【町田市の税理士が解説】東京都の消費税未納問題!地方公共団体の消費税の納税義務について

東京都消費税未納
新屋賢人

最近、驚くべきニュースが飛び込んできました。なんと、日本の首都である東京都が、21年間にもわたり消費税を未納にしていたというのです。過去、東京都の税金に関する業務に長年携わってきた税理士としては、驚愕でした。

ミミレイドン

「え、東京都が税金を納めていなかったんですか!?」
「そもそも、都も消費税の納税義務あるんですか!?」

新屋賢人

確かに、あんまり国や地方公共団体の消費税の納税義務について、考えたことはないですよね。それでは、数多くの国や地方公共団体の税金に関する業務に携わってきた税理士として、国や地方公共団体の消費税の納税義務を分かりやすく解説します!

目次

1. 今回のニュース紹介(東京都の消費税未納問題)

東京都の「東京都都営住宅等事業会計」という特別会計において、2002年度から2022年度までの21年間分の消費税が未納となっていたことが判明しました。

この特別会計は、消費税法上、課税売上高が1,000万円を上回るため、消費税の申告・納税義務があったにもかかわらず、支払いを怠っていました。

未納が発覚したのは、都が2024年に業務委託した税理士法人から、過去の納税義務について確認が必要だという指摘を受けた後、さらに同年5月に東京国税局から照会があったことがきっかけだとされています。

都は最終的に、時効となっていない直近4年間(2019~2022年度)の1億3,642万円を納付しましたが、それ以前の17年間分については時効により納税義務が消失したとしています。担当者は「消費税制度に対する理解が足りなかった」と説明していますが、小池知事は「都としての責任は大きい」として原因究明のための監察を実施しています。

2. 国や地方公共団体の消費税の納税義務とは

「国や地方公共団体は税金を取る側なのに、なぜ税金を納めるの?」これは当然の疑問です。

結論から言うと、消費税法において、国、地方公共団体、公共法人、公益法人等もすべて「納税義務者」です。

消費税の課税対象となるのは、「国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等」です。つまり、国や自治体であっても、経済活動として「課税される取引」を行う場合には、その取引主体として消費税の納税義務が発生するのです。国や地方公共団体は、課税主体でありながら、消費税では課税事業者となるという側面を持っています。

会計単位で納税義務者を判定

国や地方公共団体の場合、法令に基づき設けられる「会計単位」(一般会計、特別会計、地方公営企業など)ごとに、一つの法人(納税義務者)とみなされて消費税法が適用されます。 今回の東京都の事例も、「都営住宅等事業会計」という特別会計が納税義務者と判断されたわけです。

新屋賢人

他の会計はしっかりと申告されていたようです。ただ、一般法人に例えると、一つの部門の消費税を全く考慮していなかったことになるため、税務調査でバレたら追徴課税でボコボコにやられます。

免税点制度の適用

民間事業者と同様に、国や地方公共団体、公益法人等も、基準期間(原則として前々事業年度)における課税売上高が1,000万円以下であれば、納税義務は免除されます(免税事業者)。ただし、自ら選択して課税事業者となることも可能です。

特殊な計算ルール(特定収入の特例)

地方公共団体や公益法人は、税金の徴収や補助金、交付金、寄附金といった「特定収入」を受け取ることがあります。これらの収入は、消費税の課税資産の譲渡等のコストを構成しないという考え方から、特定収入によって賄われる課税仕入れの税額は、仕入税額控除の対象外とする調整計算を行うという特例があります。この計算は非常に複雑で、具体的なワークシートを用いた解説書も存在するほどです。

このように、国や地方公共団体も、消費税の納税に関しては、民間事業者とは異なる特殊なルール(特に会計単位の扱いと特定収入の調整計算)のもとで、納税義務を負っているのです。

新屋賢人

なかなか、特定収入の調整計算を経験している税理士は多くありません。
私は、数多くの国や地方公共団体、独立行政法人や公益法人の消費税も計算してきた経験がありますので、特定収入の調整計算でお困りの事業者様は、こちらまでお気軽にお問い合わせください。

3. 今回の事例の問題点(税理士の視点から)

新屋賢人

今回の東京都の事例は、単なる「うっかりミス」では済まされない、コンプライアンス上の重大な問題をいくつも抱えています。

内部統制の甘さ

都の都営住宅等事業会計が消費税の納税義務を負っていたのは、特別会計に移行した2002年度以降とされています。つまり、21年もの長期間にわたり、誰も無申告の状態に気づかなかったという事実があります。

都には複数の監査組織が存在するにもかかわらず、これほど長期間にわたって税務上の重大な不備を見逃していたことは、内部統制(コンプライアンスや適正な業務遂行のための仕組み)が機能していなかったことを示しています。

納税義務は法令に基づく基本的な義務であり、これを20年以上も見逃すというのは、行政組織としての基本的なチェック機能が麻痺していたと言わざるを得ません。

税理士の指摘を軽視

さらに問題なのは、都側が、国税庁の照会を受ける前の昨年中には、業務委託した税理士法人(デロイトトーマツ税理士法人)から、過去の納税義務について確認が必要であるとの指摘を受けていたと認めたことです。

この指摘があったにもかかわらず、都は期限後申告等の対応をすぐに行わず、問題を放置していた疑いが浮上しています。

税理士は、法律に基づき納税者の税務の適正化を図る専門家です。その専門家からの具体的な指摘を組織として軽視し、期限後申告等の措置を講じなかったことは、コンプライアンス意識の欠如として極めて重大です。現在、都はこの「税理士法人からの指摘をどのように受け止め、なぜ申告がなされなかったのか」について監察を実施し、事実関係の解明を進めている最中とのことです。

