ミミレイドンボス、おはようございます!
今朝のテーマはなんでしょうか?



今朝は、昨日のブログ(リバースチャージ方式)の補足として、いわゆる消費者向け電気通信利用役務の提供について、整理しようと思います。



消費者向けだとリバースチャージ方式も適用されませんし、そんなに論点ありませんよね?しかも”消費者向け”となると、経営者には関係なさそうですね。



いえいえ、例え”消費者向け”であっても、事業として海外サービスの提供を受けていれば、経理に大きな影響があります。特に2023年10月のインボイス制度(適格請求書等保存方式)開始に伴って、改正がありました。昨日の記事でも少し触れましたが、意外と知らない人が多かったので補足しようと思います。
本記事では、いわゆる「消費者向け電気通信利用役務の提供」が何を指し、インボイス制度によって何がどう変わったのかを、誰にでもわかりやすく解説します。
1. はじめに
(1).本記事の目的と背景
2015年10月1日以降、国外から行われる「電気通信利用役務の提供」についても消費税が課税されることになりました。これは、デジタル経済の発展に伴い、国内事業者と国外事業者との間で、消費税の有無による価格競争の不均衡を是正し、税の公平性を確保するためです。
そして、2023年10月1日にインボイス制度が導入されたことで、この海外取引における仕入税額控除のルールが大きく変わり、国内事業者は正確な対応が求められています。本記事の目的は、特に誤解されやすい「消費者向け」の取引に焦点を当て、正しい実務対応を提示することです。
(2).「消費者向け電気通信利用役務の提供」とは何か(例:電子書籍、音楽配信、クラウドサービスなど)
「電気通信利用役務の提供」とは、電子書籍、音楽、広告の配信など、電気通信回線(インターネット等)を介して行われる役務の提供を指します。電話やインターネット回線の接続など、単に他者間の情報伝達を媒介する通信手段そのものは含まれません。
この電気通信利用役務の提供は、国外事業者が行う場合、「事業者向け」と「消費者向け」に大別されます。
「消費者向け電気通信利用役務の提供」とは、「事業者向け電気通信利用役務の提供」以外のものを指します。
具体的には、以下の特徴を持つサービスが該当します。
- 広く消費者を対象に提供されている電子書籍・音楽・映像の配信等。
- ウェブサイトで事業者を対象に販売しているとされていても、消費者をはじめとする事業者以外の者からの申込みを事実上制限できないもの。



実は消費税法に定義があるのは『電気通信利用役務の提供』、『事業者向け電気通信利用役務の提供』であり、「消費者向け電気通信利用役務の提供」は法令用語ではありません。一般的に、事業者向け以外のものを『消費者向け』と呼んでいます。
具体例
電子書籍・電子新聞、音楽・映像の配信サービス、一般向けのクラウドサービスやデータ保存サービス、インターネットを介した英会話教室などが該当します。SNSやYouTubeなども、事業者に限定されずに使用されるため、消費者向けに分類されます。



例示は「一般論」であり、最終的には契約・機能で判定することとなりますので、ご注意ください。
注意点
「消費者向け」という名称ですが、消費者が提供を受けるものに限られず、事業者が提供を受けるものも含まれます。例えば、国内事業者が利用する海外製の汎用的なクラウドサービス(Dropbox、Google Workspaceなど)も、一般利用者が申し込める場合は「消費者向け」と判断される可能性があります。



事業者向け電気通信利用役務の提供やリバースチャージ方式については、こちらの記事で解説しておりますので、よろしければご覧ください。
【町田市の税理士が解説】消費税のリバースチャージ方式とは?インボイス制度の影響は?
(3).インボイス制度の概要と影響範囲
2023年10月1日に開始されたインボイス制度(適格請求書等保存方式)は、消費税の仕入税額控除(支払った消費税を、受け取った消費税から差し引くこと)の要件を厳格化しました。
• 仕入税額控除を受けるためには、「帳簿」と、登録を受けた「適格請求書発行事業者」が交付する「適格請求書」(インボイス)の保存が原則として必要です。
この制度移行に伴い、海外事業者からサービスを受ける国内事業者にとって、仕入税額控除の可否を判断する際の基準が大きく変わりました。



