【町田市の税理士が解説】「所得控除?」「税額控除?」個人が寄附した場合の税務上の取り扱いについて

ボス、昨日は法人が寄附した場合の税務上の取り扱いについて、教えていただきありがとうございました!ところで個人が寄附した場合の税務上の取り扱いも同じですか?

いえいえ、法人と個人とでは、また取り扱いが変わるんです。

個人の場合、寄附するメリットがないということでしょうか?

個人の寄附金は「損金算入」ではなく「所得控除・税額控除」で節税効果がありますよ。個人が寄附した場合の税務上の取り扱いについて、わかりやすく解説していきますね。

目次

1.個人が寄附金を支出した場合の税務上の取扱い(概要)

個人が国や地方公共団体、または公益性の高い法人・団体に寄附を行った場合、その寄附金は税制上の優遇措置の対象となります。これは、社会貢献活動を税制面から支援するために設けられた制度です。
適用される税目としては、主に次の2つの税目となります。

  • 所得税(国税)
  • 個人住民税(地方税)

特に所得税では、寄附金額に応じて次のいずれかの方法で控除を受けられる場合があります。

  • 所得控除:課税所得から差し引く方式
  • 税額控除:算出された所得税額から直接差し引く方式

税額控除は「税額から直接差し引く」ことができますので、ほとんどの人は、所得控除よりも節税効果が大きくなる傾向にあります。

代表的な寄附金制度としては、ふるさと納税があり、寄附金制度の中でも特に多くの利用者がいます。

  • 自分が選んだ自治体に寄附できる
  • 寄附額のうち 2,000円を超える部分について、所得税と住民税から控除を受けられる
  • 実質的な自己負担は2,000円で、地域の特産品などの返礼品を受け取れる仕組み

節税効果もあるし、地域貢献もできるし、返礼品ももらえるため、一石三鳥ですね!なお、2025年10月からは楽天ポイントなどのポイントが付かなくなりますので、駆け込み寄附をご検討ください!

2. 所得税における取扱い【所得控除と税額控除の違い】

個人が寄附をした場合、所得税の計算において寄附金が優遇される方法は、「寄附金控除(所得控除)」と「寄附金特別控除(税額控除)」の2種類があります。

寄附先の種類やご自身の所得税率によって、どちらを選ぶかで減税効果が変わります。制度を正しく理解し、自分に有利な方法を選択することが重要です。

(1)寄附金控除(所得控除)

寄附金控除は、所得税額を計算する基となる「所得」の金額から一定額を差し引く所得控除の一つです。医療費控除や社会保険料控除と同じように、課税対象となる所得を減らす効果があります。

対象となる寄附金

所得控除の対象となる寄附金は、国や地方公共団体、特定公益増進法人などに対して支出した「特定寄附金」となります。

計算式

(その年に支出した特定寄附金の額の合計額 または 総所得金額等の40%相当額のいずれか低い金額) – 2,000円

<計算のポイント>

  • 控除の計算に使える寄附金の額は、総所得金額等の40パーセント相当額が上限となります。
  • 所得控除による減税額は、控除額に個人の所得税率を掛けた金額が目安となります。所得税率は累進課税制度であるため、所得が高い人ほど、適用される税率も高くなることから、減税効果も大きくなります。

沢山稼いでいる人は所得控除を選択したほうが税金やすくなる可能性があるということですね。

(2)税額控除(寄附金特別控除)

寄附金特別控除は、算出された所得税額から、税金を直接差し引く控除です。例えば、税額控除の代表例として、住宅ローン控除がありますが、住宅ローン控除と同様に、税率に関わらず税額を直接減らす効果があります。
税額控除を選択できる特定寄附金は、主に以下の3種類に限定されています。

対象となる寄附金

1. 政党等寄附金特別控除
2. 認定NPO法人等寄附金特別控除
3. 公益社団法人等寄附金特別控除

計算式

認定NPO法人等 / 公益社団法人等:(対象寄附金の額合計 – 2,000円) × 40%
政党等:(対象寄附金の額合計 – 2,000円) × 30%

<計算のポイント>

• 控除の対象となる寄附金の額は、所得控除と同様に総所得金額等の40%が限度となります。
• 税額控除額の合計は、その年分の所得税額の25%相当額と上限が設定されております。

所得控除と税額控除のどちらが有利か?

