【町田市の税理士が解説】個人の山林所得の基礎知識について

ミミレイドン

ボス、おはようございます!
今朝のテーマはなんでしょうか?

新屋賢人

今朝は、個人の所得シリーズ第8弾として、山林所得について、整理しようと思います。

ミミレイドン

山林所得、、、一番マニアックな所得ですね。

新屋賢人

広大な山林を相続した、あるいは長期的に所有している山林を売却しようと考えていませんか?
「山林を売って大金が入ったけど、税金はどうなるの?」と不安を感じる方も多いでしょう。
実は、山林から得られる所得(山林所得)は、サラリーマンの給与や一般的な事業の利益とは全く異なる、特別な優遇された計算方法が適用されます。この特殊なルールを知らないと、大きな損をしてしまう可能性があります。
この記事では、個人の山林所得の基本から、驚くほどの節税効果を生む「5分5乗方式」や各種特例まで、誰にでも分かりやすく解説します。

ミミレイドン

該当者、そんなにいないと思います。

目次

1. はじめに

(1).山林所得とは何か(立木の譲渡や伐採による所得)

山林所得とは、山林を伐採して譲渡したり、立木のままで譲渡することによって生ずる所得をいいます。

山林の譲渡には、通常の売買のほか、交換、競売、公売、代物弁済、収用、法人に対する現物出資なども含まれます。

また、自分の家屋を建築するために山林を伐採して使用するなど、家事のために消費した場合であっても、その消費したときの時価が総収入金額に算入され、山林所得の課税対象となります。

(2).他の所得区分(事業所得・雑所得・譲渡所得)との違い

所得税法では所得を10種類に区分していますが、山林所得はこれらのうちの一つですが、他の所得との区別が重要です。

区分       山林所得となる条件他の所得となるケース
山林所得所有期間が5年を超える山林(立木)の伐採または譲渡による所得。
事業所得/雑所得山林を取得してから5年以内に譲渡した場合。伐採や譲渡が事業として営まれている場合は事業所得、そうでない場合は雑所得となります。庭木の売却も雑所得に含まれます。
譲渡所得山林を土地付きで譲渡する場合の土地の部分土地や建物を売って生じる所得は、原則として譲渡所得です。

(3).個人が山林を所有している場合に注意すべき点

山林所得の最大の特徴は、長期間(数十年)所有している場合、優遇措置が設けられている点です。

このため、山林所得は他の所得と合算せず、特殊な計算方法(分離課税、5分5乗方式)により税額が計算されます

また、山林を譲渡しても、以下の特定のケースでは所得税が課税されない(非課税となる)場合があるため、該当するかどうかを確認する必要があります。

  • 山林を国や地方公共団体に寄附した場合や、公益法人等に寄附し国税庁長官の承認を受けた場合。
  • 山林を相続税の物納に充てた場合。
  • 資力を失い、債務を弁済することが著しく困難な場合に、滞納処分や強制執行、競売、破産手続などにより譲渡した場合。

(4).確定申告の対象範囲

山林所得は申告分離課税の対象であり、原則として確定申告が必要です。

確定申告は、山林の伐採または譲渡の引き渡しがあった翌年の2月16日から3月15日までに行う必要があります。ただし、還付申告の場合は、2月16日以前でも提出が可能です。

2. 山林所得の対象

山林所得を判定する上で、最も重要なのが「所有期間」です。この期間によって、適用される税制が大きく変わります。

(1).所有期間が5年超の場合に山林所得として扱われる

山林所得と認められるのは、山林を取得してから5年を超えてから、伐採して譲渡したり、立木のままで譲渡することによって生じる所得です。

林業経営者にとってはなじみ深い所得であり、長期にわたり育成された立木を売却したことによる所得だと考えられます。

(2).5年以内の譲渡は事業所得または雑所得になる

山林を取得してから5年以内に伐採・譲渡して生じた所得は、山林所得とはならず、その実態に応じて事業所得または雑所得になります。

  • 事業所得
    伐採や譲渡が事業として継続的かつ大規模に営まれている場合。実務上、一般的な目安として、50ヘクタール以上の山林であれば事業的規模として扱われることが多いですが、総合的な判断が必要です。
  • 雑所得
    事業として営まれていない場合(一時的な小規模な譲渡など)。
ミミレイドン