信頼性の毀損

地方公共団体は、「納税は国民の義務」として、住民に対して税の徴収を担う立場にあります。

その行政のトップランナーである東京都が、自ら21年間も納税義務を怠っていたという事実は、納税者である国民・都民の行政に対する信頼を大きく損なうものです。

小池知事が「都としての責任は大きい」と述べたように、この矛盾した行政のあり方は、納税の公平性に対する信頼基盤を揺るがしかねません。

4. 民間事業者への示唆

新屋賢人

今回の東京都の消費税未納問題は、私たち民間事業者や非営利法人にとっても大きな教訓となります。

「自分は対象外だろう」と思い込むリスク

納税義務がないのは、基準期間の課税売上高が1,000万円以下の「免税事業者」である場合など、法律で定められた要件を満たす場合のみです。

今回の事例は、巨大な地方公共団体ですら、「これは行政活動だから消費税とは関係ないだろう」という消費税制度に対する誤った理解により、21年間も納税を怠っていたことを示しています。

民間事業者や個人事業主、あるいは公益法人も、「自社・自組織は税金とは無縁だ」「非課税の取引が多いから申告は不要だ」などと安易に思い込むことは、極めて大きな税務リスクにつながります。必ず、自らの事業内容を正確に把握し、消費税の課否判定を慎重に行う必要があります。

消費税や源泉所得税など、見落としやすい税務リスクの存在

消費税は、売上にかかる税額(預かった税)から、仕入れや経費にかかる税額(支払った税)を差し引いて(仕入税額控除)納税する、非常に複雑な構造を持っています。特に、公共法人や公益法人特有の「特定収入に係る仕入控除税額の特例計算」など、専門的な知識が必須となる論点も多いです。

さらに、地方公共団体は消費税だけでなく、職員への給与支払いに関して源泉所得税の徴収義務者でもあります。これは民間企業も同様で、給与計算や報酬支払いの際に源泉徴収を怠ると、追徴課税の対象となります。

つまり、消費税に限らず、源泉所得税や地方税など多岐にわたる税務リスクを常に意識する必要があります。

税理士に相談し、定期的にチェックする重要性

今回の東京都の事例で最も問題だったのは、税理士法人からの指摘を受けながら放置していたことです。

税務は年々複雑化しており、インボイス制度の導入や改正も相次いでいます。事業者が独力で完璧に対応し続けるのは現実的に困難です。

民間事業者は、税理士という専門家を積極的に活用し、事業の状況を定期的にチェックを依頼することが、コンプライアンスを維持し、将来的な追徴課税リスクを回避するための最善策です。税務リスクを早期に発見し、是正勧告を受けたら、行政のように放置せず、速やかに対応することが肝要です。

新屋賢人

無申告や不納付による追徴課税は、想像以上に大きな金額となり得ます。税務調査により、遡って数年分をまとめて課されれば、事業の存続すら危うくなるケースも多々あります。そのようなリスクを回避するためにも、私でなくても構いませんので、信頼できる税理士に依頼されることを強くお勧めいたします。

5. まとめ

今回の東京都における消費税未納問題は、地方公共団体であっても消費税の納税義務を負う場合があるという事実を改めて示しました。組織の規模や公共性にかかわらず、税務コンプライアンスと内部統制の徹底がいかに重要かを浮き彫りにした事例です。

消費税の納税義務は、課税売上高が1,000万円を超えた時点で発生する普遍的な義務です。

今回の事例は「自分は対象外だろう」という思い込みが、いかに大きなリスクにつながるかを示しています。民間企業や個人事業主、公益法人も同様に、「非課税取引が多いから大丈夫」「自分の事業は小さいから関係ない」と安易に判断することは危険です。

税務は年々複雑化しており、インボイス制度の導入や改正も相次いでいます。だからこそ、税理士などの専門家の力を頼り、定期的に税務体制をチェックすることが、将来的な追徴課税リスクを回避する最大の防御策となります。

無申告や不納付による追徴課税は、数年分がまとめて課されれば事業の存続すら脅かす金額になることもあります。今回の東京都の事例を「他山の石」とし、盤石な税務コンプライアンス体制を構築することこそが、あなたのビジネスを守る最善の道です!

新屋賢人

東京都は本来、都民にとって模範となるべき存在です。その立場でありながら消費税の未納問題を起こしたことは、決してあってはならないことだと感じます。
もっとも、税制は年々複雑化しており、今回の件は「行政だから特別」という話ではなく、私たち一人ひとりにとっても決して他人事ではありません。
この記事をお読みいただき、もし税金に関して少しでも不安や疑問をお持ちになった場合は、一度お気軽にこちらまでお問い合わせください。専門家の視点から、あなたの事業や生活に合った最適なアドバイスをご提供いたします。

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この記事を書いた人

町田市にあるコムレイド税理士事務所の代表税理士の新屋賢人です。大学卒業後、中堅税理士法人で5年間、業界最大手である国際四大会計事務所(BIG4)のEY税理士法人で8年間、計13年間の実務経験があります。
30代ですが、すでに法人・個人問わず幅広い業務を経験しております。BIG4という業界最大手で得た経験・知識を生まれ育った街に還元したいという強い思いから独立を決めました。

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