【町田市の税理士が解説】消費税の免税事業者の判定基準について

ミミレイドン

ボス、おはようございます!
友人が事業を始めたのですが、数年間は必ず消費税の免税事業者になると話していました。消費税の“免税事業者”ってよく聞くけど、正直よく分かっていないのです。免税ってことは、消費税を払わなくていいってことですか?

新屋賢人

確かに“免税”と聞くと『ラッキー!払わなくていい!』と思いがちですが、実は条件があるんです。誰でも自動的に免税になるわけではありません。設立初年度から課税事業者になることもあります。

ミミレイドン

えっ、条件?じゃあ免税になれるかどうか、必ずチェックしないといけないんですね!

新屋賢人

その通りです。基準になるのは“売上高”や“設立時の資本金”などの数値を確認する必要があります。今日はその判定基準を分かりやすく整理してみましょう。

目次

1. はじめに

(1).消費税の基本的な仕組み

消費税は、商品やサービスの提供に対して課税される間接税です。最終的に税を負担するのは消費者ですが、国へ申告・納税する義務を負っているのは事業者です。

事業者は、売上時に顧客から預かった消費税(仮受消費税)から、仕入れや経費で支払った消費税(仮払消費税)を差し引いた差額を納付します。この仕組みを「仕入税額控除」といいます。

新屋賢人

事業者は、あくまでも消費者から預かった消費税を国に納付するということになります。

(2).「免税事業者」とは何か

免税事業者とは、この消費税の申告・納付義務が免除されている事業者を指します。

この制度は、売上が一定基準以下の小規模事業者が、消費税の申告や記帳に追われるといった事務負担や金銭的な負担を軽減する目的で設けられています

(3).中小事業者にとってのメリット・デメリット

免税事業者でいることは、事業の運営方針に大きな影響を与えます。

区分メリットデメリット
免税事業者1. 納税義務がない
売上に含まれる消費税相当額をそのまま収入として残せる。
1. 仕入税額控除ができない
仕入れや経費に含まれる消費税が自己負担となる。
2. 事務負担が軽い
消費税の申告や複雑な記帳が不要。
2. インボイスを発行できない
適格請求書発行事業者の登録ができず、取引先(課税事業者)が仕入税額控除を受けられない。
3. 価格競争力
消費税分を価格に転嫁しない選択肢も持てる。
3. 取引に制約が生じる
特にBtoB取引において、取引停止や価格交渉(値下げ要求)の圧力を受ける可能性がある。

2. 納税義務免除の基本ルール

(1).基準期間の課税売上高が1,000万円以下の場合、原則として免税

納税義務が免除される事業者は、以下の基本的な条件(事業者免税点制度)を満たす必要があります。

消費税の納税義務を判定するための最も重要な期間が「基準期間」です。

課税期間の基準期間における課税売上高が1,000万円以下である事業者は、原則として、その課税期間の納税義務が免除されます。

事業者区分判定に用いる「基準期間」
① 個人事業主納税義務を判定する「その年」の「前々年」の課税売上高。
② 法人納税義務を判定する「その事業年度」の「前々事業年度」の課税売上高。

例えば、個人事業主が2025年の納税義務を判定する場合、その基準期間は2023年となります。

新屋賢人

注意点として、基準期間が1年未満の場合、法人は「年換算」して判定、個人事業主は「年換算せず」そのままの売上高で判定します。
計算例(法人)
基準期間:10か月、課税売上高850万円
→ 850万円 ÷ 10 × 12 = 1,020万円(1,000万円超 → 課税)

参照:国税庁ホームページタックスアンサー No.6501 納税義務の免除

(2).課税売上高の定義(課税売上+免税売上-返品・値引き等)

ここでいう「課税売上高」とは、単に帳簿上の売上総額ではありません

課税売上高は、基準期間中に国内において行った課税資産の譲渡等の対価の額(原則として税抜き)の合計額から、売上にかかる対価の返還等(返品、値引き、割戻し)の金額(原則として税抜き)を控除した残額をいいます。

具体的には、本業の売上だけでなく、事業用資産の売却収入(課税取引)や、輸出取引などの免税売上も含まれます。

一方、土地の売却収入や住宅の貸付に係る家賃収入といった非課税取引や、補助金・助成金などの不課税取引による収入は、課税売上高には含まれません。

3. 例外規定(免税にならないケース)