インボイス制度については、こちらの記事をご覧ください。
【町田市の税理士が解説】インボイス制度(適格請求書等保存方式)の基礎(Day1)
2. 制度改正前の取扱い(〜2023年9月30日)
インボイス制度導入前は、国外事業者からの「消費者向け電気通信利用役務の提供」については、独自のルールが適用されていました。
(1).消費者向け役務提供における仕入税額控除の可否
2015年10月1日から2023年9月30日までの間は、国外事業者から「消費者向け電気通信利用役務の提供」を受けた国内事業者の仕入税額控除が原則として制限されていました。
これは、国外事業者による申告・納税の実効性が疑わしかったため、徴収できない消費税の減収分を補う効果を狙ったものです。
例外:登録国外事業者制度
ただし、国税庁長官の登録を受けた「登録国外事業者」から提供を受けたサービスに限り、国内事業者は仕入税額控除を行うことができました。登録国外事業者は国税庁の「登録国外事業者名簿」で公表されていました。
(参照:2023年9月30日時点登録国外事業者名簿)
この場合、国内事業者は、他の課税仕入れと同様に帳簿及び請求書等を保存する必要があり、請求書等には「登録国外事業者」に付された5桁の登録番号と、国外事業者自身が納税義務者である旨の記載が要件とされていました。
参照:国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税の見直し等について
(2).事業者免税点制度との関係
「消費者向け電気通信利用役務の提供」(国外事業者申告納税方式)については、役務の提供を行う国外事業者が納税義務者となります。
この国外事業者に対しても、事業者免税点制度(基準期間の課税売上高が1,000万円以下であれば納税義務が免除される制度)は適用されていました。
国外事業者の納税義務の判定に用いられる課税売上高は、特定資産の譲渡等(事業者向けサービスなど)に該当するものを除き、「消費者向け電気通信利用役務の提供」に係る対価の額のみで計算されていました。
(3).海外事業者からの役務提供(リバースチャージ)の扱い
「電気通信利用役務の提供」であっても、国外事業者から「事業者向け」に提供される取引(例:ネット広告配信など)については、リバースチャージ方式(特定課税仕入れ)が適用され、サービスを受けた国内事業者に申告・納税義務が課されていました。
したがって、「消費者向け電気通信利用役務の提供」は、リバースチャージ方式の対象外であり、原則どおり、サービスを提供した国外事業者が申告・納税を行う方式(国外事業者申告納税方式)とされていました。
(4).実務上の課題
制度改正前は、以下のような課題がありました。
- 税の不公平性の是正
従来、国外事業者が行うデジタルサービスは日本の消費税が課されず、国内事業者との競争上の不公平が生じていました。 - 徴税の実効性の確保
「消費者向け」サービスについて、国外事業者に申告・納税義務が課されても、税務当局が国外事業者の事業を把握し、納税を捕捉することが現実的に難しかった。このため、登録国外事業者制度が導入された経緯があります。
3. 制度改正後の取扱い(2023年10月1日以降)
2023年10月1日からのインボイス制度導入により、国外事業者からサービスを受ける国内事業者の仕入税額控除のルールが大幅に見直されました。
(1).インボイス制度導入により何が変わったか
① 登録国外事業者制度の廃止
インボイス制度の開始に伴い、2015年度税制改正で創設された登録国外事業者制度は、2023年9月30日をもって廃止されました。この制度はインボイス制度に移行しました。
② インボイス発行事業者でないと仕入税額控除ができない
制度移行後、国内事業者が「消費者向け電気通信利用役務の提供」について仕入税額控除の適用を受けるためには、原則として、売手である国外事業者から交付を受けた適格請求書や適格簡易請求書(インボイス)の保存が必要となりました。
(2).海外事業者の登録義務と登録国外事業者公表制度
① 登録は任意だが、登録しないと国内事業者は控除不可
国外事業者がインボイスを発行できる「適格請求書発行事業者」として登録するかどうかは任意です。しかし、登録しない場合、そのサービスを受けた国内事業者は仕入税額控除を受けられなくなります。このため、「消費者向け電気通信利用役務の提供」を行う国外事業者は、売上先等の事業内容を踏まえ、登録を検討する必要があります。
② 移行登録国外事業者のみなし登録
2023年9月1日時点で登録国外事業者であり、「登録国外事業者の登録の取消しを求める旨の届出書」を提出していない者は、2023年10月1日に適格請求書発行事業者の登録を受けたものとみなされます(移行登録国外事業者)。
③ 登録国外事業者名簿
2023年9月30日時点の登録国外事業者については、国税庁ホームページの「登録国外事業者名簿」で公表されています。
④ 登録手続
移行登録国外事業者以外の国外事業者が適格請求書発行事業者の登録を受けるためには、納税地を所轄する税務署長に「適格請求書発行事業者の登録申請書(国外事業者用)」を提出する必要があります。
参照:D1-65 適格請求書発行事業者の登録申請手続(国外事業者用)



