ミミレイドンボス、おはようございます!
今朝のテーマはなんでしょうか?



今朝も昨日に引き続き、グローバル・ミニマム課税を整理していきたいと思います。特に所得合算ルール(IIR)適用判定のポイントと手順そして、移行期間CbCRセーフハーバー(TCSH)の判定にフォーカスしてみましょう。
1.はじめに
所得合算ルール(IIR)は、グローバル・ミニマム課税(Pillar 2)の「主役」として、日本に最終親会社を持つ多国籍企業グループに最も早く(2024年4月1日以降)適用が開始されている制度です。
IIRに基づく課税(トップアップ課税)の適用を判定し、税額を計算するプロセスは非常に複雑ですが、実務上は、まず「移行期間CbCRセーフハーバー(TCSH)」が適用できるかどうかの判断が最優先となります。このセーフハーバーが適用されれば、複雑な本則計算が免除され、事務負担が大幅に軽減されるからです。
ここでは、IIRの適用判定の基本となる手順と、最も重要なポイントであるセーフハーバーの判定基準について詳しく解説します。
2.IIR適用判定の基本的な手順(ロードマップ)
IIRの最終目標は、特定多国籍企業グループ等に属する構成会社等について、国別のトップアップ税額を計算し、これを申告・納付することですが、その対応は以下のステップで進めることが推奨されています。
| ステップ | 内容 | 目的/ポイント |
| Step 1: 対象企業の特定 | グローバル連結総収入金額が7億5,000万ユーロ以上(直前4対象会計年度のうち2以上)の特定多国籍企業グループ等に該当するか確認する。 | 制度の適用対象であるかを確認します。 |
| Step 2: 構成会社・所在地国の特定 | 連結財務諸表で連結された個々の会社(構成会社等)とその所在地国を特定します。 | 課税計算の単位(国別)を確定します。恒久的施設(PE)も独立した構成会社として扱われる点に注意が必要です。 |
| Step 3: 移行期間CbCRセーフハーバー(TCSH)の判定 | 国・地域ごとにTCSHの3つのテスト(デミニマス、簡易ETR、通常利益)のいずれかを充足するかを判定します。 | これが最優先のタスクです。充足すれば、その国・地域のトップアップ税額はゼロとなり、煩雑な本則計算が不要になります。 |
| Step 4: 本則計算の実行 | TCSHを充足しなかった国・地域について、GloBEルールに従い、国別実効税率および国別トップアップ税額を算出します。 | 膨大なデータと複雑な調整(15%リキャスト、SBIEなど)が要求されます。QDMTT導入国であれば、まずQDMTT法令に基づき計算します。 |
| Step 5: 申告・納付 | 計算されたトップアップ税額を、日本親会社がIIR申告書(別表20)およびGloBE情報申告書(GIR)に記載し、期限までに提出・納付します。 | 初年度の申告・納付期限は、対象会計年度終了の日の翌日から1年6か月以内です(3月決算企業の場合2026年9月末)。 |
3.移行期間CbCRセーフハーバー(TCSH)の判定
IIRの適用初年度(2024年4月1日以後開始事業年度)から2026年12月31日以前に開始し、2028年6月30日までに終了する対象会計年度までは、移行期間CbCRセーフハーバー(TCSH)が適用可能です。
このセーフハーバーの適用可否を判定するためのテストは、国別報告書(CbCR)国ごとに行われます。



移行期間CbCRセーフハーバー(TCSH: Transitional CbCR Safe Harbour)とは、事務負担を大幅に軽減するために設けられた時限的な救済措置のことです。この制度を適用できる国・地域については、複雑な本則計算(GloBEルールに基づく実効税率やトップアップ税額の算出)を行う必要がなくなり、その国でのトップアップ税額はゼロとみなされます。
TCSHを適用するための3つのテスト
ある国・地域において、以下の3つのテストのいずれか一つでも満たされれば、その国・地域のトップアップ税額はゼロとなります(IIRの計算が免除されます)。
| テスト名 | 要件(いずれもCbCRまたは連結財務諸表のデータを使用) | 判定の趣旨 |
| ① デミニマス要件 | 当該国・地域の収入金額が1,000万ユーロ未満かつ同税引前当期利益の額が100万ユーロ未満であること。 | その国での事業規模が少額(デミニマス)であり、課税リスクが低いとみなされます。 |
| ② 簡素な実効税率(ETR)要件 | 簡素な実効税率が、当該年度の移行税率以上であること。 | その国で十分な税金(最低税率15%以上)が課されているとみなされます。 |
| ③ 通常利益要件 | 当該国・地域の税引前利益が、実質ベース所得除外額(SBIE)以下であること。 | その国での利益が、実体のある活動(給与や有形資産)から生じた「通常の利益」の範囲内であるとみなされます。 |
【補足】デミニマス要件
1. デミニマス(少額)要件とは?
デミニマス要件とは、特定の国・地域での事業規模が極めて小さい場合に、その国での実効税率の計算やトップアップ課税を免除する仕組みのことです。



「わざわざ少額の利益のために、あんなに複雑な計算をさせるのは酷だよね」という、いわば制度側からの「お目こぼし」のようなルールです。
具体的には、以下の2つの基準の両方を満たす必要があります。
- 収入金額(売上)基準:その国・地域での収入金額が1,000万ユーロ未満であること。
- 利益金額基準:その国・地域での利益(又は損失)の額が100万ユーロ未満であること。
実務上、この「少額」をどう判定するかは、適用するルールによって以下の通り異なります。
- 本則(通常のルール):当期と直前2事業年度の「3年平均」で判定します。
- 移行期間CbCRセーフハーバー:平均ではなく「単年度」の数値で判定できるため、より使いやすくなっています。
2. 円換算のタイミングと注意点



1,000万ユーロとか100万ユーロって日本円でいくらになるんですか?



