【町田市の税理士が解説】法人契約の保険に関する税務論点:Part3 給与認定と【出口】保険金・解約返戻金の入金時の取り扱い

ミミレイドン

ボス、おはようございます!
今朝のテーマは何でしょうか?

新屋賢人

今朝も昨日に続き、法人保険にまつわる税務上のポイントを整理していきます。
前回の記事では、保険料を支払った際の処理を中心に確認しました。
今回はその続編として、支払時の論点の残りに触れつつ、保険料を受け取った場合の取扱いについても解説していきます。

ミミレイドン

法人契約の保険に関する税務論点のPart1とPart2はこちらの記事になりますので、よろしければご覧ください。
法人契約の保険に関する税務論点:Part1導入
法人契約の保険に関する税務論点:Part2【入口】損金算入の可否と割合

目次

5. 【給与認定】役員・特定従業員だけの契約が危ない理由

法人保険の税務において、支払保険料が「福利厚生費」などの損金として認められるか、あるいは特定の個人への「給与」とみなされるかは、非常に重要な分岐点です。特に役員や特定の従業員のみを対象とする契約には、税務当局から厳格な目が向けられます。

法人保険が「福利厚生」として認められるためには、原則として役員・従業員の全員を対象とする「普遍的加入」が条件となります。この前提が崩れると、本来損金に算入できるはずの保険料が、個人への「利益供与」とみなされ、思わぬ課税を招くことになります。

実務上、特に注意すべき「給与認定」のパターンと、それが役員給与の損金算入ルールに与える影響について解説します。

5-1. 給与認定される典型パターン

法人税の通達では、保険料の全部または一部が損金(福利厚生費等)として認められるケースであっても、対象者が限定されている場合には例外的に給与」として取り扱うよう明記されています。

特定の者のみを対象とする場合

被保険者を「役員または部課長その他特定の使用人(これらの者の親族を含む)」のみに限定している場合、その保険料は当該役員や使用人に対する「給与」となります。

保険金受取人の設定による判断

保険金や給付金の受取人が「被保険者またはその遺族」である場合、特定の者のみを対象にしていると、支払った保険料の額は全額(または福利厚生費相当額の全額)が給与として認定されます。

養老保険のハーフタックスプラン

死亡保険受取人を遺族、満期保険受取人を法人とする養老保険でも、特定の者のみが加入している場合、本来損金に算入できるはずの「1/2相当額」は給与として処理しなければなりません。

給与と認定された場合、法人側では給与としての損金算入が検討されますが、個人側では所得税・住民税の課税対象となり、源泉徴収が必要になる点に注意が必要です。

5-2. 役員給与になると「定期同額給与」要件にも波及

保険料が役員に対する給与とみなされた場合、次に問題となるのが「その給与が法人の損金として認められるか」という点です。役員給与が損金になるためには、原則として「定期同額給与」などの要件を満たす必要があります

経常的負担による「定期同額」の充足

国税庁の取り扱いでは、役員に対する給与とされる保険料のうち、法人が経常的(継続的)に負担するものについては、役員が受ける経済的利益が毎月おおむね一定であるとみなされます

結論としての「定期同額給与」認定

このため、継続して支払われる保険料は原則として「定期同額給与」に該当するものとして扱われます。

損金算入限度額との兼ね合い

定期同額給与と認められれば、他の役員報酬と合算して「不相当に高額」でなければ、法人側で損金として処理することが可能です。

ただし、加入時の手続き(取締役会での決議等)や社内規程の整備が不十分であると、不当な利益供与とみなされ、法人の損金算入が否認されるリスクは依然として残ります。

新屋賢人

役員や特定の管理職のみを対象とした保険契約は、たとえ実態が保障目的であっても、税務上は「給与」としての性質が優先されます。給与認定を避けるためには、全社員を対象とするなど福利厚生の合理性を明確にすることが不可欠です。

6. 給与認定の対策方法

法人契約の保険料が特定の個人に対する「給与」とみなされる(給与認定)のを避け、正しく損金(福利厚生費等)として計上するための具体的な対策は、主に「加入対象者の範囲」「保障額の合理性」「社内規程と証跡の整備」の3点に集約されます。

6-1. 原則として「役員・従業員の全員」を加入対象にする

福利厚生費として認められるための最大の要件は、原則として役員・従業員の全員を対象とする「普遍的加入」です。

特定の者のみを対象としない

繰り返しになりますが、被保険者を「役員のみ」や「部課長以上の特定の使用人」に限定している場合、支払った保険料(養老保険のハーフタックスプランであればその1/2相当額)は、その個人に対する「給与」となります。

