ミミレイドンボス、おはようございます!
今朝のテーマは何でしょうか?



個人の譲渡所得の税負担を軽減できる特例制度の第四弾として、被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例(措法35条3項)について整理して行きたいと思います。
この通称空き家特例は、相続で取得した被相続人の居住用家屋・敷地等を一定の期限内に譲渡した場合に、譲渡所得から最大3,000万円(令和6年1月1日以後の譲渡で相続人が3人以上の場合は1人あたり2,000万円)を控除できる強力な制度ですが、多くの適用要件もありますので、一緒に確認していきましょう。
1.譲渡所得とは?基本の仕組みをわかりやすく解説(おさらい)
資産の売却を検討される際に、まず押さえておくべき「原則的な譲渡所得の概念、計算式、および税率」について、復習していきましょう。



譲渡所得の基礎知識についてはこちらの記事をご確認ください。
【町田市の税理士が解説】個人の譲渡所得の基礎知識について
(1). 譲渡所得の基本概念
譲渡所得とは、土地、建物、株式、ゴルフ会員権などの資産を売却することによって生じる所得を指します。 単に資産を現金化した金額のすべてに課税されるわけではありません。「その資産をいくらで手に入れ、いくらで売ったか」の差額、つまり売却によって得られた「儲け(利益)」に対して税金がかかる仕組みです。
(2). 原則的な計算式
譲渡所得の金額は、以下の計算式で算出します。
譲渡所得 = 収入金額(売却代金) - ( 取得費 + 譲渡費用 ) - 特別控除額
それぞれの項目の内容は以下の通りです。
- 収入金額
売却によって受け取る代金です。これには、固定資産税・都市計画税の精算金として受け取った金額も含まれます。 - 取得費
その資産を買い入れた代金や、購入時に支払った仲介手数料、登記費用などの合計額です。建物の場合は、所有期間中の減価償却費(価値の減少分)を差し引く必要があります。なお、実際の取得費が不明な場合は、売却価格の5%を取得費(概算取得費)とすることも認められています。 - 譲渡費用
仲介手数料、印紙代、測量費、借家人への立退料、建物解体費など、売却するために直接かかった費用です。 - 特別控除額
今回の記事のテーマであるマイホーム売却時の「3,000万円特別控除」など、一定の要件を満たす場合にのみ利益から差し引ける、非常に強力な節税枠です。
(3). 原則的な税率
譲渡所得は、他の所得と合算せず個別に税額を計算する「申告分離課税」が適用されます。税率は資産の種類や所有期間によって以下のように分類されます。
不動産(土地・建物)の場合
不動産は、売却した年の「1月1日時点」での所有期間によって税率が倍近く変わります。
| 区分 | 所有期間(譲渡年の1月1日時点) | 税率 |
|---|---|---|
| 長期譲渡所得 | 5年を超える | 20.315%(所得税(復興含む)15.315%・住民税5%) |
| 短期譲渡所得 | 5年以下 | 39.63%(所得税(復興含む)30.63%・住民税9%) |
2.被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除とは?
(1).制度趣旨
被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例(通称:空き家特例)は、相続によって発生した空き家の売却を促進し、放置空き家による社会問題の解消を図るために創設された制度です。一定の要件を満たして実家などを売却した場合、譲渡所得(売却益)から最高3,000万円(相続人が3人以上の場合は2,000万円)を控除することができます。



例えば、親が亡くなり、相続で親(被相続人)が住んでいた土地と家を子ども(相続人)が引き継いだものの、使い道がないため第三者に売却する――そのようなケースで利用できる特例です。
処分するには費用もかかるため、ひとまず放置してしまう人が増え、空き家が社会問題となってきました。
この制度は、空き家を早めに売却・活用しやすくし、市場に出して再利用を進めるために作られたものです。
(2).具体例を交えた計算と活用イメージ
特例の有無で、支払う税額には数百万円の差が生じることがあります。
具体例1:一人で相続して売却した場合
- 売却価格:4,500万円
- 取得費・譲渡費用:1,200万円(取得費が不明な場合、概算5%を用いることもできます。)
- 譲渡所得:4,500万円 – 1,200万円 = 3,300万円。
- 特例なしの場合
3,300万円 × 約20%(長期譲渡所得の税率) = 約660万円の納税。 - 特例あり(3,000万円控除)の場合
(3,300万円 – 3,000万円) × 約20% = 300万円 × 20% = 約60万円の納税。 → 約600万円の節税効果となります。
具体例2:兄弟2人で共有相続して売却した場合
空き家を兄弟2人で1/2ずつ相続し、6,000万円で売却した場合(取得費等は考慮せず)、各相続人がそれぞれ特例を適用できます。
- 各人の譲渡所得:3,000万円
- 各人の控除額:3,000万円(上限)
→結果:2人とも譲渡所得が0円となり、この譲渡による税金が0円になる可能性があります。



