ミミレイドンボス、おはようございます!
今朝のテーマは何でしょうか?



今朝は確定申告に向けた業種別事業所得の計算の注意点第八弾としまして、講師(学習塾の先生)について整理して行きたいと思います。



個人で学習塾を経営されている先生もとても多いと聞きますからね。



ついにやって来る確定申告のシーズン。日々の授業や生徒対応、保護者面談に追われる個人塾の塾長や講師の皆様にとって、複雑な帳簿付けは「マジでメンドイ」と感じる最大の山場ではないでしょうか。教え子の受験シーズンと被るなんてことも。
しかし、学習塾の経理には独特なポイントがいくつも存在します。月謝をいつの売上として計上すべきか、生徒に販売するテキストはどう仕訳けるのか、そして自宅を教室にしている場合の家賃はどこまで経費にできるのか。これら学習塾ならではのルールを正しく理解していないと、せっかくの節税チャンスを逃すばかりか、税務調査で手痛い指摘を受けるリスクさえあります。
本記事では、初めて申告する方でも迷わない「学習塾特有の仕訳」から、所得税や住民税を大幅に軽減できる最大65万円の青色申告特別控除を確実に受けるための秘訣までを網羅的に解説します。さらに、現金月謝が多い塾が税務調査で最も狙われやすい「売上計上の漏れ」を防ぐための対策についても、専門的な視点から詳しくお伝えします。
「節税したいけれど、何から手をつければいいか分からない」「自分の処理が合っているか不安」という先生方、是非一緒に確認していきましょう。
【講師(学習塾の先生)編】
1.事業所得とは?(おさらい)
事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業、その他の事業を営んでいる人が、その事業から生じさせる所得をいいます。ただし、不動産の貸付けによる所得は原則として「不動産所得」に、山林の譲渡による所得は「山林所得」に分類されるため、これらは事業所得には含まれません。
事業所得の概要と計算方法は以下の通りです。
1. 事業所得の計算式
事業所得の金額は、次の算式によって計算します。
• 総収入金額 - 必要経費 = 事業所得の金額
2. 総収入金額に含まれるもの
総収入金額には、事業から生ずる通常の売上金額のほかに、例えば次のようなものも含まれます。
- 金銭以外の物や権利、その他の経済的利益の価額。
- 商品を自家用に消費したり、他人に贈与したりした場合のその商品の価額。
- 商品などの棚卸資産について損失を受けたことにより受け取る保険金や損害賠償金など。
- 空箱や作業くずなどの売却代金。
- 仕入割引やリベート収入。
3. 必要経費に含まれるもの
必要経費とは、収入を得るために直接必要な費用を指します。主な例は以下の通りです。
- 売上原価:仕入代金など。
- 人件費:従業員に支払う給料や賃金。
- 施設関連費:地代、家賃、水道光熱費。
- 減価償却費:建物や高額な器具備品などの取得費用を、耐用年数に応じて分割して計上するもの。
- その他:広告宣伝費、旅費交通費、通信費、接待交際費、消耗品費など。



なお、家事上の経費(生活費)は原則として必要経費になりません。ただし、自宅兼事務所のようにプライベートと事業の両方に関連する経費のうち、事業遂行上必要である部分を明らかに区分できる場合は、その部分(家事按分)を必要経費に算入できます。
4. 課税と申告のしくみ
事業所得は、原則として他の所得と合算して税額を計算する総合課税の対象となります。1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得について、翌年の2月16日から3月15日までに確定申告を行う必要があります。
また、一定の帳簿を備え付けることで税制上の優遇を受けられる青色申告制度があり、これを利用すると最大65万円の青色申告特別控除を受けられるなどの特典があります。



事業所得については、こちらの記事で解説しておりますので、宜しければご覧ください。
【町田市の税理士が解説】個人の事業所得の基礎知識について
2.講師(学習塾の先生)の収入
講師(学習塾の先生)が個人事業主として活動する場合、その収入は主に「事業所得」(または規模により雑所得)として扱われます。どのようなものが具体的に収入(総収入金額・売上高)に含まれるかは、以下の通りです。



