ミミレイドンボス、おはようございます!
昨日は移転価格税制の税務調査について、取り上げていただきありがとうございました!今朝はどのようなテーマでしょうか?



今朝は移転価格税制で重要なテーマでもある同時文書化(ローカルファイルの作成)について、整理していこうと思います。



地方のファイル?



海外子会社との取引がある会社にとって、移転価格の文書化は「やるorやらない」ではなく、“いつまでに出せる状態にしておくか”が勝負です。
ローカルファイルは取引規模によって申告期限までの同時文書化が必要になり、免除取引でも調査で求められれば60日以内の提出が求められます。
今朝は、50億円・3億円の判定、45日・60日の提出期限、提出できない場合の推定課税・同業者調査まで、押さえるべき要点を整理していきましょう。



移転価格税制の①制度の概要編、②独立企業間価格の算定編、③比較対象取引の選定編、④移転価格税制の税務調査(執行)編については、こちらの記事で解説しておりますので、宜しければご覧ください。
【町田市の税理士が解説】移転価格税制とは?①制度の概要編
【町田市の税理士が解説】移転価格税制とは?②独立企業間価格の算定編
【町田市の税理士が解説】移転価格税制とは?③比較対象取引の選定編
【町田市の税理士が解説】移転価格税制とは?④移転価格税制の税務調査(執行)編
【同時文書化(ローカルファイルの作成)編】
1.同時文書化
移転価格税制における同時文書化(同時文書化義務)とは、法人が国外関連取引を行う際、あるいは確定申告書を提出するまでに、その取引価格が独立企業間価格であることを証明するための書類(ローカルファイル)を作成・取得し、保存しなければならない義務を指します。
以下に、その対象基準、作成期限、および遵守しなかった際のリスクについて詳しく解説します。
1. 同時文書化の対象書類(ローカルファイル)
同時文書化の対象となるのは、ローカルファイルと呼ばれる「独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類」です。
- 目的
個々の関連者間取引の詳細な情報を提供し、最適な算定手法の選定理由や、財務情報、比較可能性分析の結果を明らかにすることです。 - 内容
国外関連取引の内容、機能・リスク分析、比較対象取引の選定プロセス、算定手法の適用結果などが含まれます。
2. 同時文書化義務の免除基準
一の国外関連者との取引において、前事業年度(前事業年度がない場合は当該事業年度)の取引金額が以下の両方の基準を同時に下回る場合、その国外関連者との取引については、申告期限までのローカルファイル作成義務(同時文書化義務)が免除されます。
- 国外関連取引の対価の額の合計: 50億円未満
- 無形資産取引の対価の額の合計: 3億円未満



金額判定にあたっては、輸出と輸入を相殺せず、それぞれの総額で判定します。
事前確認(APA)を受けている取引であっても、免除基準の判定金額には含める必要があります(ただし、実際の文書作成においてはAPA関連書類を流用できるため、追加作業は原則不要です)。
3. 作成期限と保存期間
- 作成期限
対象となる事業年度の確定申告書の提出期限までに作成(または取得)する必要があります。 - 保存期間
原則として7年間保存しなければなりません。ただし、欠損金が生じた事業年度に係る書類については、10年間の保存が必要です。 - 保存場所
納税地または国内の事業所等に保存する必要があります。
4. 調査時における提出期限
税務調査において、税務当局からローカルファイルの提示・提出を求められた場合、以下の期限内に提出する必要があります。
- ローカルファイル
提示・提出を求めた日から45日以内の指定された日。 - 重要書類(ローカルファイルの基礎資料など)
提示・提出を求めた日から60日以内の指定された日。



“重要書類”は、「独立企業間価格を算定するために重要と認められる書類」として財務省令で定めるものを言います。
これらの期限は、法人の意見を聴取した上で、準備に通常要する日数を勘案して調査官により指定されます。
5. 義務を遵守しなかった際のリスク
指定された期限までにローカルファイルの提示・提出がない場合、あるいは提出された書類が不正確な情報に基づいている場合には、以下の強力な措置が適用されるリスクがあります。
- 推定課税の適用
税務署長が、同種の事業を営む法人の利益率などを基礎として、独立企業間価格を推定して課税を行うことができるようになります。 - 同業者調査の実施
当該法人と同種の事業を営む他社(独立した第三者)に対して、帳簿書類の検査や質問を行うことが認められます。