国外事業者の「納税地」については、国内に事務所等を有しない場合、納税地は「納税管理人を定めた場合、その納税管理人の住所地」になります。これは消費税法第5条およびインボイス制度関連の国税庁ガイドラインで定められています。
(3).実務上の注意点(クラウドサービス利用時の請求書確認など)
実務上、「消費者向け役務の提供」を受ける際の大きな注意点は、インボイスがなければ原則として仕入税額控除ができないという点です。
① 8割/5割控除の経過措置は適用されない
インボイス制度導入後の経過措置として設けられた、適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れについて、一定割合(80%または50%)を仕入税額とみなして控除できる措置は、国外事業者から受けた「消費者向け電気通信利用役務の提供」については適用を受けることができません。
参照:いわゆる「消費者向け電気通信利用役務の提供」を受けた場合の仕入税額控除
② 少額特例(1万円未満)の活用
少額特例(基準期間の課税売上高が1億円以下等の事業者が、2023年10月1日から2029年9月30日までの間に行う税込1万円未満の課税仕入れについて、帳簿のみの保存で仕入税額控除が可能となる措置)については、適用を受けることができます。この特例はインボイスの登録有無を問わず適用可能です。
参照:少額特例(一定規模以下の事業者に対する事務負担の軽減措置の概要)の概要
③ 請求書にインボイス番号があるか確認する
海外から電子書籍や汎用クラウドサービスを購入する場合、その請求書に新たに付番されたインボイス番号(T+13桁の数字)が記載されているかを確認することが必須です。
4. 実務への影響と対応策
(1).中小事業者・フリーランスが注意すべきポイント
中小事業者やフリーランスの方が海外のデジタルサービスを利用する際、最も注意すべき点は、そのサービスが「事業者向け」か「消費者向け」かの判定です。
• もし「事業者向け」(例:ネット広告配信)と判定され、かつ自社が「一般課税」で「課税売上割合95%未満」であれば、リバースチャージ方式の申告・納税義務が生じます。
• もし「消費者向け」(例:電子書籍、汎用クラウド)と判定された場合、国外事業者がインボイス登録をしていなければ、原則として仕入税額控除はできません。
多くの一般課税の中小企業や簡易課税を選択している事業者は、リバースチャージ方式の対象外ですが、「消費者向け」サービスで仕入税額控除を受けるためには、インボイスが必要になったという点で、負担が増加しました。
(2).海外サービス利用時の確認事項(例:Google Workspace、Adobe、Dropboxなど)
国外事業者から役務提供を受ける際は、以下のステップで確認しましょう。
そのサービスが「事業者向け」か「消費者向け」かを、役務の性質や契約条件から判断します。
例: DropboxやGoogle Workspace、Canvaなどの汎用性の高いクラウドサービスは、個人も利用できるため、「消費者向け」と見なされる可能性が高いです。
「消費者向け」と判断された場合、請求書にインボイス番号(T+13桁)が記載されているかを確認します。もし、インボイス番号がなければ、原則として仕入税額控除は不可です(ただし、税込1万円未満であれば少額特例の適用を検討できます)。
(3).インボイス対応のための社内体制整備・システム対応
国外取引は、取引ごとにインボイスの有無やサービスの分類(事業者向け/消費者向け)を確認する必要があるため、経理処理の複雑性が増しています。
- 請求書確認フローの構築
