産手続き、民事再生手続きなど)。
- 取引停止処分(手形交換所、でんさいネットなど)。
- 私的整理(弁護士等による支払停止通知)。
- 災害による不渡りや支払不能。
ただし、夜逃げなど法的な手続きがない場合は対象外です。
平常時:一時貸付金
- 利用条件: 12ヶ月以上掛金を納付していること。
- 使途: 事業資金(運転資金、設備資金)に限定されます。
- 利息: 2024年時点年0.9%(変動制)。
解約時:解約手当金
掛金納付月数が12ヶ月以上あれば、解約理由を問わず受け取れます。前述の通り、40ヶ月以上で任意解約すれば100%戻ります。
6. 加入・申込の流れ
加入手続きは、主に以下の窓口(登録取扱機関)で行います。オンラインで申込書の入力は可能ですが、最終的な提出は窓口で行う必要があります。
加入手続きの窓口
• 中小機構と業務委託契約を結んでいる委託団体(商工会、商工会議所、中小企業団体中央会、中小企業の組合など)。• 融資取引のある金融機関の本支店(銀行、信用金庫、信用組合など)。
加入までの流れ(4ステップ)
中小機構のウェブサイトまたは窓口から「契約申込書」「掛金預金口座振替申出書」「重要事項確認書兼反社会的勢力の排除に関する同意書」などの書類を入手します。
書類に必要事項を記入し、窓口で求められる公的書類(原本)を準備します。
記入済みの書類と必要書類(納税証明書、登記簿謄本/確定申告書など)を窓口に提出します。
手続き完了後、約2ヶ月後に中小機構から「共済契約締結証書」などの書類が郵送されます。
7. 活用事例・シミュレーション
経営セーフティ共済を最大限に活用するカギは、「出口戦略(解約のタイミング)」にあります。節税効果は一時的な「繰り延べ」に過ぎないため、利益(益金)が発生する解約手当金と、損金(費用)をぶつけることで課税を最小化する戦略が必要です。
活用事例1:退職金支給による節税の最適化
中小企業経営者が最も効果的に活用できるのが、このケースです。
1. 積立期間: 安定した利益が出ている時期に、掛金月額を上限の20万円に設定。
2. 節税効果(年間): 年間240万円の掛金を損金算入し、法人税等の支払いを繰り延べる。
3. 出口戦略: 役員退職金を支給する年度に合わせて、経営セーフティ共済を解約する。
• 効果: 解約手当金(益金)と、役員退職金(多額の損金)を相殺することで、解約金にかかる法人税を大きく圧縮 できます。
さらに、受け取った退職金は「退職所得」として、給与所得よりも税制優遇(退職所得控除)を受けられるため、経営者個人の税負担も有利になる、二重の節税効果が得られます。
活用事例2:大規模修繕や設備投資の資金準備
不動産オーナーや製造業など、数年後に大きな支出が確定している場合にも有効です。
1. 積立期間: 掛金月額を20万円に設定し、40ヶ月以上継続して800万円を積み立てる。
2. 出口戦略: 利益が出ているタイミングで大規模な修繕や設備投資を行い、その費用が損金となる年度に合わせて共済を解約する。
• 効果: 解約手当金の益金を、修繕費や設備投資費用(損金)で相殺することで、税負担なく将来の資金を確保できます。
活用シミュレーション(掛金月額20万円、40ヶ月で解約の場合)
| 項目 | 金額 | 税務上の影響 |
| 納付した掛金総額 | 800万円 (40ヶ月) | 800万円 全額損金(課税繰延べ) |
| 解約手当金 | 800万円 (100%返戻) | 800万円 全額益金(課税発生) |



繰延べた税金が解約時に課税されてしまうのですね。このケースだと解約時に一気に800万円も所得が増加しちゃうのはキツイですね。簡便的に実効税率30%だとしても240万も税金が増える計算になるのか。



そうなんです。節税目的で加入されているというお話を聞くこともありますが、正確には、課税が繰り延べられている(後回しにしている)だけなので、しっかりとした出口戦略を行い、税負担をコントロールすることが重要なのです。
8. こんな方におすすめ
経営セーフティ共済は、以下のいずれかに該当する中小企業者にとって非常に強力な味方となります。
- 特定の取引先への依存度が高く、倒産リスクに強く備えたい企業。
- 継続的に利益が出ており、法人税/所得税の負担を将来へ繰り延べたい企業。
- 3年4ヶ月以上の長期的な視点で、役員退職金や大規模な設備投資など、将来の大きな支出に備えて資金を準備したい企業。
- 銀行融資以外の、無担保・無保証人による緊急時の資金調達手段を確保したい企業。
9. まとめ
中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)は、「取引先倒産からのリスクヘッジ」と「戦略的な税金の繰り延べ」という二つの側面を持つ、中小企業経営に欠かせない制度です。
特に、2024年10月の制度改正により、安易な解約・再加入による節税テクニックは使えなくなりました。これにより、改めて制度の本来の目的に立ち返り、長期的な視点での計画的な運用と、出口戦略の設計が極めて重要になっています。
賢く活用するためのチェックポイント
- 40ヶ月の壁: 任意解約で元本割れしないためには、最低でも40ヶ月(3年4ヶ月)の継続を意識しましょう。
- 出口戦略: 解約は、赤字年度や役員退職金などの大きな損金が発生する年度に合わせることで、税負担を最小化できます。
- 改正への対応: 一度解約したら、2年間は掛金が損金にならないことを前提に、再加入のタイミングや掛金月額を計画しましょう。
- 専門家への相談: 節税と資金繰り、そして解約時の税務処理は複雑です。加入・解約の判断は必ず税理士に相談し、自社にとって最適な活用プランを立ててください。



経営セーフティ共済は、正しく理解し、計画的に活用することで、あなたの会社の経営基盤を強固にする強力なツールとなります。ぜひ、この機会に顧問税理士とともに、貴社に最適な活用法を検討してください。相談できる税理士がいない場合には、お気軽にこちらまでお問い合わせください。



今日行けば明日は土曜日!今週のラストスパート頑張りましょう!










コメント