【町田市の税理士が解説】役員報酬:⑯役員退職慰労金編Part1

ミミレイドン

ボス、おはようございます!
今朝のテーマはなんでしょうか?

新屋賢人

今朝は、役員退職慰労金について、整理していきたいと思います。

ミミレイドン

役員さんの退職金ということですよね?

新屋賢人

はい、役員が退職する際に支給されるのが退職慰労金です。長年の功労に報いる制度として広く活用されていますが、その支給手続きや税務処理を誤ると、損金として認められなかったり、税務調査で思わぬ指摘を受けたりするリスクがあります。特に、同族会社では『退職の事実』そのものが否認されるケースも少なくありません。
今朝は、役員退職慰労金の基本的な仕組みから、会社法上の支給手続き、損金算入のタイミング、そして税務調査で問題となりやすい『退職の事実』の判断基準まで、実務に役立つポイントを体系的に解説します。

ミミレイドン

役員報酬シリーズの①役員報酬の意義編、②役員報酬の損金性編、③役員報酬の手続き編、④役員報酬の定期同額給与編、⑤役員報酬の定期同額給与編Part2、⑥定期同額給与の臨時改定事由編、⑦定期同額給与の業績悪化改定事由編、⑧事前確定届出給与編Part1、⑨事前確定届出給与編Part2、⑩業績連動給与編Part1、⑪業績連動給与編Part2、⑫株式報酬編、⑬経済的利益(現物給与)編Part1、⑭経済的利益(現物給与)編Part2、⑮経済的利益(現物給与)編Part3については、こちらの記事をご覧ください。
【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:①役員報酬の意義編
【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:②役員報酬の損金性編
【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:③役員報酬の手続き編
【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:④役員報酬の定期同額給与編
【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:⑤役員報酬の定期同額給与編Part2
【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:⑥定期同額給与の臨時改定事由編
【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:⑦定期同額給与の業績悪化改定事由編
【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:⑧事前確定届出給与編Part1
【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:⑨事前確定届出給与編Part2
【町田市の税理士が解説】役員報酬:⑩業績連動給与編Part1
【町田市の税理士が解説】役員報酬:⑪業績連動給与編Part2
【町田市の税理士が解説】役員報酬:⑫株式報酬編
【町田市の税理士が解説】役員報酬:⑬経済的利益(現物給与)編Part1
【町田市の税理士が解説】役員報酬:⑭経済的利益(現物給与)編Part2
【町田市の税理士が解説】役員報酬:⑮経済的利益(現物給与)編Part3

⑯役員退職慰労金編Part1

目次

1.役員退職慰労金とは?

役員退職慰労金(役員退職給与)とは、役員が退任(退職)する際に、会社から支給される一時金のことです。

その性質や手続き、税務上の取り扱いは以下のようになっています。

(1). どのような性質のお金か

役員退職慰労金は、在任期間中の職務執行に対する「報酬の後払い」としての性格を持っています。つまり、役員としての在職中の働きに対する対価を、退職時にまとめて受け取るものと位置づけられています。

(2). 支給するための会社法上の手続き

役員退職慰労金の支給は、役員報酬の一部として会社法の規制(第361条など)を受けます。そのため、支給額について定款に定めがない場合には、原則として株主総会の決議によって決定しなければなりません。 実務上は、株主総会では支給することのみを決議し、具体的な金額や支給時期、方法などの決定は「取締役会に一任する」という形をとることも多いですが、この場合でも、会社の規定などによって一定の支給基準が確定していること等の条件を満たす必要があります。

(3). 法人の税務上の取り扱い

税務上、役員退職慰労金は職務執行の対価であるため、原則として法人の損金(経費)に算入することが可能です。 ただし、役員の在任期間や会社への貢献度などを考慮して、「不相当に高額」とみなされる部分の金額については、過大な役員給与として損金算入が認められません。そのため、一般的には「最終報酬月額 × 役員としての勤続年数 × 功績倍率」といった計算式を用いて、適正な金額を算定する必要があります。