一般的に、総所得金額等が約3,000万円を上回るような高所得者でない限りは、税額控除(40%控除の場合)を選択した方が税金圧縮効果が高いとされています。税額控除は税率に左右されずに税金を直接減らせるため、多くの方にとって有利になる傾向があります。

つまり、節税だけを考えるなら、認定NPO法人や公益法人へ寄附して、「40%税額控除」を選んだ方が節税効果が高いということですね。

時々、節税だけを考えて寄附をする方がいらっしゃいますが、結局は節税できる金額以上のキャッシュアウト(寄附)があるという事実は変わりませんので、寄附先を選定される場合には、節税ばかりを意識せず、想いの部分を大切にしていただければと思います。

3. 住民税における取扱い

個人が特定の団体に寄附をした場合、翌年度の個人住民税(都道府県民税・市区町村民税)からも税額控除を受けることができます。
住民税の寄附金税額控除の対象となるのは、主に以下の寄附金です。

対象となる寄附金

  • 都道府県や市区町村に対する寄附金(ふるさと納税)。
  • 住所地の都道府県共同募金会、日本赤十字社に対する寄附金。
  • 都道府県・市区町村が条例で指定する寄附金。

特にふるさと納税に関しては、自己負担額2,000円を超える部分が所得税と住民税から原則として全額控除されます(一定の上限あり)。

計算式

住民税の控除額は、「基本控除額」と「特例控除額」(ふるさと納税のみ)で構成されます。

基本控除額:(寄附金額 – 2,000円) × 10%
特例控除額(ふるさと納税):(ふるさと納税額 – 2,000円) × (90% – 所得税率)

<計算のポイント>

  • 住民税の控除の対象となる寄附金額は、総所得金額等の30%が限度となります。
  • 特例控除額は、個人住民税所得割額の20%を限度として、基本控除額と所得税控除額で控除しきれなかった額を全額控除(軽減)するために用いられます。

4. 控除を受けるための手続き

寄附金控除(所得控除)や寄附金特別控除(税額控除)を受けるためには、原則として確定申告が必要となります。
年末調整だけでは控除を受けられませんので、必ず忘れずに申告手続きを行いましょう!

確定申告に必要な主な添付書類

確定申告書には、以下の書類(電子データを含む)を添付するか、提出時に提示する必要があります。

  • 寄附金の受領証(領収書)
    寄附先の団体などから交付された受領証が必要となります。
  • 特定の証明書類
    特定公益増進法人や特定公益信託への寄附の場合は、その法人が適格であることを証明する書類や認定書の写しが必要となります。
    政治活動に関する寄附金の場合、選挙管理委員会等の確認印がある「寄附金(税額)控除のための書類」が必要となります。

ふるさと納税の特例措置

寄附金控除に関する証明書(特定事業者発行)

  •  令和3年分の確定申告から、「寄附金の受領証」に代えて、国税庁長官が指定した特定事業者が発行する年間寄附金額が記載された「寄附金控除に関する証明書」を添付することができます。
  • 電子データ(XML形式)やマイナポータル連携を利用して、証明書を一括取得し、申告書に自動入力することも可能です。

ふるさと納税ワンストップ特例制度

  • 確定申告が不要な給与所得者等で、寄附先が5団体以内である場合に限り、寄附先団体に申請することで、確定申告をせずに寄附金控除を受けられる制度となります。
  • この制度を利用した場合、所得税の控除分も含めて、翌年度の住民税から控除されます。

普段、確定申告をしないサラリーマンの方は、ワンストップ特例制度を活用したほうが良いですね!

過去、ワンストップ特例制度を活用した方が、住民税が高いと思い、調べてみたら住民税からふるさと納税分の控除がされていなかったなんてこともありました。ちゃんと控除ができているか不安な方は、5月から6月頃、お勤め先の会社から住民税決定通知書をもらえると思いますので、摘要欄に寄附金税額控除額が入っているか必ずチェックしてみてください。

5. 寄附金控除の対象外となるケース

個人が行う寄附の場合、全ての寄附が税制上の優遇措置の対象となるわけではありません。特定寄附金に該当しないものや、控除の要件を満たさない寄附は、控除の対象外となります。

例えば、以下のような寄附は、法律上「特定寄附金」に含まれないため、控除を受けられません。

  • 学校の入学に関してする寄附金
    入学金や寄附金を条件とするケースは対象外となります。
  • 寄附をした人に特別の利益がおよぶと認められる寄附金
    例えば、寄附によって設けられた設備を専属的に利用できる権利が与えられる場合や、寄附者が優先的なサービスや利益を受けられる場合なども対象外となります。
  • 政治資金規正法に違反する寄附金。
    違法な政治献金は当然ながら控除対象外となります。

