ミミレイドンボス、おはようございます!
今朝のテーマは何でしょうか?



個人の譲渡所得の税負担を軽減できる特例制度の第六弾として、収用交換等の場合の5,000万円特別控除(措法33条の4)について整理して行きたいと思います。
適用できるケースは限られておりますが、要件を満たす場合には、土地や建物の譲渡による譲渡所得(売却益)から最大5,000万円を差し引くことができる強力な節税制度となりますので、確認していきましょう。
1.譲渡所得とは?基本の仕組みをわかりやすく解説(おさらい)
資産の売却を検討される際に、まず押さえておくべき「原則的な譲渡所得の概念、計算式、および税率」について、復習していきましょう。



譲渡所得の基礎知識についてはこちらの記事をご確認ください。
【町田市の税理士が解説】個人の譲渡所得の基礎知識について
(1). 譲渡所得の基本概念
譲渡所得とは、土地、建物、株式、ゴルフ会員権などの資産を売却することによって生じる所得を指します。 単に資産を現金化した金額のすべてに課税されるわけではありません。「その資産をいくらで手に入れ、いくらで売ったか」の差額、つまり売却によって得られた「儲け(利益)」に対して税金がかかる仕組みです。
(2). 原則的な計算式
譲渡所得の金額は、以下の計算式で算出します。
譲渡所得 = 収入金額(売却代金) - ( 取得費 + 譲渡費用 ) - 特別控除額
それぞれの項目の内容は以下の通りです。
- 収入金額
売却によって受け取る代金です。これには、固定資産税・都市計画税の精算金として受け取った金額も含まれます。 - 取得費
その資産を買い入れた代金や、購入時に支払った仲介手数料、登記費用などの合計額です。建物の場合は、所有期間中の減価償却費(価値の減少分)を差し引く必要があります。なお、実際の取得費が不明な場合は、売却価格の5%を取得費(概算取得費)とすることも認められています。 - 譲渡費用
仲介手数料、印紙代、測量費、借家人への立退料、建物解体費など、売却するために直接かかった費用です。 - 特別控除額
今回の記事のテーマであるマイホーム売却時の「3,000万円特別控除」など、一定の要件を満たす場合にのみ利益から差し引ける、非常に強力な節税枠です。
(3). 原則的な税率
譲渡所得は、他の所得と合算せず個別に税額を計算する「申告分離課税」が適用されます。税率は資産の種類や所有期間によって以下のように分類されます。
不動産(土地・建物)の場合
不動産は、売却した年の「1月1日時点」での所有期間によって税率が倍近く変わります。
| 区分 | 所有期間(譲渡年の1月1日時点) | 税率 |
|---|---|---|
| 長期譲渡所得 | 5年を超える | 20.315%(所得税(復興含む)15.315%・住民税5%) |
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | 39.63%(所得税(復興含む)30.63%・住民税9%) |
2.収用交換等の場合の5,000万円特別控除(措法33条の4)とは?