2.役員退職慰労金を支給するための手続き

役員退職慰労金を支給するための手続きは、会社法上の規定に基づき、適正に行う必要があります。具体的な手続きや要件、税務上の取り扱いは以下の通りです。

(1). 原則的な手続き(株主総会の決議)

会社法において、役員に対する退職金(退職慰労金)は、定期給与や賞与と同様に「役員報酬等」に含まれるとされています。したがって、支給金額などの決定は、定款に定めがない限り、原則として「株主総会の決議」によって行わなければなりません

(2). 取締役会へ一任する場合の要件

実務上は、株主総会で具体的な金額まで決定するのではなく、取締役会に金額の決定を一任するケースが多く見られます。しかし、無条件での一任は認められておらず、以下の3つの要件をすべて満たす必要があります。

  1. 一定の支給基準が確定していること
    会社の慣行や内規(役員退職慰労金規程など)によって、お手盛り(不当な高額支給)を防止するための合理的な支給基準が設けられていること。
  2. 株主が推知しうる基準であること
    その支給基準が、株主にも推知しうる(知ることができる)状態になっていること。
  3. 相当な金額を支給する旨の決議があること
    株主総会の決議が、その支給基準の範囲内において相当な金額を支給することを決議していること。
新屋賢人

なお、株主総会で一任の決議を行う際は、議案において「当社の定める一定の基準に従い相当額の範囲内において退職慰労金を支給することとし、具体的な金額、贈呈の時期、方法等は取締役会にご一任願いたい」といった旨を諮るのが一般的です。

3.役員退職慰労金の損金算入時期

役員退職慰労金の損金(経費)に算入できる時期については、法人税基本通達により、「原則」と「例外」の2つの取り扱いが定められています。

(1). 原則的な損金算入時期(決議等により確定した事業年度)

原則として、株主総会(社員総会や、その委任を受けた取締役会などを含みます)の決議等によって、退職給与の額が「具体的に確定した日」の属する事業年度の損金に算入されます。

ここで注意が必要なのは、退職給与の額が具体的に確定する前の事業年度において、取締役会などで内定した段階の金額を「未払金」として損金経理(帳簿上で費用計上)したとしても、その未払金に計上した時点では損金に算入することはできないという点です。

(2). 例外的な損金算入時期(実際に支払った事業年度)

上記に対する例外として、法人が退職給与を実際に支払い、かつ、その「支払った日の属する事業年度」において損金経理(費用計上)をした場合には、その支払った事業年度の損金として算入することが認められています。

これは、仮に株主総会等での正式な決議要件を満たしていなかったり手続きが遅れたりした場合でも、役員に対する退職給与の支給という実態があり、法人がそれを費用として経理処理したのであれば、実態に合わせて損金算入を認めるという規定です。

■ 実務上の留意点

退職慰労金の損金算入時期は、基本的には「具体的な金額の確定日(株主総会等の決議日)」か「実際の支払日」のいずれかが属する事業年度となります。 ただし、退職の事実そのものが認められなかったり、株主総会議事録や取締役会での辞任届などが偽造されるなどの「仮装隠蔽」があったと判断されたりした場合には、損金算入が否認される裁決事例も存在します。そのため、適正な支給手続きを踏み、議事録等の記録を確実に保管しておくことが重要です。

4.退職の事実

役員の退職給与(退職金)を支給する際、税務調査等で「退職の事実がない」と認定され、その支給額が退職金ではなく「過大な役員給与」として損金不算入(経費否認)とされるケースがあります

退職の事実が否認される要因としては、利益を圧縮するためだけの「仮装隠蔽」のようなケースもあれば、本人は退職したつもりでも「実質的に業務を継続していた」と認定されるケース(事実認定事案)もあります。