寄附金控除は「公益性」が前提となります。寄附前に必ず、「寄附先が特定寄附金に該当するか」を確認することが重要となります。

6. 実務上の留意点【寄附金控除を最大限活用するために】

寄附金控除を正しく活用すれば、節税効果を高めつつ社会貢献も実現できます。ただし、制度を誤解すると「控除が受けられない」「思ったより節税できない」といった失敗につながることも。ここでは、実務上の重要な注意点を整理します。

所得控除と税額控除の選択

• 所得税の控除においては、寄附金控除(所得控除)寄附金特別控除(税額控除)有利な方を選択することが重要です。所得が極めて高い層を除き、多くの納税者にとって税額控除(40%控除)が有利となる傾向があります。具体的には、高所得者層(総所得3,000万円超など)を除けば、税額控除(40%控除)が有利になるケースが多いです。なお、税額控除は「当初申告要件」があるため、確定申告時に選択を誤ると後から変更できない点に注意が必要となります。

つまり、どちらが有利かは、年収や寄附額に応じて、確定申告前にしっかりとシミュレーションして判断することが大切です。

ふるさと納税に関する注意点

控除上限額の確認

ふるさと納税は、実質2,000円の負担で控除を受けることができますが、納税者本人の給与収入や家族構成によって控除される金額の上限が異なります。控除の上限を超えた寄附額は、控除の対象外となり、単なる自己負担となってしまいますので、事前にシミュレーションで上限額をしっかりと確認しましょう。

確定申告をする場合の手続き

ふるさと納税についてワンストップ特例制度を申請した方でも、医療費控除や雑損控除などのために確定申告を行う場合は、確定申告書にふるさと納税の金額を含めて申告し直す必要があります。この際、確定申告書の第二表「住民税に関する事項」にある「都道府県、市区町村への寄附(特例控除対象)」欄に寄附額を必ず記載しないと、住民税の控除が受けられない可能性があるため注意が必要です。

仲介サイトのポイント付与規制(2025年10月以降)

ふるさと納税の制度の健全化のため、2025年10月1日以降、仲介サイトが独自に提供するポイント付与(例:楽天ふるさと納税の楽天ポイント)を伴う寄附募集が禁止されてしまいます。この記事を書いている日は、9/26です。ポイントも欲しい方は、急ぎましょう!私も明日駆け込み寄附をします。
なお、クレジットカード決済に伴いカード会社から付与されるポイントやマイルは引き続き付与される見込みです。

7. まとめ

個人が支出した寄附金は、一定の要件を満たすことで所得税や住民税から控除を受けられる大変有益な制度です。正しく理解し活用すれば、社会貢献と節税を同時に実現できます。

特に所得税では、所得控除税額控除の2つの仕組みがあり、一般的には、税額控除を選択した方が有利になるケースが多いですが、所得水準によって有利不利が変わるため、事前にシミュレーションすることが大切です。

ふるさと納税は、自己負担2,000円で地域貢献ができる代表的な制度です。原則として確定申告が必要ですが、給与所得者で寄附先が5団体以内の場合は「ワンストップ特例制度」を利用することで、確定申告をせずに控除を受けられますので、まだ、ふるさと納税をされていない方はご検討ください。

税制優遇を受けるためには、寄附金が「特定寄附金」に該当していること、また、学校の入学に関連するものや特別の利益を受けるものに該当しないことを確認し、寄附金の受領証などの必要な書類を必ず保管しておくことが重要です。これらの知識を活用し、賢く社会貢献と節税を進めましょう。

私もふるさと納税急がなきゃ!

そもそも所得税や住民税をそれほど払っていない場合には、当然ながら控除できる金額も少ないため、返礼品目当てに寄附をし過ぎてしまうと寄附限度額を超えてしまっている場合もあります。寄附前に必ずシミュレーションしましょう!
相談できる税理士がいない場合には、お気軽にこちらまでお問い合わせください。

また、法人が寄附した場合の税務上の取り扱いについては、こちらの記事をご覧ください。
【町田市の税理士が解説】寄附金の損金不算入制度の基礎知識について

参照:国税庁ホームページ寄附金を支出したとき

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この記事を書いた人

町田市にあるコムレイド税理士事務所の代表税理士の新屋賢人です。大学卒業後、中堅税理士法人で5年間、業界最大手である国際四大会計事務所(BIG4)のEY税理士法人で8年間、計13年間の実務経験があります。
30代ですが、すでに法人・個人問わず幅広い業務を経験しております。BIG4という業界最大手で得た経験・知識を生まれ育った街に還元したいという強い思いから独立を決めました。

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