ミミレイドンボス、おはようございます!銀行融資を成功させるためのポイントも残すところあと2回ですね!今朝のテーマはなんでしたっけ?



今朝のテーマは、銀行との「適切な関係構築と交渉術」になります。
銀行は決して敵ではありません。「良きビジネスパートナー」として捉え、良好なリレーションシップを築くこと。これこそが、銀行融資を成功させるための絶対法則です。本日も重要となりますので、しっかりとお勉強しましょう!
0.銀行との適切な関係構築と交渉術
銀行との取引を「なんとなく」で進めると、必ず失敗します。融資を円滑にするには、銀行側の論理を理解し、対等なビジネスパートナーとして関係を築くための戦略が必要です。そんな重要となる銀行との適切な関係構築と交渉術について、大きく4つの項目に分けて解説いたします。
1.銀行との交渉姿勢:主導権を握るためのマインドセット
融資交渉を成功させるための大前提は、「お願いする立場」から脱却し、交渉の主導権を握ることです。
銀行交渉の原理原則:「誠意」よりも「数字と回収可能性」
多くの経営者が陥る「誤解と落とし穴」があります。
1. 「お金がないから貸して」とは言わない。
銀行は「雨の日に傘を取り上げ、晴れの日に傘を貸す」と言われます。お金がない会社には貸したくなく、確実に返済してくれる業績の良い会社にこそ融資したいのです。使う予定がなくても、業績が良い「晴れの日」こそ借りておくべきです。
2. 「誠意」だけでは通用しない。
どれほど熱意をもって説明しても、銀行が重視するのは「回収できるかどうか」だけです。感情論ではなく、「いつまでに、いくらを、どうやって返すか」を数字で示すことが絶対条件です。
3. ネガティブ情報こそ先に出す。
「嘘はついていないから大丈夫」は危険な思い込みです。銀行は情報を「知っているか否か」でリスクを判断します。マイナス情報(例:業績悪化の原因、問題点)こそ率直に伝え、それに対する具体的な解決策を明示することで、かえって信頼関係を築けます。
4. 交渉には社長自身が臨む。
資料作成は専門家に頼れても、交渉の場では「現場を理解している経営者の言葉」が最も響きます。自社の数字と現状を自分の言葉で説明できるように準備しましょう。
長期的な友好関係を築くためには、日々の行動も重要です。銀行に好まれる行動と嫌われる行動を表にまとめてみましたので、ご参考ください
| 項目 | 銀行に好まれる行動 (意識すべきこと) | 銀行に嫌われる行動 (絶対に避けるべきこと) |
|---|---|---|
| 融資後の対応 | 融資後こそ丁寧に対応し、 自主的な報告・共有を心がける。 | 融資後に態度が悪くなる (電話に出ない、資料提出に非協力的など)。 |
| 資金調達 | 常に借入をしておく (ビジネスである以上、利息収益を得たい のが銀行の本音)。 | 完全返済(完済)をしたがる。繰り上げ返済を急ぐマインドは嫌われる。 |
| 金利交渉 | 金利を下げることに固執しない。銀行の儲け (利息や手数料)に貢献する意識を持つ。 | 0.1%までこだわり、値下げ交渉を続ける。 |
| 口座利用 | 入出金口座として利用する(振込手数料などで銀行に利益をもたらす)。 | 決済に利用するだけで、融資は他行から受ける。 |
| 情報開示 | 決算報告は求められる前に、経営者自ら銀行へ訪問して行う。 | 自主的な報告・共有がない (言われてから出す)。 |



銀行との面談の際に、税理士として立ち会うこともあるんですよね?



そうですね。立ち会うことはありますが、基本的には、補足がメインです。上記の通り、経営者がご自身の言葉で熱意を伝えられるかが一番重要です。なお、金融機関勤務の知人が言ってましたが、交渉の際に、会計士や税理士が横にいるだけで、信頼感は高まるそうです。
2.取引行の選定と構築
振り向いてくれる銀行を選ぶこと
メインバンクは「自社の規模」に合わせて選ぶことが重要となります。
自社の規模と合わない銀行をメインバンクに据えるのはミスマッチであり、いざという時に助けてくれない可能性が高いです。企業規模(年商目安)に応じて選ぶべき銀行を表にしましたので、ご参考ください。
| 企業規模 (年商目安) | 選ぶべき銀行の鉄則 | 理由と特徴 |
|---|---|---|
| 3億円以下 | 信用金庫・信用組合がメインバンク | 地域密着型で、中小企業専門の金融機関。 きめ細かいサポートが期待できる。 |
| 10億円まで | 地方銀行がメインバンク | 信用金庫より金利が安く、大口融資も対応可能。 地元の中堅企業がターゲット。 |
| 10億円超 | メガバンクを検討(複数行取引必須) | 安い金利で大量に貸す。 ただし、景気が悪化すると回収に回る 速度が速いため注意が必要。 |
• メインバンク選定後は、バンクフォーメーションを意識する
バンクフォーメーションとは、メインバンク(最も融資残高が多く、経営支援の中心となる銀行)、準メインバンク(メインを補完し、次点で大きな取引をしている銀行)、サブバンク(口座開設や小規模な融資・取引のみの銀行)など、取引する各銀行との関係性や立ち位置の違いを示すことです。銀行が融資を行う際は、自身の銀行が相手方にとってどんなポジションにあるかという点を意識するのが一般的です。金利を重視した結果、メインバンクの融資額をサブバンクが上回るなど、バンクフォーメーションが崩れると、どの銀行がメインバンクか不明確になり、いざという時にどの銀行からも新規融資を受けられなくなる可能性が高くなりますので、注意が必要です。



