ミミレイドンボスおはようございます!
今朝のテーマは何でしょうか?



今朝は確定申告に向けた業種別事業所得の計算の注意点第五弾と致しまして、歯科医業について整理して行きたいと思います。



コンビニエンスストアよりも多いといわれている歯医者さんですね!町田市にも多いですもんね!



「歯科医師が独立して直面する大きな壁、それが個人事業主としての『確定申告』です。勤務医時代とは異なり、収入の計上ひとつとっても、入金日ではなく診療完了日に基づく『発生主義』という特殊なルールに従わなければなりません。
さらに、消費税がかかる『自由診療』と、非課税の『保険診療』の区分、家族への給与(専従者給与)の妥当性、複雑な医療機器の減価償却など、歯科ならではの税務は一般的な事業主の何倍も複雑です。
『税理士に任せきりだから大丈夫』と思っていませんか? 経営者である先生自身がルールを把握しておくことは、キャッシュフローを安定させ、健全なクリニック経営を続けるための第一歩です。今回は、歯科医業の確定申告における“落とし穴”と“時短のコツ”を、ポイントを絞って整理しました。」
【歯科医業編】
1.事業所得とは?(おさらい)
事業所得とは、農業、漁業、商工業、自由業など、その事業から生じた所得を指します。医師や歯科医師が独立して診療所やクリニックを開業した場合、その収入は個人事業主としての「事業所得」に分類されます。
事業所得の計算方法とその概要について、以下の通り説明します。
(1). 事業所得の基本計算式
事業所得の金額は、一般的に以下の式で算出されます。
• 事業所得 = 総収入金額 - 必要経費
所得とは収入の全額ではなく、売上から経費を差し引いた「利益」に相当する部分を指します。
(2). 総収入金額の内訳(医業の場合)
医療機関の主な収入は、大きく以下の3つに分けられます。
- 保険診療収入
社会保険や国民健康保険などの診療報酬。 - 自由診療収入
インプラント、矯正、美容整形、人間ドックなどの保険外診療。 - その他の収入(雑収入)
診断書手数料、窓口での物品販売(歯ブラシなど)、自動販売機の手数料など。
(3). 必要経費の算定
事業を営むために直接要した費用が経費として認められます。
- 主な経費
従業員の給与、薬品・材料費、家賃、水道光熱費、医療機器の減価償却費、リース料、医師会費など。 - 家族への給与
青色申告者の場合、一定の届出を行うことで、生計を一にする家族への給与を「専従者給与」として経費に算入できます。
(4). 課税される税金
確定した事業所得に対しては、主に以下の税金が課されます。
- 所得税
国に納める税金で、所得が高いほど税率が上がる累進課税です。 - 住民税
お住まいの市区町村および都道府県に納める税金です。 - 個人事業税
都道府県に納める税金で、年間所得が290万円を超えてくると発生します。なお、歯科医業などは5%の税率が適用されますが、社会保険診療報酬に係る所得は非課税となります。



青色申告の承認を受けていれば、さらに「青色申告特別控除(最大65万円)」を所得から差し引くことができます。ただし、前述の概算経費の特例を適用した場合、保険診療分の所得からはこの控除を受けることはできません。自由診療収入などの実額経費で計算した所得からのみ控除が可能となります(その所得額が65万円未満であれば、その金額が限度となります)。