同時文書化義務は、納税者が自律的に移転価格を検討することを促すとともに、税務当局が効率的なリスク評価を行うための重要な制度となっています。
2.ローカルファイル
ローカルファイル(独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類)とは、国外関連取引の内容やその価格の妥当性を詳細に説明するための文書です。BEPSプロジェクトの勧告に基づき導入された「三層構造の移転価格文書」の一つであり、マスターファイルや国別報告書を補完する役割を果たします。
以下に、ローカルファイルの概要と構成される具体的な書類内容について詳述します。
1. ローカルファイルの概要
- 目的
納税者が特定の納税地における重要な国外関連取引について、独立企業原則を遵守していることを証明・保証することを目的としています。 - 作成義務
原則として、確定申告書の提出期限までに作成または取得し、保存しなければならない「同時文書化義務」があります。 - 免除基準
直前の事業年度における一の国外関連者との取引金額が、「対価の額の合計が50億円未満」かつ「無形資産取引の合計が3億円未満」である場合は、同時文書化義務が免除されます。 - 提出期限
税務調査において当局から提示・提出を求められた場合、調査官が指定する日(通常は45日以内)までに提出する必要があります。



同時文書化義務の免除判定における無形資産取引とは、取引科目の名称にかかわらず、無形資産の譲渡、貸付け、権利の設定、使用許諾、またはこれらに類似する全ての取引を指します。
例えば、
• 知的財産権等の使用許諾(ライセンス): 特許権、商標権、著作権などの使用料(ロイヤルティ)の支払いまたは受取。
• 無形資産の譲渡: 特許やノウハウ、顧客リストなどの売却または購入。
• 役務提供に付随する無形資産の使用: 経営指導や技術支援などの名目であっても、その実態にノウハウや企業秘密の使用が含まれる場合。
つまり、特許や商標といった法的に保護された権利だけでなく、企業に蓄積された独自のノウハウや顧客ネットワークなどの「価値ある目に見えない資産」が関わる全てのやり取りが、この3億円の基準に含まれることになります。
2. ローカルファイルに含まれる書類・記載事項
ローカルファイルは、大きく「対象事業体に関する情報」と「国外関連取引に関する情報」で構成されます。
① 対象事業体に関する事項
- 組織構造
経営体系、組織図、および経営報告先の所在国等の説明。 - 事業概要
事業内容、事業戦略(事業再編や無形資産譲渡を含む)、および主要な競合他社のリスト。
② 国外関連取引に関する事項
- 取引の内容
取引カテゴリー(製造、商品購入、役務提供、ローン、ライセンス等)ごとの背景説明、グループ内支払・受領金額の明細。 - 契約関係
対象事業体が締結した全ての重要なグループ内取決めの写し。 - 機能・リスク分析
納税者および関連者が果たす機能、使用する資産、負担するリスクの詳細な分析(過年度との比較を含む)。 - 算定手法の選定
最適な移転価格算定方法を選択した理由の説明、および検証対象企業の選定理由。 - 比較可能性分析
- 選定した比較対象取引(内部・外部)のリストと、その選定方法・情報ソースの説明。
- 差異調整(取引条件や運転資本等の違いを補正する計算)の内容と実施対象の明示。
- 結論
選定された手法の適用に基づき、取引が独立企業間価格で行われたかどうかの分析結果。 - 前提条件
算定手法を適用するに当たっての重要な前提条件の要約。
③ 特定の取引において追加で必要とされる資料(例:役務提供)
役務提供(サービス)取引などについては、実態を確認するために以下の書類も検査対象となります。
- 事実関係の証明
請求書、計算明細書、業務日誌、作業日報、または出張報告書。 - 原価配分の合理性
総原価の配分方法の内容、およびその方法が合理的であると判断した理由。
3. 作成・保存における留意点
- 使用言語
言語の指定はありませんが、英語等で作成した場合には日本語による翻訳文の提出を求められることがあります。 - 情報の鮮度
取引を行う際、または確定申告書を提出する際に利用可能な最新の情報に基づいて作成しなければなりません。 - 保存期間
原則として7年間保存する必要があります。ただし、欠損金が生じた事業年度に係る書類は10年間となります。