日本は「メインバンク主義」と言われ、有事の際はメインバンクが先陣を切って支援するのが慣例です。 メインが追加融資をすれば他行も追随しやすく、逆にメインが融資に消極的なら他行も引いてしまう傾向があります。つまり、メインバンクの姿勢が全体の銀行取引を左右するのです。



明確に序列をつけるということですね。実務上はどのように対応すればよいのでしょうか?



例えば、借入一覧表を作り、各銀行のシェアを把握しておき、メイン・準メイン・サブの役割を明確にしておくようにしましょう。
メインバンクとの関係を大切にしつつ、サブバンクとも一定の取引を維持することが重要です。また、融資を受ける際は、金利で選定することももちろん大事ですが、既存のフォーメーションを崩さないよう一定の配慮を心がけましょう!
資金調達を安定させる「複数行取引」戦略



バンクフォーメーションの管理とか面倒だから1つのメインバンクとずっと取引すれば良いじゃないですか!



1つの銀行との取引は非常に危険な行為です。最低でも3つの銀行と取引を持ちましょう。複数の銀行と取引する際の気を付けるべき点とメリットをお伝えします。
1. バンクフォーメーションの維持
メインバンクの融資残高は、サブバンクが上回らないように注意が必要です。目安として、メインバンクは融資残高の50%以上を保っておく方が無難です。また、融資残高だけでなく、預金残高の多寡も意識するようにしましょう。
2. リスクの分散
メインバンクが合併や支店長交代で突然融資してくれなくなるリスクを避けることができます。急激に経営が傾いた際、メインバンクの判断だけに命運を左右されることを防ぎます。
3. 交渉材料の確保
サブバンクからも定期的に融資提案を受け、メインバンクとの金利や条件交渉の材料として活用しましょう。特に、銀行の中間決算(9月)や本決算(3月)に向けて、サブバンクに融資提案をしてもらうのは有効な戦略です。他行の提案はメインバンクにとって「大きな脅威」となるため、交渉テーブルに乗らざるを得なくなります。
3.情報提供による信頼強化
銀行融資においては、貸し手(金融機関)と借り手(企業)との間に、企業の経営状況に関する「情報の非対称性」が存在します。この格差を解消・縮減することが、信頼構築の鍵となります。
信頼性を高める「シグナリング」戦略
企業側が自社の私的情報を自主的に提示し、情報の格差を縮小させることを経済学で「シグナリング」と呼びます。最も効果的なシグナリングは、会計情報(決算書等)を継続的に開示し、その信頼性を証明することです。
シグナルとして、以下の3点が重要視されます。
1. 税理士が関与しているのか
2. 月次巡回監査を実施しているのか
3. 電子申告した内容と同じ決算書等であるのか
銀行交渉を成功に導く定期報告
融資を引き出すためには、次の定期的な報告を継続することが有効です。
| 報告手段 | 内容と具体的な行動 |
|---|---|
| 経営 計画書 | 会社の方針、数字(5年先までの事業計画、支払金利年計表など)、 スケジュールをまとめた資料を金融機関に提出する。 |
| 経営計画 発表会 | 期首に開催し、支店長らを招待する。 社員の様子や社長の本音を語る姿を見せることで、定性情報(会社の信用力)を訴求する。 約束を守る会社であることを示すため、時間通りに始め、時間通りに終わることが重要。 |
| 定期的な 銀行訪問 | 社長自ら定期的に訪問し、借り入れた資金の使い道と返済財源が確保できていることを報告する。 融資の有無に関わらず、訪問回数が多いほど信用度は高まる。 |
| 決算報告 | 決算が終わったタイミングで、経営者自身が銀行を訪問し決算報告を行う。 決算書のサマリ、会社の概要、会社の課題とその対策、今期の資金計画を具体的に伝える。 |
| 試算表の提出 | 年に一度の決算報告に加え、3ヶ月に1度〜毎月の目安で定期的に試算表を共有する。 会社の生の動き(途中経過)を理解してもらうことで、好条件で融資を受けやすくなる。 |
特に、試算表の提出において、税理士が税務向けに作成したものをそのまま提出するのは止めましょう。銀行がチェックする「試算表のNG例」(例:現金預金が月商2ヶ月分より少ない、雑勘定が多い、減価償却費を毎月割り当てていない等)を事前に把握し、融資に有利な見せ方に工夫することが不可欠です。もちろん、嘘の試算表はNGとなります。



おすすめとしては、試算表や決算書の提出を郵送ではなく、直接持参することによって、定期的な銀行訪問になりますので、信用度は高まります。
その時に資金繰り表や予想PLなども示すことができればベストです。
4.経営者保証への対応(法人向け)



ボス、経営者保証ってなんでしたっけ?