過去の裁決事例から読み解く、税務上の「退職の事実」の主な判断基準(着眼点)は以下の通りです。

(1). 形式的な手続きだけでなく「実態」が重視される

株主総会で退職を決議し、法務局で役員の辞任登記を行っていたとしても、それだけでは退職の事実が認められるとは限りません。税務上は、退職後においても「実質的にその法人の経営に従事しているかどうか」という実態が厳しく問われます。

(2). 「実質的に経営に従事している」とみなされる具体的な基準

過去に退職の事実が否認された事例では、主に以下のような事実関係から「従前と変わらず経営に従事している」と認定されています。

  • 資金や印鑑の管理
    退職後も引き続き、会社の預金口座の入出金管理を行っていたり、会社の実印や銀行印を保管・管理し、自由に使用できる状態にあったりした場合。
  • 重要業務における意思決定
    例えば不動産賃貸業において、テナント入居の可否や契約条件の決定、金融機関との融資交渉、決算や税務調査への対応といった「重要な業務」を退職後も行っていた場合。
  • 業務報告の受領や指示
    社内の経理担当者への帳簿作成の指示を退職後も出していたり、外部の業務受託会社からの業務報告を(新代表者ではなく)退職したはずの元役員が受けていたりした場合。
  • 新代表者の実態(名義貸しの疑い)
    新しく代表に就任した者が、就任後も全く経営に関与していない(給与も支払われていない)場合や、そもそも学生であったり海外留学中であったりして、物理的に経営を行うことが不可能な状況であった場合。このようなケースでは、「形式上代表を交代しただけで、実質的な経営者は退職したはずの元役員のままである」と判断される強い根拠となります。
新屋賢人

特に家族だけで営まれているような小規模な同族会社においては、会社と個人の区別が曖昧になりがちであり、退職後も「他にやる人がいないから」といった理由で会社の重要業務に関わり続けてしまうケースが見られます。
退職金を税務上も問題なく処理するためには、議事録や登記といった形式面を整えるだけでなく、実印や銀行口座の管理権限を明確に後任者に引き継ぎ、重要な経営判断から完全に手を引くなど、実態としての「退職の事実」を備えることが極めて重要です。

5.まとめ

役員退職慰労金を法的に問題なく支給し、税務上も正しく損金算入するためには、会社法と法人税法の両方の要件をクリアする必要があります。特に押さえておくべきポイントは以下の4点です。

  1. 適正な決議手続き
    定款または株主総会決議(取締役会への一任と内規の整備を含む)によって支給を決定すること。
  2. 妥当な金額の算定
    功績倍率法など合理的な計算式を用い、税務上「過大」とみなされない適正な金額に設定すること。
  3. 損金算入時期の厳守
    株主総会等による「確定日」、または実際に支払って経理処理をした「支払日」のルールに則ること。
  4. 実態としての「退職の事実」
    単なる名義変更(登記)にとどまらず、実印・資金管理の引き継ぎや重要決済からの離脱など、客観的に退職を証明できる状態にすること。

特に同族会社や小規模企業においては、退職後も「他に任せられる人がいないから」と経営に関与し続けてしまい、税務調査で「退職の事実がない(全額が過大な役員給与である)」として経費算入を否認されるリスクが高く潜んでいます。

役員退職慰労金の支給は、会社にとって大きな資金が動く重要なイベントです。自己判断だけで進めず、事前に自社の役員退職慰労金規程の整備状況を確認し、少しでも不安な点があれば顧問税理士などの専門家に相談しながら、慎重に手続きを進めることをお勧めします。

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この記事を書いた人

町田市にあるコムレイド税理士事務所の代表税理士の新屋賢人です。大学卒業後、中堅税理士法人で5年間、業界最大手である国際四大会計事務所(BIG4)のEY税理士法人で8年間、計13年間の実務経験があります。
30代ですが、すでに法人・個人問わず幅広い業務を経験しております。BIG4という業界最大手で得た経験・知識を生まれ育った街に還元したいという強い思いから独立を決めました。

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