【町田市の税理士が解説】内閣府又は都道府県による公益法人への立入検査の基礎知識について

た、大変ですボス!内閣府からお客様のところに立入検査が入ると連絡がありました!立入検査初めてで、、、怖いです、どうしましょう。。。

なんか昨日も聞いたような。

内閣府が動くような凶悪なことをやってしまったのでしょうか。。。

そんなに焦らなくても大丈夫です。立入検査は、公益法人に対して、公益認定基準を満たしているか、適正な運営がなされているかを確認するために、内閣府や都道府県が行う行政監督手続です。2025年4月改正の前は、3年に1度の周期で必ず行われていました。改正後は10年に1度の周期になるといわれています。今回は立入検査の基礎知識について学んでいきましょう。

2025年4月改正?

2025年4月に公益法人制度改正が行われました。この改正では財務規律の柔軟化やガバナンス強化など、法人運営に大きな影響を与えています。そして、この改正に伴い、行政庁(内閣府など)による立入検査の運用方法も根本的に変わりました
従来の画一的な検査から、よりメリハリをつけた「事後の重点的なチェック」へ移行した今、公益財団法人が何を求められ、どのように備えるべきか、具体的な実務に落とし込んで解説していきます。

目次

1. 立入検査とは

公益法人にとっての立入検査とは、行政庁(内閣総理大臣または都道府県知事)が、公益法人の事業の適正な運営を確保するために必要な限度において、運営状況や帳簿書類を検査する行為を指します。

立入検査の法的根拠は、「公益社団法人及び公益財団法人の認定等に関する法律」(認定法)第27条第1項に定められています。これは、法令違反が疑われる場合に、勧告、命令、あるいは公益認定の取消しといった監督処分を行う必要性を判断するための事実確認の手段です。

2025年4月以降の新制度では、行政の役割が「一律の事前規制」から「重点化した事後チェック型」へと転換されたため、検査の目的と手法が明確に区分されるようになりました。

過去に内閣府が立入検査の考え方について公表しておりますので、気になる方はこちらもご確認ください。

2. 立入検査の種類

新制度下では、立入検査は「点検調査」と「重点検査」の2種類に明確に区分されます。

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検査の種類目的対象法人・頻度検査手法の原則
点検調査遵守事項に関する注意喚起と制度理解の醸成全ての法人に対し定期的に実施。過去に問題がない法人はインターバルが延長される(概ね10年以内)。新規認定法人には早期に実施。自己点検(自己チェックシート等の提出)と、役員等との対話に重点を置く。書類の網羅的な確認は行わない。
重点検査定期提出書類や情報提供等により、問題点が疑われる法人の実態や事実関係を直ちに確認する定期提出書類の確認や外部情報提供により、問題発生の可能性が高いと認められる法人が対象。従来の立入検査に近い形。確認すべき事項に機動的・集中的に検査を実施し、不適切事案には果断な処分を実施。

このメリハリ付けにより、日頃から適正な運営をしている法人は検査頻度が減る可能性があります。

3. 立入検査の流れ

定期的な検査である「点検調査」を例に、具体的な流れを解説します。

STEP
事前連絡・日程調整:

◦ 行政庁から対象法人である旨の連絡が入ります。

    ◦ 検査手法が自己点検方式と対話方式で進められることが伝えられ、日程調整が行われます。

    ◦ 通常、点検調査では公文書としての実施通知は発出せず、メールでの事務連絡のみとなる場合があります(ただし、地域の実情により正式通知を発出する行政庁もあります)。

STEP
自己点検資料の提出:

◦ 概ね1か月前に「自己チェックシート」と「備置き書類一覧」がメールで送付されます。

    ◦ 法人はこれらを点検調査の1週間前を目途に回答提出します。この際、日頃の法人運営における疑問点や相談事項をあわせて記載することが推奨されています。

STEP
当日の実施(対話中心)

◦ 検査時間は2〜3時間程度とされ、実施人数は原則2名(主担当者+1名)です。

    ◦ 当日は、挨拶と法人からの概要説明の後、自己チェックシートの内容確認、そして対話・相談・質疑応答に重点が置かれます。行政庁の担当者は、事前にHPなどで事業の実施状況を確認して臨んでいます。

STEP
検査後の措置

◦ 問題点等が判明した場合、行政庁はその場で法人の自主的な改善を促します。

    ◦ 点検調査後、「点検調査実施記録書」が作成され、保存されます。

    ◦ 原則として法人への結果通知や措置状況報告は行われませんが、改善事項が見つかった場合、次年度の事業報告書等の提出時に、その対応状況を確認される場合があります。

4. 立入検査でチェックされるポイント

点検調査においては、提出された自己チェックシート(Governance、経理的基礎、公益目的事業等に関する項目)や備置き書類一覧に基づき、特に新制度下で強化されたガバナンスと財務規律が中心的に確認されます。

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分野主なチェックポイント
(新制度関連)
根拠となる法令等
ガバナンス/役員外部理事・外部監事の設置状況(収益等が3000万円以上の法人は原則必置)と要件適合性。未設置の場合、選任手続きの状況や理由。認定法第5条第15号、第16号
会計監査人の設置状況(収益等が100億円以上、または負債50億円以上の法人は必置)。未設置の場合、選任手続きの見通し。認定法第5条第13号

