ミミレイドンボス、おはようございます!
今朝のテーマはなんでしょうか?



今朝は留保金課税について、整理しようと思います。



留保金課税。。。先日のブログで、法人税法を根拠とした中小法人等に該当すれば、留保金課税の適用から除外されると聞いていましたが、確かに詳しい内容は知りませんね。
【町田市の税理士が解説】法人税法上の「中小法人等」と租税特別措置法上の「中小企業者」の違いと優遇措置の整理



企業の経営者の皆様も「内部留保に税金がかかる」という話を聞いたことはあると思います。その税金が、「留保金課税(りゅうほきんかぜい)」です。
この制度は、多くの経営者にとって複雑で縁遠いものに感じられるかもしれませんが、会社の規模が大きくなる際や、資本政策を検討する際には避けて通れない非常に重要な論点です。
この制度の仕組み、対象となる会社の条件などの基礎知識について、わかりやすく解説していきます。
1.はじめに:留保金課税とは何か
(1).留保金課税の概要と目的
留保金課税とは、特定同族会社が、事業年度において一定限度額を超えて利益を社内に留保した場合に、通常の法人税に加えて特別に課される税金(特別税率)のことです。
この課税の目的は、租税回避を防止し、課税の公平性を図ることにあります。
そもそも会社が生み出した利益は、本来であれば株主や役員、従業員に分配されるべきものという考え方があります。
(2).なぜこの制度が存在するのか(利益の社外流出促進 vs.内部留保の抑制)
この制度が生まれた背景には、個人と法人の税率差があります。
個人にかかる所得税は、所得に応じて税率が高くなる超過累進税率が採用されており、住民税と合わせると最大で55%程度の税負担となる可能性があります。
一方、法人の実効税率は、中小法人の場合で約25%程度、全体で見ても30%~35%程度であり、個人の最高税率よりも低い水準にあります。
ここで問題となるのが、同族会社(オーナー会社)です。
オーナー経営者が配当金や役員報酬として利益を受け取ると、個人として高い所得税を払わなければなりません。そこで、配当をせずに利益を会社にプールし続けた方が、全体の手取りが多くなるという「節税策」が考えられます。
留保金課税は、このような個人株主の所得税課税を不当に回避しようとする行為を牽制するペナルティ(懲罰税)として機能します。
(3).中小企業にとっての関心ポイント
多くの中小企業は家族経営(同族会社)被支配会社の要件を満たすケースが少なくありません。
しかし、ほとんどの中小企業経営者は、この留保金課税を気にする必要はありません。
その理由は、現行制度において、資本金の額が1億円以下の法人は、原則として特定同族会社に該当せず、留保金課税の適用対象外とされているからです。
日本国内の会社のうち、資本金が1億円を超える法人は少数であるため、結果的に留保金課税の対象となる法人は限定的です。
ただし、後述する例外規定には厳重な注意が必要です。
2.制度の仕組みと対象法人
留保金課税の適用を受けるためには、「特定同族会社」であること、そして「留保金額が留保控除額を超えること」という二つの要件を満たす必要があります。
(1).留保金課税の対象となる法人
留保金課税の対象は「特定同族会社」です。特定同族会社と判定されるには、以下の2つの要件をどちらも満たす必要があります。
- 被支配会社であること
上位1グループの株主等(特定の一人の株主と、その親族などの特殊な関係者)が、発行済株式等(または議決権)の50%超を保有していること。 - 資本金の額が1億円を超える会社であること。
特定同族会社は、同族会社(上位3グループで50%超保有)の中でも、さらに株主の集中度が高い会社を指します。
(2).適用除外の条件
先述の通り、資本金の額または出資金の額が1億円以下の普通法人は、原則として留保金課税の対象外となります。この「資本金1億円の壁」は、中小企業にとって非常に大きな優遇措置となっています。
しかし、この優遇措置には重要な例外があります。
資本金の額が1億円以下であっても、以下に該当する法人は、特定同族会社となり、留保金課税の対象となります。
• 資本金の額が5億円以上の法人(大法人)100%子法人等(完全支配関係にある普通法人)。