基準期間の課税売上高が1,000万円以下であっても、以下のいずれかの条件に該当する場合、消費税の納税義務は免除されず、課税事業者となります

(1).インボイス制度(適格請求書発行事業者)に登録している場合

2023年10月1日以降、基準期間の課税売上高が1,000万円以下であっても、適格請求書発行事業者の登録を受けている場合は、消費税の納税義務が免除されません

これは、適格請求書発行事業者は、納税義務のある「課税事業者」でなければ登録できないためです

(2).特定期間の課税売上高または給与等支払額が1,000万円を超える場合

基準期間の売上が1,000万円以下で免税事業者となる場合でも、特定期間の判定によって課税事業者になる場合があります。

この特定期間とは、以下の期間を指します。

事業者区分判定に用いる「特定期間」
① 個人事業主その年の前年1月1日から6月30日までの期間
② 法人原則として、その事業年度の前事業年度開始の日以後6か月の期間

特定期間の判定では、「課税売上高」「給与等支払額の合計額」の2つの基準が用意されており納税者は有利な方を選択して判定することができます

  • 特定期間の判定基準
    課税事業者となるのは、特定期間における「課税売上高」と「給与等支払額の合計額」の両方が1,000万円を超える場合です。 つまり、どちらか一方でも1,000万円以下であれば、この特定期間の規定では課税事業者とはなりません
新屋賢人

先ほど、法人の場合、基準期間が1年未満の場合は「年換算」して判定するといいましたが、 特定期間は法人個人ともに「実際の期間分」で判定し、年換算(6カ月換算)は行いません。

参照:国税庁ホームページ 特定期間の課税売上高による免税事業者の判定

(3).新設法人の資本金が1,000万円以上の場合

新たに設立された法人(設立1期目および2期目)は、基準期間が存在しないため、原則として消費税の納税義務が免除されます。

ただし、その事業年度開始の日における資本金の額または出資の金額が1,000万円以上である法人(新設法人)は、基準期間がなくても、その事業年度の納税義務は免除されません(設立初年度から課税事業者となります)

参照:国税庁ホームページタックスアンサー No.6531 新規開業又は法人の新規設立のとき

(4).特定新規設立法人(親会社等に支配されるケース)

資本金1,000万円未満で設立された新規設立法人であっても、特定新規設立法人に該当する場合は、納税義務が免除されません。

これは、新しく設立された法人が、課税売上高5億円を超える他の者(親会社など)に株式等の50%超を保有されるなど、特定の支配関係にある場合に適用される特例です。この規定は、大企業が消費税の納税を免れるために子会社を設立する行為を防ぐ目的があります。

(5).課税事業者選択届出書を提出している場合

基準期間や特定期間の判定によって免税事業者となる場合でも、事業者が任意で「消費税課税事業者選択届出書」を提出した課税期間については、納税義務が免除されません。

この届出書を提出して課税事業者を選択した場合、原則として2年間は免税事業者に戻ることはできませんので、注意が必要です(事業を廃止した場合を除く)。

新屋賢人

上記のほか、相続、合併、分割などがあった場合にも注意が必要です。

4. 判定の流れ(フローチャート的整理)

免税事業者か課税事業者かを判断する際は、以下のステップを順番に確認していくと分かりやすいです。

STEP
インボイス登録の有無または課税事業者選択届出書の提出有無をチェック

まず、現在、適格請求書発行事業者として登録していないか、または「消費税課税事業者選択届出書」を提出していないかを確認します。

【YES】 既に課税事業者として確定しています。納税義務があります。

【NO】 次のステップに進みます。

STEP
新設法人・資本金の確認(設立1期目・2期目のみ)

新たに設立された法人の場合、基準期間がないため、資本金を確認します。

新設法人で、期首資本金が1,000万円以上、または特定新規設立法人に該当する。

  • 【YES】 課税事業者となります。
  • 【NO】 次のステップに進みます。
STEP
基準期間の売上高チェック

前々事業年度(個人事業主は前々年)の課税売上高が1,000万円を超えているかを確認します。

【YES】 課税事業者となります。

【NO】 次のステップ(特定期間のチェック)に進みます。

STEP
特定期間の売上高・給与支払額チェック

基準期間で免税となった場合、その年の前事業年度開始日以後6か月間(個人事業主は前年1月1日〜6月30日)の**「課税売上高」「給与等支払額の合計額」**の両方をチェックします。

両方とも1,000万円を超えているか

    ◦ 【YES】 課税事業者となります。

    ◦ 【NO】 最終的に免税事業者となります。

STEP
最終的に「免税事業者」か「課税事業者」かを判定

上記のフローチャートを通過し、全ての「例外規定」に該当しなければ、晴れて免税事業者として消費税の納税義務が免除されます。

5. 実務上の注意点

消費税の判定は、単に帳簿の数字を見るだけでは不十分です。実務上、特に注意すべき点を解説します。

(1).売上高の判定は「税抜」か「税込」か

判定基準となる課税売上高1,000万円のラインは、事業者がその基準期間において「課税事業者だったか」「免税事業者だったか」によって変わります。

  • 基準期間が「課税事業者」だった場合
    納税義務を負っていたため、課税売上高は税抜きの金額で判定します。
  • 基準期間が「免税事業者」だった場合
    消費税の納税義務が免除されていたため、売上に含まれる消費税分も課税売上高とみなされ、税込みの金額で判定します。

