ミミレイドンボス、おはようございます!
今日のテーマはなんでしょうか?昨日まで、3日連続で非上場株式(取引相場のない株式) の株価算定方法について、解説していましたので、今日も非上場株式の株価算定関連でしょうか?
巷では、内容がマニアック過ぎると批判が来ています。



今日で、非上場株式(取引相場のない株式)の株価算定絡みは最後にしようかと思います。
これまで、原則的評価方法として、純資産価額方式と類似業種比準価額方式について、解説しましたが、どちらの評価方法を採用するかは評価会社の会社規模によります。そのため、評価額を決定するうえで、重要 なプロセスが、今回ご紹介する「会社規模の判定」です。
本記事では、この複雑極まりない会社規模判定の仕組みを、誰にでも理解できるように、具体的なステップと実務上の注意点を含めて、徹底的に解説していきます。
この記事を読めば、あなたの会社の評価がどの方式で決まるのか、そしてどのような点に注意すべきかが明確になるでしょう。



類似業種比準価額方式と純資産価額方式をおさらいしたい方は、こちらの記事をご覧ください。
【町田市の税理士が解説】非上場株式の評価方法とは?類似業種比準価額方式編(基礎)
【町田市の税理士が解説】非上場株式の評価方法とは?純資産価額方式編(基礎)
1. はじめに(前回までのおさらい)
(1).非上場株式の株価算定が必要となる場面(相続・事業承継・M&Aなど)
上場企業の株式は市場価格が明確に存在しますが、非上場株式(取引相場のない株式)には市場価格がないため、適正な評価が不可欠となります。特に税務や取引の場面では、その価値を客観的に算定することが求められます。
- 相続・贈与
被相続人から財産を相続または贈与する際、課税対象となる財産として株式の価値を計算しなければなりません。 - 事業承継
次世代へ会社を引き継ぐ際、スムーズな株式移動と納税資金計画のため、評価が必須です。 - M&A
会社売却の際の基準となる株価を算定する場合(ただし、国税庁方式は相続・贈与税の評価に特化した方式です)。
(2).株価算定における「会社規模判定」の位置づけ
取引相場のない株式の評価は、株式を取得した株主が会社の経営支配力を持っている「同族株主等」 であるか、そうでないかによって、まず評価方式が分かれます。
もし、会社の経営支配力を持つ同族株主等が株式を取得する場合に適用されるのが、「原則的評価方式」です。
この原則的評価方式を適用する際、会社の規模が異なれば、一律に同じ評価方法を適用するのは妥当ではないとされています。そのため、会社の状況に応じて評価方法を使い分けるために、「会社規模判定」が評価プロセスの中で真っ先に必要となるのです。



