ミミレイドンボス、おはようございます!
今朝のテーマはなんでしょうか?



税込経理と税抜経理って聞いたことありますか?



免税事業者は税込経理とは聞いたことありますが、あんまり気にしていませんでした。



一見、単なる記帳方法の違いに思えますが、実は法人税や所得税の計算、そして経営判断の正確さにまで直結する、非常に重要な論点です。
この税込経理(税込経理方式)と税抜経理(税抜経理方式)について、それぞれのメリット・デメリットなどを誰にでも分かりやすく解説します。
1.はじめに
(1).税込経理・税抜経理とは何か?
消費税の課税事業者である事業者が、所得税または法人税の所得金額を計算するにあたり、消費税等の処理をどう行うかを選択する方法が、税込経理方式と税抜経理方式です。
| 方式 | 処理の定義 |
| 税込経理方式 | 取引金額に消費税を含めて(税込金額で)経理処理する方法。 |
| 税抜経理方式 | 取引金額と消費税額を分けて(税抜金額と消費税額で)経理処理する方法。 |



課税事業者は税込経理・税抜経理いずれも選択可能です。一方で、免税事業者は税込経理のみ選択可能となります。
(2).なぜこのテーマが重要なのか(消費税申告・経理効率・税務調査対応など)
この選択が重要である理由は、税務上の有利不利や経営の透明性に影響を及ぼすからです。
- 経理の効率と正確性:税込経理は記帳が簡便ですが、期中の正確な損益を把握するのが難しくなります。一方、税抜経理は手間がかかるものの、消費税に左右されない純粋な利益を把握できます。
- 税務上の有利不利:交際費や固定資産(減価償却資産)の損金算入の判定基準額は、採用した経理方式によって税込/税抜どちらで判断するかが変わるため、法人税や所得税の納税額に直接影響します。
- 消費税の納税予測:税抜経理では期中から消費税の納税額の概算を把握しやすいのに対し、税込経理では決算時の「租税公課」計上まで正確な納税額が把握できず、「思ったより利益が出なかった」という事態につながる可能性があります。
2.税込経理と税抜経理の基本的な違い(消費税の記帳方法や期末の仕訳処理)
具体的な仕訳(記帳)の方法を見ていくことで、両者の違いが明確になります。
| 項目 | 税込経理方式 | 税抜経理方式 |
| 売上・仕入 | 税込金額で計上 | 本体価格(税抜)と消費税を分けて計上 |
| 使用勘定科目 | 売上、仕入、経費など (消費税の勘定科目なし) | 仮受消費税等(売上時)、仮払消費税等(仕入時)を使用 |
具体的な仕訳例(標準税率10%の場合)
【取引例】仕入時:7,000円(税抜)の商品を掛けで仕入れた(税込7,700円)
| 方式 | 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 税込経理 | 仕入 | 7,700 | 買掛金 | 7,700 |
| 方式 | 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 税抜経理 | 仕入 | 7,000 | 買掛金 | 7,700 |
| 仮払消費税等 | 700 |
【取引例】売上時:10,000円(税抜)の商品を現金で販売した(税込11,000円)
| 方式 | 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 税込経理 | 現金 | 11,000 | 売上 | 11,000 |
| 方式 | 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 税抜経理 | 現金 | 11,000 | 売上 | 10,000 |
| 仮受消費税等 | 1,000 |
期末の消費税清算処理
【前提】納付すべき消費税額が300円の場合(仮受1,000円 – 仮払700円)
| 方式 | 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 税込経理 | 租税公課 | 300 | 未払消費税等 | 300 |
| 方式 | 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
| 税抜経理 | 仮受消費税等 | 1,000 | 仮払消費税等 | 700 |
| 未払消費税等 | 300 |
税込経理方式の場合、納付税額は「租税公課」として費用(損金)に計上されます。一方、税抜経理方式では、仮受と仮払を相殺した差額が「未払消費税等」として負債に計上されます。