ローカルファイルが不正確な情報に基づいている場合や、期限までに提出されない場合は、税務署長による推定課税や同業者調査が行われるリスクがあるため、適切な整備が不可欠です。推定課税については、次章以降で整理していきましょう。
3.同時文書化対象国外関連取引にかかる一定期間経過後の推定規定の適用
同時文書化対象国外関連取引における推定規定(推定課税)の適用については、税務調査時に当局が求める「移転価格文書」の提示または提出が、指定された期限までに行われない場合に発動されます。
以下に、その具体的な仕組み、期間制限、および適用内容について解説します。
1. 推定規定が適用される要件
同時文書化対象国外関連取引を行っている法人が、税務当局の調査において、独立企業間価格(ALP)を算定するために必要な書類(ローカルファイル等)を、調査官が指定する期日までに提示または提出しなかった場合に適用されます。
2. 書類の提示・提出期限(一定期間)
調査官が指定する期限は、書類の種類に応じて以下の通り法律で明確に定められています。
- ローカルファイル(措置法第66条の4第6項に規定する書類)
提示または提出を求めた日から45日以内の範囲内で調査官が指定する日。 - 重要書類(ローカルファイルの基礎資料や、同時文書化義務がない取引の検討書類)
提示または提出を求めた日から60日以内の範囲内で調査官が指定する日。



これらの期日は、法人の意見を聴取した上で、準備に通常要する日数を勘案して設定されます。
3. 推定規定の具体的な内容
指定された期限までに書類の提示・提出がない場合、税務署長等は以下の方法により独立企業間価格を推定し、更正または決定を行うことができます。
- 比準利益率法等による算定
当該法人と事業規模その他の事業内容が類似する同業他社の売上総利益率(またはそれに準ずる割合)を基礎として、独立企業間価格を推定します。 - 同業者調査の実施
必要に応じて、同種の事業を営む独立した第三者に対して質問検査を行い、その帳簿書類を検査することで得た情報を算定の基礎とすることができます。
4. 適用上の配慮と例外
- 合理的な理由がある場合
災害その他やむを得ない事情により期限内の提出が困難であったと認められる場合には、調査官は再度意見を聴取し、改めて期日を指定します。 - 不正確な書類の扱い
提示された書類が不正確な情報等に基づき作成されている場合、それは移転価格文書の提示・提出には該当しないとみなされ、速やかな訂正が求められます。訂正が期限までに行われない場合、推定規定が適用されるリスクがあります。 - 納税者への説明
税務当局は、推定規定を適用して独立企業間価格を算定した場合には、その選定条件や差異の調整方法等について納税者に十分な説明を行うよう努めることとされています。