判定に、同族株主以外の株主等が株式を取得した場合に適用できる評価方法(配当還元方式)については、こちらの記事で解説をしております。
【町田市の税理士が解説】非上場株式の評価方法とは?配当還元方式編(基礎)
(3).原則的評価方法(類似業種比準価額方式と純資産価額方式)
原則的評価方式の評価方法は、主に次の2つに大別されます。
| 評価方式 | 評価の基本的な考え方 | 適用されやすい会社規模 |
| 類似業種比準価額方式 | 事業内容が似ている上場企業の株価を基に、配当、利益、純資産(簿価)の3要素を比較して評価する方法。企業の収益力を重視します。 | 規模の大きい大会社 |
| 純資産価額方式 | 会社が今解散した場合に、株主に分配される財産の価値(時価に洗い替えた純資産額)を基に評価する方法。企業の資産価値を重視します。 | 規模の小さい小会社 |
一般的に、類似業種比準方式の方が純資産価額方式よりも株価が低く評価される傾向にあるため、会社規模の判定結果が税額に大きく影響します。
2. 会社規模判定の基本的な考え方
(1).規模判定の目的:リスクや収益性を反映させるため
非上場会社は、上場会社に匹敵する大規模な会社から、個人事業と変わらない小規模な会社まで、規模の差が非常に大きいのが特徴です。
規模が大きい会社ほど、事業活動や収益性が上場企業に近いとみなされ、類似業種比準方式(市場価格を反映)が適用されやすくなります。一方、小規模な会社は、清算価値としての純資産価額方式(会社の実際の資産価値)が適用されやすくなります。
このように、会社規模を細かく分けるのは、企業の真の価値(リスクや収益性)を評価に適切に反映させるためなのです。
(2).国税庁の「財産評価基本通達」に基づく考え方
非上場株式の評価は、国税庁が定める「財産評価基本通達」 に基づいて行われる、体系化されたルールです。
この通達では、会社を「大会社」「中会社」「小会社」のいずれかに区分するために、以下の3つの要素を使用すると定めています。
- 従業員数
- 取引金額(売上高)
- 総資産価額
(3).大会社・中会社・小会社の区分の概要
会社規模は、上記の3要素を用いて、以下の5段階に区分されます。
- 大会社
- 中会社(大)
- 中会社(中)
- 中会社(小)
- 小会社
特に中会社は、規模に応じて3段階に細分化されており、それぞれの区分で、後述する類似業種比準方式と純資産価額方式を組み合わせる「併用方式」の割合が変わってきます。
3. 判定基準の具体的内容
会社規模を判定するために使用する3つの要素(従業員数、取引金額、総資産価額)について、具体的な定義とカウント方法を見ていきましょう。
(1).A 従業員数
従業員数は、最初にチェックする最も重要な要素です。
- 判定基準の考え方
課税時期の直前期末以前1年間における従業員の数を使用します。 - 70人ルール
従業員数が70人以上いる会社は、無条件で大会社と判定されます。この場合、他の基準(総資産や売上高)による判定は不要です。
従業員数のカウントには、実務で間違えやすい以下のルールがあります。
- 役員は原則含まない
社長、理事長、専務、常務などの専任役員は従業員に含まれません。ただし、平取締役や使用人兼務役員は従業員数に含みます。 - 継続勤務従業員
1年間継続して勤務し、週の労働時間が30時間以上の従業員(主に正社員)は「1人」としてカウントします。 - それ以外の従業員(パート・アルバイト等)
継続勤務従業員以外(パート、アルバイト、新入社員など)は、全員の1年間の労働時間の合計を、年間平均労働時間(1,800時間) で割った数を人数としてカウントします。
(2).B 取引金額
取引金額とは、課税時期の直前期末以前1年間における、会社の事業目的である収入金額(売上高)を指します。
この基準は、会社の業種によって判定基準となる金額が大きく異なります。
- 業種区分
会社は、日本標準産業分類に基づき、「卸売業」「小売・サービス業」「卸売業、小売・サービス業以外」(製造業、建設業など)の3つのグループに分類されます。
参照:総務省 日本標準産業分類
参照:(別表)日本標準産業分類の分類項目と類似業種比準価額計算上の業種目との対比表(令和7年分) - 兼業の場合
複数の事業を営んでいる場合は、直前期末以前1年間の取引金額が最も多い業種を採用します。



まず、総務省が公表している日本標準産業分類から評価会社がどの分類に該当するかの判定をします。その後、対比表において、該当する分類の一番右の欄『規模区分を判定する場合の業種』に記載のグループに応じて判定を行います。
従業員数70人未満の場合は、以下の売上高基準または業種区分で判定します。
| 区分 | 卸売業(売上高) | 小売・サービス(売上高) | その他業種(売上高) |
|---|---|---|---|
| 大会社 | 30億円以上 | 20億円以上 | 15億円以上 |
| 中の大 | 7億円以上 | 5億円以上 | 4億円以上 |
| 中 | 3.5億円以上 | 2.5億円以上 | 2億円以上 |
| 中の小 | 2億円以上 | 6,000万円以上 | 8,000万円以上 |
| 小会社 | 2億円未満 | 6,000万円未満 | 8,000万円未満 |
※従業員数が70人以上の場合は自動的に「大会社」と判定。
参照:財産評価基本通達179 (取引相場のない株式の評価の原則)
(3).C 総資産額
総資産価額は、課税時期の直前期末における確定決算上の総資産の帳簿価額の合計額を使用します。純資産価額方式で使う「相続税評価額に洗い替えた時価」ではない点に注意が必要です。
💡 総資産額算定の主な注意点
- 減価償却累計額
固定資産の減価償却累計額を貸借対照表上で間接法により表示している場合は、資産の合計額からこれを控除します。 - 引当金
売掛金や貸付金に対する貸倒引当金は控除しないことに留意が必要です。 - 繰延資産等
前払費用、繰延資産、繰延税金資産など、確定決算上の資産として計上されているものは、帳簿価額の合計額に含めます。
| 区分 | 卸売業(総資産) | 小売・サービス(総資産) | その他業種(総資産) |
|---|---|---|---|
| 大会社 | 20億円以上 | 15億円以上 | 15億円以上 |
| 中の大 | 4億円以上 | 5億円以上 | 5億円以上 |
| 中 | 2億円以上 | 2.5億円以上 | 2.5億円以上 |
| 中の小 | 7,000万円以上 | 4,000万円以上 | 5,000万円以上 |
| 小会社 | 7,000万円未満 | 4,000万円未満 | 5,000万円未満 |