学習塾講師として独立して行う収入は、実態として社会通念上“事業”といえる場合は原則『事業所得』となります。一方、事業規模・営利性・継続反復性等を総合判断した結果、事業といえない場合は『業務に係る雑所得』となることがあります。なお、帳簿書類の保存状況等も区分判断に影響しますので、ご注意ください。
1. 学習塾運営に伴う主な収入項目
学習塾の経営や講師業で生徒から受け取る金銭は、その名目を問わず広く収入となります。
- 授業料・月謝
指導の対価として毎月受け取る最も基本的な収入です。 - 入塾金・入学金
生徒が入会する際に支払う費用です。 - 講習費
夏期講習、冬期講習、春期講習などの特別授業の対価です。 - 教材費(テキスト代)
塾で販売する教材の代金です。利益なしで販売する場合や送料を含めて生徒に請求する場合も、受け取った金額は売上(収入)として計上し、かかった費用を「仕入」として処理します。 - 施設維持費・教室維持費
冷暖房費や設備管理などの名目で受け取る管理費用です。 - 事務手数料・購入代行手数料
手続きや教材手配に伴う手数料なども収入に含まれます。
2. 講師業に関連する付随的な収入
授業以外でも、プロの講師としての活動から生じる以下の項目は収入となります。
- 原稿料・印税
著書の出版や問題集の作成などによる収入です。 - 講演料・出演料
外部でのセミナー登壇や講演会などによる報酬です。 - 模試などの委託報酬
外部の模試監督や採点業務などを請け負った場合の報酬です。
3. 税務上「総収入金額」に含まれる特殊な項目
売上金以外にも、事業に関連して発生する以下のものは収入金額に含まれます。
- 金銭以外の経済的利益
物や権利、その他経済的なメリットを受けた場合のその価額。 - 家事消費・贈与
販売目的で仕入れた教材などを自分や家族のために消費したり、他人に贈与したりした場合のその商品の価額。 - リベートや仕入割引
教材の大量仕入れなどに伴うリベート収入。 - 保険金や損害賠償金
棚卸資産(教材など)が損失を受けたことで受け取る保険金など。 - 作業くず等の売却代金
不要になった空箱などの売却代金。 - 運賃収入
生徒に教材を送る際に受け取った送料分。
4. 収入計上のタイミングに関する注意点
収入は、原則として「役務(授業)の提供が完了した時」に計上します。
- 前受金
3か月分などの授業料を前金で受け取った場合、受け取った時点では「売上」ではなく「前受金」として処理し、実際に授業を行った月に売上へ振り替えます。 - 未回収の月謝
年末時点でまだ受け取っていない月謝があっても、すでに授業が完了している場合は、その年の売上(売掛金)として計上しなければなりません。



なお、塾に雇用されている(正社員、パート、アルバイト)場合は、これらの収入は「事業所得」ではなく「給与所得」に分類されます。また、業務委託契約であっても、実態が雇用に近い場合は給与として扱われることがあります。



委託契約か雇用契約かの判断基準はこちらの記事で解説しておりますので、よろしければご覧ください。
【町田市の税理士が解説】給与と外注費(業務委託費)の判断基準について
3.講師(学習塾の先生)の売上原価と棚卸
学習塾を経営する講師(個人事業主)にとって、教材などの売上原価の計算と棚卸は、正確な所得を算出し、税務上のリスクを回避するために非常に重要なプロセスです。
会計処理の方法や実務上のポイントを詳しく説明します。
1. 売上原価の基本概念と計算方法
事業所得の計算において、売上原価とは収入を得るために直接必要な費用のことを指します。学習塾においては、主に生徒に販売するテキスト代などがこれに該当します。
売上原価は、単に「その年に支払った仕入金額」ではなく、以下の計算式で算出します。
• 期首商品棚卸高 + 当期仕入高 - 期末商品棚卸高 = 売上原価
つまり、「その年に実際に生徒へ販売・提供された分」のみが経費(売上原価)となり、残った在庫は資産として翌年に繰り越されます。
2. 「仕入」と「経費」の勘定科目の使い分け
教材を購入した際、その使用目的によって勘定科目を使い分ける必要があります。
- 仕入高(売上原価の対象)
生徒に有償で販売する目的で購入した塾専用教材などは「仕入高」として計上します。仕入れにかかった運賃(取り寄せ送料)も仕入金額に含めて処理して差し支えありません。 - 消耗品費・新聞図書費・教材費(一般経費)
生徒に無償で配布するノート、教室に備え置く辞書、講師が指導のために使用する参考書などは、販売目的ではないため「仕入」ではなく「経費」として処理します。
3. 棚卸(在庫管理)の税務処理
年末(12月31日)時点で、まだ生徒に渡していない(売れていない)教材がある場合は、棚卸資産(在庫)として計上しなければなりません。
- 資産計上のルール
決算期末に未使用の教材は、その年の経費にはならず、在庫として資産に計上します。免税事業者の場合は、消費税を含めた金額で棚卸高を計算します。 - 会計処理(仕訳例)
前年末の在庫が8万円、今年末の在庫が7万円だった場合、以下のように処理して当期の売上原価を調整します
(借)期首商品棚卸高 80,000 / (貸)商品 80,000
(借)商品 70,000 / (貸)期末商品棚卸高 70,000