ちなみに、上記は納付の仕訳となっておりますが、税込経理で還付の場合の勘定科目は、「雑収入」計上が一般的です。
参照:国税庁ホームページタックスアンサー No.6375 税抜経理方式または税込経理方式による経理処理
3.メリット・デメリット比較
(1).税込経理のメリット・デメリット
| 区分 | メリット | デメリット |
| 経理処理 | 期中の処理が非常に簡単で、税込価格をそのまま記帳できる。 手書きや表計算ソフトでの記帳に適する。 | 期末の清算処理が煩雑になりがち。 期中の損益が消費税込みの金額で把握しづらい。 |
| 税務/資金繰り | 特別償却や特別控除を利用する場合、取得価額が税込で判定され、控除額が大きくなり有利になる可能性がある。 | 少額減価償却資産や交際費等の金額判定で不利になる(判定基準の枠が狭くなる)。 還付金が出た場合、雑収入として収益計上されるため所得が増加する。 |
| その他 | 会社設立から免税期間(2期目まで等)を経て課税事業者になった後も、処理方法を統一して継続できる。 | 免税事業者は税込経理方式しか適用できない。 |
(2).税抜経理のメリット・デメリット
| 区分 | メリット | デメリット |
| 経理処理 | 期中から正確な損益(純粋な利益)を把握できる。 消費税の納税予測が容易(仮受・仮払残高で概算把握可能)。 | 期中の経理処理に手間がかかる(消費税を区分するため)。手書きや表計算ソフトでの記帳には向かない。 |
| 税務/資金繰り | 少額減価償却資産(30万円未満)の判定で有利(適用範囲が広がる)。 交際費等の損金算入限度額(800万円)の判定で有利。 償却資産税の取得価額判定でも有利。 還付金が出た場合、未収消費税等として資産計上され、所得に影響を与えない。 | 特別償却や特別控除の判定において、取得価額が小さくなるため、控除額が小さくなり不利になる可能性がある。 |



上記のほかだと、償却資産税の課税標準の算定に使用する取得価額は、税込経理の場合は税込の金額で計算することとされておりますので、税抜経理のほうが償却資産税が低くなります。



税抜経理のメリットの補足ですが、30万円未満の少額資産であれば、一定要件のもと、一括で損金算入することができる特例があります。その30万円の判定方法ですが、例えば、備品(税込金額319,000円)を購入した場合、税込経理の場合、税込金額である319,000円で判定するため、少額減価償却資産の特例の対象外となります(つまり、固定資産として資産計上し、数年にわたり減価償却で損金算入していくことになります。)。
一方で、税抜経理の場合、税抜金額、290,000円(319,000円÷1.1)で判定するため、特例の対象となり、全額を損金に算入することができます。したがって、税抜経理の場合の方が、特例の対象となる確率が上がるため、メリットとして挙げさせていただきました。
「交際費等の損金不算入」についても、中小企業の場合、交際費の合計が最低でも年間8,000,000円まで損金算入が認められており、この金額判定も、先ほどの減価償却資産の判定と同様に、税抜経理の方が有利です。



交際費等の損金不算入制度については、こちらの記事をご覧ください。
【町田市の税理士が解説】交際費等の損金不算入制度の基礎知識について
4.実務での処理方法と注意点
(1).会計ソフトでの設定
現代では会計ソフトの普及が進んでおり、手書きの時代とは異なり、税抜経理の事務的な負担は大幅に軽減されています。会計ソフトに税込金額を入力すれば、自動的に税抜処理を行うことが可能です。
(2).消費税申告との関係(課税方式との整合性)
消費税の計算方式(原則課税または簡易課税)と経理方式(税込/税抜)は、それぞれ独立して選択できますが、相性の良さがあります。
- 簡易課税制度
課税売上高に「みなし仕入率」を掛けて控除額を計算するため、実際の消費税取引額を細かく把握する必要がありません。したがって、仕訳が簡単な税込経理方式と相性が良いとされています。 - 原則課税(非課税売上が一定数ある場合や控除対象外消費税が生じる場合)
控除対象外消費税(仕入税額控除できない消費税)が生じる事業者は、その処理が容易な税込経理と相性が良いとされています。



消費税の簡易課税制度については、こちらの記事をご覧ください。
【町田市の税理士が解説】今さら聞けない、消費税の簡易課税制度とは?
(3).税務調査での指摘ポイント(帳簿の整合性・税区分の誤り)
税務調査において最も重要となるのは、選択した経理方式の一貫性(継続適用)です。
- 原則同一方式の適用
原則として、すべての取引について同一の経理方式を適用する必要があります。例外的に、収益に係る取引について税抜経理を選択適用する場合に限り、(1)棚卸資産、(2)固定資産、繰延資産、(3)経費などのグループごとに異なる会計処理を行うことは可能ですが、個々の固定資産や経費ごとに使い分けることはできません。 - インボイス制度下の特例
インボイス制度導入後、適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れについては、仕入税額控除の適用を受ける消費税額がないのが原則です。しかし経過措置期間(令和11年9月30日まで)中は、一定割合(80%または50%相当額)の控除が認められます。この経過措置の適用を受ける場合、その相当額を仮払消費税等とし、残額を取引の対価の額に含める処理が必要です。
参照:国税庁ホームページタックスアンサー No.6905 税抜経理と税込経理の選択適用(法人の場合)