経営者保証とは中小企業が銀行などから融資を受ける際に、会社の経営者(社長など)が個人として連帯保証人になることを指します。会社が返済できなくなった場合、経営者個人の財産(預金・不動産など)から返済を求められる仕組みです。中小企業庁の公式定義でも「中小企業が金融機関から融資を受ける際、経営者個人が会社の連帯保証人となること」とされています。



もし、会社が倒産した場合、経営者個人が返済義務を負い、自己破産に追い込まれるリスクも出てくるということですね?恐ろしい。。



そうですね。そのため、2014年から「経営者保証に関するガイドライン」が施行され、経営者保証を不要とする条件が示されています。経営者保証なしで融資を受けたい、または既存の保証を解除したい場合に経営者が取り組むべきガイドラインで示されている「3つの対策」について、解説します。
対策1:法人と経営者(個人)との関係の明確な区分・分離
法人と個人の一体性を解消し、資金のやりとりを社会通念上適切な範囲内に収めることが求められます。
| 具体的な対応例 |
| ・事業上必要性のない法人から経営者への貸付は行わない。 |
| ・個人消費の飲食代などについては、法人経理処理としない。 |
| ・本社・工場・営業車などの資産は個人所有とせず、法人所有とする。 |
| ・外部専門家(税理士など)による検証を実施し、結果を金融機関に開示することが望ましい。 |
対策2:財務基盤の強化
経営者個人ではなく、法人の資産や収益力だけで借入金を返済できる財務状況を目指します。
| 具体的な対応例 |
| ・業績を堅調に保ち、十分な利益(キャッシュフロー)を確保する。 |
| ・内部留保を充実させ、借入金全額の返済が可能な水準を目指す。 |
| ・自己資金比率や債務償還年数などの財務指標を目標設定し、改善に努める。 |
対策3:経営の透明性確保
金融機関からの情報開示の要請に対し、正確かつ丁寧な情報を提供することで、経営の透明性を確保します。
| 具体的な対応例 |
| ・貸借対照表、損益計算書だけでなく、各勘定明細(資産・負債明細など)の提出を行う。 |
| ・年1回の本決算だけでなく、試算表・資金繰り表等の定期的な報告を行う。 |
| ・開示後に事業計画や業績見通しに変動が生じた場合、自発的に報告する。 |
金融機関との交渉時のポイント
新規融資時などに保証契約を締結する際、金融機関は「なぜ保証契約が必要なのか」「どのような改善を図れば保証契約の変更・解除の可能性が高まるか」を詳細に説明することが求められています。この機会を逃さず、金融機関に具体的な改善要件を確認しましょう。
もし現在、業績が良くない場合でも、専門家(税理士など)の協力を得て、ガイドラインに基づく3か年・5か年計画を策定し、「将来の事業承継時においては、経営者保証を解除することを検討してほしい」と主張することは可能です。



金融庁は「経営者保証に依存しない融資」を推進しており、銀行ごとの実績も公表しています。そのため、 政府系金融機関や一部の民間銀行では、保証なし融資の割合が増加傾向にあります。
また、2023年4月以降は、金融機関が保証を求める場合、なぜ必要なのか・どうすれば外せるのかを説明する義務が課されています。
5.まとめ:戦略的思考があなたの資金繰りを安定させる
銀行融資の成功は、決して「運」や「金利の安さ」で決まるものではありません。
それは、銀行を対等なビジネスパートナーと認め、長期的な信頼関係を築くための「情報」と「作戦」によって決まるのです。
「バンクフォーメーション」を意識した取引銀行の選定、定量的・定性的な情報開示による信頼強化、そして「経営者保証ガイドライン」に基づいた財務・経営の改善。これら全てが、事業の資金調達を安定供給へと変えるための具体的な道筋となります。



「なんとなく」の付き合い方をやめ、戦略的に銀行との関係を深めることで、資金繰りの不安から解放され、圧倒的に経営が楽しくなるはずです!
銀行とのお付き合いに悩まれている方で、相談できる税理士がいない場合には、お気軽にこちらまでお問い合わせください。



情報開示という観点では昨日のDay3と共通する内容がありましたので、よろしければ、こちらの記事もご覧ください。
【町田市の税理士が解説】<中小企業・個人事業主向け>銀行融資を成功させるためのポイントについて Day3(財務体制の強化と適切な情報開示)
3連休前ラスト!今日も1日頑張りましょう!










コメント