【町田市の税理士が解説】有価証券の譲渡による損益に関する税務を徹底解剖!原則から特例まで《基礎ログ》

ミミレイドン

ボス、おはようございます!
2026年4月8日のテーマはなんでしょうか?

新屋賢人

今朝は、法人の税務実務において頻繁に登場し、かつ非常に重要である『有価証券の譲渡による損益』について整理していきたいと思います。

ミミレイドン

有価証券の売買ですね。株式や債券を売却したときの利益や損失の計算は、日常的な商品の販売とは少しルールが違うと聞いたことがあります。

新屋賢人

おっしゃる通りです。有価証券の譲渡については、法人税法第61条の2をはじめとする各規定において、いつの事業年度に計上すべきか、いくらを対価や原価として計算すべきか、そして信用取引や組織再編が絡む場合の特例など、非常に緻密なルールが定められております。

ミミレイドン

なるほど、複雑そうですね。お客様にも正しく説明できるように、基礎からしっかりと教えていただきたいです。

新屋賢人

承知いたしました。それでは、法人税法の原則的な規定から、法人税基本通達に示された具体的な計上タイミング、そして実務で押さえておくべき例外規定まで、確認していきましょう。

1. 有価証券の譲渡による損益の計上時期(原則的な取扱いと通達の具体例)

法人が有価証券を譲渡(売却)した場合、その利益や損失をいつの事業年度の損益として計上するのでしょうか。まずはこの大原則から確認いたします。

目次

法人税法上の大原則(約定日基準)

法人税法第61条の2第1項によれば、有価証券の譲渡による譲渡利益額又は譲渡損失額は、原則として「その譲渡に係る契約をした日」の属する事業年度の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入することとされています。 一般的な商品の販売などでは、目的物を引き渡した日に売上を計上する「引渡日基準」が原則ですが、有価証券については、売買の契約が成立した時点(約定日)から価格変動リスク等が買手側に移転するという金融商品の性質を踏まえ、税務上も明確に「約定日基準」を採用しております

法人税基本通達による具体的な計上時期

実務上、有価証券の譲渡形態は多岐にわたるため、法人税基本通達2-1-22において、譲渡の形態ごとの具体的な収益計上時期が明らかにされています。

  1. 証券会社等への委託契約により有価証券を譲渡する場合
    その委託した有価証券の実際の売買取引が成立した日に計上します。
  2. 証券会社等との相対取引により有価証券を売却する場合
    書面に記載される約定日売買契約書の締結日など、その相対取引の約定が成立し効力を有することとなる日において計上します。
  3. みなし配当が生じる特殊な譲渡等の場合
    法人の合併や分割型分割、株式交換などの組織再編成によって有価証券が譲渡(消滅)したとされる場合には、合併の効力を生ずる日、分割の効力を生ずる日、または株式交換の効力を生ずる日(新設合併等の場合は設立登記の日)において計上します。 また、発行法人からの自己株式の取得に応じた場合や残余財産の分配を受けた場合などについては、それぞれの取得の日や分配の効力が生ずる日に計上することになります。
新屋賢人

実務において最も間違いやすいのが、事業年度末付近で行われた上場株式の売却でございます。証券会社を通じて売却した場合、約定日と実際の資金の受渡日には数日のタイムラグがあります。税務上はあくまで『約定日』を含む事業年度の損益となりますので、期またぎの取引については証券会社の取引報告書等で約定日を必ず確認するようにしてください。

2. 有価証券の譲渡損益の計算方法と譲渡原価の算定ルール

次に、計上すべき譲渡利益額や譲渡損失額をどのように計算するのかについて解説いたします。

譲渡損益の計算式

法人税法上、譲渡損益は以下の計算式により算定します。
・譲渡利益額 = その有価証券の譲渡対価の額 − その有価証券の譲渡原価の額
・譲渡損失額 = その有価証券の譲渡原価の額 − その有価証券の譲渡対価の額

