【町田市の税理士が解説】役員報酬:㉒出向役員編

ミミレイドン

ボス、おはようございます!
2026年3月28日のテーマはなんでしょうか?

新屋賢人

今朝は、役員報酬シリーズの最終回として、出向役員への報酬について、整理していきたいと思います。

ミミレイドン

グループ子会社とかに出向するケースですね、、なんだか複雑そうです。

新屋賢人

グループ会社間の出向において、出向先で役員に就任するケースは決して珍しくありません。しかし、出向者が役員となった途端、出向負担金(給与負担金)の税務処理は一気に複雑さを増します。「定期同額給与の要件を満たしていなかった」「株主総会等の決議を経ていなかった」、こうしたミスにより、出向負担金の全額が損金否認されてしまう事例は実務上少なくありません。
さらに、出向元と出向先の双方で取締役を兼務しているケースや、海外子会社への出向のケースでは、寄附金認定や移転価格税制の適用といった、より深刻な税務リスクが潜んでいます。
今朝は、出向役員に対する出向負担金について、出向元法人・出向先法人それぞれの税務上の取扱いを整理したうえで、退職給与の負担金、兼務役員の注意点、海外出向の留意事項まで、実務で押さえておくべきポイントを整理していきます。

ミミレイドン

役員報酬シリーズの①役員報酬の意義編、②役員報酬の損金性編、③役員報酬の手続き編、④役員報酬の定期同額給与編、⑤役員報酬の定期同額給与編Part2、⑥定期同額給与の臨時改定事由編、⑦定期同額給与の業績悪化改定事由編、⑧事前確定届出給与編Part1、⑨事前確定届出給与編Part2、⑩業績連動給与編Part1、⑪業績連動給与編Part2、⑫株式報酬編、⑬経済的利益(現物給与)編Part1、⑭経済的利益(現物給与)編Part2、⑮経済的利益(現物給与)編Part3、⑯役員退職慰労金編Part1、⑰役員退職慰労金編Part2、⑱役員退職金の算定方法編、⑲役員の範囲編、⑳同族会社における役員報酬編、㉑使用人兼務役員編については、こちらの記事をご覧ください。
【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:①役員報酬の意義編
【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:②役員報酬の損金性編
【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:③役員報酬の手続き編
【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:④役員報酬の定期同額給与編
【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:⑤役員報酬の定期同額給与編Part2
【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:⑥定期同額給与の臨時改定事由編
【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:⑦定期同額給与の業績悪化改定事由編
【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:⑧事前確定届出給与編Part1
【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:⑨事前確定届出給与編Part2
【町田市の税理士が解説】役員報酬:⑩業績連動給与編Part1
【町田市の税理士が解説】役員報酬:⑪業績連動給与編Part2
【町田市の税理士が解説】役員報酬:⑫株式報酬編
【町田市の税理士が解説】役員報酬:⑬経済的利益(現物給与)編Part1
【町田市の税理士が解説】役員報酬:⑭経済的利益(現物給与)編Part2
【町田市の税理士が解説】役員報酬:⑮経済的利益(現物給与)編Part3
【町田市の税理士が解説】役員報酬:⑯役員退職慰労金編Part1
【町田市の税理士が解説】役員報酬:⑰役員退職慰労金編Part2
【町田市の税理士が解説】役員報酬:⑱役員退職金の算定方法編
【町田市の税理士が解説】役員報酬:⑲役員の範囲編
【町田市の税理士が解説】役員報酬:⑳同族会社における役員報酬編
【町田市の税理士が解説】役員報酬:㉑使用人兼務役員編

㉒出向役員編

目次

1.出向役員に対する出向負担金の税務上の取扱い(出向元法人)

出向者に対する出向負担金(給与負担金)の税務上の取り扱いについて解説します。

結論から申し上げますと、「出向先において役員となっている場合」と「役員ではない(使用人・従業員である)場合」の税務上のルールの違いは、出向元法人ではなく「出向先法人において出向負担金を損金(経費)に算入できるかどうかの要件」に大きく影響します。

出向元法人における取り扱いは、出向先での役位に関わらず、「出向者に支払う給与額」と「出向先から受け取る出向負担金の額」のバランスによって決まります

それぞれ分けて詳しく説明します。

(1). 出向元法人における出向負担金の取り扱い(役位に関わらず共通)