収用交換等とは、土地収用法などの法律に基づき、公共事業(道路建設や河川整備など)のために、国や地方公共団体等に対して土地や建物を譲渡したり、権利を移転させたりすることを指します。
主な定義や内容は以下の通りです。
(1). 範囲と法律的根拠
税法上の特例対象となる「収用等」には、土地収用法、河川法、都市計画法などの特定の法律に基づく以下の行為が含まれます。
- 収用(しゅうよう)
公共事業のために強制的に資産を取得されること。 - 買取り
買取りの申出を拒むと強制収用されることが確実な場合に、その申出に応じて資産を売却すること。 - 換地処分(かんちしょぶん)
土地区画整理事業や土地改良事業において、元の土地に代わる別の土地(換地)や清算金を取得すること。 - 権利変換(けんりへんかん)
市街地再開発事業やマンション建替事業などにより、元の資産に代わって新しい建物の区分所有権や敷地利用権を取得すること。 - その他、資産の消滅、取壊し、買収なども含まれます。
(2). 補償金の種類
収用等に伴って交付される補償金は、税務上その性質によって区分されます。収用等の特例(5,000万円特別控除や買い換えの特例)の対象となるのは、原則として「対価補償金」に限られます。
- 対価補償金: 譲渡した資産そのものの対価として支払われるもの。
- 収益補償金: 事業の休廃業などによる収益の損失を補うもの。
- 経費補償金: 移転に伴い発生する費用の補填に充てるもの。
- 移転補償金: 建物、工作物、動産などの移転に要する費用として交付されるもの。
※建物を取り壊した場合などは、移転補償金であっても「対価補償金」として扱える例外があります。
(3). 税制上の優遇措置
公共事業のために資産を譲渡するという特殊な事情を考慮し、通常の不動産売却とは異なる強力な税務上の特例が設けられています。
- 特別控除の特例(措法33条の4)
譲渡所得から最高5,000万円を控除できる制度です。 - 課税の繰延べ(買い換え)の特例(措法33条)
代わりの資産(代替資産)を取得した場合、譲渡益の課税を将来に先送り(繰り延べ)できる制度です。
これらの特例を適用するには、資産が棚卸資産(販売目的の在庫)ではなく固定資産であることや、原則として買取りの申出から6か月以内に譲渡することなどの要件を満たし、確定申告を行う必要があります。
(4). 収用交換等の場合の5,000万円特別控除
今回取り上げる収用交換等の場合の5,000万円特別控除は、公共事業(道路建設やダム建設など)のために土地や建物を売却した際、その譲渡所得から最高5,000万円を控除できる制度です。
土地や建物の譲渡による譲渡所得(売却益)から最大5,000万円を差し引くことができるため、売却益が5,000万円以下であれば所得税や住民税はかかりません。また、5,000万円を超える場合は、差し引いた残りの金額に対してのみ課税されますので、この特例を適用できる場合には、かなりの節税効果があります。
(5). 具体的な数値を用いた算出方法
課税譲渡所得の計算式は以下の通りです。
課税譲渡所得金額 = 収入金額(対価補償金) - (取得費 + 譲渡費用) - 特別控除(上限5,000万円)
ケースA:譲渡益が5,000万円以下の場合
例えば、土地を譲渡して以下の補償金等を得たとします。
- 対価補償金(収入金額):2,500万円
- 取得費・譲渡費用の合計:500万円
- 譲渡益:2,500万円 - 500万円 = 2,000万円
この場合、譲渡益の2,000万円全額が特別控除の対象となるため、課税対象となる所得は0円となり、所得税・住民税はかかりません。
ケースB:譲渡益が5,000万円を超える場合
- 対価補償金(収入金額):8,000万円
- 取得費・譲渡費用の合計:1,000万円
- 譲渡益:8,000万円 - 1,000万円 = 7,000万円
この場合、上限である5,000万円が控除されます。
課税譲渡所得:7,000万円 - 5,000万円 = 2,000万円 この残った2,000万円に対して譲渡所得税が課税されます。
ケースC:共有名義の場合
5,000万円の特別控除は所有者(納税者)ごとに適用されます。 例えば、1億円の譲渡益が出る土地を兄弟2人で半分ずつ(5,000万円ずつ)共有している場合、それぞれが5,000万円の控除を受けられるため、合計1億円の譲渡益まで税金がかからないことになります。
3.収用交換等の場合の5,000万円特別控除(措法33条の4)の要件
収用交換等の場合の5,000万円特別控除(租税特別措置法33条の4)は、公共事業のために資産を譲渡した際、その譲渡所得から最高5,000万円を差し引くことができる特例制度です。本制度の適用要件や制度設計について、詳しく解説します。
(1). 主な適用要件
この特例を受けるには、以下のすべての要件を満たす必要があります。
- 固定資産であること
譲渡した土地や建物が、棚卸資産(販売目的の資産)ではない固定資産である必要があります。 - 6か月以内の譲渡
