ミミレイドンボス、おはようございます!
2026年3月26日のテーマはなんでしょうか?



昨日の記事を読んだ方から、使用人兼務役員について、もう少し詳しく知りたいとお問い合わせがありましたので、今朝は、使用人兼務役員について、整理していきたいと思います。



使用人兼務役員は、確か取締役でありながら部長としても働いているような人のことでしたよね。



中小企業では珍しくないこの働き方は、税務上「使用人兼務役員」と呼ばれ、要件を満たせば賞与を損金(経費)にできるなど大きなメリットがあります。しかし、その判定を誤ると、支給した賞与や給与が全額損金不算入となり、思わぬ追徴課税を受けるリスクもあります。今朝は、使用人兼務役員の定義から、なれない役員の要件、給与・賞与の支給における注意点、さらには「名ばかり役員」の落とし穴まで、実務で押さえておくべきポイントを網羅的に解説します。



役員報酬シリーズの①役員報酬の意義編、②役員報酬の損金性編、③役員報酬の手続き編、④役員報酬の定期同額給与編、⑤役員報酬の定期同額給与編Part2、⑥定期同額給与の臨時改定事由編、⑦定期同額給与の業績悪化改定事由編、⑧事前確定届出給与編Part1、⑨事前確定届出給与編Part2、⑩業績連動給与編Part1、⑪業績連動給与編Part2、⑫株式報酬編、⑬経済的利益(現物給与)編Part1、⑭経済的利益(現物給与)編Part2、⑮経済的利益(現物給与)編Part3、⑯役員退職慰労金編Part1、⑰役員退職慰労金編Part2、⑱役員退職金の算定方法編、⑲役員の範囲編、⑳同族会社における役員報酬編については、こちらの記事をご覧ください。
【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:①役員報酬の意義編
【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:②役員報酬の損金性編
【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:③役員報酬の手続き編
【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:④役員報酬の定期同額給与編
【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:⑤役員報酬の定期同額給与編Part2
【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:⑥定期同額給与の臨時改定事由編
【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:⑦定期同額給与の業績悪化改定事由編
【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:⑧事前確定届出給与編Part1
【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:⑨事前確定届出給与編Part2
【町田市の税理士が解説】役員報酬:⑩業績連動給与編Part1
【町田市の税理士が解説】役員報酬:⑪業績連動給与編Part2
【町田市の税理士が解説】役員報酬:⑫株式報酬編
【町田市の税理士が解説】役員報酬:⑬経済的利益(現物給与)編Part1
【町田市の税理士が解説】役員報酬:⑭経済的利益(現物給与)編Part2
【町田市の税理士が解説】役員報酬:⑮経済的利益(現物給与)編Part3
【町田市の税理士が解説】役員報酬:⑯役員退職慰労金編Part1
【町田市の税理士が解説】役員報酬:⑰役員退職慰労金編Part2
【町田市の税理士が解説】役員報酬:⑱役員退職金の算定方法編
【町田市の税理士が解説】役員報酬:⑲役員の範囲編
【町田市の税理士が解説】役員報酬:⑳同族会社における役員報酬編
㉑使用人兼務役員編
1.使用人兼務役員とは
税法上、「使用人兼務役員」とは、法人の役員のうち、法人の組織上定められている使用人としての職制上の地位を有し、かつ、常時使用人としての職務に従事する者を指します。
具体的には、役員(取締役など)に就任しながらも、同時に以下のような法人の機構上定められた使用人(従業員)としての職務に従事している人が該当します。
- 部長
- 課長
- 支店長
- 工場長
- 営業所長
- 支配人
- 主任など