期末には必ず実地棚卸を行い、エクセルなどで数量と単価を把握しておくことが推奨されます。
4. 実務上の重要ポイントと注意点
① 税務調査でのチェックポイント(売上との連動性)
税務調査において、学習塾の「売上」と「教材仕入」の関連性は厳しくチェックされます。 例えば、「教材の仕入数に対して生徒数(売上)が少なすぎる」場合、月謝の受け取りを申告していない(売上除外)のではないかと疑われる原因になります。教材の仕入単価や冊数は請求書から容易に把握できるため、運営実態と経理資料に矛盾がないようにしておくことが不可欠です。
② 家事消費の取り扱い
仕入れた教材を自分自身の勉強や家族のために使用した(家事消費)場合、あるいは他人に贈与した場合は、その教材の「通常の販売価額の70%」または「仕入原価」のいずれか高い方の金額を「総収入金額(売上)」に含めなければなりません。
③ 領収書がない場合の対応
高額な研修やネット経由で購入した教材などで領収書が発行されない場合でも、振込の記録やクレジットカードの明細、募集ページ(LP)のコピーなどを保管し、事業に必要であったことを証明できれば経費として認められる可能性があります。
④ インボイス制度の考慮
企業向け研修の請負などBtoB取引がある場合は、取引先から適格請求書(インボイス)を求められることがあります。この場合、自身がインボイス発行事業者として登録し、消費税の課税事業者になるかどうかの検討が必要になります。



インボイス制度については、こちらの記事で解説しておりますので、宜しければご覧ください。
【町田市の税理士が解説】インボイス制度(適格請求書等保存方式)の基礎(Day1)
4.講師(学習塾の先生)の経費
講師(学習塾の先生)が経費として計上できるものは、「学習塾を事業として営む上で必要となる費用」です。主に授業運営、教室維持、集客にかかる費用が対象となります。
具体的にどのようなものが経費になるのか、代表的な勘定科目と事例を詳しく解説します。
1. 授業・指導に直接関わる費用
教材費・仕入高
生徒に販売する目的で購入した教材は「仕入高」となります。
生徒への無償配布用ノートや、指導用に使用するテキストなどは「消耗品費」や「新聞図書費」、あるいは独自に設けた「教材費」として処理します。
講師・スタッフの給与(給料賃金)
アルバイト講師や事務スタッフを雇った場合に支払う給料や交通費です。支払時には源泉徴収が必要になる点に注意が必要です。
研修費(研究費)
指導技術向上のためのセミナー受講料、授業に役立てるための新聞・雑誌・書籍代、教育技術関連の研究費などが含まれます。
2. 教室の維持・管理にかかる費用
地代家賃
教室として借りている物件の賃料や管理費、駐車場代です。
水道光熱費
教室で使用した電気代、水道代、ガス代、冬場の暖房用灯油代などです。
消耗品費
文房具、コピー用紙、トナー代、清掃用品など、10万円未満(または耐用年数1年未満)の備品購入費です。ホワイトボードや机、椅子なども10万円未満であればここに含まれます。
修繕費
教室の壁の修理、エアコンのクリーニング、備品のメンテナンス費用などです。
3. 運営・集客に関する費用
広告宣伝費
生徒募集のためのチラシ印刷代、新聞折込料、ポスティング費用、ウェブ広告費、看板の制作費などです。
通信費
インターネット利用料、電話代、生徒への通知を送る際の切手・ハガキ代などです。
旅費交通費
教室までの通勤費用(実費)、生徒募集や研修のための移動費、宿泊を伴う出張費などです。
接待交際費
教室関係者との打ち合わせ飲食代、取引先への歳暮・中元、慶弔金などが該当します。
損害保険料
教室の火災保険や、生徒の安全に関わる塾総合保険の保険料などです。
4. 特殊なケース:自宅を教室にしている場合(家事按分)
自宅の一部を教室として使用している場合、支出全体のうち「事業で使っている部分」を合理的な基準で計算して経費にします(家事按分)。
- 按分の基準
仕事で使用している「面積の割合」や、指導を行っている「時間の割合」などで算出します。 - 対象費用
家賃、電気代、インターネット代、持ち家の場合は建物の減価償却費や固定資産税、住宅ローンの利息部分などが対象となります。