このように、同時文書化制度における推定規定は、納税者に適切な文書化を促し、調査の効率性を確保するための強力な担保措置として機能しています。
4.同時文書化免除国外関連取引にかかる一定期間経過後の推定規定の適用
移転価格税制において、同時文書化(確定申告期限までのローカルファイル作成)義務が免除されている「同時文書化免除国外関連取引」であっても、税務調査において必要書類の提出が遅れた場合には、推定規定(推定課税)が適用されるリスクがあります。
その適用要件や期間、内容について詳しく解説します。
1. 推定規定が適用される要件
同時文書化義務が免除される基準(前年度の取引額が50億円未満、かつ無形資産取引が3億円未満)を満たしている場合でも、税務当局は調査において、独立企業間価格(ALP)を算定するために重要と認められる書類の提示・提出を求めることができます。
推定規定が適用されるのは、以下の状況です。
- 税務当局が、独立企業間価格を算定するために重要と認められる書類(またはその写し)の提示・提出を求めた場合において、職員が指定する期日までにその書類の提示・提出がなかったとき。
2. 書類の提出期限(「一定期間」の定義)
同時文書化免除国外関連取引における書類の提出期限は、通常の同時文書化対象取引(ローカルファイル作成義務がある取引)よりも長く設定されています。
- 提出期限
提示・提出を求めた日から60日以内の範囲内で、調査官が指定する日。 - 留意点
通常のローカルファイルは「45日以内」に提出する必要がありますが、同時文書化が免除されている取引に係る重要書類については、準備期間を考慮して60日以内とされています。ただし、この期日は法人の意見を聴取した上で、準備に要する日数を勘案して個別に設定されます。
3. 推定規定の内容(どのような課税が行われるか)
指定された期日(最大60日以内)までに書類の提示・提出がない場合、税務署長は以下の方法により算定した金額を独立企業間価格と「推定」して、更正又は決定を行うことができます。
- 比較対象企業の利益率に基づく算定
当該法人の事業と同種の事業を営み、事業規模その他の内容が類似する他法人の売上総利益率、あるいはそれに準ずる割合を基礎として独立企業間価格を算出します。 - 同業者調査の実施
推定課税を行うために必要があるときは、同種の事業を営む独立した第三者(同業者)に対して質問し、帳簿書類を検査する「同業者調査」を行うことができます。
4. 推定規定適用の例外・留意事項
- 不正確な書類の提出
提出された書類が不正確な情報に基づいている場合は、提出がなかったものとみなされ、推定課税の対象となる可能性があります。 - 合理的な理由がある場合
災害など、期限内に提出できなかったことについて合理的な理由がある場合には、意見を再聴取した上で期日が再指定されます。 - 特定無形資産の特例
特定無形資産(HTVI)に係る価格調整措置が適用される場合には、一定の免除規定が優先されることがあります。



まとめると、同時文書化が免除されている小規模な取引であっても、調査官から書類を求められた際は、指定された期日(最長60日以内)を守らなければ、当局が独自のデータで利益率を弾き出す「推定課税」という非常に厳しい処分を受けることになります。
5.同時文書化義務国外関連取引にかかる質問検査権
移転価格税制において、同時文書化義務の対象となる国外関連取引の調査では、税務当局(国税庁、国税局、税務署の職員)に強力な質問検査権が認められています。
その具体的な内容、範囲、および不履行時のリスクについて解説します。
1. 質問検査権の基本と書類の提示・提出要件
移転価格調査における書類の提示・提出は、法に基づいた質問検査権に関する規定に従って行われます。
- 対象範囲
当該法人が現に作成・所持している書類だけでなく、調査において必要があるときは、その法人の国外関連者が保存する帳簿書類(またはその写し)についても提示・提出を求めることができます。 - 提出期限の指定
調査官は書類の種類に応じ、以下の期限を超えない範囲で、法人の意見を聴取し準備期間を考慮した上で期日を指定します。- ローカルファイル: 提示・提出を求めた日から45日以内。
- その他の重要書類: 同60日以内。
2. 同業者等に対する質問検査(同業者調査)
同時文書化対象取引について、指定された期日までにローカルファイル等の提示・提出がない場合、税務当局は独立企業間価格を算定するために必要な範囲内で、以下の権限を行使できます。
- 同業他社への質問検査
当該法人の国外関連取引に係る事業と同種の事業を営む者(独立した第三者)に対し、質問し、帳簿書類を検査し、またはそれらの提示・提出を求めることができます。 - 情報の活用
この同業者調査によって得られた情報を基礎として、独立企業間価格を推定し、課税(推定課税)を行うことが可能になります。
3. 質問検査権の行使における手続的要件
- 身分証明の携帯
質問、検査、または提示・提出の要求を行う際、職員は身分を示す証明書を携帯し、関係人の請求があったときは、これを提示しなければなりません。 - 物件の留置き
質問検査権に基づき提出された帳簿書類等の物件については、必要がある場合にはこれを留め置くことができます。 - 犯罪捜査との区別
これらの質問検査権は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならないとされています。
4. 罰則規定(実効性の担保)
質問検査権の行使に対し、正当な理由なく拒否や虚偽の対応をした場合には、以下の罰則が科されることがあります。
- 金銭罰
質問に対して答弁せず、若しくは偽りの答弁をし、検査を拒み、妨げ、若しくは忌避したとき、または帳簿書類の提示・提出要求に正当な理由なく応じず、若しくは偽りの記載をした書類を提出したときは、30万円以下の罰金に処せられます。 - 両罰規定
違反行為をした本人だけでなく、その法人に対しても同様の罰金刑が科されます。



