【町田市の税理士が解説】中小企業向け賃上げ促進税制とは?適用要件や税額控除率について

ミミレイドン

ボス、おはようございます!
今朝のテーマはなんでしょうか?

新屋賢人

今朝は中小企業向けの賃上げ促進税制について整理していきましょう。

ミミレイドン

昨日の法人の青色申告を行うメリットの1つにあったものですね!

新屋賢人

はい!物価高騰と人手不足が深刻化する今、多くの経営者様が「従業員に還元したいが、原資がない」「賃上げでコストが増えるのが怖い」という切実な悩みを抱えています。
しかし、ご安心ください。国は、この賃上げを「コスト」ではなく「未来への投資」に変えるための強力な支援策を用意しています。それが、中小企業向け賃上げ促進税制です。毎年のように適用要件や税額控除率が変更となるため、注意が必要ですが、利用できれば大きな節税になりますので、この記事で、わかりやすく解説します!

目次

1. はじめに

中小企業向け賃上げ促進税制とは何か

賃上げ促進税制は、賃上げや人材育成などの投資を積極的に行う中小企業者が、その増加額の一部を法人税または所得税から直接差し引ける(税額控除できる) 制度です。

特に2024年(令和6年度)の税制改正により制度が大幅に強化され、中小企業は最大で45%もの税額控除を受けられるようになりました。

なぜ今、中小企業にとって賃上げが重要なのか

近年の物価高は従業員の家計を直撃しており、実質賃金の下落が続いています。給与水準が競合より低ければ、優秀な人材は流出し、採用も困難になるという深刻な問題に直面します。

賃上げは、もはや福利厚生ではなく、人材の確保と定着、ひいては企業競争力の強化に直結する経営戦略です。この税制を活用すれば、税負担を抑えながら賃上げが実現でき、採用力と従業員満足度を飛躍的に高めるチャンスとなります。

制度の背景と政府の方針(例:骨太の方針2025)

本制度は、長らく続いた「コストカット型の経済」から、「所得増と成長の好循環」による新たな経済へ移行するという、政府(中小企業庁)の強い政策的意図に基づいています。

2024年(令和6年)4月1日以降に開始する事業年度から、特に中小企業者に対して前例のない長期となる5年間の繰越控除措置が導入されるなど、賃上げへのインセンティブが最大限に強化されています

2. 制度の概要:対象者と適用期間を徹底チェック!

中小企業向け賃上げ促進税制を適用するためには、まず「誰が」「いつ」使えるのかを確認しましょう。

対象となる中小企業者とは?

適用対象となるのは、青色申告書を提出している中小企業者等または個人事業主です

区分要件判定時期
法人資本金または出資金が1億円以下の法人、または資本・出資がない法人のうち常時使用の従業員数が1,000人以下の法人。協同組合等も含む。適用を受ける事業年度終了の時
個人事業主常時使用の従業員数が1,000人以下の者。適用を受ける年の12月31日
新屋賢人

資本金が1億円以下であっても、同一の大規模法人(資本金の額若しくは出資金の額が1億円超の法人、資本若しくは出資を有しない法人のうち常時使用する従業員数が1,000人超の法人又は大法人(資本金の額又は出資金の額が5億円以上である法人等)との間に当該大法人による完全支配関係がある法人等をいい、中小企業投資育成株式会社を除きます。)から2分の1以上、または2つ以上の大規模法人から3分の2以上の出資を受けている法人は対象外となります
また、過去3事業年度の所得金額の年平均額が15億円を超える法人も適用除外です。

適用期間(令和6年4月1日~令和9年3月31日)

本税制は、令和6年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する各事業年度(個人事業主は令和7年から令和9年までの各年)が対象となります。

新屋賢人

先ほども申し上げた通り、この制度は改正や延長が頻繫に行われます。恐らく、令和9年4月1日以降も同様の制度が続くと思われますが、適用を検討される際には、最新の情報を確認するようにしましょう。

青色申告が必須である点

本制度は税額控除という税制上の優遇措置であるため、法人も個人事業主も、適用を受ける事業年度において青色申告書を提出していることが必須要件です。白色申告では適用できません。

ミミレイドン

法人の青色申告がもたらす5つの節税メリットについては、こちらの記事で解説しております。
【町田市の税理士が解説】法人の青色申告がもたらす5つの節税メリットとは?