事業所得については、こちらの記事で解説しておりますので、宜しければご覧ください。
【町田市の税理士が解説】個人の事業所得の基礎知識について
2.歯科医業の収入
歯科医業を営む際の収入(医業収益)は、大きく分けて「保険診療収入」「自由診療収入」「雑収入」の3つのカテゴリーに分類されます。それぞれの具体的な内容は以下の通りです。
(1). 保険診療収入
歯科医業における保険診療収入(社会保険診療報酬)は、健康保険が適用される診療によって得られる収益を指し、確定申告において最も基幹となる収入です。その仕組みや計上方法、注意点について詳細に解説します。
1. 保険診療収入の構成
保険診療収入は、以下の2つの合計額で構成されます。
- 窓口負担金
患者が受付で支払う自己負担分(原則1割〜3割)。 - 保険給付分
審査支払機関(支払基金や国保連合会)にレセプト(診療報酬明細書)で請求し、後日支払われる分(7割〜9割)。
計算式としては、「総点数 × 10円」が理論上の保険診療収入となります。
2. 消費税の扱い
保険診療による収入は、社会政策的な配慮から消費税が「非課税」とされています。 ただし、医療機関が医薬品や医療機器を購入する際には消費税を支払う必要があり、患者に転嫁できないこの消費税分は「損税」として医療機関の負担となります。これに対応するため、一部の消費税分は診療報酬本体や薬価等に補填される形で調整されています。
3. 収入計上の時期(発生主義)
確定申告において、収入は現金が入った時ではなく、「診療行為(役務の提供)が完了した時点」発生主義が原則です。
- 入金のズレ
保険請求分は、診療月の2ヶ月後に入金されます。例えば、12月に行った診療の報酬は翌年2月に入金されますが、これは「12月(本年)の収入」として計上しなければなりません。 - 未収金の扱い
患者が窓口負担金を支払わなかった場合(未収金)でも、診療が完了していれば、その金額を本年の収入に含める必要があります。
4. 確定申告・税務調査での留意点
保険診療収入の計上には、特有の注意点があります。
- 生活保護収入の計上漏れ
支払基金から送られる年間の「支払調書」には、生活保護法に基づく公費負担医療の点数が含まれていない場合があります。これらは月々の「当座口振込通知書」等を確認し、合算して計上する必要があります。 - 保険点数と収入金額の照合
税務調査では、「総点数 × 10円」の金額と、実際に計上された「窓口収入 + 保険請求分」の合計が一致するかチェックされます。大きな乖離がある場合、窓口収入の計上漏れを疑われる原因となります。 - 従業員への診療(診療値引)
スタッフに対して窓口負担金を受け取らずに診療した場合でも、税務上は窓口負担相当額を収入として認識し、福利厚生費や接待交際費として処理する必要があります。



仕訳のイメージとしては、福利厚生費●●円/収入(売上)●●円という感じですね。



ただ、従業員に対して多額の診療を行った場合や、毎回特定の従業員についてのみ診療を行っている場合には、その従業員に対する給与とみなされるおそれがあります。給与とみなされる場合、その従業員から源泉徴収する必要もありますので、ご注意ください。
給与とみなされないためには、「常識的な範囲での診療とする」、「全ての従業員が一律に自家診療を受けられる状態にしておく」ことが重要です。
5. 社会保険診療報酬の所得計算の特例(措法26条)
医師および歯科医師には、事務負担の軽減と経営の安定を目的として、実際の経費の代わりに一定の割合で経費を計算できる「社会保険診療報酬の所得計算の特例(租税特別措置法第26条)」が認められています。
• 適用条件
- その年の社会保険診療報酬が5,000万円以下であること。
- 自由診療等を含めた医業の総収入金額が7,000万円以下であること。
• 計算方法
社会保険診療報酬の額に応じて、57%〜72%の経費率(+加算額)を乗じて概算経費を算出します。
• 選択制
実際の経費(実額経費)と概算経費を比較し、金額が大きい方(有利な方)を選択して確定申告を行うことができます。ただし、この特例が適用されるのは「保険診療分」のみであり、自由診療に係る経費は常に実額で計算する必要があります。