税務上の取り扱いについて、使用人兼務役員に該当すると、その人に支払われる給与や賞与のうち、「使用人としての職務に対する部分(使用人分)」については、不相当に高額な部分を除き、法人の損金(経費)に算入できるという税務上のメリットがあります。
2.使用人兼務役員になれない役員
法人税法上、実態として使用人(従業員)の職務に従事していたとしても、以下のいずれかに該当する役員は「使用人兼務役員になれない(=税法上、全額が役員給与として扱われる)」と明確に定められています。
これらに該当する役員に対して使用人部分の給与や賞与を支給した場合、それらもすべて役員給与の損金算入制限(損金不算入など)の対象となるため注意が必要です。
具体的には、以下の5つの区分に該当する役員が対象となります。
(1). 法人の特定の部門の職務を統括している役員
部長や課長といった「使用人としての職制上の地位」を持たず、単に「営業担当」「総務担当」「経理担当」といったように、法人の特定の部門の職務を統括しているにすぎない役員は、使用人兼務役員になれません。
(2). 代表取締役、副社長、専務、常務などの役付役員
代表取締役や、定款・株主総会・取締役会等の決議によって職制上の地位が付与された副社長、専務、常務(およびこれらに準ずる地位を有する役員)は該当しません。また、代表執行役、代表理事、清算人もこれに含まれます。
(3). 持分会社の業務を執行する社員
合名会社、合資会社、および合同会社の業務を執行する社員は該当しません。
(4). 監査役、会計参与、指名委員会等設置会社の取締役など
指名委員会等設置会社の取締役や監査等委員である取締役のほか、会計参与、監査役、監事は該当しません。従業員を名前だけ貸す形で監査役に就任させたような「名目監査役」であっても、税法上は役員として扱われ、使用人兼務役員とは認められません。
(5). 同族会社における「特定株主」に該当する役員
同族会社において、以下の3つの株式所有要件をすべて満たす役員(特定株主等)は、使用人兼務役員になれません。
- その役員の属する株主グループが、所有割合50%超を構成する上位の第1〜第3グループのいずれかに所属していること。
- その役員の属する株主グループの株式所有割合が10%超であること。
- その役員本人(配偶者や親族などの特殊関係者、およびこれらの者が50%超を所有する他の会社等を含みます)の株式所有割合が5%超であること。



実務上の重要な注意点として、昨日の記事でも触れましたが、同族会社の特定株主の判定(上記5)において、役員本人が自社の株式を1株も持っていなかったとしても、配偶者が5%超の株式を保有している場合には「特定株主等」に該当し、使用人兼務役員になれないという判定が下されます。家族経営の企業においてはこの点を見落としやすいため、とくに注意が必要です。
3.使用人兼務役員に対する給与の注意点
使用人兼務役員に対して、使用人としての職務に対する給与・賞与(使用人分給与)を支給する場合、通常の役員報酬のような厳しい損金算入制限を受けず、業績等に応じて変動させたり賞与として支給したりできるというメリットがあります。
しかし、恣意的な利益操作を防ぐため税務上は厳格な要件が設けられており、実務上以下の点に十分注意する必要があります。
(1). そもそも「使用人兼務役員になれない役員」に該当していないか(詳細は前章参照)
前章でも整理しましたが、実態として従業員としての業務(部長や工場長など)を行っていたとしても、法人税法上、以下のいずれかに該当する者は「使用人兼務役員」になることができません。該当者に使用人分として賞与などを支給しても、すべて「役員給与」とみなされ、定期同額給与等の要件を満たさないとして損金算入が否認されます。
- 職制上の地位を有する役員
代表取締役、副社長、専務、常務など。 - 特定の部門を統括する役員
「営業担当取締役」や「経理担当取締役」など、組織上の使用人の地位(部長など)を持たず、特定部門を統括しているにすぎない役員。 - 特定の機関の役員
監査役、会計参与、監事など。 - 同族会社の特定株主等
同族会社において一定の株式保有割合の要件(本人が5%超など)を満たす役員。※本人名義の株式がゼロでも、配偶者が要件を満たしていれば該当してしまうため特に注意が必要です。
(2). 使用人分の給与が「不相当に高額」ではないか
使用人分の給与を損金算入するには、その金額が職務の対価として適正(不相当に高額ではない)でなければなりません。 税務上、適正額かどうかは主に以下の基準と比較して判定されます。
- その役員が役員に就任する直前に受けていた給与額と、その後のベースアップ状況
- 社内の他の使用人のうち、「最上位にある者(最も給与が高い従業員)」に支給している給与額