まさに、先日教えてもらった、中小法人等の判定と同じですね。
気になる方は、こちらの記事をご覧ください。
【町田市の税理士が解説】法人税法上の「中小法人等」と租税特別措置法上の「中小企業者」の違いと優遇措置の整理
(3).判定のタイミングと課税の流れ
特定同族会社に該当するかどうかの判定は、原則として各事業年度終了の時(決算期末)の状況に基づいて行われます。
判定の手順は以下の通りです。
- 特定同族会社であるか判定する(上記2つの要件チェック)。
- 留保金額を計算する。
- 留保控除額を計算する。
- 留保金額が留保控除額を超える場合に、その超える部分(課税留保金額)に特別税率を乗じて課税される。
この計算プロセスは、法人税申告書の別表3(1)「特定同族会社の留保金額に対する税額の計算に関する明細書」で行われます。
参照:法人税申告書の別表3(1)「特定同族会社の留保金額に対する税額の計算に関する明細書」
参照:法人税申告書の別表3(1)「特定同族会社の留保金額に対する税額の計算に関する明細書」記載の仕方
参照:法人税申告書の別表3(1)「特定同族会社の留保金額に対する税額の計算に関する明細書」解説
3.留保金額の計算方法
留保金課税の計算は、通常の法人税計算とは異なり、独特のステップを踏みます。ここでは、計算の核心部分を解説します。
(1).留保金額の定義(利益剰余金ベース)
会計上、「内部留保」と聞くと、会社が設立されてから現在までに稼いだ税引後利益の累積額、つまり貸借対照表(BS)の「利益剰余金」を指します(ストックの概念)。
しかし、留保金課税の計算で用いられる「留保金額」は、その事業年度の利益のうち、社外に流出せず社内に留保された金額を意味します(フローの概念)。
具体的な計算の基礎となる当期留保金額は、以下のように算出されます。
当期留保金額=その事業年度の所得(留保所得金額)−法人税等−社外に流出した金額(配当金など)



留保金額は、ざっくりと表現すると貯金できそうなお金のことを言います。したがって、留保金額は、会社の課税所得に、お金を受けても益金不算入となる課税外収入を加えたものから、お金を払っても損金不算入となる社外流出の金額と法人税等を除いたものとなります。
(2).控除項目
留保金課税が課されるのは、留保金額の全額ではなく、「留保控除額」を超過した部分(課税留保金額)に対してのみです。留保控除額は、会社が事業のために最低限残しておくべきだと認められる金額です。
課税留保金額 =当期留保金額−留保控除額
この留保控除額は、次の3つの基準額のうち、最も大きい金額が適用されます。
| 基準 | 計算方法 |
| 定額基準額 | 年2,000万円(事業年度が1年未満の場合は月割り) |
| 所得基準額 | 所得等の金額の40% |
| 積立金基準額 | 期末資本金の25%相当額 - 期末利益積立金額 |



留保金額の計算上、配当金の支払いは「社外流出額」として所得から差し引かれるため、留保金額を直接的に減少させる効果があります。また、設備投資や役員報酬は、法人の所得自体を減らす(経費計上)ことで、結果的に留保金額(所得をベースに計算されるため)を間接的に減らす効果があります。ただし、役員報酬は個人の所得税に影響するため、総合的な税負担の検討が必要です。
(3).税率と課税額の算出例
留保金課税の税率は、課税留保金額に応じて段階的に上昇する超過累進税率が適用されます。
| 課税留保金額(年額) | 特別税率 |
| 年3,000万円以下の金額 | 10% |
| 年3,000万円を超え、年1億円以下の金額 | 15% |
| 年1億円を超える金額 | 20% |
【算出例】
もし、留保控除額を差し引いた課税留保金額が1億5,000万円であった場合、追加で課税される留保金税額は以下の通り計算されます。
- 年3,000万円以下の金額
3,000万円 × 10% = 300万円 - 年3,000万円を超え、年1億円以下の金額
(1億円 – 3,000万円)= 7,000万円 × 15% = 1,050万円 - 年1億円を超える金額
(1億5,000万円 – 1億円)= 5,000万円 × 20% = 1,000万円
合計: 300万円 + 1,050万円 + 1,000万円 = 2,350万円
この2,350万円が、通常の法人税に加えて、特別税額として課税されることになります。