保険診療収入を正確に把握し、計上時期を誤らないようにすることは、不適切な申告による延滞税等のペナルティを防ぐだけでなく、上記のような特例制度を正しく活用するためにも不可欠です。
(2). 自由診療収入(自費診療)
歯科医業における自由診療収入(自費診療)は、健康保険が適用されない診療から得られる収益であり、保険診療とは異なる会計・税務上の取扱いが求められます。
1. 自由診療収入の範囲
自由診療収入には、患者が全額自己負担する診療のほか、特定の制度に基づく診療が含まれます。
- 主な診療項目
インプラント、歯列矯正、ホワイトニング、審美歯科、金属床義歯、人間ドック、予防接種、医療相談料などが該当します。 - 特殊な診療
労災保険診療、交通事故(自賠責保険)診療、公害医療、正常分娩による出産なども自由診療の枠組みで扱われます。 - 付随する収入
窓口での歯ブラシやフロス等の物品販売収入、健康食品の販売、診断書の作成手数料なども、自由診療と同様に扱われる場合があります。
2. 収入の計上時期(発生主義)
自由診療の収益も、現金を受け取った日ではなく、原則として「診療行為(役務の提供)が完了した時点」で計上します(発生主義)。
- クレジットカード・ローン
クレジットカード決済やデンタルローンを利用した場合、実際の入金が数週間後であっても、治療が完了して請求した時点で売上を計上しなければなりません。 - 長期治療(歯列矯正等)
数年にわたる治療の場合、契約実態に応じて「装置の装着時」や「役務の提供度合い(期間の経過)」に合わせて分割して計上することがあります。
3. 消費税の取扱い
自由診療収入は、社会保険診療とは異なり、原則として消費税の課税対象となります。
- 納税義務の判定
2年前(基準期間)の「課税売上高(自由診療収入や物販収入など)」が1,000万円を超えている場合、消費税の納税義務者となります。



実務上、急成長している医院では2年前が1,000万円以下でも、前年前半で超えて課税事業者になるケースがあります。納税義務の判定については、こちらの記事で解説しておりますので、宜しければご覧ください。
【町田市の税理士が解説】消費税の免税事業者の判定基準について
- 非課税となる例外
自由診療のうち、労災保険診療や自賠責保険診療などは、消費税法上「非課税」として扱われます。
4. 必要経費の算定と按分
「社会保険診療報酬の概算経費の特例(措法26条)」を適用する場合でも、自由診療に係る経費は常に「実額」で計算する必要があります。
- 共通経費の按分
家賃や人件費など、保険診療と自由診療の両方に共通して要する費用は、「自由診療割合」(収入金額や診療実日数の比率に調整率を乗じたもの)を用いて合理的に按分し、それぞれの経費として算出します。
5. 税務調査での重要チェックポイント
自由診療は保険点数による管理ができないため、税務調査では特に厳格に確認されます。
- 記録の照合
予約表(アポイント帳)や日計表、カルテを照らし合わせ、予約があるのに売上が計上されていないケースがないか調査されます。 - 家族・スタッフへの診療
親族や従業員に無償で自費治療を行った場合、収入の計上漏れとして指摘されるリスクがあります。 - 窓口未収金
年末に治療が完了しているが、支払が翌年になる分割払いや未払金についても、当年度の収入に含めているか確認されます。
(3). その他の収入(雑収入)
医療行為そのものではなく、それに付随して発生する収入です。
- 物品販売収入
窓口での歯ブラシ、デンタルフロス、歯磨き粉、健康食品、化粧品などの販売代金です。 - 撤去冠(貴金属)の売却収入
治療の際に患者の歯から外した金歯や銀歯を金属業者に売却して得られる収入です。これは計上漏れが発生しやすく、税務調査でも確認されやすい項目です。 - 手数料・事務代行料
診断書の作成手数料、公費負担医療の事務手数料、介護保険法に基づく主治医意見書の作成料、認定調査料などです。 - その他
院内に設置した自動販売機の支払手数料、患者紹介料、医薬品の仕入れリベート、原稿料や講演料などが含まれます。
3.歯科医業の売上原価(仕入)と棚卸
歯科医業における売上原価(仕入)と棚卸の処理は、税務調査でも非常に重要視されるポイントです。歯科特有の商習慣に基づいた正確な会計処理が求められます。
(1). 歯科医業における売上原価の内訳
売上原価(医業材料費)には、主に以下のものが含まれます。
- 薬品・医科材料費
診療で使用する薬剤、インプラント体、充填剤、衛生用品など。 - 外注技工料
歯科技工所に依頼する入れ歯、被せ物、矯正装置などの製作費用。
(2). 会計・税務上の基本原則(収益費用対応の原則)
所得税の計算において、必要経費として認められるのは、その年の「総収入金額に対応する売上原価」です。
- 計算式
その年の原価 = 期首棚卸高 + 当期仕入高 - 期末棚卸高 - 発生主義の徹底
実際に治療に使用した分のみがその年の経費となり、未使用分は「棚卸資産(在庫)」として資産計上し、経費から除外する必要があります。
(3). 棚卸における実務上の重要ポイント
歯科医院において特に間違いやすく、税務調査で指摘されやすいのが以下の3点です。
① 未セットの技工物(仕掛品)の計上漏れ
歯科特有の重要なポイントです。歯科技工所から納品されているが、まだ患者の口にセットしていない技工物(入れ歯や被せ物)に係る技工料は、その年の経費にはなりません。
- セットして初めて収入が発生するため、セット前のものは「在庫(仕掛品)」として計上し、翌年以降の経費とする必要があります。
- 年末付近に納品された技工物のリストと、カルテのセット日を照合する作業が実務上不可欠です。
② 薬品・材料の棚卸
年末時点で使い切っていない薬品や歯科用材料もすべて棚卸の対象です。
- 税務調査の視点
節税目的で決算直前に多額の薬品等を仕入れても、使用していなければ棚卸資産として計上されているか厳しくチェックされます。
棚卸資産として適切に処理されていれば、直前の仕入れ自体は問題ありません。



