ミミレイドンボス、おはようございます!
今朝のテーマはなんでしょうか?



先日、中小企業者向けの賃上げ促進税制について、ブログ記事を書いたところ、何件かお問い合わせをいただきましたが、中小法人と中小企業者の定義の理解が曖昧になっている経営者様が多い印象でした。



えっ、違うんですか?



根拠法令まで違うんです。この違いを理解しないと、優遇措置を取りこぼしたり、逆に誤って適用してしまい、税務調査で指摘されたりするケースが想定されます(実際に国税庁から誤りが多い事例として挙げられております。)。
今回は、税務上の「中小法人等」(法人税法)と「中小企業者」(租税特別措置法)の違いを、誰にでもわかりやすく解説します。
1.はじめに
(1).中小企業向け税制優遇の重要性
日本に存在する企業の約99.7%は中小企業・小規模事業者です。一般的に、中小企業は大企業に比べて財務状況が脆弱であるため、国は中小企業が安心して事業活動を継続できるよう、様々な税制上の優遇措置を設けています。
これらの優遇制度を賢く活用することは、税金の払いすぎを防ぎ、企業の財務体質を強化する上で非常に重要です。
(2).「中小法人等」と「中小企業者」の混同による申告ミスのリスク
税務上、「中小法人」と「中小企業者」という言葉は似ていますが、それぞれ根拠となる法律が異なり、その定義と適用される優遇措置が異なります。
税務署も、中小企業者にしか適用できない制度を誤って適用している事例が非常に多いとして注意喚起しています。もし誤って適用してしまうと、税務調査で追徴課税を受けるリスクがあります。
(3).本記事の目的
本記事の目的は、法人税法が定める「中小法人等」と、租税特別措置法が定める「中小企業者」の定義、判定基準、およびそれぞれの優遇措置を明確に整理し、皆様が正確な税務申告と最適な節税対策を行えるようになることです。
2.法人税法上の「中小法人等」と租税特別措置法上の「中小企業者」の定義
「中小法人等」と「中小企業者」を区別する際の最も重要なポイントは、「資本金1億円以下」という基本要件に加えて、「親会社などの支配関係によって除外されるか」という点です。
| 区分 | 中小法人等(法人税法) | 中小企業者(租税特別措置法) |
| 根拠法 | 法人税法(法) | 租税特別措置法(措法) |
| 原則対象 | 資本金または出資金が1億円以下の普通法人。 | 資本金または出資金が1億円以下の法人。 |
| 資本を有しない法人 | 資本または出資を有しない普通法人(相互会社除く)。 | 資本または出資を有しない法人のうち、常時使用する従業員数が1,000人以下の法人。 |
| 除外規定 | 大法人(資本金5億円以上等)による完全支配関係(100%)がある法人。 | 単一の大規模法人に発行済株式等の1/2以上を所有されている法人。 複数の大規模法人に発行済株式等の2/3以上を所有されている法人。 |
(1).法人税法上の「中小法人等」
法人税法上の「中小法人等」は、主に資本金の額を基準として判定されます。
- 資本金1億円以下が原則
普通法人のうち、各事業年度終了の時において資本金または出資金の額が1億円以下であることが基本です。 - 「大法人」による完全支配関係で除外
資本金が1億円以下であっても、資本金5億円以上の法人などの大法人に100%(完全支配関係)を保有されている法人は除外されます。 - その他の除外
相互会社、投資法人、特定目的会社、受託法人なども除かれます。
(2).租税特別措置法上の「中小企業者」
租税特別措置法上の「中小企業者」は、資本金だけでなく、株式の保有割合による支配関係に特に厳格です。
- 資本金1億円以下が原則
こちらも基本は資本金または出資金の額が1億円以下の法人です。 - 支配関係による除外
◦ 大規模法人に発行済株式等(自己株式を除く)の2分の1以上を単独で所有されている場合は除外されます。
◦ 複数の大規模法人に3分の2以上を所有されている場合も除外されます。 - 大規模法人の範囲が広い
ここでいう「大規模法人」は、資本金1億円超の法人や、大法人による完全支配関係がある法人など、「大法人」よりも広範な定義を持ちます。
参照:国税庁ホームページタックスアンサー No.5432 措置法上の中小法人及び中小企業者
参照:国税庁ホームページタックスアンサー No.5800 一定の大法人等の100%子法人等における中小企業向け特例措置の不適用について
参照:国税庁 中小企業者の判定等フロー
3.判定時期と注意点
(1).判定は事業年度終了時点
中小法人等や中小企業者の該当性の判定は、原則として各事業年度終了の時の状況に基づいて行われます。
(2).設立初年度や減資後の扱い
- 減資のメリット
資本金の額が1億円を超える法人は、交際費の損金不算入の制限や、法人事業税の外形標準課税の対象となるなど、税制上の制限を受けます。このため、資本金を1億円以下に減資することで、優遇措置を適用可能にする戦略が取られることがあります。特に無償減資は、損失が増えた会社が欠損填補のために利用するケースが多く見られました。 - 設立初年度の適用除外
租税特別措置法上の優遇措置(後述の「適用除外事業者」判定が必要なもの)を検討する際、設立の日の翌日以後3年を経過していない法人は、原則として適用除外事業者には該当しません(所得15億円超の判定は不要)。
(3).グループ企業・持株会社の影響
グループ企業の場合、支配関係の判定には注意が必要となります。
- 法人税法上の「中小法人等」
大法人に100%支配されている場合はアウトです。 - 租税特別措置法上の「中小企業者」
大規模法人に1/2または2/3以上支配されているとアウトです。
さらに、租税特別措置法上の判定では、2019年4月1日以後に開始する事業年度から、大規模法人の範囲が拡大され、支配関係が続く限り遡って判定する必要があります。