このように、同時文書化対象取引にかかる質問検査権は、納税者本人だけでなく、その国外関連者や、比較対象となり得る同業他社にまで及ぶ非常に広範な権限となっています。納税者が指定期日までに適切な文書を提出しないことは、税務当局による直接的な実態把握(同業者調査)や推定課税を招く直接の要因となります。
6.同時文書化免除国外関連取引にかかる質問検査権
移転価格税制において、同時文書化(確定申告期限までのローカルファイル作成)義務が免除される取引であっても、税務当局の質問検査権(調査権限)が制限されるわけではありません。
同時文書化免除国外関連取引にかかる質問検査権の取扱いについて詳しく解説します。
1. 質問検査権による書類提示・提出の範囲
同時文書化義務がある取引かどうかにかかわらず、税務調査において提示または提出が求められる書類の範囲は従来と同じです。
- 税務当局は、独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類(ローカルファイルに相当する書類)の提示・提出を求めることができます。
- この権限は、法人が現に作成・所持している書類に限定されません。必要があるときは、法人に対し、国外関連者が保存する帳簿書類(またはその写し)の提示・提出を求めることも認められています。
2. 提示・提出の期限(一定期間)
同時文書化免除取引については、書類の準備に要する期間を考慮し、同時文書化対象取引(45日以内)よりも長い期限が設定されています。
- 期限: 調査官が提示・提出を求めた日から60日以内の範囲内で指定する日。
- この期限は、法人の意見を聴取した上で、準備に通常要する日数を勘案して個別に設定されます。
3. 書類が提出されない場合の法的措置
指定された期限までに書類が提示・提出されない場合、税務署長等は以下の強力な権限を行使することができます。
- 推定課税の適用
当局が、同種の事業を営む他法人の売上総利益率などを基礎として、独立企業間価格を「推定」して更正または決定を行うことができます。 - 同業者調査(質問検査)の実施
独立企業間価格を算定するために必要があるときは、当該法人と同種の事業を営む独立した第三者(同業者)に対して、その事業に関する帳簿書類の質問検査を行うことができます。
4. 検査対象となる具体的な書類例
免除取引であっても、独立企業間価格の妥当性を確認するために以下のような書類が検査の対象となります。
- ローカルファイルに記載すべき事項に相当する書類(機能・リスク分析、比較対象取引の選定プロセスなど)。
- その基礎となる事項や関連する事項を記載した書類。
- 役務提供取引であれば、請求書、計算明細書、業務日誌、作業日報、出張報告書など。
留意点
- 不正確な書類の扱い
提出された書類が不正確な情報等に基づいている場合は、適切に移転価格文書が提示されたとはみなされず、訂正が期限内に間に合わなければ推定課税等の対象となる可能性があります。 - 免除基準
同時文書化が免除されるのは、一の国外関連者との「前事業年度の取引合計額が50億円未満」かつ「無形資産取引が3億円未満」の場合です。