実務上、厳密には「未開封のもの」を棚卸資産とし、「開封済みで使用中のもの(診療室に出ているボトルやパック)」は経費処理して差し支えないというのが一般的な通例(所得税基本通達47-15の解釈)です。
1. 所得税基本通達47-15解説
この通達では、取得価額が10万円未満または使用可能期間が1年未満の消耗品などを「準棚卸資産」と定義しています。
本来、棚卸資産は「使用した分」のみを経費とし、「未使用分」は資産として計上するのが原則です。しかし、この通達の解説では、実務上の煩雑さを考慮し、以下のような便宜的な取り扱いを認めています。
- 未使用の数量による推定
「準棚卸資産について、便宜上、期末に残存する未使用の数量を確認することによってその年に使用したものを推定し、必要経費の算入額を計算しているときは、これを認める」と明記されています。
2. 「未開封」と「開封済み」の区別の論理
この「未使用の数量を確認する」というルールが、実務において「未開封か否か」という基準につながっています。
- 未開封(未使用)
倉庫や棚に保管されており、まだ業務に投入されていない「未使用」の状態であるため、棚卸資産としてカウントし、経費から除外する必要があります。 - 開封済み(使用中)
診療室に出され、ボトルやパックが開封されたものは、税務上の「業務の用に供された(=使用を開始した)」状態とみなされます。これらは、その年に消費されたものと推定して一括で経費(消耗品費等)に算入することが認められています。
3. 認められる理由:実務上の困難性
通達の解説では、「種類等を同じくする準棚卸資産が多量にある場合には、実際問題として個別にどれをどれだけ事業の用に供したかについては、個別管理が行われていない限り、把握することは困難である」と、実務の現状を肯定しています。
そのため、厳密に「ボトルの残量をミリリットル単位で計る」ようなことは求めず、「パッケージから出して現場に配備した(開封した)=使用済み」と判断する簡便法が通例として認められているのです。
③ 預け在庫と貴金属の管理
- 預け在庫
自院の在庫だけでなく、歯科技工所に預けている貴金属(金・プラチナ等)がないかどうかも確認されます。 - 撤去冠
患者から外した古い金冠などは、売却して「雑収入」に計上するのが原則ですが、売却前のストック分についても適切に把握しておくことが推奨されます。
(4). 税務調査での指摘を避けるための実務対策
- 証憑の保存
技工所からの請求書や領収書は必ず保管し、カルテの内容(セット日)と整合性が取れるようにしておきます。 - 在庫管理の可視化
薬品や材料の購入頻度や、高額なインプラント体の在庫数が、実際の診療実績と乖離していないか定期的にセルフチェックを行うことが有効です。 - 概算経費の特例との関係
社会保険診療報酬が5,000万円以下(総収入7,000万円以下)で「概算経費の特例(措法26条)」を適用する場合、保険診療分の経費は実額計算(棚卸を含む)を行わず、概算率で計算できます。ただし、自由診療分については常に実額での棚卸計算が必要となるため、材料や技工料を保険・自費で区分して管理する実務が求められます。
4.歯科医業の経費
歯科医業における経費は、原則として「医業収入を得るために直接要した費用」および「業務を遂行する上で生じた販売費や一般管理費」を指します。
具体的にどのようなものが経費になるか、主な項目と注意点を詳しく解説します。
(1). 主な経費の項目
歯科医院で発生する経費は、大きく以下のカテゴリーに分けられます。
• 医業材料費・売上原価(上記3で解説)
- 薬品、歯科用材料(インプラント体、充填剤など)、外注技工料(入れ歯や被せ物の製作費)などが該当します。
- 年末に使い切っていない在庫(薬品・材料・未セットの技工物)は「棚卸資産」となり、その年の経費には含められません。
• 人件費
- 歯科衛生士、歯科助手、事務員などの給与や賞与、法定福利費(社会保険料の雇用主負担分)、福利厚生費(スタッフの飲食代や忘年会費など)が含まれます。
- 一定の届出を行うことで、生計を一にする配偶者や親族(15歳以上)への給料を経費にできます(青色事業専従者給与)。