2019年度税制改正で 「みなし大企業」判定のための大規模法人の範囲が拡大 されました。
改正前の大規模法人は、「資本金1億円超の法人」、「資本や出資を有しない法人で従業員数1,000人超の法人」でしたが、改正後(2019年4月1日以降)は、上記に加えて、「資本金5億円以上の大法人の 100%子会社」、「複数の大法人により発行済株式等の全部を保有されている法人」が追加されました。
なお、従来は「直接」大規模法人に支配されているかどうかで判定していましたが、改正後は 間接支配も含めて、完全支配関係が続く限りグループ全体を遡って判定する必要があります。
例えば、「大法人(資本金5億円以上) → 100%子会社 → その子会社の子会社(孫会社)」という場合、この孫会社は資本金1億円以下でも、完全支配関係が続いているため「みなし大企業」とされ、中小企業者の優遇税制を受けられません。
<よくある誤認ケース(親会社が大法人の場合など)>
資本金1億円以下の会社であっても、親会社やグループ企業が大規模法人に該当する場合、「中小企業者」の定義から外れることがあります。
例えば、資本金1億円の会社(子会社B)が、資本金2億円の会社(親会社A、大規模法人)50%超の株式を保有されている場合
- 中小法人等(法人税法)
親会社Aは資本金5億円未満なので大法人に該当せず、完全支配でもないため、中小法人等に該当します。 - 中小企業者(租税特別措置法)
親会社Aは資本金1億円超なので大規模法人に該当し、その大規模法人に1/2以上保有されているため、中小企業者には該当しません。
この例の場合、法人税の軽減税率は適用できますが(中小法人等)、少額減価償却資産の特例などは適用できません(非中小企業者)。



中小法人等には該当するけど、中小企業者には該当しないというケースもあるということですね。ややこしい。。。
(4).適用除外事業者(所得15億円超など)
特に租税特別措置法上の優遇措置を適用する際、資本金の額の基準だけでなく、所得の基準も考慮しなければなりません。
- 基準
前3年事業年度の平均所得金額が年15億円を超える法人は「適用除外事業者」とされ、租税特別措置法上の優遇措置の適用を受けることができません。 - 目的
大企業並みの多額の所得を得ている企業が、資本金の基準だけで優遇措置を受けている状況を是正するため、2019年4月1日以後に開始する事業年度から導入されました。 - 注意点
この所得基準による判定(適用除外事業者)は、法人税法上の優遇措置(欠損金の繰越控除など)には影響しません。



適用除外事業者の判定をしていない(知らない)企業もありましたので、忘れずに判定するようにしましょう!
4.それぞれに適用される優遇措置
(1).中小法人等に対する優遇措置(法人税法)
主に法人税の計算や、財務体質に関する特例措置です。欠損金関連の優遇は、所得15億円超の適用除外事業者の判定は不要です。
| 優遇措置 | 概要 | 根拠法 |
| 法人税の軽減税率 | 年800万円以下の所得に対する法人税率が15%に軽減(本則23.2%)。 | 租特法(ただし中小法人等向け)。 |
| 欠損金の繰越控除の特例 | 繰越欠損金を所得金額の100%まで控除可能(中小法人以外は一定の限度)。 | 法人税法。 |
| 欠損金の繰戻し還付 | 当期の欠損金を前年度の黒字と相殺し、前年度に支払った法人税の還付を受けられる。 | 法人税法。 |
| 特定同族会社の留保金課税の適用除外 | 内部留保利益に対する留保金課税が適用されない。 | 法人税法。 |
| 貸倒引当金の損金算入 | 一括評価金銭債権に係る貸倒引当金を一定の限度額の範囲内で損金算入可能。 | 租特法(ただし中小法人等向け)。 |
| 交際費の損金算入の特例 | 年800万円以下の交際費を全額損金算入可能。 | 租特法(ただし中小法人等向け)。 |