総資産を基準とします。純資産ではないのでご注意ください。
参照:財産評価基本通達179 (取引相場のない株式の評価の原則)
(4).判定の優先順位と総合判断の仕組み
70人未満の会社の場合、会社規模は次の3つのステップで総合的に判断されます。
| ステップ | 判定内容 | 採用ルール |
| Step 1 | 従業員数が70人未満 (→70人以上は無条件で大会社判定) | 従業員数が70人未満には、次のステップへ |
| Step 2 | C. 総資産価額基準 と 従業員数による判定 | Cにより判定する。 ただし、Cによる判定結果に関わらず、従業員数が35人以下の場合には中の中、20人以下の場合には中の小、5人以下の場合には小会社と判定します。 (規模が低い方を採用) |
| Step 3 | Step 2の結果 と B. 取引金額基準 の判定 | Step 2の結果とBの結果を比較し、規模が上位の方(大きい方) を最終的な会社規模とする |
この「低い方を採用」「上位の方を採用」というルールが、規模判定の最も複雑で重要なポイントです。
例えば、総資産額が非常に大きくても、従業員数が少なければ(例:従業員5人以下)、資産と従業員数で比較した段階(Step 2)で「小会社」に引き下げられます。これは、資産を持つだけで実態的な事業規模が伴わない 会社の評価を適正に行うための仕組みです。