青色事業専従者給与については、こちらの記事で解説しておりますので、宜しければご覧ください。
【町田市の税理士が解説】家族に給与を出すなら必見!青色事業専従者給与の基礎知識について
• 施設・設備関連費
- 診療所の家賃、駐車場代、水道光熱費、電話料金、内装の修繕費、火災保険料などです。
- 自宅兼医院の場合は、床面積や使用時間など合理的な基準で「事業用」と「私用」を按分して計上します。



家事按分については、こちらの記事で解説しておりますので、宜しければご覧ください。
【町田市の税理士が解説】個人事業主(フリーランス)の経費の家事按分について
• 減価償却費
- 歯科用ユニット、パノラマX線装置、PC、車両など、10万円以上の高額な備品は、法律で定められた耐用年数(例:歯科用ユニットは7年)に応じて分割して経費計上します。
• その他管理費
- 歯科医師会などの諸会費、学会参加費、書籍代、広告宣伝費(看板やパンフレット)、患者への贈答費、借入金の利息などが含まれます。
ただし、歯科医師連盟などの「政治連盟会費」は経費になりません。
(2). 医師・歯科医師特有の特例(概算経費の特例)
収入の章でも少し触れたように、小規模な診療所(社会保険診療報酬が5,000万円以下、かつ総収入金額が7,000万円以下)の場合、実際の経費(実額経費)に代えて、収入額に応じた一定割合を「概算経費」として計上できる特例(租税特別措置法第26条)があります。
- メリット
実情に関わらず57%〜72%の高い経費率を適用できるため、実額経費が少ない場合に大幅な節税になります。 - 注意点
この特例は「保険診療分」の経費のみが対象です。自由診療に係る経費は常に「実額」で計算し、共通経費(家賃や人件費など)を按分する必要があります。
(3). 節税に役立つその他の資産処理
- 少額減価償却資産の特例
青色申告者であれば、30万円未満の備品について、年間合計300万円まで取得した年に一括で経費にできます。 - 医療用機器等の特別償却
500万円以上の高額な医療機器などを取得した場合、通常の減価償却に加えて、初年度に一定額(例:取得価額の12〜14%)を上乗せして償却できる制度があります。
(4). 経費として認められないもの
事業に関係のないプライベートな支出は一切経費になりません。
- 仕事に関係のない友人とのゴルフ代や旅行代。
- 大学の同窓会費や、自身の大学院の学費。
- 借入金の「元本」返済分(利息のみ経費となります)。