出向者への給与は出向元法人から支払われ、出向元法人は出向先法人から出向負担金を受け取ります。この時の出向元法人での取り扱いは、以下の3つのパターンに分かれます。

  • ① 給与支給額 = 出向負担金の場合
    出向元法人が支払う給与と同額の出向負担金を受け取る場合、出向先法人と出向元法人との間に経済的利益の移転はなく、出向元法人において課税上の問題は生じません
  • 給与支給額 > 出向負担金の場合(出向元が給与の一部を負担する場合)
    出向元の給与水準が出向先より高く、その差額を出向元法人が負担した場合、その差額が給与条件の格差を補てんするための「較差補てん」として妥当であると認められれば、出向元法人で損金に算入することができます。ただし、較差補てんとして認められない不合理な負担である場合は、出向元法人から出向先法人への寄附金として扱われます
  • 給与支給額 < 出向負担金の場合(出向先が多く支払う場合)
    出向負担金が給与支給額を上回る場合、その超過部分が「出向元から出向先への経営指導や技術指導の対価」として合理的であれば、出向元法人の益金(事業収益)となります。しかし、指導の実態がないなど合理的でない場合は、出向先から出向元への経済的利益の移転とみなされ、寄附金課税(受贈益)の対象となります。

(2). 出向先において「役員」となっている場合と「役員ではない」場合の違い

出向元法人が受け取る出向負担金は、実質的には「出向先法人が負担すべき給与」として取り扱われます。そのため、出向者が出向先でどのような立場(役位)であるか否かによって、出向元法人における取り扱いに影響がでることはありません。ただし、出向先法人での損金算入のハードルは異なりますので、次の章で解説します

2.出向役員に対する出向負担金の税務上の取扱い(出向先法人)

出向先法人における出向負担金の税務上の取り扱いについて、出向者が「出向先で役員ではない場合(従業員など)」と「出向先で役員となっている場合」に分けて解説します。

(1). 出向先で役員ではない場合(従業員など)

出向先法人が出向元法人に支払う出向負担金は、出向先法人において、その出向者に対する「給与」の支給として取り扱われます。 経営指導料等の名目で金銭を支払う場合であっても、それが実質的に給与負担金の性質を有するものであれば給与負担金として取り扱われ、社会保険の会社負担分を出向先法人が負担する場合も同様に給与として取り扱われます。したがって、次に説明する「定期同額給与」などの役員特有の厳しい損金算入制限や、株主総会決議などの手続きは求められず、出向先法人の損金として通常通り算入することができます。

(2). 出向先で役員となっている場合

出向先法人において役員に就任している場合、出向元法人に支払う出向負担金は、出向先法人における「役員に対する給与」として取り扱われます

役員に対する給与となるため、出向負担金を出向先法人の損金(経費)に算入するためには、以下の要件を満たした上で、通常の役員報酬と同様に「定期同額給与」「事前確定届出給与」「業績連動給与」のいずれかの損金算入要件を満たす必要があります

■ 損金算入するための2つの要件

次のいずれの要件も満たす必要があります。

  1. 当該役員に係る給与負担金の額につき、当該役員に対する給与として出向先法人の株主総会の決議がされていること
  2. 出向契約等において、当該出向者に係る出向期間及び給与負担金の額があらかじめ定められていること

■ 支給形態別の損金算入の注意点

  • 毎月定額で支払う場合(基本給相当)
    毎月定額で出向負担金を支払う場合は「定期同額給与」に該当し、原則として全額が損金算入されます。
  • 賞与支給時期に合わせて支払う場合(賞与相当)
    毎月定額の支払いに加えて、出向元法人の賞与支給時期等に合わせて賞与負担金を出向負担金として支払う場合には、「事前確定届出給与」の対象となります。したがって、事前に所轄税務署長へ届出書を提出するなどの要件を満たさなければ、損金に算入することはできません。
新屋賢人

出向元法人側の税務処理は「給与と負担金の差額(較差補てん等)が合理的か」という点が焦点となります。一方で、出向先において役員に就任させる場合は、出向先法人側で役員報酬としての厳格な要件(定期同額や出向契約の明記など)を満たさないと出向負担金が損金否認されるリスクがあるため、親子会社間で出向契約書をしっかりと作成し、給与負担金等を明確に定めておくことが重要です。

3.出向期間の退職給与の負担金

出向元法人が出向期間中の退職給与に相当する額を「負担金」として出向先法人から受け取るケースがあります。この出向期間の退職給与の負担金に関する税務上の取り扱いや注意点について解説します。