会社が給与計算の基準(本俸表など)を定めて、それに則って計算した金額を支給していたとしても、その規程が不自然であったり、特定の役員のために作られたような不合理なものであったりする場合は、適正な基準とは認められず否認された裁判例があります。客観的で合理的な給与体系であることが求められます。
(3). 株主総会の議事録で「報酬枠」の扱いを明確にする
株主総会で役員報酬の総額(枠)を決議する際、その決議された限度額のなかに「使用人兼務役員の使用人分の給与を含むのか、含まないのか」を明確にしておく必要があります。 一般的には、役員報酬の限度額には使用人分の給与を含めない(別枠で支給する)決議をとることが多いですが、トラブルを避けるためにも、議事録等に「上記には使用人兼務役員の使用人分給与を含まない」といった文言を明記しておくことが重要です。
4.使用人兼務役員に対する賞与の注意点
使用人兼務役員に対する賞与の支給において、税務上問題とならないための適正額の考え方や注意点について解説します。
(1). 使用人分賞与を損金(経費)にするための絶対条件
使用人兼務役員に支給する賞与のうち、使用人としての職務に対する部分(使用人分賞与)は、原則として法人の損金に算入することができます。 しかし、そのためには「他の使用人(従業員)に対する賞与の支給時期と同じ時期に支給すること」が条件となります。役員だけ別の時期に支給した場合は損金算入が認められないため、留意が必要です。
(2). 「適正額(不相当に高額ではない金額)」の判定基準
使用人分賞与であっても、その金額が「不相当に高額」とみなされた部分は損金算入が認められません。 適正額かどうかは、「その会社の他の使用人に対する給与(賞与)の支給状況等に照らして、使用人としての職務に対する賞与として相当であると認められる金額」であるかどうかで判定されます。
具体的には、その使用人兼務役員に類似する職務に従事する他の使用人に対して支給した給与・賞与と比準して、ほぼ同等であれば、適正な使用人分として認められます。
(3). 社内に比較できる「類似の使用人」がいない場合
もし社内に比較対象となる同等の使用人がいない場合は、「特別の事情がないものと仮定したときに通常支給される額」と比準して判定します。具体的には以下の要素から総合的に判断されます。
- 当該使用人兼務役員が、役員となる直前に受けていた給与の額
- その後のベースアップ等の状況
- 使用人のうち最上位にある者に対して支給した給与の額
(4). 会社の賃金規程(本俸表など)に基づく場合の注意点
会社が独自の賃金規程や「本俸表」を定めており、それに従って計算して支給したとしても、無条件に全額が適正額として認められるわけではありません。 過去の裁判例では、現実に本俸表が存在していても、その本俸表の規定自体が不自然・不合理なものであったり、他の使用人の支給状況に照らして不相当に高額であったりしたケースでは、「適正な使用人分相当賞与とはいえない」として損金算入が否認されています。基準を設けるだけでなく、その基準自体が客観的に合理的であることが求められます。