事業施行者から最初に買取り等の申出があった日から、6か月を経過した日までに譲渡(売買契約の締結)を行う必要があります。
※仲裁の申請や補償金の支払請求などが行われている場合は、期間が加算される特則があります。 - 「最初の年」のみの適用
同一の公共事業で2年以上にわたって分割譲渡が行われる場合、この特別控除が受けられるのは最初の年に譲渡した資産だけです。
※事業計画の変更や、工区が区分されているなど合理的な理由がある場合は、別個の事業として扱われることがあります。 - 最初に申出を受けた者であること
買取り等の申出を最初に受けた者、またはその者から相続・遺贈により取得した者が譲渡する必要があります。 - 買い換え特例との併用不可
その年中に公共事業のために売った資産の全部について、「収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例(措置法33条)」などの課税の繰延べ特例を受けていないことが条件です。



対象となる補償金については、原則として、資産の対価となる「対価補償金」のみが対象です。建物を取り壊した場合の建物移転料などは対価補償金に含まれますが、動産の移転料などは一時所得等として扱われ、特別控除の対象外となるため注意が必要となります。
4.適用除外
収用交換等の場合の5,000万円特別控除(措法33条の4)の特例制度は、公共事業の円滑な施行を促進するために設けられていますが、以下のいずれかのケースに該当する場合は適用除外(特例を受けることができない)となります。上記3の適用要件の裏返しとなり、重複する部分がありますので、ご了承ください。
(1). 最初に買取り等の申出があった日から「6か月」を経過した場合
この特例は、事業施行者から最初に買取り等の申出があった日から6か月を経過した日までに資産を譲渡(売買契約の締結)しなければ適用されません。
- 趣旨
公共事業用地の早期取得を促進し、売り惜しみや補償金の釣り上げを目的とした「ごね得」を排除するためです。 - 判定基準
譲渡(契約)が6か月以内であれば、資産の引渡しや補償金の受領が6か月を超えた後の年分になったとしても適用可能です。 - 特則
土地収用法に基づく仲裁の申請や、農地法に基づく許可申請などが行われている場合には、一定期間を加算する特則があります。
(2). 同一事業で「2年目以降」に譲渡した場合
同一の公共事業のために、2年以上にわたって資産を分割して譲渡する場合、この特別控除が受けられるのは最初の年(初年度)に譲渡した資産だけです。
- 具体例
1年目に500万円の譲渡益があり特例を受けた場合、翌年に同じ事業で4,000万円の譲渡益が出たとしても、2年目の譲渡については適用されません。 - 例外(別個の事業扱い)
事業計画の変更に伴い施行地が拡張された場合や、工区(1期工事・2期工事など)が明確に区分されているなど、合理的な理由がある場合は、別個の事業として2年目以降も適用できることがあります。ただし、予算上の理由による分割買収は合理的な理由とは認められません。
(3). 「代替資産の取得の特例」等を選択した場合
同じ年中に公共事業のために譲渡した資産の全部について、「収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例(措法33条)」や「交換処分等に伴い資産を取得した場合の課税の特例(措法33条の2)」の適用を受ける場合は、5,000万円特別控除を併用することはできません。
これらは選択適用であり、同一の収用事業において資産ごとに使い分けることも認められません。
(4). 譲渡した資産が「棚卸資産」である場合
譲渡した土地建物が、不動産業者などが販売目的で所有している棚卸資産(またはこれに準ずる資産)である場合は、この特例の対象外となります。特例はあくまで固定資産の譲渡を対象としています。
(5). 最初に買取り等の申出を受けた者(およびその相続人)以外が譲渡した場合
この特例を適用できるのは、原則として事業施行者から最初に買取り等の申出を受けた本人です。
- 相続の場合
申出を受けた本人が死亡し、相続または遺贈によりその資産を取得した遺族が譲渡する場合は、特例を適用できます。 - 贈与の場合
買取り等の申出があった後に、その資産を贈与によって取得した者が譲渡した場合には、期間に関わらず特例の適用はありません。
(6). 対価補償金以外の補償金を受け取った場合
5,000万円特別控除の対象となるのは、原則として資産の譲渡の対価である「対価補償金」のみです。
- 適用除外となる主な補償金
収益補償金(営業補償など)、経費補償金、移転補償金(動産移転料など)は、原則として一時所得や事業所得等として課税され、特別控除の対象には含まれません。
ただし、建物等を取り壊した際の建物移転補償金などは、実態として対価補償金とみなせる場合に限り、特例の対象に含めることができます。
(7). 確定申告を行わなかった場合