3. 税額控除の仕組み:控除率と上限、5年繰越を理解する

具体的にどれだけ税金が安くなるのか、計算の基本を見ていきましょう。

☆税額控除額=控除対象雇用者給与等支給増加額×(15%or30%)

新屋賢人

控除対象雇用者給与等支給増加額とは、「雇用者給与等支給額」から「比較雇用者給与等支給額」を控除した金額をいいます。ただし、調整雇用者給与等支給増加額(雇用安定助成金額を控除した「雇用者給与等支給額」から、雇用安定助成金額を控除した「比較雇用者給与等支給額」を控除した金額)を上限とします。

ミミレイドン

雇用者給与等支給額とは、適用事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される全ての国内雇用者に対する給与等の支給額のことをいいます。ただし、「補塡額」がある場合には、給与等の支給額から控除する必要がありますので、お忘れなく。
比較雇用者給与等支給額とは、適用事業年度の前事業年度における雇用者給与等支給額をいいます。
つまり、適用事業年度と前事業年度の給与等の支給額を比較して、増加した金額の15%or30%が税金から引けることになります!

控除対象となる「給与等支給額」の定義

税額控除の計算に使われる「雇用者給与等支給額」は、国内雇用者に対して支給する俸給、給料、賃金、歳費、賞与など、所得税法上の給与所得となるものの総額を指します。

  • ポイント1:対象者
    「国内雇用者」とは、法人の使用人(パート、アルバイト、日雇い労働者も含む)のうち、国内の事業所の賃金台帳に記載された者を指します。
  • ポイント2:非対象者の除外
    役員(使用人兼務役員を含む)、および役員の特殊関係者(親族など)に対する給与等は、計算から除外されます。
  • ポイント3:助成金等の調整
    給与に充てるために他の者から受け取った金額(補塡額)は控除されます。ただし、雇用安定助成金(雇用調整助成金など)や、公定価格が設定されている取引における報酬(例:介護職員処遇改善加算など)については、補塡額から除かれ、給与等支給額から控除する必要はありません

控除率の詳細(1.5%以上で15%、2.5%以上で30%)

中小企業向け賃上げ促進税制では、前事業年度(比較雇用者給与等支給額)と比べて、適用事業年度(雇用者給与等支給額)の増加率に応じて、控除率が決まります

賃上げ率(必須要件)基本の税額控除率
1.5%以上 増加している場合15%
2.5%以上 増加している場合30%

増加率は「(今年の給与等支給額 - 前年度の給与等支給額)÷ 前年度の給与等支給額」で計算されます。2.5%以上達成すると、15%に加えてさらに15%上乗せされ、合計30%の控除が可能となります。

控除上限(法人税額の20%まで)と繰越控除(最大5年)

税額控除には上限が設けられています。

控除上限: 税額控除の合計額は、その事業年度の法人税額または所得税額の20%が上限です。

【改正の目玉!】繰越控除(最大5年)

これまでの制度では、赤字企業や黒字の少ない企業は、控除上限に達したり法人税額がゼロだったりすると、せっかく賃上げしても税制メリットを受けられないという課題がありました。

しかし、令和6年4月1日以降に開始する事業年度からは、中小企業者を対象に5年間の繰越控除措置が新設されました。

これにより、賃上げを実施した年度に控除しきれなかった金額(未控除額)を、最大5年間にわたって将来の黒字時に繰り越して控除できるようになり、赤字企業でも将来的な税優遇の恩恵を受けられるようになりました

