ミミレイドンボス、おはようございます!
2026年3月31日のテーマはなんでしょうか?



今朝は、先日完結した役員報酬シリーズの読者から、二か所から役員報酬を受け取っている場合の注意点について、質問がありましたので、整理していきたいと思います。



二か所以上で役員報酬をもらっている人なんてそんなにいるんですか?



事業拡大やグループ経営、あるいは外部企業からの招聘などにより、二か所以上の会社で役員を兼務し、それぞれから役員報酬を受け取っている経営者の方は少なくありません。しかし、「報酬をもらっているだけ」と軽く考えていると、社会保険の届出漏れによる遡及徴収、会社法違反による損害賠償リスク、税務上の損金否認など、思わぬ落とし穴にはまるケースが後を絶ちません。
今朝は、二か所以上で役員報酬を受け取る場合に押さえておくべき注意点を、労務・法務・税務の3つの専門領域に分けて網羅的に解説します。「何となく大丈夫だろう」で済ませてしまう前に、ぜひ一度チェックしてみてください。



役員報酬シリーズの①役員報酬の意義編、②役員報酬の損金性編、③役員報酬の手続き編、④役員報酬の定期同額給与編、⑤役員報酬の定期同額給与編Part2、⑥定期同額給与の臨時改定事由編、⑦定期同額給与の業績悪化改定事由編、⑧事前確定届出給与編Part1、⑨事前確定届出給与編Part2、⑩業績連動給与編Part1、⑪業績連動給与編Part2、⑫株式報酬編、⑬経済的利益(現物給与)編Part1、⑭経済的利益(現物給与)編Part2、⑮経済的利益(現物給与)編Part3、⑯役員退職慰労金編Part1、⑰役員退職慰労金編Part2、⑱役員退職金の算定方法編、⑲役員の範囲編、⑳同族会社における役員報酬編、㉑使用人兼務役員編、㉒出向役員編については、こちらの記事をご覧ください。
【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:①役員報酬の意義編
【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:②役員報酬の損金性編
【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:③役員報酬の手続き編
【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:④役員報酬の定期同額給与編
【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:⑤役員報酬の定期同額給与編Part2
【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:⑥定期同額給与の臨時改定事由編
【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:⑦定期同額給与の業績悪化改定事由編
【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:⑧事前確定届出給与編Part1
【町田市の税理士が解説】中小企業の役員報酬:⑨事前確定届出給与編Part2
【町田市の税理士が解説】役員報酬:⑩業績連動給与編Part1
【町田市の税理士が解説】役員報酬:⑪業績連動給与編Part2
【町田市の税理士が解説】役員報酬:⑫株式報酬編
【町田市の税理士が解説】役員報酬:⑬経済的利益(現物給与)編Part1
【町田市の税理士が解説】役員報酬:⑭経済的利益(現物給与)編Part2
【町田市の税理士が解説】役員報酬:⑮経済的利益(現物給与)編Part3
【町田市の税理士が解説】役員報酬:⑯役員退職慰労金編Part1
【町田市の税理士が解説】役員報酬:⑰役員退職慰労金編Part2
【町田市の税理士が解説】役員報酬:⑱役員退職金の算定方法編
【町田市の税理士が解説】役員報酬:⑲役員の範囲編
【町田市の税理士が解説】役員報酬:⑳同族会社における役員報酬編
【町田市の税理士が解説】役員報酬:㉑使用人兼務役員編
【町田市の税理士が解説】役員報酬:㉒出向役員編
1.社会保険(健康保険・厚生年金)の手続き【労務】
二か所以上の会社から役員報酬を受けており、それぞれの会社で社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入要件を満たす場合、通常とは異なる特別な手続きが必要になります。2026年時点の最新情報に基づく注意点は以下の通りです。
(1). 各会社での社会保険加入要件の確認
複数の会社から報酬を受けていても、すべての会社で社会保険に加入するとは限りません。役員が社会保険の対象となるかは、勤務時間だけでなく、法人の経営への参画実態や報酬などを総合的に判断して決定されます。
- 加入対象となるケース
定期的に出勤している、役員会に出席している、業務執行権や代表権がある、労務に見合った報酬を受けている場合など。特に、代表取締役で役員報酬を受けている場合は原則として加入義務があります。 - 加入対象とならないケース
経営にほとんど参画していない名目上の非常勤役員や、役員報酬が0円の場合は、加入対象となりません。
(2). 「二以上事業所勤務届」の提出(事実発生から10日以内)
二か所以上で加入要件を満たす場合、それぞれの会社で「被保険者資格取得届」を提出したうえで、被保険者(役員本人)が「健康保険・厚生年金保険 被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を提出する必要があります。
- 提出先
自ら主たる事業所(選択事業所)をひとつ選び、その事業所を管轄する事務センターや年金事務所、または健康保険組合に提出します。 - 提出期限
複数の適用事業所に使用されることになった事実発生の日から10日以内です。
(3). 保険料の決定と按分(各会社に他社での報酬が知られる)
届出を行うと、各事業所で受ける報酬月額を合算して「標準報酬月額」が決定されます。そして、その標準報酬月額に基づく保険料が、各会社で受け取る報酬額の割合に応じて按分され、それぞれの会社が納付することになります。