(3).土地付き譲渡の場合は土地部分が譲渡所得になる

山林を土地付きで譲渡した場合、所得は木の部分(立木)土地の部分に分けて計算しなければなりません。

  • 立木の部分:山林所得。
  • 土地の部分譲渡所得

この土地の譲渡所得は、さらに土地の所有期間に応じて長期譲渡所得(5年超)または短期譲渡所得(5年以下)として、山林所得とはまた別の分離課税で税額が計算されます

ミミレイドン

譲渡所得については、こちらの記事で解説しております。
【町田市の税理士が解説】個人の譲渡所得の基礎知識について

3. 山林所得の計算方法

山林所得の金額は、非常にシンプルながらも、経費の範囲が広いのが特徴です。

(1).基本式:総収入金額-必要経費-特別控除(最高50万円)

山林所得の金額を算出する基本式は次の通りです。

山林所得の金額=総収入金額−必要経費−特別控除額(最高50万円)

この計算で、収入金額から必要経費を差し引いた金額が50万円未満の場合、特別控除額はその差引金額が限度となります。

(2).総収入金額の定義(譲渡対価、自己消費の場合の時価算入)

山林所得における総収入金額は、原則として譲渡の対価(売却代金)です。

特に注意が必要なのは、以下のようなケースです。

  • 未収入金
    譲渡代金をその年に受け取っていなくても、未収入金を含めた譲渡代金の全部がその年分の収入金額に算入されます。
  • 自家消費
    山林を伐採して自己の家屋を建築するなど家事のために消費した場合、その消費したときの時価が総収入金額に算入されます。

(3).必要経費の内容(植林費、育成費、維持管理費、伐採費、運搬費、仲介手数料など)

山林所得の計算で控除できる必要経費は、原則として山林の取得から売却までにかかった費用の累計です。

主な経費の種類は以下の通りです。

  1. 取得費/植林費
    苗木の購入代金、運搬費、購入手数料、植付けの人件費など植林のために要した費用や、山林の購入代金や仲介手数料など取得に要した費用
  2. 育成費/管理費
    下刈り、枝打ち、除草などのための人件費や肥料代、防虫費といった育成費、また固定資産税、森林組合費、火災保険料、機械器具の減価償却費などの維持管理費
  3. 譲渡費用
    山林の伐採に要した人件費(伐採費)、伐採した山林の運搬費、測量費、仲介手数料など山林の譲渡に要した費用。

参照:国税庁ホームページタックスアンサー  No.1480 山林所得

4. 特例・控除制度

山林所得には、長期の育成期間に報いるための、手厚い特別控除や特例が用意されています。これらを活用することが、節税の鍵となります。

(1).概算経費控除(15年以上所有していた山林に適用)

長期保有している山林(特に先祖代々受け継いだものなど)の場合、数十年分の植林費や育成費の領収書を保管しているケースは稀です。

このような場合、概算経費控除という特例を利用し、必要経費の計算を簡略化できます。

  • 適用条件
    伐採または譲渡した年の15年前の12月31日以前から引き続き所有していた山林に限り適用されます。
  • 計算方法
    収入金額から伐採費などの譲渡費用を差し引いた金額の50%相当額に、さらに譲渡費用を加えた金額を必要経費とすることができます。
新屋賢人

適用条件について、補足すると、例えば2025年中に伐採・譲渡した場合には、2010年12月31日以前から、今回譲渡した山林を所有していることが要件となってきます。
計算方法についても補足すると、次の算式により計算した金額を経費とすることができます(=収入金額の50%を概算経費)。
(収入金額ー伐採時の譲渡費用)×50%+伐採時の譲渡費用
一旦伐採時の譲渡費用を除く理由としては、伐採時の譲渡費用は譲渡年の費用であるため、記録が残っている可能性が高く、また、貨幣価値の変動を考慮する必要がないためです。

(2).森林計画特別控除(森林経営計画に基づく場合)

森林経営の計画的な推進を目的とした控除制度です。

  • 適用条件
    市町村長などの認定を受けた森林経営計画に基づいて山林の伐採または譲渡(交換や収用等を除く)を行った場合に適用されます。
  • 控除額(概要)
    収入金額(譲渡費用控除後)の20%(収入金額が2,000万円を超える部分は10%)または所得基準額(収入金額の50%から必要経費を控除した残額)とのいずれか低い金額が控除されます。
  • 注意点
    概算経費控除方式によって必要経費を計算した場合は、収入金額基準額(20%または10%+200万円)のみが適用されます。
  • 期限
    この制度は時限措置であり、継続的に延長の要望が出されています(例:令和4年度改正で2年延長、令和6年度改正でも2年延長、令和8年12月31日まで適用)。