合理的な理由による限定

全員加入が原則ですが、「勤続3年以上の正社員」など、福利厚生として客観的かつ合理的な理由があれば、対象者を限定していても認められる場合があります

同族関係者への注意

役員や従業員の大部分が同族関係者である法人の場合、全員を対象にしていても、同族関係者に係る部分は給与とされるリスクがあるため注意が必要です。

6-2. 保障内容(保険金額)に「合理的な格差」を設ける

個々の役員・従業員で保険金額に差をつける場合は、その格差が職種、年齢、勤続年数等に応じた妥当なものでなければなりません。

過大な保障の回避

全員を対象としていても、特定の役員だけが給与に見合わない高額な保障を受けている場合、経済的合理性がないと判断され、給与認定の要因となります。

算定根拠の明確化

基本給×勤続年数×支給率」といった、社内の退職金規程などと連動した保障額を設定することが推奨されます。

6-3. 社内規程の整備と議事録による「証跡」の保存

税務調査において「保障や福利厚生の実態」を証明するためには、形式的な契約だけでなく、導入の意図やプロセスを記録に残すことが不可欠です。

加入目的の明文化

事業保障、福利厚生、退職給付準備など、加入の目的を明確にし、取締役会の議事録や稟議書に記録しておきます。

福利厚生規程の整備

保険を活用した弔慰金や退職金の支給について、あらかじめ社内規程を整えておき、その規程に基づいて契約を行っているという事実を作ります

契約情報の管理

保険証券や設計書に加え、税務上の判断根拠(区分判定シートなど)を台帳として整備し、いつでも提示できるようにしておきます。

6-4. 適切な受取人設定と経理処理の選択

保険の種類ごとに定められた典型的な受取人パターンに従い、実態と仕訳を一致させます。

養老保険(ハーフタックス)

死亡受取人を「遺族」、満期受取人を「法人」に設定し、1/2を福利厚生費、1/2を資産計上します。

団体保険の活用

総合福祉団体定期保険や団体医療保険など、全社員を包括して保障するパッケージ型商品を導入することで、福利厚生としての実態を明確に示しやすくなります。

新屋賢人

先ほども述べた通り、万が一、役員に対して給与認定された場合でも、その保険料が法人が経常的に負担するものであれば、毎月の経済的利益が一定とみなされ、税務上の「定期同額給与」に該当します。これにより、他の報酬と合算して不相当に高額でなければ、法人側では給与としての損金算入は維持できますが、個人側で所得税・住民税が課税されるという点に留意してください。

7. 【出口】保険金・給付金・解約返戻金の税務と計上時期

法人保険において、もっとも慎重な判断が求められるのが「出口(受取時)」の税務です。支払時にどれだけ損金を作れたとしても、出口での計上時期や金額の判定を誤れば、思わぬ追徴課税や資金繰りの悪化を招くリスクがあります

保険金、給付金、および解約返戻金を受け取る際の、実務上の核心となる3つのポイントを解説します。

7-1. 受取時は原則「益金」(雑収入等)になりやすい

保険金や解約返戻金を受け取った際、その全額が利益(益金)になるわけではありません。税務上のポイントは、「これまでに資産として積み上げた帳簿残高があるか」という点です。

差額認識の考え方

受取額から、これまでに「前払保険料」や「保険積立金」として資産計上していた累計額を取り崩しその差額を「雑収入(益金)」または「雑損失(損金)」として計上します。

帳簿残高管理の重要性

特に2019年(令和元年)以降の改正ルールでは、支払保険料の相当割合を資産に計上する仕組みが整理されたため、出口における「資産計上額の取り崩し」が税務判断の鍵となります。

  • 資産残高 < 受取額 差額が「雑収入(益金)」となり、課税対象となります。
  • 資産残高 > 受取額 差額が「雑損失(損金)」となり、その年度の費用として認められます。

このように、出口での税負担を正確に見積もるためには、毎期の資産計上額を正確に記録した台帳の整備が不可欠です。

7-2. 死亡保険金の益金計上時期(期ズレ論点)

死亡保険金の益金計上時期は、原則として「死亡という事故が発生し、権利が確定した日」とされますが、実務上は「事業年度をまたぐ期ズレ」がしばしば問題となります。死亡保険金の益金計上時期については、通達等で明確な規定はありませんが、実務上は、「保険会社から支払通知を受けた日」や「その支払を受けるべき事実が生じた日(=死亡日)」とすることが一般的です。

支払通知日基準の是認(2024/2/26公表裁決)