注意点としては、年金事務所等から各会社に決定された保険料額や按分割合の通知が届くため、「別の会社でも役員報酬を得ていること」がそれぞれの会社に知られる(バレる)ことになります。
(4). 健康保険証(マイナ保険証)の取り扱い
届出をすると、選択した主たる事業所でのみ被保険者情報が登録されます。
- 現在、従来の健康保険証は廃止されているため、マイナ保険証(健康保険証利用登録を行ったマイナンバーカード)、または資格確認書を利用することになります。
- すでに発行されていた従来の健康保険証や、非選択事業所の健康保険組合等の保険証は無効となるため、返却等が必要です。
(5). 未提出の場合の重大なリスク
手続きが煩雑だからといって「二以上事業所勤務届」の提出を怠ると、正しい社会保険料が計算・納付されず、法令違反となります。
- 後日、年金事務所の調査等で未提出が発覚した場合、過去に遡って(最大2年分)未払い保険料を徴収される可能性があります。
- また、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金という厳しい罰則が科せられるリスクもあるため、対象となった場合は速やかに手続きを行ってください。
2.会社法上の「利益相反」と「競業避止」【法務】
複数の会社で役員を兼務し、役員報酬を受け取っている場合、会社法上の「競業避止義務」と「利益相反取引」の規制に注意する必要があります。これらの規制は、取締役がその地位を利用して、会社の利益を犠牲にし、自己や他社の利益を図ることを防ぐために設けられています。
基本となる会社法の規定(第356条、第365条等)に基づく注意点は以下の通りです。
(1). 競業避止義務に関する注意点
取締役が、自己または第三者のために、会社の事業と同種の取引(競業取引)を行う場合、会社法上の「競業避止義務」が問題となります。
- 事前の承認が必要
競業取引を行う場合は、必ず事前に承認を得ることが原則です。事前の承認を得ずに取引を行った場合、任務懈怠として損害賠償責任を負うリスクがあり、当該責任の免除には総株主の同意が必要となります。 - すべての取締役が対象
代表取締役に限らず、平取締役、社外取締役、名目的な取締役など、すべての取締役が就任と同時にこの義務を負います。また、自身の利益のためだけでなく、第三者(兼務先の会社など)の利益のために行う取引も対象となります。 - 完全親子会社・完全兄弟会社
100%の資本関係がある完全親子会社間や完全兄弟会社間での取引は、実質的な利害対立がないため、原則として競業取引には該当せず有力な見解では承認不要と解されていますが、実務上は念のため承認を得ておくことが推奨されます。 - 100%出資ではない場合
兼務先の会社に他の株主が存在する場合は、両社の利益が衝突する可能性があるため、競業避止義務の対象となり承認が必要です。 - 事後報告の義務
取締役会設置会社では、取引を行った後、遅滞なくその重要な事実を取締役会に報告する義務があります。 - 違反時のペナルティ
承認を得ずに競業取引を行った場合でも、取引の相手方を保護するために取引自体は有効とされますが、会社から損害賠償を請求されるリスクがあります。この際、取締役や第三者が得た利益の額が、会社に生じた損害額と推定される厳しい規定が設けられています。 - 退任後の扱い
会社法上の競業避止義務は在任中に限定されますが、退任後も競業を禁止するためには、別途会社と合意書や誓約書を交わす必要があります。
(2). 利益相反取引に関する注意点
取締役が会社と取引をする場合(直接取引)や、会社が取締役の債務を保証する場合(間接取引)など、会社と取締役の利益が相反する取引を行う場合も制限があります。兼務役員が関連する会社間で取引を行う場合は、特に注意が必要です。
- 事前の承認が必要
競業取引と同様に、株主総会または取締役会に重要な事実を開示し、事前の承認を得る必要があります。 - 兼務状況による承認の要否
兼務する役員の立場によって、どちらの会社で承認が必要かが異なります。 - 両社で代表取締役の場合
A社とB社の両方で代表取締役を務めている場合、両社の間で取引を行うには、A社・B社の両方で承認が必要です。 - 片方で代表取締役、片方で平取締役の場合
A社で代表取締役、B社で平取締役を務めている甲氏がいる場合、A社とB社の取引については、B社においてのみ承認が必要です。 - 両社で平取締役の場合
両社で代表権のない平取締役を務めている場合であっても、いずれかの会社の代理人等として取引を行う場合は承認が必要となります。当該取締役がいずれの取引の当事者・代理人等にも該当せず、かつ取引を実質的に主導していない場合は、形式的には承認の対象外となりますが、実態に応じた判断が求められるため、慎重な対応が推奨されます。 - 包括的な承認
グループ会社間などで継続的に取引が発生する場合、あらかじめ取引の種類、数量、金額、期間などを具体的に指定して、包括的な承認を得ておくことも実務上認められています。 - 違反時のペナルティ
承認を得ずに行った利益相反取引について、会社は無効を主張することができます(相対的無効)。ただし、取引の相手方が善意(承認を得ていないことを知らなかった場合)のときは、会社は無効を主張できないとされています。また、会社に損害が生じた場合、その取引を行った取締役だけでなく、承認決議に賛成した取締役も連帯して損害賠償責任を負う可能性があります。