参照:経済産業省 中小企業向け賃上げ促進税制ご利用ガイドブック

4. 上乗せ要件と加算措置

基本の控除率(最大30%)に加えて、特定の取り組みを行うことでさらに控除率を上乗せできます。すべて満たせば、最大45%の税額控除が実現可能です

教育訓練費の増加(+10%)

従業員のスキルアップに積極的に投資している企業を評価する上乗せ要件です。

要件詳細
要件①教育訓練費の額が前事業年度と比べて5%以上増加していること。
要件②適用事業年度の教育訓練費の額が、その事業年度の雇用者給与等支給額の0.05%以上であること。
上乗せ率10%
新屋賢人

教育訓練費に含まれる費用の例としては、外部講師への報酬・旅費、外部に委託した研修費用、従業員を外部研修や大学院に参加させる費用(授業料等)などが含まれます。ただし、自社の役員・社員への人件費や報奨金、研修所の光熱費、教材の自社製作費用などは含まれません。

子育て支援・女性活躍推進の取り組み(+5%)

子育てサポートや女性活躍推進に取り組む企業も優遇されます。

認定種別認定要件
適用事業年度中に認定取得が必要くるみん認定くるみんプラス認定、またはえるぼし認定(2段階目以上)
適用事業年度終了時に認定保持が必要プラチナくるみん認定(プラス含む)、またはプラチナえるぼし認定
上乗せ率5%

※「くるみん」は仕事と子育ての両立支援、「えるぼし」は女性の活躍推進に関する取り組みが優良な企業を厚生労働大臣が認定する制度です。なお、くるみん認定等は、令和4年4月1日以降の改正後の基準を満たしている必要があります。

参照:厚生労働省 くるみん認定
参照:厚生労働省 えるぼし認定

補足:奨学金返還支援制度の活用

直接的な加算措置(+5%など)ではありませんが、企業が従業員の奨学金返還を代理返還する際に充てる経費は、国内雇用者に対する「給与等」に含まれることが明確にされています。

これは、代理返還制度を導入することで「雇用者給与等支給額」が増加し、賃上げ率の要件(1.5%または2.5%)をクリアしやすくなる効果が期待できます。これも優秀な人材確保に繋がる重要な施策です。

5. 実務での注意点と活用ポイント

税制メリットを確実に享受するためには、実務上の細かいルールと活用戦略を知っておくことが不可欠です。

賃金台帳の整備と記録の重要性

賃上げ促進税制の計算は、前年度と適用年度の「雇用者給与等支給額」を厳密に比較するため、基礎となる賃金台帳の正確な整備が極めて重要です。

特に過去の制度(所得拡大促進税制など)の変遷により、申告書類(別表)の記載ミスが多発していることが国税庁からも注意喚起されています。

証拠書類の保存: 教育訓練費の上乗せ要件を適用する場合は、教育訓練等の実施時期、内容、受講者、支払証明などを記載した書類を作成し、保存する必要があります(確定申告書への添付は不要)。

非対象者(役員・親族など)の除外

「雇用者給与等支給額」は、国内雇用者への支給額のみで計算されます。

役員、使用人兼務役員、役員の親族などの特殊関係者への給与は、計算対象から必ず除外してください。これらの除外漏れは、税務調査で指摘される可能性の高いミスの一つです。

新屋賢人

集計については、かなり細かい論点もありますので、税理士に相談するようにしましょう。

赤字企業でも利用可能になった改正点

従来の制度では、赤字企業は税金を納めていないため、税額控除の恩恵をその年に受けられませんでした。

しかし、2024年(令和6年)4月1日以降の改正により、中小企業向けに5年間の繰越控除措置が新設されたことで、この問題が解決されました。

<活用のための注意点>

繰越控除を利用するには、①未控除額が発生した事業年度以後の各事業年度の確定申告書に「繰越税額控除限度超過額の明細書」を添付すること、そして②繰越控除を適用する事業年度において、雇用者給与等支給額が前年度より増加していること、の2点が必須です。明細書の添付を忘れると、未控除額は繰り越されないため、細心の注意が必要です