判定を行う際、いつの時点のレートを使うかが非常に重要となります。
- 円換算の時期
日本法人の場合、原則として対象会計年度開始の日の属する年の「前年12月」の平均相場を使用します。
(例)2025年4月1日から始まる会計年度の場合:2024年12月の平均レートを使います。 - 使用する為替レートの指定
為替レートは、欧州中央銀行(ECB)が公表する売買相場の平均値を用いることが定められています。ECBの公式サイトから、該当する期間の円/ユーロの平均レートを確認する必要があります。
3. その他注意すべきポイント
判定を誤ると、後から「実は免除対象じゃなかった!」となってパニックになりかねません。以下の点に注意してください。
- 「Once out, always out」の原則
セーフハーバーの適用を受ける際、過去に一度でも要件を満たしていたのに適用を選ばなかった(あるいは適用できなかった)年度があると、それ以降の年度では二度と適用できなくなります。初年度の選択は非常に重要です。 - 投資事業体は対象外
その国に所在する構成会社等が「各種投資会社等」に該当する場合、このデミニマス要件による適用免除は受けられません。 - 「重要性の乏しい子会社」の扱い
連結財務諸表で重要性が低いために連結除外されている子会社であっても、デミニマス判定の「収入金額」にはその数値を含めて計算しなければなりません。 - 情報の出所(適格CbCR)
移行期間セーフハーバーを使う場合、原則として連結パッケージ(連結用報告データ)に基づいた国別報告書(CbCR)の数値を使う必要があります。社内の管理会計データで勝手に判定してはいけません。 - 「総収入金額」の定義
単なる売上高だけでなく、受取利息、受取配当金、有価証券売却益、為替差益、固定資産売却益、引当金戻入益など、財務諸表等に記載される全ての収益の合計額を含める必要があります。 - 恒久的施設(PE)の切り出し
本店所在地国の数値からPEに係る売上や利益を適切に切り出し、PEが所在する国・地域側で判定を行う必要があります。 - 適格財務諸表の使用
判定に用いる数値は「適格財務諸表」に基づいた「適格CbCR」の数値でなければなりません。グループ内取引の相殺前の数値を用いるなどの作成ルールに留意が必要です。 - 無国籍構成会社等の除外
米国LLCなどのパススルー事業体(無国籍構成会社等)は、原則として移行期セーフハーバーの適用対象外となります。
【補足】簡素な実効税率(ETR)要件
1. 簡素な実効税率の計算方法
本則の計算では、会計上の利益や税金に数百項目に及ぶ調整を加えますが、「簡素な実効税率」では、国別報告書(CbCR)や連結財務諸表の数値をベースに以下の計算式で算出します。
簡素な実効税率=簡素な対象税金÷適格CbCRの税引前利益
- 適格CbCRの税引前利益(利益)
適格国別報告書(CbCR)に記載された、その国・地域の「税引前当期利益」を使用します。 - 簡素な対象税金(税金)
連結等財務諸表に記載された「当期税金費用」および「繰延税金費用(法人税等調整額)」の合計額から、対象租税以外の税金や、不確実な税務処理(税務リスク)に係る引当額を除外した「簡素な対象税金」を使用します。
2. 合格基準(移行税率)
算出された「簡素な実効税率」が、その年度ごとに定められた「移行税率」以上であれば、セーフハーバーが適用されます。この移行税率は年々引き上げられる仕組みになっています。
| 対象会計年度の開始日 | 判定に用いる移行税率 |
| 2024年4月1日~12月31日までの間に開始する対象会計年度 | 15% |
| 2025年中に開始する対象会計年度 | 16% |
| 2026年中に開始する対象会計年度 | 17% |
※2024年4月以降に開始する年度(多くの日本企業の2025年3月期)については、15%以上であればクリアとなります。
3. 実務上の注意点
- 適格CbCRの使用: この判定に使う数値は、原則として最終親会社の連結用パッケージ(連結財務諸表の基礎資料)を基に作成された「適格CbCR」でなければなりません。内部管理用のデータで計算したものは認められないため、データの出所に注意が必要です。
- Once out, always out: 前述の通り、一度でもこのセーフハーバーを適用しなかった(または要件を満たさなかった)国については、それ以降の年度でこの特例を復活させることはできません。
【補足】ベース所得除外額(SBIE)
ベース所得除外額(SBIE:Substance-Based Income Exclusion)とは、「超過利益」を算出するために、所得から差し引くことができる控除額のことです。
この仕組みのポイントは以下の通りです。
1. 算出方法
SBIEは、各国・地域に所在するグループ会社(構成事業体)が持つ、以下の2つの要素の帳簿価額に一定の率を乗じて算出されます。
- 給与費用: 従業員に対して支払われる一定の給与等の額。
- 有形資産の帳簿価額: 土地、建物、設備などの一定の有形固定資産の帳簿価額。
