ミミレイドンボス、おはようございます!
今朝のテーマはなんでしょうか?



今朝は所得の損益通算について整理しようと思います。



個人の所得シリーズで度々出てきましたよね。



給与や事業収入とは別に、不動産や副業、投資など、複数の収入源があり、その一部で「赤字(損失)」が出ていたら、それは「税金を減らすチャンス」かもしれません。
ルールを知らないだけで、毎年数十万円、場合によっては数百万円もの税金を払いすぎている可能性があります。
今朝は黒字と赤字を相殺する制度、損益通算について、誰にでもわかりやすく解説していきます。
1. はじめに
(1).損益通算とは何か?
損益通算(そんえきつうさん)とは、1年間に生じた複数の所得区分のうち、ある所得で発生した「赤字(損失)」を、他の所得で得た「黒字(利益)」から差し引いて相殺する制度です。
この手続きにより、全体の所得金額が圧縮され、結果として課税対象となる所得が減少します。
損益通算のイメージ
- 給与所得の黒字 500万円
- 不動産所得の赤字 △100万円
- 上記1+上記2=課税対象となる所得 400万円
(2).なぜ重要なのか?
損益通算が重要である理由は、日本の所得税制度が累進課税を採用しているからです。
所得税は、所得金額が大きくなるほど税率が高くなる仕組みです。損益通算によって課税所得が一段階下がれば、適用される税率も下がり、税金の負担が大幅に軽減される可能性があります。
特にサラリーマン(給与所得者)の方の場合、給与から源泉徴収によってすでに所得税が天引きされています。不動産所得や事業所得の赤字と給与所得の黒字を損益通算すれば、納めすぎた税金が還付金として戻ってくるケースも多く、これは大きな節税効果となります。