消費税のインボイス制度については、こちらの記事をご覧ください。
【町田市の税理士が解説】インボイス制度(適格請求書等保存方式)の基礎(Day1)
(4).処理方法を変更することは可能か?
税込経理から税抜経理へ、またはその逆への変更は可能です。
ただし、変更時に重要な注意点があります。それは、過去に取得した固定資産の残高の取り扱いです。
経理方式を変更した後も、繰り越される商品や固定資産の金額は、従前の会計処理(例えば税込経理)の金額をそのまま用いて減価償却を行っていくことになります。このため、税抜経理方式に変更したとしても、過去の固定資産の残高は税込経理の金額に基づいて計算され続けるため、会計処理が矛盾する部分が生じますが、実務上はこのように経理します。
5.どちらを選ぶべきか?判断基準
最終的にどちらを選ぶべきか、事業者の状況に応じた判断基準を解説します。
(1).課税方式(原則 vs 簡易)
- 簡易課税制度を選択している場合
税込経理方式が推奨されます。簡易課税は仕入税額控除を「みなし」で行うため、消費税の区分経理(税抜処理)のメリットが薄く、処理が簡単な税込経理が合理的に見えます。 - 原則課税を選択し、交際費や設備投資が多い場合
税抜経理方式が断然有利です。特に少額減価償却資産の特例(30万円未満)や交際費の損金不算入限度額(800万円)の判定で、税抜金額で判断できるため、節税効果が高まります。
(2).業種・取引形態(BtoCかBtoBか)
- 上場企業やそのグループ会社
企業会計基準の適用が強制されるため、原則として税抜経理方式を採用する必要があります。 - 建設業など、公共工事の入札申請を行う事業者
申請書類の記載が税抜きで求められることが多いため、税抜経理方式を採用する方が実務上は楽です。 - 設備投資が少ない中小零細企業や個人事業主
税制上のメリット(減価償却や交際費)の影響が小さいため、処理の簡便さから税込経理方式を採用するケースも多いです。
(3).経理体制(自計化か記帳代行か)
- 手書き、または経理経験が浅く簡便さを求める場合
税込経理方式が適しています。 - 会計ソフトを導入し、経営管理の正確性を重視する場合
税抜経理方式が適しています。税抜経理であれば、消費税の影響を受けない純粋な損益を期中から把握でき、経営判断に役立ちます。
6.まとめ・税理士からのアドバイス
(1).青色申告法人なら税抜経理が原則だが、実務に応じた柔軟な選択も可能
法人の場合、特に正確な損益計算と税制優遇の適用という観点から、税抜経理方式が採用される事業者が多いのが実情です。これは、税抜経理の方が「純粋な利益」を把握しやすく、経営管理に役立つためです。
しかし、前述の通り、簡易課税を選択している場合や、特別控除を多く利用する企業など、事業の実態や選択した消費税の課税方式によっては、税込経理の方が有利または簡便である場合もあります。
重要なのは、自社の状況(課税方式、事業規模、設備投資の有無、経理体制)を総合的に判断し、一度決めたら原則として継続して適用することです。
(2).消費税インボイス制度との関係にも注意
2023年10月1日からインボイス制度(適格請求書等保存方式)が導入され、免税事業者から課税事業者になった方も多いでしょう。
• 免税事業者だった頃:税込経理方式のみが適用されていました。
• 課税事業者になった後:税込経理と税抜経理の選択肢が生まれます。
インボイス制度導入後、免税事業者等(適格請求書発行事業者以外の者)からの課税仕入れについては、経過措置期間中は控除できる消費税額が段階的に減額されます。税抜経理を採用している事業者は、この控除できなかった消費税相当額を、仕入等の対価の額に含めて所得税または法人税の所得計算を行う必要があるため、経理処理がより複雑化しています。
経理処理の正確性と税制上のメリットを最大限享受するためにも、税抜経理方式への移行を検討することをお勧めします。



税込経理と税抜経理のどちらを選ぶべきか、判断に迷う場合は、必ず専門家である顧問税理士に相談してください。特に売上が5,000万円を超え、簡易課税の適用が解除される可能性がある事業者、あるいは設備投資が多い会社は、その影響が大きくなるため、安易に税込経理を選択すべきではありません。
税理士は、お客様の事業計画や節税ニーズに基づき、最も有利な処理方法を提案することが可能です。
相談できる税理士がいない場合には、お気軽にこちらまでお問い合わせください。










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