国外事業者からの請求書受領時、インボイス番号の有無とサービスの性質を確認し、仕入税額控除の可否を判定するフローを確立することが重要です。 - 会計システムの活用
多くの会計ソフトでは、リバースチャージ取引やインボイス制度に対応した消費税区分が用意されています。正確な処理のため、システムの機能を活用することが推奨されます。
5. よくある質問(FAQ形式)
Q1. 海外のクラウドサービスを使っているが、インボイスはもらえるのか?
海外のクラウドサービスを提供する国外事業者が、日本の適格請求書発行事業者の登録を受けていれば、インボイスをもらうことができます。
特に、制度開始前に「登録国外事業者」だった大手のサービス提供者(移行登録国外事業者)は、自動的に適格請求書発行事業者とみなされています。登録を受けているかは、国税庁の「適格請求書発行事業者公表サイト」で確認できます。
Q2. 相手が適格請求書発行事業者として登録していない事業者の場合、仕入税額控除はどうなる?
適格請求書発行事業者として登録していない事業者から「消費者向け電気通信利用役務の提供」を受けた場合、原則として仕入税額控除はできません。
ただし、以下のような特例の適用が可能です。
• 少額特例:一定規模以下の事業者(基準期間の課税売上高1億円以下など)が、令和11年9月30日までの間に行った税込1万円未満の課税仕入れについては、帳簿のみの保存で仕入税額控除が認められます。
Q3. 事業者向け電気通信利用役務の提供でもインボイスが必要?
国内の事業者が、国外事業者から「消費者向け電気通信利用役務の提供」を受け、その取引にかかる消費税について仕入税額控除の適用を受けたい場合、インボイスの保存が必須となります。
一方で、リバースチャージ方式の対象となる「事業者向け電気通信利用役務の提供」については、インボイスの保存は不要で、帳簿の記載のみで仕入税額控除が可能です。
6. まとめ
(1).制度改正の要点の再確認
「消費者向け電気通信利用役務の提供」における消費税の取り扱いは、デジタル時代の公平な課税を実現するために進化し続けています。
- 納税義務者
原則として、役務を提供した国外事業者(国外事業者申告納税方式)です。 - 旧制度の終焉
2023年10月1日をもって登録国外事業者制度は廃止され、インボイス制度に移行しました。 - 控除の新要件
国内事業者が仕入税額控除を受けるためには、国外事業者が発行するインボイスの保存が必須です。 - 今後の動向
2025年4月1日以降、プラットフォームを介した消費者向けサービスについては、特定プラットフォーム事業者(例:アプリストア運営会社など)が申告・納税を行う「プラットフォーム課税」が導入されます。この場合、国内事業者は特定プラットフォーム事業者が交付する適格請求書の保存により仕入税額控除が可能となります。
(2).実務対応の重要性と今後の動向
消費税の取り扱いは、取引の相手が国外か国内か、「事業者向け」か「消費者向け」か、そしてインボイスの有無によって複雑に枝分かれします。特に「消費者向け」と判定される海外サービスを利用する事業者は、仕入税額控除の機会を逃さないよう、請求書と少額特例の適用可能性を都度確認する体制が不可欠です。



国外取引は、為替換算や源泉徴収(所得税)の論点も絡み、非常に複雑です。自社の利用する海外サービスが「事業者向け」と「消費者向け」のどちらに該当するかの判定、また、受け取ったインボイスが記載事項の要件を満たしているかなど、判断に迷う点が多々あります。
不確実な処理は、税務調査での指摘や追徴課税につながりかねませんので、顧問税理士に相談することをお勧めします。相談できる税理士がいない場合には、お気軽にこちらまでお問い合わせください。










コメント