結論として、同時文書化が免除されていても、税務署長等は質問検査権に基づき詳細な資料提出を求めることができ、期限(60日以内)を守らなければ推定課税という厳しい処分を受けるリスクがあることに注意が必要です。
7.質問検査権への不答弁、偽りの答弁、提示拒否等に対する罰則
移転価格税制に関連する調査や書類提出において、質問検査権への不答弁、偽りの答弁、帳簿書類等の提示・提出拒否、あるいは虚偽の記載をした書類の提出などを行った場合には、法律に基づく罰則(金銭罰)の適用や、実務上の強力な不利益措置である推定課税の対象となります。
1. 質問検査権への違反に対する直接的な罰則
租税特別措置法の規定(第66条の4、第66条の4の3、第40条の3の3等)に基づき、調査官による質問検査や書類提出要求に対して不適切な対応をした場合、以下の罰則が科されます。
- 罰則の内容
30万円以下の罰金に処せられます。 - 対象となる行為
- 調査官の質問に対して答弁せず、または偽りの答弁をしたとき。
- 検査を拒み、妨げ、または忌避したとき。
- 帳簿書類(その写しを含む)の提示・提出要求に対し、正当な理由なく応じなかったとき。
- 偽りの記載若しくは記録をした帳簿書類等を提示・提出したとき。
- 両罰規定
違反行為をした本人(代表者、代理人、使用人等)だけでなく、その法人に対しても同様の罰金刑が科されます(人格のない社団等も含む)。
2. 国別報告事項・事業概況報告事項の不提供に対する罰則
移転価格文書化制度(3層構造の文書)のうち、国別報告事項(CbCR)や事業概況報告事項(マスターファイル)を期限までに提供しなかった場合も、同様の罰則があります。
- 罰則
正当な理由なく提供期限までに提供しなかった場合、法人代表者等および法人に対して30万円以下の罰金が適用されます。
3. 実務上の強力な制裁:推定規定の適用
金銭的な罰金とは別に、移転価格調査においては推定課税が実質的な制裁措置として機能します。
- 適用の仕組み
調査官が指定した期限(ローカルファイルは原則45日以内、その他重要書類は原則60日以内)までに書類の提示・提出がない場合、税務署長は同業他社の利益率などに基づき、独立企業間価格を「推定」して更正・決定を行うことができます。 - 同業者調査の実施
書類が出されない場合、当局は独立した第三者(同業者)に対して質問検査を行い、その情報を課税の基礎とすることができます。
4. OECDの視点と行政罰(加算税・利子)
OECD移転価格ガイドラインに基づくと、広義の罰則には「租税の過少申告」に対する金銭的行政罰も含まれます。
- 過少申告に対する行政罰
多くのOECD加盟国では、過少申告税額の10%から200%の幅で罰則が課され、脱税の意図など悪質性が高いほど率は上昇します。 - 利子(延滞税)
期限を過ぎた納付に対し、逸失した税の現在価値を回復するための利子が課されることが一般的です。 - 配慮事項
ただし、独立企業原則に整合的な方法で取引条件を設定する合理的な努力を誠実に行った納税者に対し、多額の罰を課すのは不公正であるとの認識も示されています。



このように、日本の税法上、質問検査権への違反は「30万円以下の罰金」という刑事罰の対象となりますが、実務的にはそれ以上に「推定課税による高額な課税リスク」が重大な制裁として位置づけられています。
8.まとめ
同時文書化は、国外関連取引を行う企業すべてに一律で課されるものではなく、一の国外関連者との取引が一定規模(受払合計50億円以上又は無形資産取引受払合計3億円以上)に該当する場合に、確定申告期限までのローカルファイル作成・保存が求められます。
一方で、基準未満の“免除取引”であっても、調査で資料提出を求められたときに60日以内で提出できなければ、税務当局が売上総利益率等を用いて独立企業間価格を推定する(推定課税)など、強い手段が取り得る点は変わりません。
したがって、実務対応としては、(1)まず取引規模の判定(50億円・3億円)を行い、(2)同時文書化対象なら申告期限までに整備、免除取引でも“60日で出せる水準”まで日頃から準備し、(3)保存期間(原則7年、欠損金年度等は10年)を踏まえて管理する。
この3点を押さえることが、移転価格リスク管理の最短ルートです。










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