税務調査では、特に「接待交際費」や「家族への給与」が業務上本当に必要だったか、勤務実態があるかどうかが厳格にチェックされます。そのため、領収書に相手先や目的をメモし、家族の勤務実態を示すタイムカードなどの資料を残しておくことが重要です。
5.確定申告の際の歯科医業ならではの注意点
歯科医業の確定申告には、一般的な個人事業主とは異なる特有の特例制度や収入・経費の計上ルールがあります。既に解説している論点もありますが、主な注意点と、歯科医業ならではの特殊な添付書類について解説します。
(1). 歯科医業特有の添付書類
歯科医師が確定申告を行う際、通常の「青色申告決算書」や「収支内訳書」に加えて必要となる、あるいは添付が推奨される書類は以下の通りです。
- 所得税青色申告決算書(一般用)付表《医師及び歯科医師用》
青色申告者が、後述する「概算経費の特例」を適用する場合や、収入の内訳(社会保険診療報酬、自由診療収入、雑収入)を詳細に報告するために必要です。白色申告者の場合は「収支内訳書(一般用)付表《医師及び歯科医師用》」を使用します。 - 社会保険診療報酬の支払調書
社会保険診療報酬支払基金や国民健康保険団体連合会から送られてくる書類で、正確な収入金額や源泉徴収税額を確認するために不可欠です。 - 青色事業専従者給与に関する届出書
生計を一にする家族(歯科衛生士の配偶者など)に給与を支払う場合に、事前に提出しておく必要があります。
(2). 確定申告における重要な注意点
① 収入計上のタイミング(発生主義)
歯科医業の収入は、現金を受け取った時ではなく、「診療行為(役務の提供)が完了した時点」で計上します。
- 保険診療
12月に行った診療の報酬が実際に入金されるのは翌年2月頃ですが、会計上は12月の収入として計上します。 - 未収金
患者が窓口負担金を支払わなかった場合や、後日支払うことになった場合でも、診療が完了していればその年の収入に含めなければなりません。
② 歯科特有の収入源
計上漏れが発生しやすく、税務調査でも厳格にチェックされる項目です。
- 撤去冠(貴金属)の売却収入
患者の歯から外した金冠などを金属業者に売却して得た収入は、原則として「雑収入」として計上する必要があります。 - 窓口での物品販売
歯ブラシ、デンタルフロス、歯磨き粉などの販売収入も事業所得(雑収入)に含まれます。 - 歯列矯正・インプラント
治療が長期にわたる場合、契約実態や役務の提供度合い(装置の装着時など)に応じて適切に収入を按分計上する必要があります。
③ 必要経費の注意点
- 在庫・仕掛品の計上
年末時点で使い切っていない薬品や材料、および技工所から納品されたがまだ患者にセットしていない技工物(入れ歯、被せ物)は、その年の経費にはならず「棚卸資産(在庫)」として計上します。 - 家族への給与(専従者給与)
歯科衛生士などの資格を持つ家族に支払う給与は、近隣の類似同業者の平均額と比較して著しく高額な場合は、必要経費として認められない(否認される)リスクがあります。
(3). 社会保険診療報酬の所得計算の特例(措置法第26条)
歯科医師が最も留意すべき特例です。小規模な医院の事務負担軽減を目的としています。
• 適用条件
- 社会保険診療報酬が年間5,000万円以下であること。
- 自由診療等を含めた医業の総収入金額が年間7,000万円以下であること。
• 内容
実際の経費(実額)ではなく、収入金額に応じた一定の割合(57%〜72%)で計算した「概算経費」を経費として計上できます。
• 注意点
実際の経費と概算経費を比較し、有利な方を選択できます。