譲渡対価の額の考え方

ここでの譲渡対価の額とは、その有価証券の譲渡の時における「有償による譲渡により通常得べき対価の額」を指します。 ただし、法人の解散による残余財産の分配や自己株式の取得への応募など、対価として受け取った金額のうちに法人税法第24条の規定により「みなし配当(受取配当等)」とされる金額が含まれている場合には、そのみなし配当の金額を控除した残額が、ここでの譲渡対価の額となります。

譲渡原価の額と一単位当たりの帳簿価額の算出方法

譲渡原価の額は、法人があらかじめ選定した「一単位当たりの帳簿価額の算出の方法によって算出した金額に、譲渡をした有価証券の数を乗じて計算します。 法人税法施行令第119条の2によれば、この一単位当たりの帳簿価額の算出方法には、以下の二つの方法が定められています。

  1. 移動平均法
    有価証券を銘柄ごとに区別し、取得をする都度、その取得直前の帳簿価額と今回取得した有価証券の取得価額の合計額を、その総数で除して平均単価を算出し、これを一単位当たりの帳簿価額とする方法です。
  2. 総平均法
    有価証券を銘柄ごとに区別し、期首に有していた有価証券の帳簿価額と、その事業年度中に取得した有価証券の取得価額の総額との合計額を、その総数で除して平均単価を算出し、これを一単位当たりの帳簿価額とする方法です。

法定算出方法と届出の手続

法人は、これらの算出方法を有価証券の区分(売買目的有価証券、満期保有目的等有価証券、その他有価証券)および種類ごとに選定し、有価証券を取得した日の属する事業年度の確定申告書の提出期限までに、所轄税務署長に届け出なければなりません。 もし届出をしなかった場合には、法定算出方法である「移動平均法」が強制的に適用されることになります。

新屋賢人

株式の分割や併合、あるいは評価損を計上した場合などには、帳簿価額の調整が必要となります。とくに総平均法を採用している場合、期中にそうした事象が発生すると、その前後で期間を区切って単価を再計算する特例規定(法人税法施行令第119条の4)がございますので、特殊な資本異動があった年の単価計算には十分な注意が必要でございます。

3. 特殊な有価証券取引における特例と例外的な取扱い

通常の売買とは異なる、信用取引や空売り、さらには組織再編に関連する特例的な取扱いについて解説いたします。

有価証券の空売りや信用取引等の特例

法人税法第61条の2第20項および第21項において、有価証券の空売り、信用取引、発行日取引の方法により売付け又は買付けを行った場合の特例が設けられています。 信用取引などは、売付けや買付けを行った時点ではまだ決済が完了しておらず、その後に反対売買等を行うことで初めて差金が確定します。そのため、これらの取引については、実際に「買戻し」や「反対売買」をして決済を行った時点において譲渡損益を計上し、その決済に係る買戻し等の契約をした日が「譲渡に係る契約をした日」として取り扱われます。 つまり、信用取引等における損益計上のタイミングは、決済をした時になるということです。

組織再編成における譲渡損益の特例(帳簿価額による引継ぎ)

法人が所有する株式の発行法人が合併や分割などの組織再編を行った場合、原則として旧株を譲渡して新株を取得したとみなされます。 しかし、法人税法第61条の2第2項等の規定により、いわゆる「金銭等不交付合併」や一定の「特定無対価合併」に該当する場合、すなわち適格組織再編等により合併法人等の株式のみが交付されるようなケースにおいては、譲渡対価の額は「旧株の直前の帳簿価額に相当する金額」とされます。 対価の額と原価の額が同額となるため、結果として譲渡損益は計上されず、税務上の課税が繰り延べられる(新株に旧株の簿価が引き継がれる)ことになります。

新屋賢人

お客様が保有している上場株式が、他社との経営統合により株式交換や合併の対象となることが実務ではよくあります。交付されたのが株式のみであれば基本的には簿価が引き継がれ損益は出ませんが、現金やその他の財産が交付される非適格再編に該当した場合は、みなし配当の認識と譲渡損益の計上が同時に発生する非常に複雑な処理となりますので、適格要件の判定は慎重に行う必要がございます。(なお、非適格再編で株式のみが交付された場合、旧株の「譲渡損益」は出ませんが、被合併法人の純資産と資本金等との差額により株主には「みなし配当」が発生します。)

