青色事業専従者給与に関する基礎知識
ミミレイドンボス、個人事業主って、家族に手伝ってもらったら経費にできるんですか?



いい質問だね!実は“青色事業専従者給与”という仕組みがあるんだ。



それじゃあ、青色事業専従者給与として、事業主のパートナーや両親、祖父母や子供たちにお金を配れば、所得分散できて、税金抑えられますね!完璧な節税だー!



それは節税ではなくて脱税だよ・・・青色事業専従者給与として支給するためには、いろいろと要件があるんだ。今日は青色事業専従者給与について、少し勉強しましょうか!



脱税・・・危ないところだった(;´・ω・)よろしくお願いします!



この制度を上手に活用すれば、個人事業主様の所得税や住民税の負担を大きく減らすことができるからね。今回は、制度の概要から適用するための要件や注意点まで、初めての方にも分かりやすく解説していきます!
1.青色事業専従者給与の制度の概要(メリット)
通常、個人事業主が家族に給与を支払っても経費にはならないため、事業の儲けがそのまま事業主の所得として計算され、税金が高くなりがちです。しかし、この制度を利用して家族への給与を経費にできれば、事業主の所得を減らすことができ、結果的に所得税や住民税の負担を軽減できます。
日本の所得税は「累進課税制度」といって、所得が増えるほど税率が上がる仕組みになっています。
つまり、一人に所得が集中すると高い税率がかかってしまいますが、家族に分散すれば、より低い税率で課税される部分が増え、世帯全体での節税につながるのです。



白色申告の場合はどうなるんですか?あと、事業専従者控除とごっちゃになっているんですけど、青色事業専従者給与とは別物なんですか?



白色申告の場合、青色事業専従者給与の制度を適用することはできません。ただ、似たような制度である、「事業専従者控除」は使えますが、青色事業専従者給与とは異なります。簡単にですが、比較すると次のようになります。
• 青色事業専従者給与:仕事内容に見合った妥当な金額であれば、全額を必要経費に算入できます(ただし、事前に届出が必要です。)。
• 白色申告の事業専従者控除:控除できる金額に上限があります。事業主の配偶者なら最高86万円、その他の親族なら1人につき最高50万円です。さらに、事業の所得金額によっては、この上限額よりも低い金額しか控除できない場合があります(事前の届出は不要です。)。
青色事業専従者給与の方が、より大きな節税効果を期待できるのが分かりますね。
2.青色事業専従者給与の要件
この便利な制度を利用するためには、いくつかの厳しい要件を満たす必要があります。具体的には、以下の4つの条件全てに当てはまり、さらに税務署への事前の届出が必須となります。届出等必要な手続きに関しましては、次の3で解説をしております。
(1)青色申告をしている個人事業主であること
大前提として、青色申告の承認を受けている必要があります。白色申告の方も事業専従者控除の適用を受けられますが、より節税効果が期待できる青色事業専従者給与の制度を受けるためにも、まずは「所得税の青色申告承認申請書」を税務署に提出して青色申告の承認を受けるところから始めましょう。
(2) 給与を支払う相手が「青色申告者と生計を一にする配偶者または15歳以上の親族」であること
「生計を一にする」とは、必ずしも同居している必要はありません。例えば、一人暮らしのお子さんや高齢の親に仕送りをしている場合など、同じ財布で生活していると認められれば対象になります。
なお、その年の12月31日時点で15歳以上であることが条件となりますので、お子さんに給与を支払う場合には、注意が必要です。



15歳以上ってことは、高校生から大丈夫なんだね!?



それが、15歳以上だとしても、学生の場合には原則として対象外になってしまうんだ。次の(3)の要件になるんだけど、学業が本業と見なされるため、「専ら事業に従事している」とは認められないからね。ただ、例外として、夜間学生の場合は対象となることがあるよ。
(3)その年を通じて「6か月を超える期間」、青色申告者の営む事業に「専ら従事」していること
「専ら従事」とは、事業に専念していることを意味します。例えば、他の会社で正社員として働いていたり、長時間アルバイトやパートをしていたりする場合は、この要件を満たすのは難しいでしょう。上記(2)でも少し言及したように、学生も事業に専念しているとはいえません。



例えば、「繁忙期だけ手伝ってもらった」といった短期間の従事も認められません。 ただし、年の途中で卒業や退職して専従者になった場合など、やむを得ない理由がある場合は、事業に従事できた期間の半分を超えて専ら従事していれば認められることがあります。
(4)支払う給与の金額が「労務の対価として妥当」であること
この要件が最も重要で、税務調査でも厳しくチェックされるポイントです。「妥当な金額」とは、実際に従事した仕事の内容、労働時間、他の従業員の給与、同業種・同規模の事業の給与水準などを総合的に考慮して判断されます。



最初に言ってた脱税になるってこのことですか?