家事按分については、こちらの記事で解説しておりますので、宜しければご覧ください。
【町田市の税理士が解説】個人事業主(フリーランス)の経費の家事按分について
5. 高額な備品の取り扱い(減価償却)
パソコンやコピー機、電子ピアノなど、1つ(1組)あたり10万円以上の備品は、一括で経費にせず数年かけて分割計上(減価償却)するのが原則です。
- 青色申告の特例
青色申告をしている場合、30万円未満の備品であれば、年間合計300万円を限度として、その年の経費として一括計上できる特例(少額減価償却資産の特例)があり、節税に有効です。
参照:主な減価償却資産の耐用年数表
参照:減価償却資産の耐用年数表
参照:国税庁タックスアンサー No.5408 中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例
注意:経費にできないもの
• 事業主自身の給与、健康診断費用、私的な衣類(スーツ等)や眼鏡の購入費。
• 所得税、住民税、交通反則金。
• 住宅ローンの元本返済部分。



経費として認めてもらうためには、領収書やレシートを必ず保管し、事業との関連性を説明できるようにしておくことが重要です。
5.確定申告の際の講師(学習塾の先生)ならではの注意点
講師(学習塾経営者)が個人事業主として行う確定申告は、一般的に「事業所得」に該当します。学習塾という業態特有の売上計上ルールや、税務調査で狙われやすいポイントを理解しておくことが重要です。
既に解説済みの論点もありますが、確定申告における主な注意点と、保管・添付が必要な書類について整理していきましょう。
1. 売上(収入)計上のタイミング
学習塾で最も注意すべきは、月謝や授業料をいつの売上として計上するかという点です。
- 役務提供完了時の計上
売上は原則として「授業が行われた月」に計上します。 - 前受金の処理
3か月分などの授業料を前金で受け取った場合、受取時点では「前受金」として処理し、実際に授業を行った月に売上へ振り替えます。 - 売掛金の計上
年末時点で未回収の月謝があっても、すでに授業が完了している場合は、その年の売上(売掛金)として計上しなければなりません。 - ロイヤリティの扱い
フランチャイズ加盟の場合、本部に差し引かれる前の授業料総額を売上とし、ロイヤリティは「支払手数料」等の経費として計上します。



フランチャイズの場合、授業料を“自社(自分)の売上”として計上するのか、“本部の代わりに預かっているだけ(預り金)”なのかは契約と実態で異なります。授業料が自分の売上であれば総額を売上計上し、ロイヤリティ等を経費計上します。一方、代理受領型であれば預り金処理となり、受け取る手数料部分が売上となるのが一般的です。
2. 学習塾ならではの経費と仕訳
- 教材費の区分
生徒に販売する目的の教材は「仕入」となりますが、指導用や無償配布のノートなどは「消耗品費」や「教材費」として処理します。 - 設備投資
学習机、椅子、パソコンなどで1つ10万円以上のものは減価償却が必要ですが、青色申告者であれば30万円未満のものについて「少額減価償却資産の特例」により一括で経費計上できる場合があります。 - 家事按分
自宅の一部を教室にしている場合、床面積や使用時間などの合理的な基準に基づいて、家賃や電気代を事業用と私用に分け、事業用部分のみを経費にします。
3. 人件費と源泉徴収
- 外部講師の報酬
外部の非常勤講師に支払う報酬は、実態が雇用に近い場合、原則として外注費ではなく「給与」となります。 - 源泉徴収義務
講師に給与や報酬を支払う際は、所得税を源泉徴収して翌月10日までに国に納付する義務が生じます。 - 青色事業専従者給与
生計を一にする家族に支払う給与も、事前に届出をしていれば適正な範囲で経費にできます。