参照:消費税法基本通達1-4-5

(2).基準期間が1年未満の場合の年換算ルール

基準期間が1年に満たない場合(例:決算期変更による短期事業年度)の課税売上高の計算方法には違いがあります。

  • 法人:基準期間が1年未満である場合、その課税売上高を月割りで年換算して判定します。
    計算例: 基準期間が6か月で売上600万円の場合、600万円÷6か月×12か月=1,200万円として判定されるため、課税事業者となります。
  • 個人事業主:個人事業主の基準期間(前々年)は常に1月1日から12月31日までの1年間です。仮に開業初年が1年未満であっても、その期間の売上高を年換算する必要はありません
新屋賢人

先ほどもコメントしましたが、年換算を失念することによって、本来は消費税の課税事業者であったにもかかわらず、免税事業者だと思い込み消費税の申告を怠ると、後に、税務署から多額の追徴課税を徴収されることになりますので、注意しましょう!

(3).免税事業者がインボイス登録した場合の途中課税

免税事業者がインボイス制度に対応するため、課税期間の途中で適格請求書発行事業者の登録を受けた場合、その事業者は登録日からその課税期間の末日までに行った課税資産の譲渡等が消費税の申告の対象となります。

参照:国税庁インボイス制度に関するQ&A(免税事業者が令和5年10月1日から令和11年9月30日までの日の属する課税期間中に登録を受ける場合)

(4).課税事業者を選択するメリット(仕入税額控除・取引先対応)

売上1,000万円以下で免税事業者になれる場合でも、あえて課税事業者を選択した方が有利になるケースがあります。

  1. 消費税の還付を受けるため(仕入税額控除の活用)
    大規模な設備投資を行った年や、輸出売上がメインの事業者は、支払った消費税(仮払消費税)が受け取った消費税(仮受消費税)よりも多くなり、消費税の還付を受けられる可能性があります。還付を受けるには課税事業者である必要があります。
  2. 取引先の維持・拡大のため(インボイス対応)
    取引先が課税事業者である場合、免税事業者からの仕入れでは仕入税額控除ができず、取引先の税負担が増加します。インボイス発行事業者となることで、取引関係を維持・強化することができます。
  3. 2割特例(時限的な負担軽減措置)
    インボイス制度を機に免税事業者から課税事業者になった事業者は、2023年10月1日から2026年9月30日までの日の属する各課税期間において、売上税額の2割だけを納付すればよい「2割特例」の適用を受けられます。これは事務負担を大幅に軽減しつつ、課税事業者としてインボイスを発行できる非常に強力な制度です。

6. まとめ

(1).免税事業者判定のポイントは「基準期間」「特定期間」「例外規定」

消費税の納税義務の判定は、

  1. 基準期間(前々期)の課税売上高1,000万円超
  2. 特定期間(前期上半期)の売上高または給与支払額のいずれも1,000万円超
  3. 例外規定(インボイス登録、高額資本金、特定新規設立法人など) の3つの柱で成り立っています。この複雑なルールを毎年確認することが、納税額をコントロールする第一歩です。

(2).インボイス制度導入後は免税事業者の立場が大きく変化

インボイス制度は、これまで消費税の恩恵を受けてきた免税事業者に対して、「納税義務者になるか、取引で不利になるか」簡易課税制度(基準期間の課税売上高5,000万円以下の場合に選択可能)の適用も含めて、自社にとって最も有利な選択をすることが求められます。

新屋賢人

消費税の納税義務は、売上が1,000万円を超えた年からすぐに発生するわけではなく、最短でも翌々期(2年後)に発生します。この時間差を理解し、売上規模が拡大傾向にある事業者は、事前に課税事業者となるタイミングを予測し、税理士に相談しながら計画的に対応をすることが極めて重要です。もし、相談できる税理士がいない場合には、お気軽にこちらまでお問い合わせください。

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この記事を書いた人

町田市にあるコムレイド税理士事務所の代表税理士の新屋賢人です。大学卒業後、中堅税理士法人で5年間、業界最大手である国際四大会計事務所(BIG4)のEY税理士法人で8年間、計13年間の実務経験があります。
30代ですが、すでに法人・個人問わず幅広い業務を経験しております。BIG4という業界最大手で得た経験・知識を生まれ育った街に還元したいという強い思いから独立を決めました。

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