複数の会社から役員報酬を受け取り経営に関与する場合は、これらの法的なルールに抵触しないよう、各社の取締役会での事前の承認手続きや事後報告を確実に行うことが重要です。また、資本関係や役職の組み合わせによって要件が細かく変わるため、取引の際には個別の確認が求められます。
3.所得税と確定申告【税務】
二か所以上の会社から役員報酬を受けている場合、所得税の源泉徴収や確定申告に関しても、通常とは異なるルールが適用されます。
(1). 「主たる給与」と「従たる給与」の区分(甲欄と乙欄)
複数の会社から報酬をもらう場合、税務上、メインの会社からの報酬は「主たる給与」、その他の会社からの報酬は「従たる給与」に明確に分けられます。
- 主たる給与(甲欄)
「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出した会社でのみ適用されます。通常の税率(甲欄)で源泉徴収され、社会保険料控除後の月額が88,000円未満であれば源泉所得税は0円になります。 - 従たる給与(乙欄)
それ以外の会社からの報酬には、より高い税率である「乙欄」が適用されます。
(2). 従たる給与(乙欄)は源泉徴収税額が高くなる
「乙欄」が適用される会社では、確定申告での精算を前提として、あらかじめ税金が多めに天引きされる仕組みになっています。
- 月額が少額(例えば88,000円未満)であっても源泉徴収税額は0円にならず、必ず一定割合(約3%〜)の所得税が天引きされます。
- また、甲欄のように扶養親族の数に応じた税額の減額も、原則として行われません。
(3). 「扶養控除等申告書」を提出する会社の選び方
「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は、原則として1つの会社にしか提出できません。 提出先を適当に決めてしまうと、税率の高い乙欄が適用される報酬額が増え、毎月の手取りが減って損をしたように感じてしまいます。そのため、一番報酬額が多い会社に提出して「主たる給与」とするのが基本です。
(4). 年末調整は1社でしかできない
年末調整は、「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出したメインの会社(甲欄が適用される1社)でしか行われません。従たる給与(乙欄)を支払う会社では年末調整ができないため、各社での年末調整による精算は完結しません。
(5). 確定申告の義務と税金の還付
複数の会社から役員報酬を受けている場合は、ご自身で確定申告を行う必要があります。
- 税金が戻ってくる可能性
従たる給与からは「乙欄」の高い税率で多めに税金が引かれているため、確定申告ですべての報酬を合算して正しい所得税額を計算し直すことで、払い過ぎていた税金が還付される(戻ってくる)可能性が高いです。 - 必要な書類
確定申告を行うためには、報酬を受けているすべての会社が発行する「源泉徴収票」が必ず必要になります。紛失しないように保管しておいてください。