源泉徴収した所得税につき、翌月10日までに国に納付するのが原則ですが、給与を支払う従業員が10人未満の場合は、事前に申請書を提出することで年2回(1月と7月)の納付にまとめることができる特例(納期の特例)があります。
4. 講師(学習塾)ならではの保管・添付書類
学習塾に特化した法的な添付書類があるわけではありませんが、税務調査対策として「塾の運営実態」を証明する以下の書類を整備・保管しておくことが推奨されます。
【提出が必要な書類(共通)】
- 確定申告書
- 青色申告決算書(青色申告の場合)または収支内訳書(白色申告の場合)
- マイナンバーカードの写しなどの本人確認書類
【学習塾特有の「保管」しておくべき重要書類(税務調査対策)】
税務調査では、売上の除外や架空の人件費がないかが厳しくチェックされます。
- 授業スケジュール表・班員表
いつ、誰が、どの授業を担当したかを記録したもので、売上の根拠や講師の勤務実態を証明します。 - 生徒名簿と教材の受領証
生徒数と教材の購入数が一致しているかを確認されるため、領収書や請求書を整理しておきます。 - 講師の履歴書・扶養控除等申告書
実在する講師に正当な給与を支払っている証拠として保管が必要です。 - 家事按分の根拠資料
自宅教室の間取り図や、事業利用時間を記録したメモなど。
5. インボイス制度の注意点
学習塾の主な顧客は一般消費者(生徒・保護者)であるため、多くの場合インボイス発行事業者の登録は不要と考えられます。ただし、企業から研修を請け負うなどのBtoB取引がある場合は、取引先から適格請求書(インボイス)を求められる可能性があるため、登録の要否を検討する必要があります。
6.講師(学習塾の先生)が税務調査で指摘されるポイント
講師(学習塾の先生)が税務調査で指摘を受けやすいポイントは、主に売上の計上漏れ、人件費の実態、家事按分の妥当性の3点に集約されます。
調査官は、塾の運営実態と帳簿の整合性を多角的な視点からチェックします。以下に考えられるポイントを詳しく解説します。
1. 売上(総収入金額)に関する指摘ポイント
学習塾は月謝を現金で受け取るケースが多く、売上除外(売上を意図的に少なく申告すること)が最も厳しくチェックされます。
- 現金売上の計上漏れ
領収書の控えや入塾申込書、出席簿などと、帳簿上の売上が一致しているか確認されます。 - 教材費との整合性
教材の仕入数と生徒数を照らし合わせ、不自然に売上が少ない場合は、隠れた生徒(売上)がいないか疑われます。 - 計上時期の誤り(期ずれ)
前受金の処理:3月分の月謝を2月に受け取った場合、受け取った時点ではなく、実際に授業を提供した3月の売上として計上しているか確認されます。
未回収の月謝:年末時点で未入金の月謝があっても、授業が完了していればその年の「売掛金」として売上に計上しなければなりません。 - 附随収入の漏れ
入塾金、講習費、模試の受験料、事務手数料などが漏れなく計上されているかチェックされます。
2. 必要経費に関する指摘ポイント
プライベートな支出を経費に混入させていないか、また計算基準が合理的かが問われます。
- 家事按分の妥当性
自宅を教室にしている場合、家賃や水道光熱費の事業用比率がチェックされます。面積比や使用時間など、客観的で合理的な根拠(間取り図や計算メモ)がないと否認されるリスクがあります。 - 個人的な支出の混入
塾長自身のスーツ代、眼鏡代、家族との外食、個人的な旅行費用などを経費に入れていないか厳しく見られます。 - 高額備品の処理
1つ10万円以上の備品(パソコンや机など)を、減価償却せずに一括で経費にしていないか確認されます。ただし、青色申告で「少額減価償却資産の特例」を適用していれば30万円未満まで一括計上が可能です。 - 研修費の期間配分
高額な経営塾やセミナー費用を支払った場合、受講期間が翌年にわたるなら、その期間に応じて費用を按分(前払費用として処理)しているかチェックされます。なお、原則として翌年以降の分は前払費用として資産計上しますが、支払日から1年以内に提供を受けるサービスであれば、特例(短期前払費用の特例)により支払った年に全額経費にできる場合があります。
3. 人件費(講師・スタッフ)に関する指摘ポイント
講師への支払いは金額が大きいため、架空の支払いや税務処理の誤りが指摘の対象になります。
- 架空人件費
勤務実態のない親族や知人を講師名簿に入れ、給与を支払ったことにする不正がないか確認されます。履歴書、扶養控除等申告書、授業スケジュール表との照合が行われます。 - 「外注費」か「給与」か
講師への報酬を「外注費」として処理し、源泉徴収や社会保険料の負担を回避していないかチェックされます。塾側の指揮命令下にあるなど実態が雇用に近い場合は「給与」とみなされ、源泉所得税の追徴課税を受ける可能性があります。 - 専従者給与の妥当性
家族に支払う給与が、仕事の内容に対して不当に高額でないか確認されます。