参照:国税庁ホームページタックスアンサー No.2260 所得税の税率
2. 損益通算の基本ルール
(1).所得税法における「10種類の所得」一覧
日本の所得税法では、個人の1年間の所得をその性質に応じて10種類に分類しています。
損益通算の可否を理解するために、まずはこの10種類の所得を知っておきましょう。
| 所得の種類 | 内容(主な収入源) | 解説記事(コムレイド税理士事務所ブログ) |
| 利子所得 | 預貯金、国債、公社債の利子など | 【町田市の税理士が解説】個人の利子所得の基礎知識について |
| 配当所得 | 株式の配当金、投資信託の分配金など | 【町田市の税理士が解説】個人の配当所得の基礎知識について |
| 不動産所得 | 土地や建物の賃貸料、地代など | 【町田市の税理士が解説】個人の不動産所得の基礎知識について |
| 事業所得 | 農業、製造業、小売業、サービス業など、事業から生じる所得 | 【町田市の税理士が解説】個人の事業所得の基礎知識について |
| 給与所得 | 会社員、公務員の給料、賞与など | 【町田市の税理士が解説】個人の給与所得の基礎知識について |
| 退職所得 | 退職金、一時恩給など | 【町田市の税理士が解説】個人の退職所得の基礎知識について |
| 山林所得 | 取得後5年超の山林の伐採または立木のままの譲渡による所得 | 【町田市の税理士が解説】個人の山林所得の基礎知識について |
| 譲渡所得 | 土地、建物、株式、ゴルフ会員権など資産の譲渡による所得 | 【町田市の税理士が解説】個人の譲渡所得の基礎知識について |
| 一時所得 | 生命保険の一時金、懸賞金など一時的な所得 | 【町田市の税理士が解説】個人の一時所得の基礎知識について |
| 雑所得 | 公的年金、貸付金の利子、副業による所得など(上記1〜9に該当しないもの) | 【町田市の税理士が解説】個人の雑所得の基礎知識について |
(2).損益通算が認められるのは一部の所得に限られることを説明
上記10種類の所得のうち、赤字(損失)を他の所得の黒字と通算できるのは、以下の4種類の所得に限定されています。
これが損益通算の大原則です。
- 不動産所得
- 事業所得
- 山林所得
- 譲渡所得(特定のものを除く)
税理士界隈では、この4つを覚えてもらうために「不・事・山・譲(富士山上)」と呼ぶこともあります。
参照:国税庁ホームページタックスアンサー No.2250 損益通算
3. 損益通算できる所得
ここで、具体的にどのような損失が通算可能となるのかを見ていきましょう。
(1).不動産所得(賃貸経営の赤字など)
不動産所得(土地や建物の貸付などによる所得)で損失が生じた場合、その損失は他の所得と損益通算が可能です。
特にアパートや賃貸マンションの経営では、事業初年度や空き家が生じることにより、家賃収入よりも経費(管理費、修繕費、減価償却費など)が大きくなった場合、給与所得などと相殺できます。
(2).事業所得(個人事業の赤字)
農業、製造業、サービス業など、個人で営む事業から生じる所得(事業所得)で損失が生じた場合、その損失は他の所得と損益通算が可能です。
例えば、会社員の方が副業を「事業所得」として行っており、開業初期の費用や設備投資がかさんで赤字になった場合、その赤字は給与所得から差し引くことで節税が可能です。
(3).山林所得
山林を伐採して譲渡したり、立木のまま譲渡したりすることによって生じる所得(山林所得)の損失は、損益通算の対象となります。
(4).譲渡所得(一定のもの)
資産を譲渡して得られる所得(譲渡所得)のうち、総合課税の対象となるものの損失は、損益通算の対象です。
例として、生活に通常必要でない資産(別荘、ゴルフ会員権、貴金属・書画骨とう等の一定の高額動産など)以外の資産を譲渡した場合の損失などが該当します。
なお、生活に通常必要でない資産の損失は通算できません。
また、土地や建物、株式の譲渡は、原則として後述する「申告分離課税」の対象となるため、扱いが異なります。
4. 損益通算できない所得
次に、損失が生じても原則として他の所得と通算できない所得を確認しましょう。
(1).給与所得(サラリーマンの給与は赤字にならない)
給与所得は、所得の性質上、損失(赤字)が生じることはありません。そのため、当然ながら損益通算の対象にはなりません。
(2).利子所得
預貯金や公社債の利子などから生じる利子所得は、損失が生じることがなく、損益通算の対象とはなりません。
(3).配当所得
株式の配当金などから生じる配当所得は、計算上損失が生じることはありますが、その損失は他の各種所得(給与所得など)の金額から控除することはできません。
ただし、上場株式等の譲渡損失がある場合に限り、申告分離課税を選択した上場株式等の配当所得等の金額と損益通算が可能です。
(4).一時所得(懸賞金や保険金など)
生命保険の一時金や懸賞の賞金など、一時的に生じる所得(一時所得)で損失が生じても、その損失は他の所得と通算することはできません。
(5).雑所得(年金や副業の一部)
公的年金や副業による所得など、他の所得に該当しない所得(雑所得)は、計算上損失が生じても、原則としてその損失は他の所得(給与所得など)と通算できません。
特に、会社員の副業収入が「雑所得」に分類されると、赤字が出ても給与所得とは相殺できず、赤字はそのまま切り捨てられてしまうため注意が必要です。
しかし、帳簿書類を適切に作成・保存しているなど事業性が認められれば、「事業所得」として認められ、損益通算が可能になる可能性があります。
5. 損益通算の制限・注意点
損益通算を賢く活用するには、例外的な制限や細かなルールを知っておくことが不可欠です。
(1).不動産所得の赤字に対する制限(例:土地取得にかかる借入金利息は通算不可)
不動産所得は損益通算の対象ですが、その赤字の原因が「節税目的」とみなされる費用である場合、通算が制限されます。
特に注意すべきは以下の2点です。
- 土地取得にかかる負債の利子
不動産所得の損失のうち、土地等を取得するために要した負債の利子に相当する部分の金額は、損益通算の対象になりません(その損失は生じなかったものとみなされます)。これは、バブル期に借入金利息を利用した節税が横行したことへの対策です。 - 国外中古建物の減価償却費
2021年(令和3年)分以降の所得について、国外中古建物から生じた不動産所得の損失のうち、簡易的な減価償却方法で計算された減価償却費に相当する部分の金額は、損益通算の対象外とされました。これにより、海外不動産を使った「ペーパーロス節税」は事実上封じられています。



該当するケースは少ないと思いますが、生活に通常必要でない資産(別荘等のように主として趣味、娯楽、保養または鑑賞の目的で所有する不動産)の貸付けに係る損失、特定の組合契約に基づく事業の損失(特定組合の特定組合員に係るもの)も、損益通算はできません。
参照:国税庁ホームページタックスアンサー No.1391 不動産所得が赤字のときの他の所得との通算
(2).株式譲渡損失は「損益通算」ではなく「損失の繰越控除」で対応するケースがある
株式や投資信託の譲渡損失は、給与所得や事業所得などの他の種類の所得とは原則として通算できません。
しかし、株式の損失を活かすための制度は存在します。
- 申告分離課税内の通算
上場株式等の譲渡損失は、同じ年の申告分離課税を選択した上場株式等の配当所得・利子所得とは通算(損益通算)が可能です。 - 損失の繰越控除
損益通算をしてもなお控除しきれない損失がある場合、確定申告をすることで、その損失を翌年以降3年間にわたって繰り越すことができます。