このように、二か所以上から役員報酬を得る場合は、会社側への申告書の提出先を慎重に選び、翌年の確定申告を忘れずに行うことが重要です。
4.役員報酬の損金算入【税務】
二か所以上の会社から役員報酬を受け取る場合であっても、それぞれの会社で支払う役員報酬を法人の経費(損金)として算入するためには、各社ごとに法人税法上の厳格な要件を満たす必要があります。
(1). 各社での「職務内容に見合った適正額」の設定(過大役員報酬の否認リスク)
複数の会社を兼務している場合、それぞれの会社での業務への関与度合い(常勤・非常勤、実際の労働時間や役割など)は異なります。役員報酬のうち「不相当に高額」と判断された部分は、損金不算入となります。 不相当に高額かどうかの判断には、以下の2つの基準があります。
- 実質基準
各社における役員の職務内容、法人の収益状況、従業員への給与水準、同業他社の支給状況などから総合的に判断して、妥当な額である必要があります。兼務先でほとんど業務を行っていないにもかかわらず高額な報酬を設定すると、実質基準に照らして過大役員報酬とみなされ、損金算入が否認されるリスクが高まります。 - 形式基準
各社の定款や株主総会で決議された報酬枠の範囲内で支給されている必要があります。
(2). 「定期同額給与」のルールの厳守
各社で毎月支給する役員報酬を全額損金算入するには、「定期同額給与」の要件を満たす必要があります。
- 毎月同額の支給
支給時期が1ヶ月以下の一定期間ごとであり、毎月の支給額が同額でなければなりません。 - 改定は期首から3ヶ月以内
報酬額の改定(増額・減額)は、原則として各社の事業年度開始日から3ヶ月以内に行う必要があります(通常改定)。事業年度の途中からの支給開始や、特定の月だけの増額、3ヶ月経過後の恣意的な変更は、定期同額給与の額を超える部分(または改定前の金額を超える部分)が損金不算入となります。 - 例外的な改定
役員の職制上の地位の重大な変更などがあった場合(臨時改定事由)や、経営状況の著しい悪化により減額せざるを得ない場合(業績悪化改定事由)に限り、期中の変更が例外的に認められます。
(3). 賞与を支給する場合は「事前確定届出給与」の届出が必要
毎月の報酬とは別に、各社で役員に賞与を支給し、それを損金に算入したい場合は「事前確定届出給与」のルールに従う必要があります。
- 「いつ、誰に、いくら支払うか」を事前に決議し、原則として「株主総会等の決議から1ヶ月を経過する日」と「会計期間開始から4ヶ月を経過する日」のいずれか早い日までに、管轄の税務署へ届出を行う必要があります。
- 届け出た支給日・支給額と1円でも異なる支給を行うと、全額が損金として認められなくなるため、各社で厳格な運用が求められます。