ただし、税制改正により、令和6年1月1日以降の譲渡で相続人が3人以上の場合は、一人あたりの控除上限が2,000万円に減額されるため注意が必要です。
また、相続から売却までの間に、一度でも他人に貸したり、自分で住んだり、事業用(駐車場経営など)として利用したりすると、特例は受けられなくなります。
3.被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の要件
被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例(通称:空き家特例)を適用するためには、対象となる家屋、被相続人の居住状況、売却の条件、および手続きのすべてにおいて一定の要件を満たす必要があります。主な要件は以下の通りです。



相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋または被相続人居住用家屋の敷地等を、平成28年4月1日から令和9年12月31日までの間に売ることが大前提です(期間については、改正により再度延長される可能性もありますので、最新の取り扱いを確認しましょう。)。
(1). 対象となる家屋・敷地の要件
売却する不動産は、以下のすべての条件を満たす必要があります。
- 建築時期
昭和56年(1981年)5月31日以前に建築された旧耐震基準の建物であること。 - 建物の種類
一戸建てであること。マンションなどの区分所有建物は対象外です。 - 居住状況
相続開始の直前において、被相続人が一人で居住していた(同居人がいなかった)こと。 - 土地の範囲
被相続人の居住用家屋の敷地として使われていた土地であること。借地権でも適用可能です。母屋の他に離れや倉庫等がある場合、特別控除の対象となる土地面積は、母屋の床面積の割合で按分して計算されます。



ちなみに、被相続人が要介護認定等を受けて老人ホーム等に入居していた場合でも、入居直前まで一人で住んでいた、入居後も家財道具の保管に使用され貸し付けや居住用に使われていないなどの一定の要件を満たせば、適用対象となります。
(2). 相続から譲渡時までの利用制限
- 空き家状態の維持
相続の時から譲渡(売却)の時まで、一度も事業の用、貸付けの用、または居住の用に供されていないことが必須です。相続後に相続人が一時的に住んだり、リフォームして他人に貸したり、駐車場として利用したりすると要件から外れます。
(3). 売却(譲渡)に関する要件
- 売却期限
相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること。 - 売却代金
売却価格の合計が1億円以下であること。
共有相続して分割して売却する場合でも、相続人全員の譲渡対価を合算して判定します。 - 売却相手
親子や夫婦、生計を一にする親族など、「特別の関係がある人」以外への売却であること。 - 建物の状態(耐震・取壊し)
以下のいずれかの状態で引き渡す必要があります。
1. 家屋を耐震改修し、新耐震基準に適合させてから売却する。
2. 家屋の全部を取り壊して更地にしてから売却する。
【2024年改正】 令和6年1月1日以降の譲渡では、現状のまま売却し、売却の翌年2月15日までに買主側で耐震改修または取り壊しを行った場合も適用対象となりました。