そうだね。節税を意識し過ぎて、実態に見合っていない青色専従者給与を計上している事業主様がいらっしゃるけど、税務調査が入ったら間違いなく否認されて、追徴課税されます。妥当な金額は税理士に相談するのがベストです。金額の設定はこの制度の一番のポイントだから、後ほどもう少し詳しく解説しますね。
3.青色事業専従者給与を適用するための「手続き」
要件を満たすだけでは経費にできません。以下の手続きも忘れずに行いましょう。
(1)所得税の青色申告承認申請書を提出する
青色事業専従者給与を適用するためには、青色申告の承認を得ていることが大前提となります。青色申告の承認を得ていない人は、まず初めに青色申告承認申請書を提出しましょう。提出期限は、原則として青色申告をしようとする年の3月15日までとなります。なお、その年の1月16日以降に開業した場合には、開業日から2か月以内です
(2) 青色事業専従者給与に関する届出書を提出する
青色事業専従者給与に関する届出書には、青色事業専従者の氏名、年齢、仕事の内容、経験年数、月給や賞与の予定額などを記載します。記載する給与額は、あくまで「上限額」です。実際に支払う金額は、その範囲内であれば問題ありません。
提出期限は、原則として青色事業専従者給与を経費に算入しようとする年の3月15日までです。土日祝日の場合は翌平日になります。年の途中で開業した場合や、新たに専従者が増えた場合は、開業日または専従者が増えた日から2か月以内に提出します。期限を過ぎると、その年は制度を利用できなくなる可能性があるため、注意が必要です。
提出方法は、税務署の窓口、郵送、またはe-Tax(電子申告)を利用したオンライン提出があります。
(3)給与の金額を変更する場合
一度提出した届出書の給与額を変更したい場合は、「青色事業専従者給与に関する変更届出書」を遅滞なく提出する必要があります。明確な法定期限はありませんが、支給前に提出することが望ましいとされています。2025年の税制改正によって基礎控除などが引き上げられたため、専従者給与の増額を検討する方もいるかもしれませんが、変更届の提出をきっかけに、変更後の金額だけでなく変更前の金額の妥当性も税務署にチェックされる可能性があるので、理由と根拠をしっかり準備しましょう。
(4)その他の関連手続き
従業員を雇用する際は、「給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書」を雇用日から1か月以内に提出します。ただし、開業届で給与の支払状況を記載していれば不要です。
また、月額8万8,000円以上の給与を支払う場合、源泉徴収が必要になります。源泉徴収した所得税の納付は、原則、翌月10日が期限となりますが、従業員が常時10人未満であれば、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出することで、源泉所得税を年2回(1月~6月分は7月10日、7月~12月分は翌年1月20日)まとめて納付できるようになり、事務負担を軽減できます。
4.青色事業専従者給与の「金額設定」で失敗しないためのポイントと注意点



じゃあ、いくらまでなら経費になるんですか?