(1). 定期的に負担金を支出する場合の損金算入要件

出向先法人が出向期間中にわたり退職給与の負担金を支出する場合、以下の2つの要件を満たしていれば、出向先法人の支出した事業年度において損金(経費)に算入することができます

  • あらかじめ定めた負担区分に基づいて定期的に支出していること。
  • 支出する金額が、出向期間に対応する退職給与の額として合理的に計算された金額であること。

なお、この負担金の損金算入は、出向者が出向先法人で役員に就任したケースであっても認められます

(2). グループ会社間の異動で退職時に一括支給する場合(個別通達)

出向や転籍などグループ会社間で異動があるたびに退職金を支給すると、在職期間に応じて支給額の乗率が上がる一般的な計算方法では、異動の激しい役員とそうでない役員との間で通算の支給額に大きな差が生じてしまうという問題があります。

これに対応するため、異動の都度退職金を支給せず、「グループのすべての会社から退職するときに一括して退職金を支給し、それをその役員が在任した各社で分担して損金算入する」という方法を認める法人税の個別通達があります

この特例を適用して、確定時(グループ内の全社から退職して取締役会で決議したとき)に各社が負担分を損金処理するためには、以下の①~⑤のすべての要件を満たす必要があります

通算支給
役員に対する退職金(功労金を含む)は、グループのすべての会社から退職するときに、グループ内の在職年数を通算して支給すること。
昇格時の不支給
使用人から平役員に昇格した時に退職金の支給はしないこと。
各社の負担額の計算
退職役員が在職した各社では、退職金の支給時に、「その会社での(役付)役員としての在職期間と退職時の基本給月額に応じて計算された額」に、その会社の退職時からグループ全社退職時までの期間の割増計算をした額を基準として、各社で按分した額を負担すること。
異動時の株主総会決議
退職役員が在職した各社では、その役員がグループ内の他社へ異動したときの株主総会において、次のことを決議すること。
・役員退職金を支給すること。
・支給の時期はグループ内のすべての会社から退職するときとし、支給額は上記③により計算した金額を取締役会で定めること。
事前の協定
グループ内の各社間では、あらかじめ協定を結ぶこと。

4.兼務役員の出向負担金の取扱い

出向元および出向先の両方で取締役を兼務している役員に関する「出向負担金」のやり取りは、税務調査において出向先法人から出向元法人への「寄附金」と認定され、損金算入が否認されるリスクがあるため厳重な注意が必要です。

過去の裁判例(平26.2.20東京地判)等も踏まえ、詳しい取り扱いと適正な対応方法について解説します。

(1). そもそも「兼務」と「出向」は相容れないという考え方

「出向」とは本来、「出向元法人に在籍したまま、相当長期間にわたって出向先法人の業務に従事すること」を指します。 しかし、出向元と出向先の両方で引き続き取締役として業務に従事している(兼務している)場合、裁判等では「そもそも出向の意義から外れている(単なる兼任にすぎない)」と判断される傾向にあります。会社と委任関係にある役員を「出向」という形態で扱うこと自体に無理があり、税務トラブルの原因となります。

(2). 出向負担金が「寄附金」と認定されるリスク

上記のように「実質的には単なる兼任である」と判断された場合、出向先法人が出向元法人に対して支払った「出向負担金」は、給与負担金としては認められず、出向先法人から出向元法人への「寄附金」として認定される可能性があります。寄附金とみなされた場合、一定の限度額を超える部分は損金に算入できなくなります。

(3). 税務リスクを回避するための適正な対応

このような兼務役員に対する報酬や負担についての税務トラブルを避けるためには、以下のいずれかの対応をとるのが適切です。

① 各社から「直接支給」する(原則)
出向元と出向先の各社が、その役員の業務の実態や貢献度(応益負担)に応じて報酬額を算定し、「それぞれの会社から当該役員に対して直接、役員報酬として支給する」のが最も確実な方法です。各社の負担額が相応であれば、それぞれの会社において適正に損金算入でき、課税上の問題は生じません。 なお、この場合であっても、実際の応益負担と著しく異なる(実態に見合わない高額な報酬を一方の会社が負担しているなどの)場合には、寄附金とみなされる可能性があるため注意が必要です。

② 子会社側を「無報酬」とし、負担金のやり取りをしない
実務上よく見られる対応として、親会社の取締役が子会社や関連会社の取締役を兼務する場合、子会社側の役員報酬を「無報酬」とし、給与負担金等のやり取りを一切行わないというケースが多くあります。このように負担金の授受がなければ、当然ながら寄附金の課税問題は生じません