理事と監事の間の特別利害関係排除
(新基準)。
認定法第5条第12号
役員等の欠格事由への該当有無の確認体制。認定法第5条第10号、第11号
財務・経理区分経理の実施状況(公益目的事業、収益事業等、法人運営に係る経理)。認定法第11条、ガイドライン
役員報酬の支給基準の公表と、基準に則った支給が行われているか。2000万円超の報酬を受ける者がいる場合、その額及び必要理由の記載書類の備置き状況。認定法第20条
正味財産増減計算書(活動計算書)上の支出科目の適正性(内部フローや役員の認識の確認)。ガイドライン
運営実態公益目的事業の実施実態が認定を受けた種類や内容と一致しているか。特に長期間検査を受けていない法人は、公益目的事業のチェックポイントを意識した事業設計をしているか。認定法第15条
理事会・総会の開催状況、議事録の適正性、理事や監事の職務執行状況(ガバナンスの質的確保)。法人法関連規定
備置き書類の整備状況認定法第21条

5. 立入検査に備えるための実務ポイント

新制度下での立入検査、特に「点検調査」にスムーズに対応するための実務上のポイントは、徹底した事前準備と自己点検です。

1. 自己チェックシートの徹底活用

行政庁から送付される「自己チェックシート」と「備置き書類一覧」は、検査のスコープを明確にするためのものです。これらは、単なる提出書類ではなく、法人が自己のコンプライアンス状況を把握し、疑問点を質問する機会として最大限活用すべきです。

2. ガバナンス体制の整備

改正法により義務付けられる外部理事・外部監事、会計監査人の設置(該当法人)については、経過措置期間中であっても、選任手続きの状況や設置の見通しを明確にし、行政庁に説明できるようにしておく必要があります。

3. 備置き書類の完璧な管理

法令上の備置き書類(定款、財産目録、役員名簿、報酬基準、議事録など)が、期間(主たる事務所:5年間、従たる事務所:3年間など) に従って、事務所に備え置かれているかを「備置き書類一覧」で確認します。備置き義務の違反は刑事罰や公益認定取消しにつながりかねない重要な法令上の義務です。

4. 新制度の理解促進

2025年4月以降、財務規律(中期的収支均衡、使途不特定財産規制)や区分経理の方法が変更されています。特に経理担当者は、新会計基準(経過措置あり)や、公益充実資金といった新しい概念を十分に理解しておく必要があります。

6. 提出を求められる可能性が高い資料やデータ

「点検調査」は対話に重点を置くものの、前提として以下の資料やデータの提出が求められ、当日も現物確認が行われる可能性が高いです。

1. 自己点検関連書類:

    ◦ 自己チェックシート

    ◦ 備置き書類一覧

2. ガバナンス・運営関連書類(備置き義務のある書類):

    ◦ 定款

    ◦ 財産目録

    ◦ 役員等名簿

    ◦ 役員等報酬等の支給基準(役員報酬が2000万円を超える者がいる場合はその額と理由を記載した書類も)

    ◦ 社員総会/評議員会および理事会の議事録(招集・決議の手続き確認のため)

3. 会計・事業活動関連書類(定期提出書類):

    ◦ 貸借対照表、損益計算書(活動計算書)及びその附属明細書

    ◦ 事業報告及びその附属明細書(新様式では公益目的事業の実施状況や運営体制の充実への取り組み等が記載されます)

    ◦ 監査報告、会計監査報告(該当法人)

    ◦ 新制度下の財務規律適合性に関する明細(新別表A, B, C等、計算書類に記載がない場合)

    ◦ 会計帳簿(総勘定元帳等。支出科目の適正性を内部フロー確認のために使用)

7. 過去の指摘例(改正前も共通するガバナンス・経理の基本)

従来の立入検査や定期提出書類の確認で指摘が多かった事項は、新制度でも引き続き重要です。

機関運営の不備

理事会と総会(評議員会)を中2週間以上空けずに同日開催していた。役員の選任を一人ひとり個別に行わず、一括決議していた。

報酬・経理の不適正

役員報酬規程に「無報酬」と記載されているにもかかわらず、実際には一定額を支給していた。支給基準とは別に、「お車代」や「特別報酬」といった名目で金銭を支給し、報酬規程と実態が乖離していた。

手続きの懈怠

役員等の変更、役員報酬の支給基準の変更など、変更届出が必要な事項を提出していなかった

備置き義務の違反

役員報酬規程など、法令上事務所に備え置くことが義務付けられている書類が備え置かれていなかった。

公益目的事業の実態

認定を受けている事業を実施していなかった、または認定を受けていない新たな事業を実施していた。

8. 気を付けるべき発言や行動

立入検査は行政庁職員との信頼関係の場でもあります。以下の点に注意しましょう。

1. 虚偽の説明や隠蔽をしない

不正な経理処理や法令違反の事実が発覚した場合、迅速かつ厳正な対処が取られる可能性があります。事実を正直に伝え、今後の自主的な改善策を示すことが、監督処分を回避するための鍵となります。