二か所以上で役員を務める場合、会社ごとに決算月や株主総会の時期が異なることが多いため、「どの会社で、いつまでに報酬改定の決議や税務署への届出が必要か」というスケジュールを各社別々に管理し、遵守しなければならない点に特にご注意ください。
5.実務上の諸経費【税務】
二か所以上の会社から役員報酬を受けている場合、税務上の源泉徴収や確定申告、および交通費等の実費弁償(経費)の取り扱いにおいて、通常とは異なる実務上の注意点があります。
(1). 確定申告の義務と諸経費・控除の差し引き
第3章でも解説した通り、複数の会社から役員報酬(給与)を受け取っている場合、メインの会社以外(従たる給与)では年末調整を行うことができないため、原則として個人で確定申告を行って所得税を精算する義務があります。 確定申告の際には、すべての会社から受け取った源泉徴収票を用いて総収入を算出し、そこから諸経費や控除(社会保険料控除や基礎控除など)をマイナスした残りの金額が課税対象となります。
(2). 源泉徴収の「甲欄」と「乙欄」の選択による手取り額への影響
こちらも第3章で解説済みですが、2か所以上の会社から報酬を得る場合、メインとなる会社を一つ選び「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出する必要があります。このメインの会社の報酬は「主たる給与」となり、通常の税率である「甲欄」で源泉徴収が行われます。 一方、提出しなかったもう一つの会社からの報酬は「従たる給与」となり、「乙欄」という通常よりも非常に高い税率で源泉徴収されることになります。税率の差によって手取り額が大きく減るのを防ぐため、実務上は一番多く報酬をもらっている会社に扶養控除等申告書を提出してメイン(甲欄)に設定することが推奨されます。
(3). 「従たる給与についての扶養控除等申告書」の活用
もし、メインの会社からの報酬額が少なく、そこから社会保険料や基礎控除、配偶者控除などを全額引ききれない(マイナスになってしまう)と見込まれる場合は、特別な手続きがあります。 サブの会社(従たる給与の支払者)に対して「従たる給与についての扶養控除等の(異動)申告」を提出することで、高い税率の乙欄からであっても扶養親族等の数に応じた一定の控除を受けることが可能になります。
(4). 通勤交通費に関する注意点
- 2026年のマイカー通勤手当の改正動向に注意
2026年4月1日以降に支給される通勤手当より、自動車や自転車等の交通用具を使用する役員・従業員に対する非課税限度額が改正されました。主な変更点は、片道65km以上の「遠距離区分」の細分化・上限引き上げと、新たに「駐車場利用料(月額5,000円上限)」が非課税枠として加わった点です。
二か所以上の会社から報酬を得ている役員の場合、各社からの手当を合算した額を個人の非課税限度額(総枠15万円)に照らして判定する必要があります。今回の改正により、特に遠距離通勤や駐車場利用があるケースでは、非課税として扱える計算枠が拡大するため、各社での給与計算設定を最新の距離区分・要件に更新し、適切に反映させる必要があります。 - 通勤手当と「出張旅費等」の厳格な区分
複数の会社を兼務していると移動が多くなり、ガソリン代などを会社から実費支給されるケースがあります。この際、支給額の中に「通勤手当分」と「業務上の出張旅費分」が含まれているにもかかわらず、給与明細等で明確に区分されていない場合は、出張旅費分も含めてすべて「役員報酬」として扱われ、課税対象および社会保険料の計算基礎に含められてしまいます。無駄な税金や社会保険料を増やさないためには、出張旅費(非課税の実費弁償)と通勤交通費を明確に分けて支給・管理するよう各社で徹底する必要があります。
(5). 社宅や役員借上社宅に関する注意点
- 経済的利益の供与と「定期同額給与」の要件
会社が役員社宅の家賃を負担することは、税務上、役員に対する「経済的利益の供与」に該当します。役員報酬を会社の経費(損金)として算入するためには「定期同額給与」のルールを守る必要がありますが、社宅の家賃負担のような金銭以外の経済的利益も、「毎月おおむね一定額」で供与されていなければ定期同額給与とは認められません。二重で社宅を利用するなどして毎月の経済的利益の額が複雑に変動してしまうと、この要件を満たせず、損金算入が否認される(会社の経費にできなくなる)リスクがあるため注意が必要です。 - 社会保険の「現物給与」としての合算
社宅が提供されている場合、社会保険の計算上は「現物給与」として扱われ、都道府県ごとに定められた標準価額を報酬月額に上乗せして社会保険料を算出します。複数の会社から役員報酬を受けている場合、社会保険料は「すべての会社からの報酬月額を合算」して決定され、各社の報酬割合に応じて按分されます。もし複数の会社で社宅等の現物給与が発生している場合、各社での現物給与額を金銭報酬に上乗せした上で合算・按分計算を行う必要があり、事務手続きや保険料の計算が極めて複雑になります。
6.まとめ
二か所以上で役員報酬を受け取る場合、単に「給与が2か所から振り込まれるだけ」という認識では大変なリスクを背負うことになります。
- 労務面では「二以上事業所勤務届」の提出と社会保険料の按分・通知
- 法務面では「競業避止義務」と「利益相反取引」の厳格な承認手続き
- 税務面では「甲欄・乙欄の適切な選択」「定期同額給与の要件」「確定申告の義務」
このように、それぞれの分野で通常とは異なる特別な対応が求められます。とくに、手続きの漏れや要件の逸脱は「過去に遡った社会保険料の徴収」「役員報酬の経費否認(追徴課税)」「会社法違反による損害賠償」など、会社と個人の双方に重大な不利益をもたらします。
複数の会社で経営に関与し報酬を得る場合は、決して自己判断で進めず、顧問税理士や社会保険労務士、弁護士などの専門家と密に連携してください。各社で正確かつ適法な手続き・スケジュール管理を行い、安心して経営に専念できる環境を整えましょう。










コメント