新屋賢人

「親会社と子会社の取締役を兼務する役員」について、親会社からの出向扱いにして子会社から出向負担金を徴収するという処理は、税務上「寄附金」とみなされる危険な処理です。負担金のやり取り(精算)はやめ、各社が業務実態に応じて役員個人へ直接報酬を支払うか、子会社側を無報酬とする形に切り替えることをお勧めします。

5.海外子会社へ出向した者への給与負担金

海外子会社へ出向した者に対する給与負担金(出向負担金)の税務上の取り扱いについては、国内の子会社へ出向した場合と基本的な考え方は同じですが、「寄附金課税」や「移転価格税制」のリスクがあるため、より慎重な対応が求められます

詳しい取り扱いや注意点は以下の通りです。

(1). 原則と、損金算入が認められるケース(較差補てん)

出向者への給与は、原則として全額を海外子会社が負担すべきものとされています。

しかし、アジア諸国の子会社などにおいて現地の給与水準が日本より相対的に低い場合、海外子会社が実質的に負担すべき金額を負担したうえで、日本親会社が給与水準の「較差(格差)補てん」として合理的な金額を負担しているのであれば、その部分は日本親会社において損金(経費)に算入することが認められます。 また、出向先が海外であるために日本親会社から支給する「留守宅手当」についても、同様に出向負担金として損金算入が可能です。

(2). 損金不算入(寄附金・移転価格税制)となるリスク

以下のようなケースでは、日本親会社が負担した給与が「格差補てん」とは認められず、海外子会社への「寄附金」として取り扱われるリスクがあります

  • 海外子会社から出向負担金の徴収がなく、すべて日本親会社で給与を負担している場合など、実質的な対価性がない無償取引とみなされた場合

税務上、50%以上の株式を直接または間接的に保有する関係にある外国法人は「国外関連者」と呼ばれます。この国外関連者への寄附金に該当してしまった場合、一般的な寄附金とは異なり、全額が損金不算入となってしまいます。 また、給与負担金の金額の多寡によっては「移転価格税制」の対象となることもあり、この場合も全額が損金不算入となります。

(3). 税務上の問題を避けるための注意点

海外子会社の出向負担金が寄附金等とみなされないためには、事前に以下の3点をしっかりと整備しておく必要があります。

  1. 海外子会社における現地の給与水準(職能や職責別)を明確に定めておくこと。
  2. 日本親会社と海外子会社との間で出向契約を締結し、出向の合意を明確にしておくこと。
  3. その出向契約の中に、給与負担金の額を明確に定めておくこと。

6.まとめ

出向役員に対する出向負担金の税務上の取り扱いは、「出向元での立場」や「出向先での役位(役員か従業員か)」、さらには「国内か海外か」によって適用されるルールが大きく異なります。

特に出向先で役員に就任する場合、出向負担金を損金算入するためには、通常の役員報酬と同様に「定期同額給与」や「事前確定届出給与」の厳格な要件を満たす必要があります。また、実態が伴わない兼務役員に対する出向負担金や、海外子会社への不合理な負担は、「寄附金(全額損金不算入)」と認定される重大なリスクをはらんでいます。

税務調査での指摘を防ぐための最大の防衛策は、以下の3点です。

  1. 親子会社間で「出向契約書」を明確に締結すること
  2. 負担金の算定根拠(格差補てんの合理性など)を書面で残すこと
  3. 名目だけでなく、出向・兼務の「実態」を伴わせること

役員が関わる出向負担金の設定や見直しを行う際は、過去の慣例だけで判断せず、事前に税務リスクを精査することが不可欠です。少しでも判断に迷う取引や、兼務役員・海外出向が絡むケースについては、グループ間での契約を締結する前に、税理士などの専門家へご相談されることを強くお勧めします。

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この記事を書いた人

コムレイド税理士事務所_代表新屋賢人のアバター コムレイド税理士事務所_代表新屋賢人 税理士(コムレイド税理士事務所 代表)

町田市にあるコムレイド税理士事務所の代表税理士の新屋賢人です。税理士(日本税理士会連合会登録)。大学卒業後、中堅税理士法人で5年間、業界最大手である国際四大会計事務所(BIG4)のEY税理士法人で8年間、計13年間の実務経験があります。
30代ですが、すでに法人・個人問わず幅広い業務を経験しております。BIG4という業界最大手で得た経験・知識を生まれ育った街に還元したいという強い思いから独立を決めました。

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