2. 不確実な情報や憶測で発言しない

検査官の質問に対し、根拠のない憶測や曖昧な情報を即答することは避けるべきです。特に会計処理や法令解釈について自信がない場合は、「確認します」と持ち帰る姿勢が誠実です。

3. 検査官を軽視する態度を取らない

検査官は「立入検査担当職員行動規範」に基づき、丁寧に対応することが求められていますが、法人側も丁寧に対応する姿勢が基本です。行政庁は「公益の増進」という同じ目的に向かうパートナーであるという認識を持つことが大切です。

9. よくある質問

新制度施行後、すぐに外部理事・外部監事を設置できなかった場合、監督を受けますか?

法令改正後、遅滞なく選任や定款変更の準備を開始したにもかかわらず、適任者がいないなどのやむを得ない理由で設置が間に合わなかった場合、行政庁は選任手続きの状況や見通しを説明することを求めますが、基本的にこの件に対する監督は行わないとしています。会計監査人の設置についても同様です。

点検調査で行政庁に提出した書類は公表されますか?

2025年4月1日以降に提出される定期提出書類のうち、納税証明書と国税に関する確認書を除き、すべて行政庁のホームページで公表されます。これには、新様式で記載が必要となった「理事・監事等ごとの報酬等の総額」や「関連当事者との取引の有無」なども含まれますので、個人情報の記載には特に注意が必要です。

新制度の中期的収支均衡のルールはいつから適用されますか?

中期的収支均衡のルールは、令和7年4月1日以降に開始する事業年度から適用されます。この事業年度以降に生じた赤字(欠損額)から、将来の黒字と通算することが可能です。

指摘を受けたら必ず処分される?公益認定が取り消される可能性は?

多くは「改善指導」で済みますので、改善報告書の提出などで終わります。よほど悪質で重大な違反でなければ認定取消までは至りませんので、ご安心ください。

10. まとめ

2025年4月以降の公益法人制度改正は、公益財団法人に自律的なガバナンスの充実と透明性の向上を強く求めています。

立入検査の運用が「点検調査」と「重点検査」に分かれたことは、日頃から法令を遵守し、健全な運営を行う法人にとっては負担軽減のチャンスです。

しかし、その分、定期的な点検調査では「自己点検」と「対話」を通じて、法人の内部管理体制や役員の制度理解度が厳しくチェックされます。

まずは、ガバナンス体制の改正対応を完了させ、次に「自己チェックシート」を活用した自主的なコンプライアンス点検をルーティン化しましょう。これが、新時代の立入検査を乗り切るための最重要実務ポイントです。

皆さまの公益活動が円滑に進むよう、引き続きサポートさせていただきます。

立入検査の基礎について、理解ができました。ところでボスは立入検査について、税理士としてどんなことを意識していますか?

行政庁は「法人自治を大前提としつつ、新制度に適切に対応できるよう支援する視点を持つ」とされています。税理士もこの視点に立ち、単なるミスを指摘するのではなく、適切な法人運営の実現に向けた具体的な助言を行う姿勢が重要です

2025年改正により制度が大きく変わったのであれば、行政庁側の担当者が最新のガイドラインや法令の解釈に不慣れであるケースも想定されますよね?

検査官の指摘が法令に基づかない不毛なものではないか、こちら側が制度の専門家としてしっかりと理解を深め、根拠を示して説明する準備が必要になってきますね。

昨日勉強した税務調査と同じですね!

基本的なスタンスは税務調査と同じです。即答できないような質問や、理事会等の意思決定が必要な事項について、その場で回答を急ぐ必要はありません。「持ち帰って検討する」姿勢を行政庁に伝え、正確な情報を後日回答するようクライアントに助言するようにしてます。

質問に対する対応まで税務調査と同じですね。税務調査に慣れているから、立入検査でも、その経験が活きるんですね!

私も2025年4月以降、3件の点検調査に立ち会いましたが、点検調査は「対話」が重視されます。検査員も親身に相談に乗ってくれますので、公益法人側が日頃抱える疑問や、新制度への対応の難しさ(例:外部理事の選任難)について率直に話し合えるよう、コミュニケーションの橋渡しをすることが税理士としての役割でもあるとも考えています。

勉強になります!

公益法人の顧問税理士や監事は、特殊な知識が必要となりますので、対応できる税理士も限られています。コムレイド税理士事務所は、こうした公益法人の顧問税理士や監事のご依頼も受け付けておりますので、お気軽にこちらまでお問い合わせください。

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この記事を書いた人

町田市にあるコムレイド税理士事務所の代表税理士の新屋賢人です。大学卒業後、中堅税理士法人で5年間、業界最大手である国際四大会計事務所(BIG4)のEY税理士法人で8年間、計13年間の実務経験があります。
30代ですが、すでに法人・個人問わず幅広い業務を経験しております。BIG4という業界最大手で得た経験・知識を生まれ育った街に還元したいという強い思いから独立を決めました。

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