交際費の損金不算入制度については、こちらの記事で解説しております。
【町田市の税理士が解説】交際費等の損金不算入制度の基礎知識について
(2).中小企業者に対する優遇措置(租税特別措置法)
主に、投資や賃上げなど、政策的な目的を達成するための税額控除や特別償却の特例措置です。適用除外事業者(平均所得15億円超)は適用できません。
| 優遇措置 | 概要 | 根拠法 |
| 少額減価償却資産の特例 | 取得価額30万円未満の減価償却資産を、年間合計300万円まで即時全額損金算入できる。 | 租税特別措置法。 |
| 中小企業向け賃上げ促進税制 | 従業員給与の増加額に応じて、最大45%の税額控除が可能。 | 租税特別措置法。 |
| 中小企業投資促進税制 | 機械装置等の指定設備を取得した場合、30%の特別償却または7%の税額控除を選択適用。 | 租税特別措置法。 |
| 中小企業経営強化税制 | 認定計画に基づき設備投資をした場合、即時償却または税額控除(最大10%)を選択適用。 | 租税特別措置法。 |
| 研究開発税制(特別控除) | 試験研究費の税額控除率が優遇される(控除率・要件は年度改正で変動するため最新年度の規定を確認)。 | 租税特別措置法。 |



賃上げ促進税制については、こちらの記事で解説しております。
【町田市の税理士が解説】中小企業向け賃上げ促進税制とは?適用要件や税額控除率について
5.まとめ
(1).両制度の違いを正しく理解する重要性
「中小法人等」(法人税法)は、主に法人税率の軽減や欠損金関連の優遇措置に関わり、「中小企業者」(租税特別措置法)は、投資促進税制や少額減価償却資産の特例など、政策的な優遇措置に関わります。
この2つの制度は、資本金1億円以下という共通の入り口を持ちながら、「支配関係の定義」と「適用除外事業者の基準」が異なります。この違いを正しく理解することが、適正な納税と最大限の節税を実現するカギとなります。
(2).よくある誤認ケース(判定例)
| 会社の状況 | 中小法人等 判定 | 中小企業者 判定 | 適用できる優遇措置(代表例) |
| 資本金5,000万円。親会社A(資本金4億円、大規模法人)が60%保有。 | 該当する (親会社Aは大法人ではないため100%支配がない)。 | 該当しない (大規模法人に1/2超保有されている)。 | 軽減税率 ✓ |
| 資本金1億円。親会社B(資本金10億円、大法人/大規模法人)が100%保有。 | 該当しない (大法人による完全支配関係がある)。 | 該当しない (大規模法人に1/2超保有されている)。 | × 軽減税率 × 少額償却 |
| 資本金300万円。グループ支配関係なし。平均所得16億円。 | 該当する (法人税法上の優遇に所得基準なし)。 | 該当しない (適用除外事業者に該当)。 | 軽減税率 ✓ 少額償却 × |
(3).実務でのチェックポイント
実務においては、以下の点を決算・申告前に必ずチェックしましょう。
1. 資本金の額の確認: 事業年度終了時点の資本金の額または出資金の額が1億円以下であることを確認します。
2. 支配関係の確認: 親会社やグループ企業があれば、その資本金や株式の保有割合をチェックし、「大法人」100%支配(中小法人等判定)と、「大規模法人」1/2以上または2/3以上支配(中小企業者判定)の両方に抵触しないかを確認します。
3. 租特法の所得基準チェック: 租税特別措置法上の優遇措置(投資促進税制、賃上げ税制など)を適用する場合は、過去3年間の平均所得金額が15億円以下であるかを確認します。
4. 補助金・助成金との定義の区別: 補助金や助成金(例:ものづくり補助金、事業復活支援金)の申請要件にある「中小企業」は、多くの場合、中小企業基本法の定義(業種や従業員数で細かく異なる)に従っており、税法上の定義とは異なるため、混同しないよう注意が必要です。
(4).制度適用状況の確認方法
優遇措置の適用可否は、主に事業年度終了時の資本金や支配関係で判定されます。特に、グループ企業においては、資本金5億円以上の「大法人」と、資本金1億円超の「大規模法人」という、異なる定義の親会社の影響を常にチェックすることが重要です。



実は、適用する制度によって、中小の判定が若干異なったりします。実際に、貴社が優遇措置を適用できるか否かは、顧問税理士にご相談ください。相談できる税理士がいない場合には、お気軽にこちらまでお問い合わせください。










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