原則的なルールでは、これらそれぞれの額に5%(ただし導入当初は経過措置としてより高い率が適用される)を乗じた額の合計がSBIEとなります。
2. 税額計算への影響
トップアップ税は、国別の所得全体に対して課されるわけではありません。分母となる所得(国別個別計算所得等)からこのSBIEを差し引いた後の残額である「超過利益」に対して、最低税率15%との差(トップアップ税率)を乗じて計算されます。 つまり、その国で多くの雇用(給与)や設備投資(有形資産)を行っている実体のある企業ほど、課税対象となる利益が圧縮され、トップアップ税額が軽減される仕組みになっています。
3. 移行期セーフハーバーにおける役割
SBIEは、複雑な本則計算を免除するための「移行期セーフハーバー」の判定基準の一つである「通常利益テスト」でも極めて重要な役割を果たします。
- 判定基準: 適格国別報告書(CbCR)に記載されたその国の税引前利益が、算出されたSBIEの金額以下である場合、その国・地域でのトップアップ税は零とみなされます。
- 移行期間中の適用率: 2024年度から2027年度にかけては、以下の通り段階的に率が減少する経過措置が設けられています。
◦ 給与: 9.8% (2024年) → 9.6% (2025年) → 9.4% (2026年) → 9.2% (2027年)
◦ 有形資産: 7.8% (2024年) → 7.6% (2025年) → 7.4% (2026年) → 7.2% (2027年)
【注意点】Once out, always out
移行期間CbCRセーフハーバーの適用を受ける上で、最も留意すべきは「Once out, always out」(一度不適用となれば、永続的に不適用)というルールです。
過去の対象会計年度において、各要件のいずれかを満たしていたにもかかわらず本特例の適用を受けなかった場合(選択しなかった場合)、その後は本特例を適用することができません。
したがって、IIRの適用初年度(多くの日本企業にとって2025年3月期)において、どの国・地域でTCSHを適用するか(または適用を見送るか)極めて重要な経営判断となります。この判断は、GloBE情報申告書(GIR)において行う必要があります。
【注意点】PEの場合の注意点
グローバル・ミニマム課税(Pillar 2)における恒久的施設(PE:Permanent Establishment)の判定や扱いは、実務上非常に重要なポイントです。PEは法人格を持ちませんが、この制度においては本店(主要事業体)から独立した別個の「構成会社等(構成事業体)」として扱われます。
PEがある場合の判定方法と実務上のポイントについて、以下のステップに沿って解説します。
1. PEの特定と所在地国の判定
まず、多国籍企業グループ内のどの拠点がPEに該当するかを特定します。
- 構成会社等としての扱い
支店、建設現場、プロジェクト拠点などが租税条約や所在地国の国内法でPEと認定される場合、それは本店とは別の独立した構成会社等とみなされます。 - 所在地国の判定
PEの所在地国は、そのPEが所在する(事業活動が行われている)国・地域となります。
2. PEの所得(当期純損益)の算定
PEの利益や損失は、本店と合算するのではなく、まずPE単独で計算します。
- 財務諸表の基礎
原則として、その所在地国の税務申告や租税条約の規定に基づいて作成されたPE独自の個別財務諸表上の損益を用います。 - 所得の配分
本店とPEの間で、租税条約や各国の税法に基づき、適切に所得が配分されている必要があります。
3. 本店とPE間での所得・税額の調整
実効税率(ETR)を正しく計算するために、以下の調整が行われます。
- 所得の付け替え
本店が全世界所得課税方式(日本など)を採用している場合、PEで生じた損失は本店の所得計算上考慮されます。◦ 損失の配分: PEに損失が生じた場合、その損失額は本店の所得から減算されます。
◦ 利益の再配分: その後、PEに利益が生じた場合は、過去に本店に配分した損失額を限度として、その利益を本店の所得に加算(PEの所得から減算)します。 - 税額の配分(プッシュダウン)
本店所在地国でPEの所得に対して課税された税額がある場合、その税額はPEの所在地国の税額としてカウント(配分)されます。
4. 実質ベースの所得除外(SBIE)の判定
PEに帰属する人的・物的資産は、そのPEがある国の控除額として計算されます。
• 資産と従業員: PEで勤務する従業員の給与や、PEが保有する有形資産の簿価は、PE所在地国における「実質ベースの所得除外額」の計算に算入されます。
5. 情報申告(GIR)における対応
GIR(GloBE情報申告書)の作成においても、PEは個別のエンティティとして識別情報を記載する必要があります。
• 識別情報: PEの名称、所在地国、納税者番号(TIN)などを、本店とは別に報告しなければなりません。

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