言うまでもなく、売った人=相続または遺贈により被相続人居住用家屋および被相続人居住用家屋の敷地等を取得した相続人である必要があります。
(4). 特別控除額の上限
- 原則
譲渡所得から最高3,000万円を控除できます。 - 相続人が多い場合
令和6年1月1日以降の譲渡で、家屋と敷地等を取得した相続人の数が3人以上である場合、一人あたりの控除上限は2,000万円となります。
4.適用除外
被相続人の居住用財産(空き家)に係る3,000万円特別控除(空き家特例)は、非常に強力な節税制度ですが、適用条件が厳格であり、一つでも要件を外れると適用除外となります。上記3の適用要件と裏返しの内容となります。
主な適用除外事由は以下の通りです。
1. 物件の種類や建築時期による除外
- マンション等の区分所有建物
この特例は一戸建てが対象であり、区分所有建物登記がされている建物(分譲マンションなど)は対象外です。 - 新耐震基準の建物
昭和56年(1981年)5月31日以前に建築された家屋(旧耐震基準)が対象です。これより後に建てられた比較的新しい家屋は適用を受けられません。 - 居住用以外の不動産
被相続人が一人で住んでいた「自宅」に限られます。別荘、賃貸用物件、投資用不動産などは適用除外です。
2. 被相続人の居住・同居状況による除外
- 同居人の存在
相続開始の直前において、被相続人以外の居住者がいた場合は適用できません。例えば、子が同居していた場合や、親族が一緒に住んでいた場合は除外されます。 - 病院への入院
病院に入院し、そこから戻ることなく亡くなった場合、入院期間が長期にわたっても、生活の拠点が実家にあった(単なる入院である)と認められれば、特例の対象となります。 - 介護のための転居
介護のために子の家や一般の賃貸住宅へ転居し、そこで亡くなった場合は「老人ホーム等への入所」とは認められず、特例を受けられません。
3. 相続から売却までの利用・管理による除外
相続した時から譲渡の時まで、一度でも「居住の用」「事業の用」「貸付けの用」に供された場合は適用除外となります。
- 居住
実家の片付けのために相続人が数ヶ月住んでしまった場合などが該当します。 - 貸付け
売れるまでの期間、一時的に第三者に賃貸した場合などが該当します。 - 事業
家を壊した後の土地をコインパーキングや月極駐車場として貸し出した場合も、「事業の用」とみなされ対象外になります。
4. 売却条件(期間・価格・相手)による除外
- 売却代金が1億円超
売却価格が1億円(固定資産税等清算金を含む)を超えると適用を受けられません。複数の相続人で分割して売却しても、合算した総額で判定されます。 - 売却期限の徒過
相続開始日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却を完了させる必要があります。 - 身内等への譲渡
親子や夫婦、生計を一にする親族、特別な関係がある法人など「特別の関係がある人」に対して売った場合は適用されません。
5. 税務上の重複適用の制限
空き家特例は、同一の譲渡について他の譲渡所得の特例と重複適用できない場合があります。代表例として「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」や「収用等の場合の特別控除」等を受けていると適用できません。
また、同一年に他の不動産譲渡がある場合は、控除の適用関係・限度額の扱いが複雑になり得るため、事前に確認を推奨します。
主な併用不可の特例は以下の通りです。
1. 相続に関連する特例
- 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
相続税額の一部を取得費に加算できる制度ですが、空き家特例とはどちらか一方を選択して適用することになります。どちらが有利になるかは、支払った相続税額や譲渡所得の金額によって異なるため、シミュレーションが必要です。
2. 自己の居住用財産(マイホーム)に関連する特例
同じ年に「実家(空き家)」と「自宅」の両方を売るような場合、 「両方の特例を合わせて年間3,000万円が控除の上限」となります。 例えば、自宅売却で1,000万円の利益、空き家売却で1,000万円の利益が出た場合、合計2,000万円なので両方とも全額控除可能です。
- 居住用財産を譲渡した場合の3,000万円特別控除
いわゆる「マイホームを売ったときの3,000万円控除」です。 - 特定の居住用財産の買換え・交換の特例
マイホームを買い換えた際の課税繰延べ制度です。 - 10年超所有の居住用財産を譲渡した場合の軽減税率の特例
譲渡所得税率を14.21%に引き下げる特例も、空き家特例を適用する場合は利用できません。
3. 公共事業や事業用資産に関連する特別控除・特例
- 収用交換等の場合の5,000万円特別控除
公共事業などのために土地建物を売った場合の特例です。 - 収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例
立ち退き料等で別の不動産を取得した場合の特例です。 - 特定の事業用資産の買換え・交換の特例
事業用の土地建物を買い換えた際の特例です。
4. その他の譲渡所得の特例
• 固定資産の交換の特例
• 特定土地区画整理事業等のために土地等を譲渡した場合の特別控除(2,000万円)
• 特定住宅地造成事業等のために土地等を譲渡した場合の特別控除(1,500万円)
• 農地保有の合理化等のために農地等を譲渡した場合の特別控除(800万円)
• 低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除(100万円)