残念ながら青色事業専従者給与に法律上の明確な上限額はないんだ。ただ、「労務の対価として妥当な金額」であることが非常に重要だから、節税目的で安易に高額に設定すると、税務調査で否認されるリスクがあるんだ。次は金額を決める際の考え方を紹介するね。
金額を決める際の考え方
• 労働の実態に見合った金額か。他の従業員や世間相場と比較して高すぎないか。
青色専従者給与の額は、仕事内容や労働時間に見合った妥当な水準で設定するのが基本です。最低賃金や同業他社の時給相場を参考に、時給ベースで算出するのが一般的でしょう。もし、事業所に他に一般の従業員がいる場合、同じような業務内容で働いている従業員との給与バランスも重要です。 税務調査官は「第三者を雇用したときに同じ業務で同じ給与を払えるかどうか」を一つの目安とすると言われています。
また、勤務日数、勤務時間、具体的な業務内容を日報やタイムカードなどで記録し、勤務実態を客観的に証明できるようであればベストです。
• 事業の規模や収益とのバランスはどうか。
例えば、年間の売上が400万円の事業で、専従者給与を300万円に設定するなど、事業収入に比べて専従者給与の割合が大きすぎると、不適正と判断される可能性があります。やむを得ない事情(事業主の長期入院など)がある場合を除いて、専従者の所得が事業主の所得を超えることは違和感があるため、事業主本人の所得が極端に少なくなるような設定は避けるべきです。
税負担に影響する「3つの分岐点」と「配偶者控除」との関係
青色事業専従者給与は節税に有効ですが、給与額の設定によっては世帯全体の税負担が増えることもあります。以下の「壁」を意識して、最適な金額を見極めましょう。
• 年収103万円の壁(2024年分まで) / 年収160万円の壁(2025年分から)。
専従者の年間給与がこの金額以内であれば、専従者本人の所得税は非課税になります。2025年の税制改正で基礎控除や給与所得控除が引き上げられ、所得税が非課税となる年間給与収入が従来の103万円から160万円に拡大されました。
• 年収110万円の壁。
専従者の年間給与がこの金額を超えると、住民税が課税される可能性があります。住民税は自治体ごとに基準が異なるので、事前に確認しておくと安心です。
• 年収130万円の壁。
専従者の年間給与がこの金額を超えると、社会保険の扶養から外れ、専従者自身が国民健康保険や国民年金に加入し、保険料を負担する必要が出てきます。節税効果と保険料負担を総合的に考えることが大切です。
• 月額8万8,000円の壁。
専従者への月々の給与が8万8,000円以上になると、事業主は源泉徴収の義務が発生し、 給与から所得税を差し引いて、税務署に納める必要があります。
配偶者控除や扶養控除との併用はできない!
青色事業専従者として給与を受け取る家族は、配偶者控除や扶養控除の対象外となります。これは、税制上「給与を得る独立した個人」として扱われるためです。
配偶者控除は最大38万円(事業主の所得により変動)の控除を受けられる制度です。専従者給与を支給した場合と、配偶者控除を利用した場合の世帯全体での税負担をシミュレーションして、どちらが有利になるか慎重に判断しましょう。一般的には、専従者給与として38万円以上の妥当な給与を支払うことができれば、専従者給与の方が節税効果が大きいケースが多いと言えます。



青色事業専従者給与を支払うと、事業主側では配偶者控除(最大38万円)が使えなくなるから、最低でも年間38万円以上の給与額にしないと、控除を失うだけ、つまり損しちゃうんだね。
5. 税務調査で否認されないための対策
税務調査では、青色事業専従者給与はよくチェックされる項目の一つです。特に「給与が高すぎる」「実態がない」と指摘されるケースが多いです。
• 勤務実態の証拠をしっかり残す。
日報、タイムカード、スケジュール表など、いつ、どのような業務に、どのくらいの時間従事したかを記録しておきましょう。
• 給与の支払い実績を明確にする。
現金手渡しではなく、銀行振込にして履歴を残すのが最も確実です。給与明細も発行・保存しておきましょう。
• 給与額の根拠を説明できるようにしておく。
同業他社の給与水準や、その業務の専門性、職責の重さなど、なぜその金額を支払っているのかを説明できるように準備しておきましょう。他の従業員と同様に賃上げを行った場合や、業務量が増加した場合は、妥当と判断されやすい理由になります。
• 税務調査には専従者本人も立ち会う。
専従者本人が自分の仕事内容について具体的に説明できるようにしておきましょう。全く仕事をしていない、または説明できないと否認されやすくなります。
6.実際のお問い合わせ例(配偶者に支給するケース)
実例でイメージ(配偶者に支給するケース)
ケースA:月8万円(年96万円)
- 業務内容:経理補助・請求書作成・SNS投稿補助(週5日×1日4時間程度)
- 地域相場:一般事務の時給1,200円程度
- 効果:96万円が経費に。配偶者控除は使えないが、配偶者の税負担はほぼゼロに近い(源泉徴収の義務も発生しない)。
ケースB:月15万円(年180万円)
- 業務内容:経理・顧客対応・SNS運用・資料作成(週5日×1日6時間程度)
- 地域相場:時給1,200〜1,300円+責任手当
- 効果:180万円が経費に。家族全体としての節税効果は大きいが、配偶者の税金や社会保険の負担について、注意が必要。



だったら最初から高めに設定した方が得じゃないですか?