参照:措置法第30条の2《山林所得に係る森林計画特別控除》関係

新屋賢人

森林計画特別控除の対象となる山林所得は、認定森林経営計画(森林法第11条第1項)に基づいて伐採または譲渡した山林所得に限るとされています。ただし、以下の場合は対象外となりますので、ご注意ください。
①認定森林経営計画の対象外の山林
②計画対象の山林でも、計画に基づかない伐採・譲渡部分
③交換、出資、収用、贈与(法人向け)、相続(限定承認)、遺贈(法人向け等)による譲渡
④特定広葉樹育成施業森林に係る森林経営計画の対象部分
⑤認定取消しを受けた森林経営計画の対象山林

(3).青色申告特別控除(最大10万円)

山林所得は、青色申告の特典を受けることができます。

  • 適用条件:山林所得を生ずべき事業を営む青色申告者
  • 控除額最大10万円の特別控除が可能です。
  • 注意点:不動産所得や事業所得で55万円または65万円の青色申告特別控除を適用した場合、山林所得に対する10万円の控除は適用できません

(4).特別控除(最高50万円)

山林所得には、一律で最高50万円の特別控除が適用されます

この控除は、山林所得を計算する上で「総収入金額-必要経費」の残額が限度額となります。特に要件はなく、山林所得を得た人なら誰でも受けられます

5. 税額の計算方法

山林所得の最も大きな節税効果を生むのが、この独自の税額計算方法です。

(1).山林所得は「申告分離課税」の対象

山林所得に対する税額は、給与所得や事業所得などの他の総合課税される所得と合算せず分離して(申告分離課税として)計算されます

この分離課税方式が採用されているのは、山林の育成に長い年月がかかり、その利益が一度に多額になることで、税率の高い累進課税が適用されるのを避けるためです。

(2).5分5乗方式による税額計算(課税所得×1/5×税率×5)

所得税の計算には、「5分5乗方式(ごぶごじょうほうしき)」という独自の計算方法が適用されます。

これは、課税される所得を「5分の1」にして税率を適用し、その税額を「5倍」するという方法です。

所得税額の計算式: 山林所得に対する所得税額=(課税山林所得金額×1/5​×税率)×5

この方式により、所得全体を5分の1に圧縮することで、累進税率の階段を低く抑えることができ、結果として税負担が大幅に軽減されるのです。

ミミレイドン

超過累進税率とは、課税所得が高くなっていく部分に、より高い税率を乗じていく方法のことですね。つまり、所得が高い人ほど、税率が高くなってしまうため、長い年月をかけて生じた山林所得にかかる税額を計算する場合には、不向きということですね。

新屋賢人

💡具体例のイメージ
もし山林所得が1,000万円だった場合、通常の総合課税では33%の税率が適用されますが、5分5乗方式では、まず1,000万円を5分の1にした200万円に税率(この場合は10%)を適用し、その結果を5倍します。これにより、通常の課税より税額が少なくなる優遇措置が受けられます。
ただし、住民税については、平成19年(2007年)の税源移譲により、山林所得に対する5分5乗方式は廃止されており、課税所得額に関係なく一律10%(市民税6%、県民税4%など、自治体により変動)で計算される点に注意が必要です。

(3).他の所得と合算しないが、赤字の場合は損益通算可能

山林所得は税額計算においては他の所得と合算しませんが、もし山林所得の計算で赤字(損失)が生じた場合は、その損失を他の所得の黒字と相殺する(損益通算)ことが可能です。

損益通算の対象となる所得は、不動産所得、事業所得、譲渡所得、山林所得の4種類です。

例えば、会社員の給与所得(黒字)と山林所得(赤字)を相殺することで、全体の課税所得を圧縮し、還付を受けることができます。

また、損益通算してもなお控除しきれない損失(純損失)がある場合は、青色申告を行うことで、その損失を翌年以降3年間にわたって繰り越して控除できます(繰越控除)。

6. 確定申告の手続き

山林所得の確定申告は、通常の確定申告に加え、分離課税用の特別な書類が必要です。

(1).必要書類:山林所得収支内訳書、申告書第三表(分離課税用)

山林所得の確定申告を行うためには、主に以下の書類が必要です。

  1. 確定申告書 第一表・第二表
    すべての所得を記載するための基本となる書類です。
  2. 確定申告書 第三表(分離課税用)
    山林所得の所得金額や税額を計算し、他の所得と分離して課税するための書類です。
  3. 山林所得収支内訳書(計算明細書)
    山林所得の収入や必要経費、各種控除額を詳細に計算するための書類です。