なお、併用が可能なものもあります。
例えば、小規模宅地等の特例については、相続税の申告時に「小規模宅地等の特例」を適用して土地の評価額を下げていたとしても、売却時の所得税の計算において空き家特例を併用することは可能です。
これらの特例は非常に複雑であり、一つでも選択を誤ると数百万円単位で税額が変わるリスクがあるため、税理士への相談をお勧めします。
5.適用手続と必要書類
被相続人の居住用財産(空き家)に係る3,000万円特別控除(空き家特例)を適用するための手続は、大きく分けて市区町村での「確認書」の取得と、税務署への「確定申告」の2段階があります。
1. 手続の流れとスケジュール
特例を受けるためには、不動産を売却した年の翌年に確定申告を行う必要がありますが、その前に自治体から要件を満たしていることの証明を受ける必要があります。
- ステップ1:必要書類の準備と「確認書」の申請
売却後、対象家屋が所在する市区町村の窓口(税務課や空き家対策担当課など)へ「被相続人居住用家屋等確認申請書」と添付書類を提出し、「被相続人居住用家屋等確認書」を取得する必要があります。1〜2週間から1ヶ月程度かかるため、余裕を持って申請することが推奨されます。 - ステップ2:確定申告
売却した年の翌年2月16日から3月15日までの間に、所轄の税務署へ確定申告書を提出します。この特例を適用した結果、納税額が0円になる場合でも確定申告は必須であり、申告を怠ると控除を受けられなくなるため注意が必要です。
2. 確定申告時の提出書類
税務署への確定申告の際、主に以下の書類を添付します。
- 確定申告書(第一表、第二表、第三表)。
- 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)[土地・建物用]。
- 被相続人居住用家屋等確認書(市区町村長が発行したもの)。
- 売買契約書の写し:売却代金が1億円以下であることを証明するために必要です。
- 登記事項証明書(登記簿謄本):被相続人が取得したこと、昭和56年5月31日以前に建築されたこと、区分所有建物でないことを確認するために使用します。
- 耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書の写し:家屋を壊さずに売却する場合、耐震基準を満たしていることを証明するために必要です。
3. 市区町村への確認書申請時の必要書類
自治体に「確認書」を申請する際には、売却の形態(耐震改修後、取り壊し後、現状有姿売却後の工事)に応じて、以下の書類などが必要となります。
- 被相続人の住民票の除票の写し
相続開始の直前まで被相続人が居住していたことを証明します。 - 相続人の住民票の写し
相続開始から譲渡時(または取壊し時)まで、誰も住んでいなかったことを証明します。 - 電気、ガスの閉栓証明書、水道の使用中止日が確認できる書類
空き家状態であったことを客観的に証明するために必要です。 - 家屋取壊し後の閉鎖事項証明書
家屋を取り壊して更地で売却した場合などに、取り壊し日を確認するために提出します。 - 更地であることがわかる写真
更地渡しのケースで必要です。 - 老人ホーム等への入所を証明する書類(該当する場合)
被相続人が入所していた施設の入所契約書の写し、要介護・要支援認定等を受けていたことを証する書類などが必要です。 - 買主による工事の特約が記された契約書(令和6年1月1日以降の譲渡)
売却後に買主が耐震改修や取り壊しを行う場合(3号譲渡)、その旨を明記した特約付き売買契約書の写しを提出します。
4. 注意点
- 相続人が3人以上の場合
令和6年1月1日以降の譲渡では、特別控除額の上限が一人あたり2,000万円に減額されます。 - 共有売却時の合算
複数の相続人で分割して売却しても、売却代金が1億円以下かどうかの判定は、相続人全員の合計額で行われます。 - 書類の入手可能性
光熱費の閉栓証明書などは時間が経つと入手が難しくなることがあるため、売却の検討段階から早めに準備することが大切です。
参照:国税庁タックスアンサー No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
6.まとめ
空き家特例(措法35条3項)は、相続で取得した被相続人の居住用家屋・敷地等を一定の期限内に譲渡した場合に、譲渡所得から最大3,000万円(令和6年1月1日以後の譲渡で相続人が3人以上の場合は1人あたり2,000万円)を控除できる強力な制度です。
ただし、建物の要件(昭和56年5月31日以前、区分所有登記でない等)、被相続人の居住状況、相続後の利用制限、譲渡期限・譲渡価額(1億円判定の合算)など、要件は多岐にわたり、1つでも欠けると適用できません。
特に令和6年以降は、現状のまま譲渡して買主が翌年2月15日までに耐震改修または取壊しを行う形も対象となる一方、買主の協力が前提となるため契約条件の設計が重要です。制度適用の可否は早めにチェックし、必要書類の準備も含めて慎重に進めましょう。税理士をお探しの方は、お気軽にこちらまでお問い合わせください。

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