青色事業専従者給与については、こちらの記事で解説しておりますので、宜しければご覧ください。
【町田市の税理士が解説】家族に給与を出すなら必見!青色事業専従者給与の基礎知識について
4. その他の指摘ポイント
- 棚卸資産(在庫管理)
年末時点で未使用の教材や文房具を、経費から除外して「貯蔵品(在庫)」として資産計上しているか確認されます。 - インボイス制度への対応
適格請求書発行事業者として登録している場合、交付している請求書の記載事項が正しいか、納税額の計算(2割特例の適用など)が正確か確認されます。 - 証憑書類の保存
領収書、レシート、銀行の通帳、契約書などが適切に保管されているか(原則7年間)も、調査の基本事項です。



税務調査では、「事業との関連性」を客観的に説明できる証拠(帳簿、領収書、スケジュール表など)を日頃から整えておくことが重要です。
7.まとめ
学習塾を営む個人事業主の確定申告について、最後にポイントを振り返ってまとめましょう。
学習塾の所得は原則として事業所得に該当し、「総収入金額(授業料や教材費など) - 必要経費」という算式で計算します。
- 収入の計上と青色申告の活用
収入には月謝だけでなく入塾金や講習費、教材費収入なども含まれますが、「授業を提供した月」の売上として計上するルール(発生主義)を忘れないようにしましょう。また、大きな節税メリットがある青色申告を選択し、複式簿記による記帳とe-Taxでの電子申告を行うことで、最大65万円の青色申告特別控除を受けることが手元に資金を残すための重要な戦略となります。 - 必要経費と家事按分の徹底
経費については、教室の家賃や光熱費、講師の給与、広告宣伝費などが認められます。特に自宅を教室にしている場合は、面積や使用時間などの合理的な基準に基づき、事業用部分を正確に分ける「家事按分」を行うことが不可欠です。また、青色申告者であれば30万円未満の備品(パソコンや机など)を購入年度に一括で経費にできる特例も活用できます。 - 人件費と税務調査への備え
アルバイト講師を雇う場合は、原則として外注費ではなく給与として扱い、源泉徴収と納付を行う義務が生じる点に注意が必要です。税務調査では、現金売上の計上漏れや架空の人件費、家事按分の妥当性が厳しくチェックされるため、日頃から領収書や生徒名簿、講師の履歴書、授業スケジュール表などの証憑書類を適切に整理・保存しておきましょう。



確定申告の期間は毎年2月16日から3月15日までです。申告に不安がある場合や事業が拡大し経理が複雑になった場合は、税理士に相談することも一つの有効な手段です。税理士をお探しの方は、こちらまでお気軽にお問い合わせください。
日々の正確な記帳と適切な税務処理こそが、塾の安定した経営と成長を支える土台となります。










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