(2).提出方法と注意点

  • 提出期間
    原則として翌年2月16日から3月15日まで
  • 提出先
    納税地を管轄する税務署(山林の所在地と異なる可能性があるため注意が必要)。
  • 提出方法
    税務署への持参、郵送、またはe-Tax(電子申告)。
  • 記載の注意点
    山林所得の金額の計算は「山林所得収支内訳書(計算明細書)」で行い、その金額を申告書第三表に転記します。青色申告特別控除(最大10万円)を適用する場合は、特別控除額(50万円)の欄の上段に控除額を二段書きする必要があります。

参照:令和6年分山林所得の申告のしかた
参照:山林所得収支内訳書(計算明細書)

7. 実務上の注意点

山林所得の申告を成功させるためには、長期的な視点での準備と、優遇税制を最大限に利用する戦略が不可欠です。

(1).所有期間の確認と区分判定

山林所得の要件である「所有期間5年超」の判定は、所得区分を決定する上で最も重要です。もし所有期間が5年以下であれば、山林所得の優遇税制(5分5乗方式など)は使えません。

また、土地と立木を一括譲渡する場合は、契約書や売買価格において、立木部分(山林所得)土地部分(譲渡所得)の対価を明確に区分しておくことが、後々の申告や税務調査対策において非常に重要となります。

(2).経費の証拠資料(領収書・契約書)の保管

山林所得は、植林から伐採・譲渡まで数十年かかるため、取得費や育成費の証拠資料(領収書、契約書など)の保管が困難になりがちです。しかし、これらの経費を証明できなければ、正確な所得計算ができません。

もし古い資料が残っていない場合でも、伐採や譲渡の15年前の12月31日以前から引き続き所有していれば、概算経費控除の特例(収入金額基準で50%を必要経費と見なす)の適用を検討できます。

(3).森林経営計画の活用による節税効果

山林を譲渡する前に、市町村長の認定を受けた森林経営計画を作成し、それに従って伐採・譲渡を行うことで、森林計画特別控除の適用を受けられます。

この計画は、林業経営の合理化を促進するためのものであり、計画的に伐採を行うことで税負担が大きく軽減されるため、売却を検討する際は、林野庁や地方自治体に相談し、計画の活用を検討することが強く推奨されます。

(4).災害や特例措置の適用可能性

通常の山林所得以外にも、特定の状況下で特例が適用される可能性があります。

  • 災害による損失:災害により山林や山林経営のために使用していた事業用の固定資産に損失が生じた場合(被災事業用資産の損失の金額)は、その金額を必要経費に算入できます。
  • 収用による譲渡:土地収用法などにより山林が収用された場合、最大5,000万円の特別控除など、譲渡所得と同様の特例が適用されることがあります。

8. まとめ

(1).山林所得は特殊な課税方式で計算されるため注意が必要

山林所得は、その長期間にわたる育成の労力に配慮し、申告分離課税が適用され、特に5分5乗方式という優遇された方法で税額が計算されます。この特殊な計算方法を理解することが、税負担を最小限に抑える第一歩です。

(2).所有期間・控除制度・申告手続きを正しく理解することが重要

山林所得の適用可否は所有期間が5年を超えるかどうかで決まり、また、必要経費の計算には概算経費控除(15年以上所有)や、森林計画特別控除(計画に基づく譲渡)といった強力な節税特例が存在します。

正確な申告のためには、「山林所得収支内訳書(計算明細書)」と「申告書第三表(分離課税用)」の作成が必須です。さらに、山林所得に赤字が出た場合、給与所得など他の所得と損益通算できるメリットも忘れてはいけません。

新屋賢人

山林所得の計算や特例の適用判断は複雑であり、特に長期間にわたる経費の収集や、土地・立木の価格区分など、実務的な難易度が高い分野です。
せっかく得られた山林からの大きな利益を、誤った申告や知識不足によって損なうことのないよう、山林所得の確定申告については、税理士への相談を強く推奨します。もし、相談できる税理士がいない場合には、お気軽にこちらまでお問い合わせください。

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この記事を書いた人

町田市にあるコムレイド税理士事務所の代表税理士の新屋賢人です。大学卒業後、中堅税理士法人で5年間、業界最大手である国際四大会計事務所(BIG4)のEY税理士法人で8年間、計13年間の実務経験があります。
30代ですが、すでに法人・個人問わず幅広い業務を経験しております。BIG4という業界最大手で得た経験・知識を生まれ育った街に還元したいという強い思いから独立を決めました。

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