使用人兼務役員への賞与は、お手盛り(恣意的な利益調整)を防ぐため、「他の一般従業員と同じ支給ルール・同じタイミングで、実態に見合った金額を支給しているか」が厳しく問われます。役員としての職務に対する賞与と混同しないよう、明確な基準と実態に基づいて支給することが重要です。
5.名ばかりの取締役又は監査役である場合の使用人兼務役員
「名ばかりの(名目上の)取締役や監査役」であっても、税務上は実態よりも形式(登記など)が重視され、「役員」として扱われるのが原則です。
特に、監査役などの特定の役職においては、法律上明確に「使用人兼務役員になれない」と定められているため、実態が従業員であっても使用人兼務役員として扱うことはできず、給与の支払いに際して大きな税務リスクが生じます。
過去の裁決例や裁判例も踏まえ、具体的に解説します。
(1). 名目上の「監査役」である場合
法人税法施行令において、監査役(および会計参与、監事など)は「使用人兼務役員になれない役員」として明確に規定されています。
したがって、会社の従業員を「名目上の監査役」として商業登記簿に登記している場合、その人が実質的には監査役としての職務を一切果たしておらず、日常的に従業員としての業務のみを行っていたとしても、税務上は使用人兼務役員とは認められません。
【過去の否認事例(名目監査役への残業代・賞与の支払い)】
従業員を名目上の監査役に就任させ、その者に対して基本給のほかに「残業手当、深夜手当、休日手当、ボーナス」などを支給し、会社がそれらをすべて損金(経費)に算入していた事例があります。 この事例において、税務調査および裁判では以下のように判断されました。
- 監査役は使用人兼務役員になれないため、支払われた残業手当やボーナスは「従業員に対する給与(使用人分給与)」とは認められない。
- したがって、これらは「役員に対する給与」として扱われるが、定期同額給与や事前確定届出給与等の要件を満たしていないため、残業手当やボーナスなどの変動する給与はすべて損金算入できない(否認される)。
(2). 名目上の「取締役」である場合
取締役についても同様に、「名前を貸しているだけ(名目上の役員)」であっても、税法上は役員として扱われ、役員給与の損金算入制限(定期同額給与などのルール)を受けます。
さらに、その名目上の取締役が以下のようなケースに該当する場合は、「使用人兼務役員」になることもできません。
- 代表取締役、副社長、専務、常務などの職制上の地位を有している場合。
- 同族会社において、一定の株式を保有する「特定株主等」に該当する場合。
(※本人が株式を持っていなくても、配偶者が5%超の株式を保有していれば特定株主等に該当するため、例えば「社長の妻を名目上の取締役にしている」ようなケースでは使用人兼務役員になれません)
これらの要件に該当する名目取締役に対して、使用人分の賞与として支給したとしても、全額が「役員賞与」とみなされて損金算入が否認されることになります。



税務上、「名目上の役員だから、実質は従業員として扱ってほしい(使用人兼務役員として賞与などを経費にしたい)」という主張は、過去の裁決や裁判でも再三にわたり退けられています。
会社法上の要件を満たすためなどの理由で、従業員や親族に「名前だけの監査役・取締役」になってもらうケースは中小企業で散見されますが、その者に対して残業代や賞与を支給すると多額の税金が追徴されるリスクがあるため、給与の支給方法には厳重な注意が必要です。
6.まとめ
「使用人兼務役員」の制度は、現場の第一線で従業員とともに汗を流す役員に対して、業績に応じた賞与を支給しつつ、適法に会社の損金(経費)に算入できる非常に有効な手段です。
しかし、ここまで解説してきたように、税務調査におけるチェックの目は非常に厳しく、少しでも要件を外れれば全額が「役員給与」とみなされ、損金算入が否認されるという大きなリスクを孕んでいます。とくに以下の点には細心の注意を払う必要があります。
・監査役や代表取締役など「絶対に使用人兼務役員になれない役職」に就いていないか
・同族会社の場合、本人だけでなく「配偶者や親族」の株式保有割合を含めて特定株主の要件に引っかかっていないか
・使用人分の賞与は、必ず「他の一般従業員とまったく同じ時期」に支給しているか
・給与や賞与の金額が、他の類似する従業員と比較して「不相当に高額(お手盛り)」になっていないか
「実態は従業員と同じだから大丈夫だろう」「名義を借りているだけだから問題ないだろう」という独自の判断は、税務上は一切通用しません。 使用人兼務役員に対する給与・賞与の支給を検討する際、あるいは従業員を新たに役員に引き上げる際は、支給額やタイミング、株式の保有状況について、必ず事前に顧問税理士などの専門家に相談し、客観的かつ適法な体制を整えるようにしてください。










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