【追加項目】新規設立企業は適用不可

本制度は「前事業年度」との給与支給額の比較を要件としているため、会社設立初年度(前事業年度がない場合)は原則として適用できません。適用できるのは2期目以降となります。

6. 賃上げの効果と企業事例

賃上げ促進税制は、単なる節税策ではなく、企業を内側から強くする戦略的なツールです。

実施率と効果(モチベーション向上、離職率低下など)

賃上げは、従業員の懐を温め、生活の安定に直結します。これにより、従業員のモチベーション向上帰属意識の強化、結果として離職率の低下生産性の向上に繋がります。

また、賃上げを人材育成(教育訓練費の増加)とセットで行えば、従業員のスキルアップが図れ、企業競争力のさらなる強化が期待できます。

賃上げ実施企業の声と成功事例

具体的な企業名を示すことはできませんが、この税制を戦略的に活用し成功した中小企業からは、以下のような声が届いています。

  1. 「賞与の給与化」で税制メリットを最大化
    年間賞与の一部または全部を毎月の給与に組み込む「賞与の給与化」を行うことで、月々の給与水準が安定的に上昇し、賃上げ促進税制の要件(1.5%や2.5%)をクリアしやすくなったという事例があります。同時に、従業員は月収安定による生活設計のしやすさから満足度が高まっています。
  2. 赤字期でも将来を見据えた投資を敢行
    2024年(令和6年)の改正(繰越控除)により、業績が厳しい年でも「将来、必ず黒字を出す」という目標のもと、賃上げに踏み切った企業があります。これは、賃上げ分が5年間、税額控除の形で「貯金」されるという安心感がもたらした効果です。

賃上げを「コスト」ではなく「投資」と捉え、国の支援策と企業独自の工夫(例:賞与の給与化)を組み合わせることで、持続可能な成長を実現しているのです。

新屋賢人

賞与であっても「雇用者給与等支給額」には含まれます。今回の事例は、あくまでも給与の上昇率の管理がしやすくなったことで、要件クリアに繋がったという事例です。

7. まとめ

賃上げ促進税制の活用による経営強化

中小企業向け賃上げ促進税制は、2024年(令和6年)改正により、最大45%という税額控除率、そして赤字企業でも将来的な恩恵を受けられる5年間の繰越控除という二大メリットを手に入れました

賃上げは、目先の節税効果だけでなく、優秀な人材の獲得・定着、従業員のモチベーション向上、ひいては生産性向上を通じて、企業の売上増加と安定経営という形で必ずリターンを生む、最も確実な投資です。

この制度は、賃上げというエンジンに、税優遇というハイオクガソリンを注入することで、企業の成長という名のロケットを力強く打ち上げるための加速装置と言えるでしょう。

新屋賢人

本制度は計算や要件判定(特に給与等支給額の定義や、繰越控除の手続き)が複雑であり、記載ミスが発生しやすいことが確認されています。
制度のメリットを最大限に享受し、正確な申告を行うためには、税務の専門知識が不可欠です。
賃上げ計画の策定、正確な税額控除額の計算、そして繰越控除に必要な書類の整備まで、顧問税理士に相談し、確実な制度活用を進めることを強く推奨します。
相談できる税理士がいない場合には、お気軽にこちらまでお問い合わせください。

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この記事を書いた人

町田市にあるコムレイド税理士事務所の代表税理士の新屋賢人です。大学卒業後、中堅税理士法人で5年間、業界最大手である国際四大会計事務所(BIG4)のEY税理士法人で8年間、計13年間の実務経験があります。
30代ですが、すでに法人・個人問わず幅広い業務を経験しております。BIG4という業界最大手で得た経験・知識を生まれ育った街に還元したいという強い思いから独立を決めました。

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