可能な限り、株価が低くなる類似業種比準価額方式の恩恵を受けるため、会社規模の判定が純資産ではなく、総資産基準なら銀行から借入金を沢山借りれば良いじゃん!と思われたかと思いますが、step2で従業員数基準との比較がありますので、うまくはいきません。
(5).実務でよくある「境界線上のケース」の扱い
実務上、従業員数や総資産額が基準の境界線付近にある会社では、評価額が大きく変動する可能性があります。
例えば、従業員数が69人の会社と70人の会社では、70人の会社は無条件で大会社となり、評価が低くなりがちな類似業種比準方式が原則適用されます。一方、69人以下の会社はStep 2に進むため、総資産額や売上高によっては中会社や小会社に分類され、評価額が高くなる純資産価額方式の影響が強くなる可能性があります。
このように、僅かな数値の違いが評価方式の適用割合を左右し、結果として税額に大きな差を生むため、自社の数値を継続的に把握し、適切な対策を講じることが、事業承継や相続税対策において非常に重要となります。
4. 会社規模と評価方法の関係
会社規模の判定が完了すると、その結果に基づいて、具体的な評価方式が決定されます。
(1).大会社 → 類似業種比準法中心
大会社と判定された場合、原則として類似業種比準方式(類似業種比準価額)により評価します。
類似業種比準方式は上場企業のデータをベースとするため、その評価額は一般的に、資産価値を洗い替える純資産価額方式よりも低くなる傾向があります。ただし、大会社であっても、納税者の選択により純資産価額方式で評価することも認められています。
(2).中会社 → 類似業種比準法と純資産価額法の併用
中会社と判定された場合、原則として類似業種比準方式と純資産価額方式を組み合わせた「併用方式」 で評価します。
併用する割合は、中会社の細分化された規模(大・中・小)に応じて定められています。
• 中会社の大:類似業種比準方式 90% + 純資産価額方式 10%
• 中会社の中:類似業種比準方式 75% + 純資産価額方式 25%
• 中会社の小:類似業種比準方式 60% + 純資産価額方式 40%
会社規模が小さくなるにつれて、純資産価額方式の割合が高くなっているのがわかります。
参照:財産評価基本通達179 (取引相場のない株式の評価の原則)
(3).小会社 → 純資産価額法中心
小会社と判定された場合、原則として純資産価額方式により評価します。
しかし、小会社についても、特例として「類似業種比準方式50% + 純資産価額方式50%」の併用方式を選択することが認められています。実務では、通常、両方の方式で計算を行い、評価額が低くなる方を選択することが一般的です。
(4).会社規模が変わると評価額が大きく変動する
評価方法によって、株価は大きく変わります。例えば、資産(特に含み益のある土地や有価証券)を多く持つ会社が「小会社」と判定され、純資産価額方式が適用されると、評価額が跳ね上がり、結果として相続税が多額になるケースは珍しくありません。
実際に、評価額が低くなる類似業種比準方式の影響を高めるための生前対策(例:株特外し、比準要素数1の会社外し)を実行した結果、国税当局から否認され、その適否が裁判で争われた事例もあります。これは、「評価通達の定める方法による画一的な評価を行うことが実質的な租税負担の公平に反する」と認められるかどうかが焦点となる、極めて専門的な判断が求められる分野です。
5. 実務上の留意点
(1).判定基準の数値は「直前期末の決算書」を用いる
会社規模を判定する際に使用する「総資産価額」や「取引金額」の数値は、原則として、課税時期(相続日または贈与日)の「直前に終了した事業年度の末日」(直前期末)の決算数値を用います。
例えば、3月決算の会社で9月に相続が発生した場合、その直前期末である3月末時点の決算書の情報で会社規模を判定します。
(2).特殊要因(新設法人、急成長企業、資産管理会社など)の扱い
会社規模判定のルールが適用されない、あるいは純資産価額方式が原則適用される「特定の評価会社」の区分があります。
以下のような会社は、原則として純資産価額方式で評価されます。
- 新設法人等:開業後の経過年数が3年未満の会社。
- 休業・清算中:開業前または休業中の会社、清算中の会社。
- 資産保有型企業:株式等保有割合や土地等の保有割合が一定割合以上である株式等保有特定会社や土地保有特定会社。
- 比準要素数1の会社等:類似業種比準方式の3要素(配当、利益、純資産)のうち、直前期末及び直前々期末の2期連続で2つ以上がゼロである会社など。
これらの特殊な会社に該当する場合は、規模判定のプロセスを経る前に評価方式が純資産価額方式などに限定されるため、特に注意が必要です。
(3).税務調査で指摘されやすいポイント
非上場株式の評価は、税務調査で非常に指摘を受けやすい項目の一つです。特に以下の点に留意が必要です。
- 会社規模判定の誤り
従業員数のカウント方法や、総資産価額の算定における減価償却累計額や貸倒引当金の処理を誤ると、会社規模の判定そのものが変わり、評価額が過少になる可能性があります。 - 評価時点の資産負債の著しい変動
純資産価額方式を採用する場合、原則として課税時期(相続日/贈与日)の資産負債の金額で評価しますが、実務上、直前期末の数値を使うことが許容されています。しかし、直前期末から課税時期までの間に、会社の資産や負債に著しい増減があった場合には、直前期末の数値を用いることが適切ではないとされ、評価時点(課税時期)の実態を反映した評価をすべきと指摘されるリスクがあります。 - 租税回避行為の適用(総則6項)
評価額を意図的に低くするために不自然な行為(例:直前に大きな配当を実施して比準要素数1の会社を回避する、多額の出資により株特外しを行う)があった場合、その評価方法が否認され、高額な追徴課税(贈与税)を受けるリスクがあります。
6. まとめ
非上場株式の評価における「会社規模判定」は、その後の評価方式(類似業種比準方式か純資産価額方式か)を決定する、極めて重要なターニングポイントです。
会社規模判定は、従業員数(70人ルールが最優先)、そして70人未満の場合は総資産価額と取引金額の基準を、業種区分に応じて複雑に組み合わせることで行われます。
この判定が、税負担の公平性を保ちつつ、企業の実態を評価に反映させるための「最初のふるい」の役割を果たしているのです。
この複雑なルールを正確に理解し、自社にとって最適な評価戦略を立てることは、経営者にとって必須のタスクと言えます。



会社規模判定を間違えることは、目的地へ向かうための地図の読み方を間違えるようなものです。正しい評価方法にたどり着かなければ、最終的な納税額も大きく誤ってしまいます。ご自身の会社の規模判定や株価評価に少しでも不安を感じたら、必ず税理士にご相談ください。もし、相談できる税理士がいない場合には、お気軽にこちらまでお問い合わせください。










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