4. 期末における有価証券の評価(売買目的有価証券の時価評価)

事業年度の途中で譲渡が行われなかった有価証券であっても、期末において評価損益の計上が義務付けられるものがあります。

売買目的有価証券の時価評価(法人税法第61条の3)

法人が事業年度終了の時において有する有価証券のうち、「売買目的有価証券」に区分されるものについては、期末の時価によって評価額を算出する「時価法」の適用が強制されます。 売買目的有価証券とは、専任のトレーダーが短期的な価格変動を利用して利益を得る目的で取得した専担者売買有価証券や、取得時に帳簿に短期売買目的である旨を記載した有価証券を指します。 この時価法により生じた評価益または評価損は、実現した譲渡損益ではありませんが、その期末時の属する事業年度の所得の金額の計算上、益金の額または損金の額に算入しなければなりません

売買目的外有価証券の評価

一方で、売買目的有価証券以外の有価証券(満期保有目的等有価証券やその他有価証券など)については、期末において「原価法」により評価額を算出します。 企業会計上、その他有価証券について期末に時価評価を行い、評価差額を純資産の部に直接計上する処理(全部純資産直入法等)が行われることがありますが、税務上はあくまで原価法となるため、この会計上の評価損益は税務申告において申告調整(加算または減算)により取り消す必要があります

有価証券の区分別期末評価と損益計上の比較表

有価証券の区分期末の評価方法評価損益の税務上の取扱い
売買目的有価証券時価法当期の益金または損金に算入する
満期保有目的等有価証券原価法(※)益金・損金には算入しない
その他有価証券原価法益金・損金には算入しない

(※償還期限と償還金額の定めがある場合は、取得価額と償還金額の差額を期間配分して調整する処理が行われます。)

新屋賢人

期末における有価証券の時価評価は、あくまで『売買目的有価証券』に限定されている点が税務上の大きな特徴でございます。会計上時価評価されているからといって、税務上もそのまま益金や損金になるわけではありません。決算書と申告書との差異を正しく認識し、別表4や別表5(1)での申告調整を漏らさず行うことが、税理士としての腕の見せ所でございます。

まとめ

法人税法における有価証券の譲渡による損益計算は、企業活動における投資や資金運用の結果を正確に課税所得に反映させるための非常に重要なルールです。

大原則である「約定日基準」による計上時期の把握に始まり、移動平均法や総平均法に基づく適正な譲渡原価の算定、信用取引等の特殊な決済タイミングの判断、そして組織再編やみなし配当が絡む場合の複雑な対価の計算など、確認すべき論点は多岐にわたります。 さらに、期末における時価評価の要否は、その有価証券の保有目的区分によって明確に分けられており、企業会計と税務との間でズレが生じやすい代表的な項目となっています。

これらの規定を正しく適用するためには、単に証券会社の取引履歴を見るだけでなく、自社の有価証券の区分や評価方法の届出状況、組織再編の適格性の有無などを総合的に判断する力が求められます。

新屋賢人

有価証券の税務処理についてご不安な点や疑問が生じた際は、決して自己判断で処理を進めず、専門家である税理士にぜひご相談ください。私たちコムレイド税理士事務所が、法令や最新の通達に基づき、皆様の適正な税務申告を全力でサポートさせていただきます。

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この記事を書いた人

コムレイド税理士事務所_代表新屋賢人のアバター コムレイド税理士事務所_代表新屋賢人 税理士(コムレイド税理士事務所 代表)

町田市にあるコムレイド税理士事務所の代表税理士の新屋賢人です。税理士(日本税理士会連合会登録)。大学卒業後、中堅税理士法人で5年間、業界最大手である国際四大会計事務所(BIG4)のEY税理士法人で8年間、計13年間の実務経験があります。
30代ですが、すでに法人・個人問わず幅広い業務を経験しております。BIG4という業界最大手で得た経験・知識を生まれ育った街に還元したいという強い思いから独立を決めました。

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