この特例の適用を受けるためには、収用証明書などの必要書類を添付して確定申告を行う必要があります。 特別控除を適用した結果、譲渡所得が0円になる場合であっても、特例の適用を受ける旨を記載した申告書を提出しなければなりません。
5.適用手続と必要書類
収用交換等の場合の5,000万円特別控除(措法33条の4)を適用するための手続および必要書類について、提供された資料に基づき詳しく解説します。
この特例の適用を受けるためには、原則として資産を譲渡した年の翌年2月16日から3月15日までの間に、所轄税務署へ確定申告を行う必要があります。
(1). 適用手続の概要
- 確定申告書への記載
確定申告書にこの特例を適用する旨を記載し、所定の書類を添付して提出します。 - 選択適用
公共事業のために土地建物を売った場合、「代替資産を取得した場合の課税の特例(買い換え)」か「5,000万円特別控除」のいずれか一方の特例を選択して適用することになります。
(2). 確定申告時の必要書類
確定申告書には、以下の書類を添えて提出する必要があります。
- 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)[土地・建物用]
- 公共事業用資産の買取り等の申出証明書
最初に買取り等の申出があった年月日や資産の明細を証する書類で、「6か月以内の譲渡」の要件を確認するために必要となります。 - 公共事業用資産の買取り等の証明書
実際に買取りが行われた年月日や対価(買取り等の価額)を証する書類です。 - 収用証明書
その譲渡が土地収用法等の規定に基づくものであることを証明する書類です。 - 本人確認書類
申告時にはマイナンバー(個人番号)の記載と、マイナンバーカードなどの本人確認書類の提示または写しの添付が必要です。
これらの証明書類(2〜4)は、資産の買取りを行った事業施行者(地方公共団体など)から契約後、速やかに交付されます。
(3). 特定のケースにおける留意事項
- 共有名義の場合
共有名義の土地が収用された場合、共有者全員がそれぞれの確定申告において手続を行うことで、各人が最高5,000万円までの控除を適用できます。 - 相続人が譲渡する場合
買取り等の申出を最初に受けた人が死亡し、相続人がその資産を譲渡する場合でも特例の適用が可能ですが、その際は相続を証明する書類等が必要になる場合があります。 - 6か月判定の特則
土地収用法に基づく仲裁の申請や農地法上の許可申請などが行われている場合は、申出から6か月を経過していても特例が受けられることがあり、その際は仲裁判断書の写しや受理通知書の写しなどの追加書類が必要です。
(4). 事業施行者側が行う手続(参考)
納税者が円滑に特例を受けられるよう、事業施行者側では以下の事務が行われています。
- 税務署との事前協議
用地買収に着手する前に、その事業が特例の対象になるかについて税務署と協議を行います。 - 申出証明書(写し)の提出
事業施行者は、最初に買取り等の申出を行った日の属する月の翌月10日までに、申出証明書の写しを税務署長へ提出します。 - 支払調書の提出
買取りの対価を支払った場合、一定の期間ごとに支払調書を税務署へ提出します。
参照:国税庁タックスアンサー No.3552 収用等により土地建物を売ったときの特例
6.まとめ
公共事業に伴う収用・買取り等で土地建物を手放すときは、措置法33条の4の5,000万円特別控除が強力です。ポイントは「最初の買取等申出日から6か月以内に契約」を済ませること、対象は“対価補償金”が中心であること、そして適用は“申告して初めて成立”することの3点。さらに、同一年に他の特別控除も満たす場合でも合計上限は原則5,000万円で、買換特例との併用は不可です。実務では、申出証明書・買取り等の証明書・収用証明書の「3点セット」を確実に揃え、6か月特則(仲裁申請・支払請求・農地法許可/届出)の該当有無も確認しましょう。早めの段取りと書類管理が、そのまま節税インパクトに直結します。税理士をお探しの方は、お気軽にこちらまでお問い合わせください。



今回は個人の譲渡所得の税負担を軽減できる特例制度の第六弾となりましたが、第五弾までの他の特例制度もよろしければご覧ください。
第一弾:居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除(措法35条1項)
第二弾:特定の居住用財産の買換え特例(措法36条の2)
第三弾:居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除(措法41条の5)
第四弾:被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例(措法35条3項)
第五弾:相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例(措法39条)編

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