非常に細かい点ですが、例えば、事業年度が6カ月の場合、この「年3,000万円以下の金額」というのは、月割りにより、「年1,500万円以下の金額」となります。
4.実務上の注意点と誤解されやすいポイント
留保金課税は、適用対象法人が少ないがゆえに、「まさか自分たちには関係ないだろう」という誤解や、思わぬ事故が起きやすい分野です。
(1).「留保金課税=悪」ではない
「過剰な留保にはペナルティが課される」と聞くと、利益を社内に貯めること自体が悪のように感じられるかもしれません。しかし、これは大きな誤解です。
適正な内部留保(会計上の利益剰余金)は、不測の事態への備えや、将来の事業拡大のための原資として、会社の安定経営と財務基盤の強化に不可欠です。内部留保が多いほど、その企業の財務基盤は強いと判断されます。
留保金課税は、「不当な租税回避目的の留保」を対象としており、正当な留保は認められやすくなっています。
(2).節税目的の配当や役員報酬のリスク
留保金額を減らすための対策として、配当や役員報酬の増額が挙げられます。
- 配当
会社の留保金は減りますが、株主(オーナー)個人の所得税・住民税の負担が増えます。総合的な税負担をシミュレーションし、最適なバランスを検討しなければ、かえって税金が高くなるリスクがあります。 - 役員報酬・退職金
役員報酬は会社の損金となりますが、過度な役員報酬や退職金を設定した場合、税務調査において利益操作と見なされ、否認されるリスクがあります。
特に特定同族会社は、税務調査において過度な役員報酬や役員貸付金・仮払金がないか、厳しくチェックされる傾向があります。
(3).税務調査で指摘されやすいケース
留保金課税が適用されるケースは限られるため、税務上の「判定ミス」が原因で追徴課税となる事例が頻繁に報告されています。
最も多い事故パターンは、「特定同族会社に該当することを失念した事例」です。
- 大法人子会社の見落とし
資本金1億円以下の会社であっても、親会社の資本金が5億円以上で、その100%子会社である場合、特定同族会社に該当します。M&Aなどで子会社となった際、顧問税理士が親会社の株主構成や資本金まで把握しきれず、対象外だと早合点してしまい、税務調査で指摘を受ける事例があります。 - 外国親会社等による被支配判定の見落とし
外国の親会社が被支配会社(上位1グループが50%超保有)であることを見落とし、留保金課税を適用せず、修正申告となった事例も発生しています。 - 増資による判定誤り
資本金1億円超への増資のシミュレーションにおいて、税理士が増資による他の税制メリットだけを見て、留保金課税の適用を考慮しなかったため、結果的に増資で不利になった事例があります。
このような事故を避けるには、正確な株主構成の管理と、複雑な判定基準に対する専門的な知見が不可欠です。
5.留保金課税と経営判断のバランス
留保金課税を理解することは、税金のためだけでなく、会社の未来をデザインする経営戦略を構築する上で役立ちます。
(1).内部留保の必要性(設備投資・将来の備え)
内部留保は、単に税金の対象となる「溜め込み金」ではありません。それは、会社の「体力」や「将来への軍資金」そのものです。
経営者は、以下の点を意識し、明確な目的を持って利益を社内に残す必要があります。
- 不測の事態への備え
景気後退や災害など、万一の事態に耐えうる手元資金(運転資金)の確保。 - 成長のための投資
新しい機械の導入、工場の増築、研究開発費、人材育成費など、将来の事業拡大のための積極的な投資。 - 対外的な信用
目的が明確な内部留保は、金融機関からの評価も高まります。
例えば、生産性向上に繋がるITツールや機械を導入すれば、「中小企業経営強化税制」などの優遇税制を活用しつつ、課税対象となる利益を圧縮できます。また、従業員の給与を増やすことは、「賃上げ促進税制」の税額控除を受けられる可能性があり、人材への投資と節税を両立できます。
(2).配当政策との整合性
配当政策は、株主(オーナー)の個人的な税負担だけでなく、会社の資金戦略全体と整合していなければなりません。
配当を増やすことは、会社の留保金を減らす有効な手段の一つですが、それが過度になれば、事業継続のための資金繰りが悪化するリスクを負います。
経営者は、「会社が生み出した利益を、未来への投資に使うのか、人材に還元するのか、それとも配当として社外に分配するのか」という本質的な意思決定を行う必要があります。
(3).経営者が意識すべきポイント
大切なのは、税制の動向に一喜一憂するのではなく、自社の経営理念に基づいた一貫性のある財務戦略を持つことです。
留保金課税の対象とならない「資本金1億円以下」を維持するのか、あえて増資して大法人となり、社会的信用や他の税制とのバランスを取るのか、常に複数の視点から最適な選択肢を選び続ける姿勢が求められます。
6.まとめ
(1).制度の正しい理解が経営判断を支える
特定同族会社に対する留保金課税は、オーナー経営者が個人的な所得税を不当に回避しようとする行為を是正するために存在する、非常に特殊な税制です。
その判定基準、特に「資本金1億円を超えるか否か」と「大法人子会社に該当しないか」の二点は、中小企業経営者にとって絶対に押さえておくべき最重要ポイントです。
この制度の正しい理解こそが、無駄な税金のリスクを回避し、会社の健全な成長を支える土台となります。
(2).今後の税制改正への備え
現在、特定の同族会社だけでなく、より広範な法人を対象とした「内部留保への課税」に関する議論が注目されています。
現行の留保金課税は「フロー(利益)に対する課税」ですが、将来的に制度が強化されたり、「ストック(利益剰余金)に対する新税」が導入される可能性もゼロではありません。
経営者として、常に最新の税制改正情報を確認し、将来にわたって会社の資金をどう守り、有効活用していくかという財務戦略を専門家と共に練り上げていくことが、10年後、20年後の成功を決定づける鍵となるでしょう。



留保金課税の判定基準は複雑であり、特に株主が法人である場合や、組織再編があった場合など、株主構成の正確な把握には専門的な知識が不可欠です。
過去の税理士賠償事例を見ても、この判定ミスが大きな事故につながっています。
自社の株主構成や資本政策を検討する際は、顧問税理士と密に連携し、役員報酬や配当政策も含めた総合的な税額シミュレーションを行うことを強く推奨します。
相談できる税理士がいない場合には、お気軽にこちらまでお問い合わせください。










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