近年の公表裁決(2024年2月26日)において、保険会社からの「支払通知日の属する事業年度」に益金を計上することを妥当と判断した事例もあります。

説明可能性の確保

税務当局に対しては、「恣意的な利益調整(利益が出すぎたから翌期に回す等)ではないこと」や、「経済実態に即した継続的な基準」であることを説明できるかが重要です。期末ギリギリの死亡事故などは、計上時期の根拠となる通知書類を適切に保存しておく必要があります。

7-3. 解約返戻金の収益計上(解約日・通知日・入金日問題)

法人保険の解約返戻金を受け取る際の収益計上時期については、税務上の**「権利確定主義」に基づき、原則として解約の効力が生じた日の属する事業年度**に計上します。実務上、「解約日」「通知日」「入金日」のいずれを採用すべきかという論点がありますが、以下の通り整理されます。

収益計上時期の原則と具体的な判断

解約返戻金は、保険契約を解除したことによって発生する債権であるため、「解約の意思表示が保険会社に到達し、契約が終了した日」を基準とするのが一般的です。

  • 解約日(書類到達・受付日)
    保険契約が終了し、解約返戻金を受け取る権利が確定した日です。多くの実務では、保険会社が解約請求書を受理し、事務処理を行った日を計上基準とします。
  • 支払通知日(通知日)
    保険会社から「解約返戻金支払通知書」等が発行された日です。金額が確定したことを示す客観的な証拠となるため、この日を計上時期とすることも合理的とされます。
  • 入金日(受取日)
    解約返戻金の収益計上時期は、原則として解約の効力が生じ、返戻金を受け取る権利が確定した日の属する事業年度で判断します。入金日基準(現金主義)での処理は、期ズレ論点になり得るため注意が必要です

「月差」と「期ズレ」のリスク

解約返戻率は月単位で変動するため、計上時期が1ヶ月ずれるだけで、数百万円単位の返戻金額の差(目減り)が生じる可能性があります。

  • ピーク時期の特定
    証券や設計書の返戻金推移表から、返戻率が最高となる月を正確に特定する必要があります。
  • 事業年度をまたぐリスク
    期末付近で解約手続きを行う場合、解約日は当期でも入金が翌期になることがあります。この場合、「権利確定」を優先して当期の益金として計上しなければ、税務調査で「期ズレ」として指摘されるリスクがあります

認められるための実務対策

税務署から恣意的な利益操作と疑われないためには、以下の対応が重要です。

  • 社内基準の継続性
    「解約通知日基準」や「支払通知日基準」など、採用した計上基準を毎期継続して適用し、経済的実態に即した処理を行う必要があります。
  • 出口戦略の設計
    解約益(益金)が発生する年度と、役員退職金の支払い(損金)などの大きな支出が発生する年度を同一事業年度内に揃えることで、法人税負担を平準化することが実務上の王道です。
新屋賢人

法人保険の出口では、資産計上残高の正確な把握と、計上時期の一貫性が問われます。2026年から施行される「防衛特別法人税」の影響や、退職金の「10年ルール」改正なども踏まえ、マルチ年でのシミュレーションを専門家と共に行うことが、安全な出口設計の鉄則です。
なお、具体的に認められる収益計上日は、原則として「解約の効力が生じ、権利が確定した日」です。入金日を待たず、保険会社からの支払通知日や事務受付日を基準に、当期の益金として適切に処理することが、税務調査での否認を避けるポイントとなります。

8. まとめ

いかがだったでしょうか。3回に分けて法人契約の保険に関する税務の論点を確認してきました。
法人契約の保険は、同じ保険商品でも「契約形態」「受取人」「解約返戻金の有無」「資産計上の要否」などの条件次第で、損金算入や課税関係が大きく変わります。特に保険料の処理は、税務上の判断と会計処理がズレやすく、後からの修正が重い論点になりがちです。導入時点で目的(保障・退職金準備・資金繰り等)を整理し、契約内容と処理方針をセットで設計しておくことが、実務上もっとも確実なリスク対策になります。なお、法人保険の税務判断は個別事情による影響が大きいため、契約前や見直しのタイミングで税理士に相談し、処理方針と必要書類(根拠資料)まで含めて確認することをおすすめします。税理士をお探しの方は、お気軽にこちらまでお問い合わせください。

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この記事を書いた人

町田市にあるコムレイド税理士事務所の代表税理士の新屋賢人です。大学卒業後、中堅税理士法人で5年間、業界最大手である国際四大会計事務所(BIG4)のEY税理士法人で8年間、計13年間の実務経験があります。
30代ですが、すでに法人・個人問わず幅広い業務を経験しております。BIG4という業界最大手で得た経験・知識を生まれ育った街に還元したいという強い思いから独立を決めました。

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