- 概算経費を適用した場合、その社会保険診療報酬に係る所得からは、青色申告特別控除(最大65万円)を受けることができません(自由診療分の所得からは控除可能です)。
- 確定申告書の第二表にある「特例適用条文」欄に「措法26」と記載し、前述の「付表」を添付しなければ適用されません。
(4). 消費税に関する注意
- 課税の有無
保険診療は非課税ですが、自由診療(インプラント、矯正等)や物品販売は課税対象です。 - 納税義務
2年前の「課税売上高」が1,000万円を超えている場合、消費税の納税義務が発生します。自由診療が多い医院は、期限内に「消費税課税事業者届出書」などの提出が必要になるため注意が必要です。
6.歯科医業が税務調査で指摘されるポイント
歯科医業において税務調査で指摘されやすいポイントは、収入の計上漏れや計上時期のミス、棚卸資産(在庫)の管理、親族への給与の妥当性などが中心となります。前章の内容と重複する論点ですが、改めてチェックしていきましょう。
(1). 収入に関する指摘ポイント
歯科医院の収入は「保険診療」「自由診療」「雑収入」に分かれますが、特に以下の点が厳格にチェックされます。
- 保険点数と収入金額の乖離
審査支払機関の支払通知書にある「合計点数×10円」の金額と、窓口収入+保険収入の合計額が一致しているか確認されます。乖離がある場合、窓口負担金の打ち込み漏れ(売上除外)が疑われます。 - 自費診療の計上漏れ
自由診療(インプラント、矯正等)は高額になりやすく、点数管理もされないため、意図的な除外がないか厳しく調査されます。予約表(アポイント帳)と日計表、カルテを照合し、予約があるのに売上が上がっていないケースは指摘対象となります。 - 撤去冠(貴金属)の売却収入
患者から外した金歯や銀歯を金属業者に売却して得た収入は「雑収入」として計上する必要があります。これらが院長個人の所得(ポケットマネー)になっていないか、年1回程度の入金履歴がないか確認されます。 - 収入計上の時期(発生主義)
現金が入った時ではなく、「診療行為(役務の提供)が完了した時点」で売上を計上しなければなりません。12月末の診療分(2月入金分)の計上漏れ。クレジットカード決済における入金待ち(未収金)の計上漏れ。長期にわたる歯列矯正やインプラントの、契約実態に応じた適切な分割計上。 - 公費負担医療・生活保護収入
支払基金から送られる「支払調書」の点数には生活保護等の収入が含まれていない場合があり、計上漏れが発生しやすい項目です。 - 家族・従業員への無償診療
本来受け取るべき窓口負担金を受け取らない「診療値引」を行った場合、例えば、従業員への無償診療につき、その分を収入として認識し、福利厚生費等で処理しているか確認されます。
(2). 必要経費・在庫に関する指摘ポイント
経費の妥当性と、年度末の在庫処理が適切かどうかが問われます。
- 仕掛品・在庫の計上漏れ
年末時点で技工所から納品されているが、まだ患者の口にセットしていない技工物(入れ歯、被せ物)は、その年の経費(外注技工料)にはならず、在庫(仕掛品)として計上しなければなりません。 - 薬品・材料の棚卸し
節税目的で決算直前に多額の薬剤等を仕入れても、使用していない分は「棚卸資産」として経費から除外する必要があります。 - 個人的費用の混入
プライベートな飲食代(接待交際費)、趣味のゴルフ、家族旅行(旅費交通費)、自宅兼医院の場合の按分計算(水道光熱費や減価償却費)が適正か厳しくチェックされます。 - 修繕費と資本的支出
高額な内装工事などが、単なる維持管理(修繕費)なのか、資産価値を高める工事(減価償却が必要な資産)なのかが区分されているか確認されます。