ちなみに、NISA口座(少額投資非課税制度)内で損失が生じても、NISAは利益が非課税となる代わりに、損失も税務上なかったものとして扱われるため、損益通算も繰越控除も一切できません。
(3).青色申告のメリット(損失の繰越控除が可能)
事業所得や不動産所得で多額の赤字(損失)が出た場合、その年の他の所得と損益通算をしても、まだ赤字が残ることがあります。この残った赤字を「純損失」といいます。
青色申告を選択していると、この純損失を翌年以後3年間にわたって繰り越し、将来の所得から控除できる「純損失の繰越控除」を利用できます。
例えば、開業初年度に多額の設備投資で赤字が出ても、この制度を使えば、翌年以降の利益が出た年の税金を減らすことが可能です。
この特例を受けるためには、損失が生じた年分から毎年連続して確定申告書を提出し続ける必要があります。
6. 実務上のポイント
損益通算は大きな節税効果をもたらしますが、ルールを誤ると税務調査で指摘を受けたり、ペナルティを課されたりするリスクもあります。実務で失敗しないためのポイントを押さえましょう。
(1).確定申告書での記載方法(損益通算欄のチェック)
損益通算の特例を適用するには、年末調整では対応できないため、必ず確定申告が必要です。
- 提出書類
確定申告書第一表および第二表に加え、譲渡損失や繰越控除を伴う場合は、申告書第三表(分離課税用)や「確定申告書付表(上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除用)」などの添付書類が必要です。 - 繰越控除の申告
繰越控除を適用するためには、損失が生じた年に所定の書類を添付して申告し、その後の年も譲渡や利益がなくても継続して確定申告書を提出する必要があります。
(2).よくある誤解・間違い例
| 間違いの事例 | 損益通算の結果 | 正しい処理 |
| 副業の赤字を給与と通算 | 否認される | 副業の赤字が「雑所得」なら通算不可。「事業所得」として認められるよう、事業実態と帳簿を整備する。 |
| 土地借入金利息を全額通算 | 土地負債利子相当分が否認される | 土地取得のための借入金利子部分は、不動産所得の赤字であっても通算不可。 |
| NISAの損失を特定口座の利益と相殺 | 通算不可 | NISA口座の損失は税務上ないものと扱われるため、他の口座と通算できない。 |
| 別荘・ゴルフ会員権の損失を通算 | 否認される | 生活に通常必要でない資産(趣味、娯楽目的の資産)の譲渡損失は、他の所得と通算できない。 |
(3).税務調査で指摘されやすいポイント
税務当局は、損益通算を利用した「節税スキーム」に対して監視を強めています。
- 事業所得の認定(副業問題)
給与所得者が副業所得を「事業所得」として申告し、赤字を給与所得と相殺している場合、事業性が認められるかが厳しくチェックされます。営利性や継続性、そして何より帳簿書類の保存状況が判断の分かれ目となります。 - 赤字の連続計上
副業が毎年のように赤字を計上しているにもかかわらず、赤字解消のための努力(事業性の確保)が見られない場合、事業所得の適用が否認され、雑所得として扱われるリスクがあります。 - 土地負債利子の計算漏れ
不動産所得が赤字の場合の損益通算において、土地等の取得に係る負債の利子を含めて損益通算しているケースが非常に多いと指摘されています。意図的でなくても、税務調査で指摘されれば追徴課税の対象となり得ます。
7. まとめ
(1).損益通算は「できる所得」と「できない所得」を正しく理解することが重要
個人の所得の損益通算は、不動産、事業、山林、特定の譲渡所得の4種類(不・事・山・譲)の損失に限定されます。
給与所得や雑所得の赤字は原則通算できないという大原則を頭に入れておくだけでも、無駄な赤字申告や予期せぬ申告漏れを防ぐことができます。
(2).節税効果を得るためには、青色申告や繰越控除制度の活用も視野に入れるべき
損益通算の結果、まだ赤字が残る場合、青色申告をしていることで、その損失を翌年以降3年間繰り越せる「純損失の繰越控除」という強力な節税メリットを享受できます。
ただし、この制度を適用するためには、損失が出た年だけでなく、翌年以降も毎年連続して確定申告を続けることが必須条件となります。
税制のルールは複雑で頻繁に改正されます。特に複数の所得を持つ方は、損益通算や繰越控除の制度を正しく理解し、賢く活用することが、「資産を増やしながら守る」ための第一歩です。もし申告に不安を感じたら、税理士に相談することを強くお勧めします。



制度を知らないだけで、税金を多く払い過ぎて損をしてしまうケースは多々あります。逆に、制限(今回のケースだと土地取得にかかる負債の利子の損益通算制限)を知らないで、税金を少なく払ってしまい、後から罰則税などの追徴課税を取られるケースも多々あります。そういった、本来払わなくてもよい税金を払わないためにも、税理士へ相談することをお勧めします。もし、相談できる税理士がいない場合には、お気軽にこちらまでお問い合わせください。










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