届出額の範囲内で支払うのはOKだけど、“相当性”が一番大事なんだ。根拠なく高額だと税務署に否認されるリスクがあるため、注意が必要です!勤務実績に応じて段階的に増額して、必要なら変更届を出すのが安全だよ。
7.お客様からよくある質問
- 専従者給与はどうやって払えばいいの?
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税務署に提出した「青色事業専従者給与に関する届出書」に記載した方法・金額の範囲内で支払います。
給与を支払う際は、一般の従業員と同じように所得税を源泉徴収し、翌月10日までに納付が必要です。従業員が10人未満なら「納期の特例」を申請して年2回納付にまとめることも可能です。 - 事業が赤字でも専従者給与は経費にできるの?
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はい。事業が赤字でも、勤務の実態に基づいて適正な給与であれば必要経費に算入できます。ただし、毎年恒常的に赤字で専従者給与を支払っている場合は、経営上の妥当性を見直す必要があります。
- 専従者給与の額が事業主本人の所得より多くても大丈夫?
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原則として問題ありません。例えば、事業主が高齢や病気で実務をほとんど専従者が担っている場合や、災害・貸倒れで一時的に所得が減った場合などは、専従者給与が事業主の所得を上回ることもあり得ます。大事なのは「労務の内容に見合った金額かどうか」です。
- 専従者給与を未払いにしても経費にできる?
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原則は「実際に支払うこと」が必要です。短期間の資金繰りの都合で一時的に未払い計上するのはやむを得ない場合もありますが、長期間未払いのまま放置すると経費算入は認められません。
- 専従者が結婚や転居で途中から従事できなくなった場合は?
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その年のうち「従事可能期間の2分の1超」を専ら従事していれば、専従者として認められます。例えば、結婚で途中から従事できなくなっても、それまでの期間が要件を満たしていれば、その間の給与は経費に算入可能です。
- 他の従業員より高い給与を払ってもいいの?
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専従者の仕事内容や責任の重さによっては、一般従業員より高い給与でも認められます。大切なのは「仕事内容・労働時間・地域相場」に照らして合理的に説明できるかどうかです。
- 専従者給与を生活費に使ってもいいの?
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問題ありません。専従者給与は労務の対価として支払われたものなので、サラリーマン家庭の共働きと同じように、家計に合算して生活費に充てても問題ありません。
8.まとめ
青色事業専従者給与制度は、個人事業主にとって大きな節税メリットをもたらす強力なツールです。しかし、その分、要件や手続きが厳しく、特に「労務の対価として妥当な金額か」という点が重要視されます。
• 事前の届出を忘れずに、期限内に提出すること。
• 給与額は、実際の仕事内容や労働時間に見合った妥当な金額に設定すること。
• 勤務実態や給与の支払い状況を客観的に証明できる記録を残すこと。
これらのポイントをしっかり押さえて、賢く制度を活用しましょう。もし、「うちの場合はどう設定すればいいの?」「税務調査が心配…」といった不安があれば、税理士に相談することをおすすめします。専門家があなたの状況に合わせて、最適なアドバイスやサポートを提供してくれますよ。
賢く制度を活用して、事業の発展と家計の安定を目指しましょう!
補足:青色申告をしていない場合は事業専従者控除
青色申告の承認を受けていない場合
青色申告をしていない場合、青色事業専従者給与の制度は使えませんが、白色申告者の場合、事業専従者控除を使うことができます。
事業専従者控除は、白色申告を行っている個人事業主が、生計を一にする家族(親族)に支払った対価を、事業所得から控除できる制度です。この制度は、家族への給与を必要経費として算入することが原則として認められない白色申告者向けの特例的な控除となり、主に青色申告者が利用できる「青色事業専従者給与」とは異なり、控除できる金額に上限が設けられています。
控除額
白色申告者が事業専従者控除の適用を受ける場合、家族に支払った給与等を必要経費に算入することはできませんが、以下のいずれか低い方の金額を必要経費として差し引くことができます。
1. 専従者の区分に応じた金額
◦ 事業主の配偶者:最高 86万円。
◦ その他の親族(15歳以上の者):1人につき最高 50万円。
2. 計算上の限度額
◦ 事業専従者控除をする前の事業所得などの金額を、「専従者の数+1」で割った金額。
青色申告と白色申告の専従者制度比較
事業専従者控除と青色事業専従者給与との主な違いを表にしました。専従者の要件は、基本的には同様となりますので、青色事業専従者給与の制度をご参照ください。
| 制度 | 控除(経費算入の仕組み) | 金額の上限 | 届出 | 専従期間 |
|---|---|---|---|---|
| 【白色申告】事業専従者控除 | 所得から控除 (みなし経費) | 配偶者86万円、配偶者以外50万円 (一定の上限あり) | 不要 | 「その年を通じて6か月を超える期間」専ら従事していること |
| 【青色申告】青色事業専従者給与 | 支払った給与を 必要経費に算入 | 法律上の明確な 上限なし (妥当性が 求められる) | 事前届出必要 | 「その年を通じて6か月を超える期間(一定の場合には事業に従事することができる期間の2分の1を超える期間)」専ら従事していること |
「※専従者の年齢要件は15歳以上です」「※専従者控除は所得控除、専従者給与は経費算入」



ボス、青色事業専従者給与の制度を理解できました!



活用次第ではかなり節税になりますが、個人の税務調査の際に必ずチェックされるポイントでもあります。一人で悩まず、税理士に相談の上、慎重に設定しましょう。私でよければ、いつでも相談に乗りますので、こちらからお気軽にご相談ください。










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