(3). 親族への給与(専従者給与)に関する指摘ポイント
配偶者等に支払う給与は節税効果が大きいため、実態が伴っているかが最大の争点となります。
- 勤務実態の有無
実際に働いていることを証明するタイムカードや業務日報の保存が必要です。 - 給与額の妥当性(類似同業者比準)
資格(歯科衛生士等)の有無、勤務時間、業務内容に照らして、近隣の類似規模の歯科医院と比べて著しく高額な給与は否認されるリスクがあります。
(4). 歯科特有の特例(措法26条)に関する注意点
社会保険診療報酬が5,000万円以下(総収入7,000万円以下)の場合に適用できる「概算経費の特例」についても指摘があります。
- 適用条件の誤認
窓口負担金を含めた金額で判定しているか、自由診療等を含めて7,000万円を超えていないか確認されます。 - 青色申告特別控除との関係
概算経費を適用した場合、その社会保険診療報酬分の所得からは青色申告特別控除(最大65万円)を差し引くことはできません。自由診療収入などの実額経費で計算した所得からのみ控除が可能となります(その所得額が65万円未満であれば、その金額が限度となります)。
(5). 税務調査を未然に防ぐ・軽減する対策
- 書面添付制度
税理士が申告内容の正しさを説明する書面を添付することで、現地調査が行われる確率が下がったり、調査前に税理士との面談のみで疑義が解消されたりするメリットがあります。 - 原始記録の保存
領収書の裏に相手先や目的をメモする、現金の管理を「窓口日計表」で毎日行うなど、取引を証明する資料を整えておくことが重要です。
7.まとめ:歯科医業特有のルールを理解し、正しい確定申告で健全な経営を
歯科医業の確定申告は、一般的な個人事業主とは異なる特有の特例や計算ルールが多く存在します。最後に、今回解説した重要なポイントを振り返りましょう。
- 「概算経費の特例(措法26条)」の活用検討
社会保険診療報酬が5,000万円以下、かつ医業の総収入金額が7,000万円以下であれば、実際の経費(実額)と概算経費のどちらか有利な方を選択できます。ただし、この特例を適用した場合、社会保険診療報酬にかかる所得からは青色申告特別控除が受けられない点に注意が必要です。 - 収入計上時期と「雑収入」の徹底
歯科医業の収入は、入金日ではなく診療が完了した時点で計上する「発生主義」が原則です。また、計上漏れが発生しやすい撤去冠(貴金属)の売却収入や、窓口での物品販売なども、忘れずに「雑収入」として申告しましょう。 - 棚卸資産(在庫・仕掛品)の適切な管理
年末時点で未セットの技工物は、その年の経費(外注技工料)には含められず、「仕掛品」として棚卸資産に計上しなければなりません。 - 専従者給与の妥当性
家族に支払う給与は、勤務実態に見合った妥当な金額であることが求められます。類似同業者の平均額と比べて著しく高額な場合は、税務調査で否認されるリスクがあるため、タイムカードなどの証憑を整備しておくことが重要です。



歯科医師の先生方は日々の診療で多忙を極めることと思いますが、経営者としてこれらの税務ルールを把握しておくことは、不必要な税務トラブルや延滞税・加算税などのペナルティを防ぎ、節税メリットを最大限に享受することにつながります。
判断に迷う場合や、より高度な節税対策を検討される場合は、歯科経営に精通した税理士へ早めに相談することをお勧めします。
税理士をお探しの方は、お気軽にこちらまでお問い合わせください。










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